双子の姉は『勇者』ですが、弟の僕は『聖女』です。

ミアキス

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第五章 そして新たな神話が生まれた

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[御影視点]

    突然飛びかかってきた脂肪の塊を、殴り倒そうと右手を構えると、握り慣れた物の感触に思いっきり振った。

    バシコーン!

    聞き慣れた小気味よい音に、絶対にこれチュンタの仕事だと確信しました。後でシメル……。

    それにしても予想はしていたけど、全く反省する気配なかったわね。
    反省するようなら、一定期間を過ぎれば、『無職』になる『日雇職フリーター』にしておく予定だったけど、反省の色がないなら残りは一択となる。

「…反省する気はないようですね。では、貴方には特別にこれを与えましょう…。『自宅警備員ニート』」

「ぶっ」

    誰かが噴き出すのが聞こえたけど、これは例の彼女だろう。向こうの世界とはまあ意味が異なるんだけど、アッキー監修の新しく登録された・・・・・『職業』である。

    これになると、出かけることが出来なくなる。ついでに、他人との接触も限られた人物以外は出来なくなるので、自分のことも自分でしなければ、破滅のみ。

    地位に胡座かいて好き勝手してきたのだ。残り少ない人生、人様の運命を好き勝手に弄んできた分、ツケを払ってもらおうじゃないの。

「……ひぃぃ…」

   キョロキョロと周りを見渡し、ガクガクと震えだしたかと思うと、必死でこの場を離れようと、転がりながら逃げてった。追加効果で《人見知り》が発動してるので、人の視線も恐怖の対象である。
    これから神殿の自室に閉じこもるつもりなんだろう。
    もっとも、閉じこもると同時に、部屋ごと別の場所に転移させられるんだけどね。


※※※※※※※※

[エレオノール視点]

    大神殿長がいなくなると、女神様はレオに近寄って行った。
    話の内容は聞こえないけど、レオが女神様の持ち物を指差して笑ってた。
    白くて長いけど剣でもないし、あれは神様達の武器かな?
    ふと女神様が苦笑すると、それをレオに手渡していた。

「いいんですか?」

    受け取ったレオの声は弾んでいて、すごく喜んでるのが分かった。

「そうそう壊れないとは思うけど、本当にこれでいいの?」

「問題ないです!」

    満足気に答えるレオに優しく笑うと、女神様はレン兄様を見た。

「こちらのせいで、大事な日を台無しにしてしまいましたね…」

「いえ。創造神様のお心に感謝致しております…」

    レン兄様が跪いて頭を下げる背後では、サラ姉様達も跪いていました。

「…王太子アストル・ラース・ヒューゲル。その婚約者アローリア・ネイリ・スタリー。貴方達には私のモノで申し訳ありませんが、《祝福》を……」

    その言葉と共に、二人の身体を淡い光が包み、体内に消えていった。

「ああ、忘れる所でした…。大神官…」

「は、ははっ!」

    突然、指名された大神官様が女神様の前に額づきました。

「次の大神殿長は貴方を望みます。かの神より《神託オラクル》を授けるとのことです……」

   女神様の手が、大神官様の頭上に動くと、掌から金色の粉が降り注ぎました。

「……有難く……」

    顔を上げながらも目を伏せる大神官様に、女神様は満足気に頷くとこちらを見ました。

「では…」

   その言葉の後に、口をパクパクと動かすと、上から降り注ぐ金色の光に包まれるなり、姿が消えました。

    ……ところで、さっきの声にしなかった言葉。口の動きで「後でね」と見えたのは、気の所為なんだろうか…………。






   
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