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【二部】侯爵令嬢は今日もあざやかに断罪する
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「どうして、そちらだと思われるのですか、姉上?」
ユエインはパッと見、どちらも同じものにしか見えなくて、首を傾げてそう尋ねた。
「…いつもなら、自然と香っていたから気づかなかったのだけど、ロゼッタの使っている封蝋には、花の匂いがしているわ…」
「匂い…ですか?」
シルフィアの言葉に、ユエインは差し出されたそれに鼻を近づけて匂いを嗅いだ。
「……確かに。これは…ラベンダーでしょうか?」
「……ハーブじゃ、いっ!」
ボソッと呟いたエイデンは、隣のリネットに足の甲を蹴られて黙った。
「それで?アディ、正解は?」
カイエンの言葉に視線がアディエルに集まった。
「まあ。説明はリネットにお任せしてますのよ?」
取り出した扇を広げ、クスクスと笑いながら口元を隠したアディエルに、視線はリネットへと戻った。
「それでは説明させていただきますわ。シルフィア様の仰った通り、ロゼッタ様はご自身のお使いの封蝋には、ご実家で作られている香料入りの物を必ず使われるそうです」
「ロンバート伯爵家の治める領地は、養蜂業が盛んでしたね…」
エイデンの言葉に、シルフィアが頷く。
「蜜蝋のハンドクリームは、ご婦人やご令嬢にもかなりの人気だしね」
カイエンが苦笑しながらそう言う。
彼は新商品が出ると、必ず争奪戦が水面下で起きていることを知っている。
「で、本題に戻りますわね」
パンと軽く手を合わせて、リネットが残りの内から一つを手に取る。
「こちらはロゼッタ様の夫であるグリオール伯爵のお使いになっている専用の封蝋です。皆様、確認をお願いします」
エイデン、カイエン、シルフィア、ユエインと回されていく。
「…こちらはレモングラス…かな?私もこれに変えたいな…」
カイエンがポツリと呟いた。
「はい。グリオール伯爵。ランディ様もこちらをずっとお使いだそうです。御二方専用の特製だそうです」
「それって、この二人しか使えないって事だよね?」
エイデンが納得しながら、ユエインから戻ってきた封蝋を戻す。
「ええ、そうですわ。御二方が必ずご自身の手で封をされる時のみに使われているそうで、知っているのは執事長とロゼッタ様付きの侍女だけだそうです」
残されていた一つを手にし、シルフィアに渡していたロゼッタの物とは違う物と並べる。
「そして、問題はこちらの二つになります。一つは主の代わりに執事長が筆を取った際に使用される物。こちらもまた香りはありませんが、彼しか使わない専用の物だそうです。残りの一つは、それ以外の物が封をする時に使うようにしている物だとか……」
再びそれぞれが順番に回されていく。
「……あら?最後の物はこの前、ロゼッタから着た手紙の封蝋と同じ物のような気がするわ?」
シルフィアがそう答えると、ユエインが二つを手にして見比べ始める。
「んー……。あれ?」
近づけたり話したりしていたユエインは、突然、封蝋を指で撫で始めていた。
ユエインはパッと見、どちらも同じものにしか見えなくて、首を傾げてそう尋ねた。
「…いつもなら、自然と香っていたから気づかなかったのだけど、ロゼッタの使っている封蝋には、花の匂いがしているわ…」
「匂い…ですか?」
シルフィアの言葉に、ユエインは差し出されたそれに鼻を近づけて匂いを嗅いだ。
「……確かに。これは…ラベンダーでしょうか?」
「……ハーブじゃ、いっ!」
ボソッと呟いたエイデンは、隣のリネットに足の甲を蹴られて黙った。
「それで?アディ、正解は?」
カイエンの言葉に視線がアディエルに集まった。
「まあ。説明はリネットにお任せしてますのよ?」
取り出した扇を広げ、クスクスと笑いながら口元を隠したアディエルに、視線はリネットへと戻った。
「それでは説明させていただきますわ。シルフィア様の仰った通り、ロゼッタ様はご自身のお使いの封蝋には、ご実家で作られている香料入りの物を必ず使われるそうです」
「ロンバート伯爵家の治める領地は、養蜂業が盛んでしたね…」
エイデンの言葉に、シルフィアが頷く。
「蜜蝋のハンドクリームは、ご婦人やご令嬢にもかなりの人気だしね」
カイエンが苦笑しながらそう言う。
彼は新商品が出ると、必ず争奪戦が水面下で起きていることを知っている。
「で、本題に戻りますわね」
パンと軽く手を合わせて、リネットが残りの内から一つを手に取る。
「こちらはロゼッタ様の夫であるグリオール伯爵のお使いになっている専用の封蝋です。皆様、確認をお願いします」
エイデン、カイエン、シルフィア、ユエインと回されていく。
「…こちらはレモングラス…かな?私もこれに変えたいな…」
カイエンがポツリと呟いた。
「はい。グリオール伯爵。ランディ様もこちらをずっとお使いだそうです。御二方専用の特製だそうです」
「それって、この二人しか使えないって事だよね?」
エイデンが納得しながら、ユエインから戻ってきた封蝋を戻す。
「ええ、そうですわ。御二方が必ずご自身の手で封をされる時のみに使われているそうで、知っているのは執事長とロゼッタ様付きの侍女だけだそうです」
残されていた一つを手にし、シルフィアに渡していたロゼッタの物とは違う物と並べる。
「そして、問題はこちらの二つになります。一つは主の代わりに執事長が筆を取った際に使用される物。こちらもまた香りはありませんが、彼しか使わない専用の物だそうです。残りの一つは、それ以外の物が封をする時に使うようにしている物だとか……」
再びそれぞれが順番に回されていく。
「……あら?最後の物はこの前、ロゼッタから着た手紙の封蝋と同じ物のような気がするわ?」
シルフィアがそう答えると、ユエインが二つを手にして見比べ始める。
「んー……。あれ?」
近づけたり話したりしていたユエインは、突然、封蝋を指で撫で始めていた。
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