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【二部】侯爵令嬢は今日もあざやかに断罪する

16.

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「……お前ら、もしかして…」

ラクトの口の端が引き攣り始める。

「ユリアナ嬢はラクト好みの容姿だよね」

カイエンはにっこり笑ってそう言った。

「それに性格も甘やかされまくっていらっしゃったようですから我儘で、…お好きでしょう?叩き直すの♪」

アディエルも両手を軽く顔の前で合わせて続けた。

「今なら根性、ご自分好みに調教出来ますわよ♡」

その発言にファム侯爵親子はギョッとした。

特に婚約者にと選んだ父親は、甘やかしすぎた娘を辺境に嫁がせれば、我儘を我慢するようになるだろうとの考えだったので、予想と違うことに言葉を無くした。

「…いやにしつこく招いてたと思ってたが、そういう理由わけか……」

「ターラッセンには、ラクト殿の返答次第で、こちらの要望が変わるかな?」

カイエンの言葉に、ラクトは舌打ちをしながら、ユリアナの目の前で膝をついた。

「…ファム侯爵。俺との婚約が破棄された場合、ご令嬢はどうなさる?」

ラクトの言葉に、ファム侯爵はチラリと娘に視線を向けた。

「…どうもこうもございません。政略結婚の意味も分からず、我儘を通し、人を貶めようとするような娘を、どこに嫁がせれましょうか。しかも隣国でのこのような真似…。私は爵位を息子に譲り、娘は西にでも入れます…」

「っ!お父様、あんまりですっ!!」

ユリアナが真っ青な顔で叫ぶ。
隣国で西の修道院と呼ばれる場所は、貴族としての振る舞いの出来ぬ女達を閉じ込める場所と言われて有名な場所だ。入れば死んでも出られないことで有名である。
しかも自給自足するしかない場所なのだ。
なぜなら周囲は海に囲まれ、週に一度だけ船が物資を持って訪れるだけ。
孤島にある修道院である。そして、他に何も無いし、誰もいない。
小舟を手に入れて逃げ出そうにも、潮の流れは複雑で、素人が海に出れば確実に海の藻屑となってしまう。
別名を『貴婦人の墓場』と呼ばれる修道院だ。

「選ばせてやろう、ユリアナ嬢。このまま俺の婚約者となるか、修道院に行くか。どちらか一つだ!」

ユリアナの顎を掴んで持ち上げ、ラクトがそう言った。

「………こ、婚約いたします……」

瞼を閉じて涙を流しながら、ユリアナは婚約することを選んだ。
贅沢になれた自分が、西の修道院で生きていけるはずがないのだ。
それならばまだ辺境伯に嫁いだ方がいいとの判断だった。

「そういうことだ、二人とも!」

ラクトは立ち上がると、アディエルとカイエンに視線を向けた。

「ええ。おめでとうございます、ラクト様♪」

「じゃあ、これ。私達からのお祝いだ」

カイエンから差し出された封筒。そこにある封蝋を確認し、ラクトはガクリと床に倒れ込んでいたーーーー。
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