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【二部】侯爵令嬢は今日もあざやかに断罪する

5.

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「どうして、そちらだと思われるのですか、姉上?」

ユエインはパッと見、どちらも同じものにしか見えなくて、首を傾げてそう尋ねた。

「…いつもなら、自然と香っていたから気づかなかったのだけど、ロゼッタの使っている封蝋には、花の匂いがしているわ…」

「匂い…ですか?」

シルフィアの言葉に、ユエインは差し出されたそれに鼻を近づけて匂いを嗅いだ。

「……確かに。これは…ラベンダーでしょうか?」

「……ハーブじゃ、いっ!」

ボソッと呟いたエイデンは、隣のリネットに足の甲を蹴られて黙った。

「それで?アディ、正解は?」

カイエンの言葉に視線がアディエルに集まった。

「まあ。説明はリネットにお任せしてますのよ?」

取り出した扇を広げ、クスクスと笑いながら口元を隠したアディエルに、視線はリネットへと戻った。

「それでは説明させていただきますわ。シルフィア様の仰った通り、ロゼッタ様はご自身のお使いの封蝋には、ご実家で作られているの物を必ず使われるそうです」

「ロンバート伯爵家の治める領地は、養蜂業が盛んでしたね…」

エイデンの言葉に、シルフィアが頷く。

「蜜蝋のハンドクリームは、ご婦人やご令嬢にもかなりの人気だしね」

カイエンが苦笑しながらそう言う。
彼は新商品が出ると、必ず争奪戦が水面下で起きていることを知っている。

「で、本題に戻りますわね」

パンと軽く手を合わせて、リネットが残りの内から一つを手に取る。

「こちらはロゼッタ様の夫であるグリオール伯爵のお使いになっている封蝋です。皆様、確認をお願いします」

エイデン、カイエン、シルフィア、ユエインと回されていく。

「…こちらはレモングラス…かな?私もこれに変えたいな…」

カイエンがポツリと呟いた。

「はい。グリオール伯爵。ランディ様もこちらをお使いだそうです。御二方専用の特製だそうです」

「それって、この二人しか使えないって事だよね?」

エイデンが納得しながら、ユエインから戻ってきた封蝋を戻す。

「ええ、そうですわ。御二方が必ずご自身の手でのみに使われているそうで、知っているのは執事長とロゼッタ様付きの侍女だけだそうです」

残されていた一つを手にし、シルフィアに渡していたロゼッタの物とは違う物と並べる。

「そして、問題はこちらの二つになります。一つは主の代わりに執事長が筆を取った際に使用される物。こちらもまた香りはありませんが、彼しか使わない専用の物だそうです。残りの一つは、それ以外の物が封をする時に使うようにしている物だとか……」

再びそれぞれが順番に回されていく。

「……あら?最後の物はこの前、ロゼッタから着た手紙の封蝋と同じ物のような気がするわ?」

シルフィアがそう答えると、ユエインが二つを手にして見比べ始める。

「んー……。あれ?」

近づけたり話したりしていたユエインは、突然、封蝋を指で撫で始めていた。

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