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【二部】侯爵令嬢は今日もあざやかに断罪する

6.

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「これ、何か触るとザラッとしてる?」

ユエインは指先で何度も封蝋を撫でながらそう言った。

「ザラッとしてる?」

シルフィアが指を伸ばし、彼女も封蝋を撫でた。

「…ホントですわ…」

ポカンとして撫で続ける二人に、リネットが苦笑する。

「正解です、御二方。そちらは執事長が使っている物で、果物の種子が潰された物が蝋に混ぜられてるそうですよ」

へー。と感心しながら、姉弟は仲良く撫でている。

「つまり、シルに届いていた手紙に使われていた封蝋は、伯爵家の誰かが使って出したってことかな?」

カイエンの言葉に、ピタリと指の動きが止まる。

「…ロゼッタは体調を崩して、代筆を頼んでも、必ず代筆した者の名を記してましたわ。そして、自分の署名をして、封をした物が届いてました。彼女の封蝋でないなど有り得ません!」

「…つまり、それが答えなんだろうね…」

「え?」

エイデンが肩を竦めてそう言うと、シルフィアは首を傾げた。

「誰かが勝手にロゼッタ嬢のフリをして手紙を書いたか…」

人差し指を立て、エイデンは視線をアディエルに向けながら言う。

「都合の良いように書き換えた物を送ってきたのかですわね♪」

扇で口元を隠したまま、アディエルがそう答える。

「…どういう事ですの?」

シルフィアは混乱してきた頭に手をやりながら、アディエルを見つめた。

「ふふ。実はシルフィア様に届いたこの手紙。書いたのが誰かは既に調べておりますわ。今は少ぉしばかり、追加で調査をさせております。それまでに他の事も調べたいので、御二方共、御協力下さいませね」

「「…………」」

姉弟は頭がついて来なくなり、ただ言葉を失うだけだったが、こくりと頷いた。

「…やれやれ。私のアディはしばらくシル達に付きっきりのようだ……」

これ見よがしに溜息をつきながら、カイエンはちらりと姉弟を見た。

「…ごめんなさい、お兄様…」

俯くシルフィアの頭に手を伸ばし、グシャグシャと撫で回す。

「お、お兄様っ!?」

乱れた頭に手をやり、シルフィアは涙目でカイエンを見上げる。

「…シルの大事な親友を助けたいのだろ?好きにすればいい。但し、私のアディに我儘放題は許さないよ?」

にっこりと笑いながらも、しっかりと釘を刺す兄に、シルフィアはコクコクと頷くしか無かった。

「では、アディエル様。予定通りになさいますか?」

リネットはアディエルの側に移動し、目を輝かせながら話していた。

「……エイデン兄上。宜しいのですか、あれ?」

チラリとユエインが視線を向けた先では、エイデンはテーブルに肘をつき、組んだ両手の上に額を当てていた。

「……ああ。リネットは、アディエル様のために僕の婚約者になるって言ってきたくらい、彼女を崇拝してるからね。下手に口を挟んだら、婚約破棄されるかも……」

「……さすがにそれはないのでは?」

「いーや。リネットは僕が邪魔になれば、さっさと婚約破棄して、まだ相手が決まってないダニエルに打診するだろうね。アディエル様大好き同盟なんだから…」

顔を上げずにそう答えてくるエイデンに、ユエインはかなり同情するのであったーーーー。


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