【続編完結】侯爵令嬢は今日もにこやかに断罪する

ミアキス

文字の大きさ
51 / 82
【二部】侯爵令嬢は今日もあざやかに断罪する

12.

しおりを挟む
リーゼンブルク王国、国王マクスウェルの在位二十周年の式典は、近隣諸国の王族や高位貴族を招いて、豪華絢爛に開かれた。
この式典では、王太子とその婚約者の正式な発表とお披露目もあるということで、各国は興味津々である。

王太子となるカイエンが、婚約者を唯一の妃とする為に、国法に着手するほどの令嬢となれば、見てみたくなるのが人情というものであろう。

そんな中、一人だけ考えの違う者がいた。

隣国ターラッセンの侯爵令嬢、ユリアナ・ファムである。
ゆるふわなハニーブロンドの髪をふわりと頭の上で一つに結わえて垂らし、鮮やかな緑色のベルベットのリボンを結んでいる。
忍ばせている使用人から得た情報で、己の運命の恋人であるランディの衣装に合わせて、パステルグリーンの大人しめのドレスを身にまとっている。

今日の彼は、パステルグリーンのチーフを胸のポケットにだから。

彼と並んだ自分は、誰から見ても揃えた衣装だと気づくだろう。

「やあ、ファム侯爵。久しぶりですね。ユリアナ嬢もおいででしたか…」

声をかけてきたユエインの背後には、協力者の男が今日の護衛として付いていた。

「…ご無沙汰しております、ユエイン殿下。以前は大変ご迷惑をおかけしまして、申し訳ございません…」

心の中では、彼と自分の邪魔をよくもしてくれたなと思いつつも、を考えて、グッと表情を取り繕った。

「ご令嬢には申し訳なかったが、さすがに婚約者のいる者との仲を取り持つ訳には行きませんでしたから」

にっこりと微笑んで言うユエインに、すぐ近くにあるワイングラスを手に取り、そのすました顔にひっかけてやりたくなる。

「そうそう。気持ちに区切りをお付けになりたいとの事でしたね。父君からお伺いしてます。ランディを呼びますね」

そうして、背後のもう一人に頷くと、彼は相手を呼びに離れた。

「ありがとうございます…」

ユエインが呼ぶまでもなく、ユリアナはランディが何処にいるか知っていた。
妻である女を連れ、挨拶をしている姿を見かけたからだ。
琥珀色のを身につけた女に、やはり彼に相応しいのは自分しかいないと、緩みそうになる口元を引き締めた。

「お呼びでしょうか、殿下?」

そうして聞こえてきた声に、顔を向けてユリアナは目を疑った。

彼の腕に手を添えて、憎い女が付いて来ている。それだけでも許し難いというのに、彼の胸元に視線が集中していた。
パステルグリーンのチーフが入っているはずの場所には、女のドレスの共布で作られたのであろうのチーフが入っていたのだ。

よく見てみれば、女の耳と首元を飾っているのは、ランディの瞳の色のような翡翠で、彼のカフスボタンは女の瞳と同じ淡い水色のアクアマリンだ。

おかしい。昨日、連絡を貰った時には、確かにパステルグリーンだと聞いていたのに…。

ユリアナは混乱しながらも、口元を引き攣らせながら笑みを浮かべた。

「……遅ればせながら、ご結婚おめでとうございます、グリオール伯爵…」

周りを油断させるため、言いたくもない言葉を口にして、ユリアナは目の前の女ーーロゼッタを必ず苦しめてやろうと決意した。

離れた場所から見られていることを知らないでーーーー。

しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」

歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。 「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは 泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析 能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り 続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。 婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

雪の女王を追って消えた、あんたは私と婚約してない!

さんけい
ファンタジー
「雪の女王」を追って村から消えたエイナル。 「君は僕の足かせだ?」ふざけんな、私はあんたの婚約者じゃない!

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

その婚約破棄、卒業式では受け付けておりません

ファンタジー
卒業パーティの最中、第一王子アデルは突如として婚約者クラリッサに婚約破棄を宣言する。 いわゆる『公開断罪』のはずだった。 しかし、周囲は談笑を続け、誰一人としてその茶番に付き合おうとしない。 困惑する王子と令嬢たちの前に立ったのは……。 ※複数のサイトに投稿しています。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

処理中です...