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「…そういう訳ですので、グレイン殿下の仰る婚約破棄はお受け出来ませんし、そちらのフィルマ様がグレイン殿下とどうなさろうと私には関係がございません。よって、私がその方を傷つける理由もございません」
「…だ、だが確かにフィルマはお前から嫌がらせをされていると…」
にっこりと微笑んで言い切ったアディエルに、グレインは怯みつつも言葉を発する。
「そもそもそれが可笑しいよね?アディエル義姉上は、妃教育で最低限しか学院に来てなかったのに、いつ、彼女に嫌がらせを?」
癖のあるアッシュブロンドの短い髪を掻き上げながら、エイデンが面白そうに尋ねていく。
「そ、それは…。アディエル様の取り巻きの方々が、代わりにされていたのですわっ!」
黙り込んだグレインの代わりに、フィルマが叫んだ。
「取り巻き…ですか。どなたのことでしょう?」
困ったと言わんばかりに頬に手を当てるアディエルを、フィルマはキッと睨みつけて指さした。
「貴女の取り巻きのカラディル伯爵令嬢のリネット様と、貴女の妹のアナベル様ですわっ!」
ザワついていたホールは、シーンと再び静まり返る。
「…アナベルとリネット様…ですか。そう…そうですの…」
クスクスと笑いだしたアディエルに、フィルマは顔を真っ赤にした。
「な、何笑ってんのよ!」
グレインに寄り添った時の愛らしさが消えていることにもフィルマは気づいていない。
「いや、笑うでしょ。笑うしかないよね?」
クスクスと笑うアディエルと、彼女の髪を苦笑しながら撫でているカイエンを横目に、言葉を発したエイデンは、両手を上に向けながらとある方向へ向かう。
「ねえ、僕のリネット。アディエル義姉上と一緒に妃教育に来ていた君は、いつの間に彼女に嫌がらせをしていたのかな?」
緩やかなウェーブのついたブラウンの髪をハーフアップにしていた令嬢に、エイデンは首を傾げながら手を差し出した。
「ご冗談にも程がありましてよ、エイデン様。あの息つく間のない教育時間の、何処にそんな余裕がありますの?そんな暇があれば、ゆっくりお茶でもいただいてますわ!」
ツンと顎をそらしながらも、エイデンの手に指を乗せた令嬢リネット・カラディルは、薄緑のツリ目をフィルマに向けた。
「そもそも。わたくし、そちらの方が何処の何方か存じませんもの!」
ツーンとフィルマから顔ごと視線を逸らした。
「は?え?」
その言葉に、グレインの顔はアディエルとフィルマ、リネットをあたふたと向けていた。
「後はアナベル嬢だっけ?フィルマ嬢はアナベル嬢と何処で会ったのかな?」
にっこりと優雅に微笑むカイエンに、フィルマは勝ち誇ったように胸を逸らして答える。
「もちろん、学院の裏庭ですわっ!わたくし、『身の程を弁えなさいっ!』と、アナベル様に頬を打たれたのですわっ!!」
ドヤ顔で言い切ったフィルマだったが、周囲の反応は何も無かった。
「??」
反応のない周囲に首を傾げ、自分に向けられているのが冷たい視線ばかりな事に気づき、グレインの背に隠れるように逃げた。
「まあ。アナベルが学院の裏庭に?それは困りましたわね。ところでフィルマ様。アナベルの髪色はご存知?」
「黒でしょう?アディエル様も侯爵様も弟君のダニエル様も黒じゃないですか!」
グレインの背中から顔を覗かせながら、フィルマが答えていく。
「では、年はご存知?」
「バカにしてますのっ!貴女が三年。ダニエル様が二年。アナベル様は一年に決まってるじゃないっ!!」
その言葉に、あちこちから失笑が漏れていく。
「……先程から黙って聞いていれば、呆れて物が言えないな…」
人混みの中から肩より少し長めの黒髪を赤いリボンで一つに纏めた男性が現れた。
アディエルの一つ下の弟ダニエル・ノクタールである。
「ダニエル様っ!姉だからとアディエル様を庇われますの!?」
「庇うも何も…。君はさっきから嘘しか言ってないじゃないか。アナベルは後妻の子で、僕や姉とは髪色が違う。母上譲りのハニーブロンドだし、あの子はまだ七歳だ。どうやって、君を学院の裏庭に呼び出して頬を打つと言うんだ?」
「……へ?」
ポカンと大口を開けた姿に、ダニエルは大きく息を吐き出した。
「グレイン殿下。貴方も貴方ですよ?王位継承権の説明は、王族教育が始まって直ぐに習うはずですが、何故、ご存知ないのです?」
「すぐ…??」
呆れながら話すダニエルに、茫然と聞き返すグレイン。
「ああ。兄上は側妃様が授業を抜け出してもそのままだったからな。もしかしたら、王族や高位貴族として知っておくべきことを知らないかもしれないね」
苦笑するカイエンの隣では、エイデンがうんうんと頷いている。
「ダ、ダニエル!お前は俺の側近だろうが!姉だからとアディエルの味方について、俺を貶めるつもりだなっ!!」
「は?冗談でしょ?」
グレインの叫びに、ダニエルは不快だと思いっきり顔に現した。
「僕はカイエン様の右腕ですよ?何で貴方の味方にならなきゃならないんです?そもそも貴方に側近なんていませんよ?誰も引き受けないからと、殿下方に頼まれて、仕方なくカイエン様の側近の僕達と、エイデン様の側近達で話し合って学院にいる時だけ貴方に付いていただけです。最初のご挨拶で申し上げましたよ?『学院内でお仕えさせていただきます』と…」
「な、な、何だとっ!?」
第一王子でありながら、自分の側近だと思っていた者達が、別の王子達の側近から貸し出されている事実に、グレインは体を怒りに震わせるしかなかった。
「…だ、だが確かにフィルマはお前から嫌がらせをされていると…」
にっこりと微笑んで言い切ったアディエルに、グレインは怯みつつも言葉を発する。
「そもそもそれが可笑しいよね?アディエル義姉上は、妃教育で最低限しか学院に来てなかったのに、いつ、彼女に嫌がらせを?」
癖のあるアッシュブロンドの短い髪を掻き上げながら、エイデンが面白そうに尋ねていく。
「そ、それは…。アディエル様の取り巻きの方々が、代わりにされていたのですわっ!」
黙り込んだグレインの代わりに、フィルマが叫んだ。
「取り巻き…ですか。どなたのことでしょう?」
困ったと言わんばかりに頬に手を当てるアディエルを、フィルマはキッと睨みつけて指さした。
「貴女の取り巻きのカラディル伯爵令嬢のリネット様と、貴女の妹のアナベル様ですわっ!」
ザワついていたホールは、シーンと再び静まり返る。
「…アナベルとリネット様…ですか。そう…そうですの…」
クスクスと笑いだしたアディエルに、フィルマは顔を真っ赤にした。
「な、何笑ってんのよ!」
グレインに寄り添った時の愛らしさが消えていることにもフィルマは気づいていない。
「いや、笑うでしょ。笑うしかないよね?」
クスクスと笑うアディエルと、彼女の髪を苦笑しながら撫でているカイエンを横目に、言葉を発したエイデンは、両手を上に向けながらとある方向へ向かう。
「ねえ、僕のリネット。アディエル義姉上と一緒に妃教育に来ていた君は、いつの間に彼女に嫌がらせをしていたのかな?」
緩やかなウェーブのついたブラウンの髪をハーフアップにしていた令嬢に、エイデンは首を傾げながら手を差し出した。
「ご冗談にも程がありましてよ、エイデン様。あの息つく間のない教育時間の、何処にそんな余裕がありますの?そんな暇があれば、ゆっくりお茶でもいただいてますわ!」
ツンと顎をそらしながらも、エイデンの手に指を乗せた令嬢リネット・カラディルは、薄緑のツリ目をフィルマに向けた。
「そもそも。わたくし、そちらの方が何処の何方か存じませんもの!」
ツーンとフィルマから顔ごと視線を逸らした。
「は?え?」
その言葉に、グレインの顔はアディエルとフィルマ、リネットをあたふたと向けていた。
「後はアナベル嬢だっけ?フィルマ嬢はアナベル嬢と何処で会ったのかな?」
にっこりと優雅に微笑むカイエンに、フィルマは勝ち誇ったように胸を逸らして答える。
「もちろん、学院の裏庭ですわっ!わたくし、『身の程を弁えなさいっ!』と、アナベル様に頬を打たれたのですわっ!!」
ドヤ顔で言い切ったフィルマだったが、周囲の反応は何も無かった。
「??」
反応のない周囲に首を傾げ、自分に向けられているのが冷たい視線ばかりな事に気づき、グレインの背に隠れるように逃げた。
「まあ。アナベルが学院の裏庭に?それは困りましたわね。ところでフィルマ様。アナベルの髪色はご存知?」
「黒でしょう?アディエル様も侯爵様も弟君のダニエル様も黒じゃないですか!」
グレインの背中から顔を覗かせながら、フィルマが答えていく。
「では、年はご存知?」
「バカにしてますのっ!貴女が三年。ダニエル様が二年。アナベル様は一年に決まってるじゃないっ!!」
その言葉に、あちこちから失笑が漏れていく。
「……先程から黙って聞いていれば、呆れて物が言えないな…」
人混みの中から肩より少し長めの黒髪を赤いリボンで一つに纏めた男性が現れた。
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「庇うも何も…。君はさっきから嘘しか言ってないじゃないか。アナベルは後妻の子で、僕や姉とは髪色が違う。母上譲りのハニーブロンドだし、あの子はまだ七歳だ。どうやって、君を学院の裏庭に呼び出して頬を打つと言うんだ?」
「……へ?」
ポカンと大口を開けた姿に、ダニエルは大きく息を吐き出した。
「グレイン殿下。貴方も貴方ですよ?王位継承権の説明は、王族教育が始まって直ぐに習うはずですが、何故、ご存知ないのです?」
「すぐ…??」
呆れながら話すダニエルに、茫然と聞き返すグレイン。
「ああ。兄上は側妃様が授業を抜け出してもそのままだったからな。もしかしたら、王族や高位貴族として知っておくべきことを知らないかもしれないね」
苦笑するカイエンの隣では、エイデンがうんうんと頷いている。
「ダ、ダニエル!お前は俺の側近だろうが!姉だからとアディエルの味方について、俺を貶めるつもりだなっ!!」
「は?冗談でしょ?」
グレインの叫びに、ダニエルは不快だと思いっきり顔に現した。
「僕はカイエン様の右腕ですよ?何で貴方の味方にならなきゃならないんです?そもそも貴方に側近なんていませんよ?誰も引き受けないからと、殿下方に頼まれて、仕方なくカイエン様の側近の僕達と、エイデン様の側近達で話し合って学院にいる時だけ貴方に付いていただけです。最初のご挨拶で申し上げましたよ?『学院内でお仕えさせていただきます』と…」
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