双子の姉は『勇者』ですが、弟の僕は『聖女』です。

ミアキス

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第七章 神獣様と一緒!

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[レオノーラ視点]

   死屍累々………。

    三日間の討伐から帰ってきた私達の目の前の光景を見て、私の頭に浮かんだ言葉がそれだ。

「……お帰りなさいませ……」

    何とも言えない顔で迎えてくれるフレイアだけが元気そうである。

「……フレイア。何があったら、女性だけが倒れる事態になるんだ?」

    エレがそういうのも当然だろう。

    目の前に広がる光景は、女性限定で奇病でも流行ったんじゃないかというくらいなのだ。
    あちこちに張られた簡易テントの中には、貴族女性から洗濯メイドまで、様々な職種の年頃の女性達(一部それなりのお年の女性も見える)が呻きながら横たわっていたり、座り込んだりしているのだから。

「………いったい何をしたんだ?」

   オリクスの声にそちらを向けば、侍女らしき女性に話しかけるオリクスと、呆れ顔のアルテがいた。

「……誰?」

「オリクス殿の奥方で、ウルネ殿です。王太后様付の侍女をされてます…」

    グランの言葉に納得する。納得したものの、何故そこにいるのかは疑問だけどね。

「疫病ですか?」

   近くを通った神官にエレが声をかける。

「っ!エレ様っ!!…いえ、これは疫病などではなくですね…」

   エレの問いかけに、神官はどう言えば良いのか悩んでいるようだった。

「………単なる筋肉痛だ……」

『陛下っ!!』

   私とエレ以外は突然現れたレン兄様に跪く。

「筋肉痛?この人数が、同時期に?」

「うむ。どうやら、エマが原因らしくてな。サラが現在叱っている……」

    サラ姉様の説教食らってるのか。どんだけヤバいことしたんだろ………。

    サラ姉様は普段優しいだけに、怒らせると怖いし、説教が長いのだ。

「レオのような胸になるのだと、エマが木剣で素振り千回を始めてな。それを一部の若い娘達が真似始めた……」

「……なぜ私………」

   留守で不在の私を巻き込まないでいただきたい。

   そうして、レン兄様が説明を始め、私は自分は悪くないという主張をした。


※※※※※※※※※※
[レンドル視点]

「レオ姉様のようになるのですわ!」

   そう朝食の席で宣言したエマは、その後、騎士達の訓練所にて素振り千回を始めた。
   終わる頃には何故か、若い娘達が混ざっていて驚いた。

「…め、目指せ、レオ姉様ですわ……」

    翌日、目元を少し赤くしてそう言ったエマは、馬場へ向かったのだが、夕方近くに馬丁達から上がった嘆願書に慌てて駆けつけると、馬場の馬が疲労困憊状態になっていた。
    さらに疲労困憊した馬の周りには、昨日の娘達の他にも妙齢のご婦人が数人。産まれたての仔馬のように足をプルプルさせながら立っていた。

    何故こんなことになっているのかと、確認しようにもその場にいる者達は、息も絶え絶えで……。

「………フレイア。何があった……」

   その中を一人、水差しを持って走っているフレイアに声をかけた。

「陛下っ!それが…」
 
    理由を聞いてしまった私は、目眩がした。

    レオを理想の女性としたエマが、レオのような身体付きになるために始めた訓練(?)が、同じくレオの体型に憧れた娘達にまで広まり、この事態になったのだというではないかっ!

    初日はサラシをきつく巻いた上での、素振り千回。
    これは胸を大きくするために行ったらしい。

    それで育つなら、騎士達はみな巨乳ではないのか?

    そして今日の乗馬は、討伐の際、騎馬で出ることの多かったレオの腰の細さと脚のしなやかさが得られるのではというエマの行動に、前日の賛同者が集い、さらには腰が細くなると聞きつけた妙齢のご婦人が加わり、馬丁達の制止も虚しく、馬達はひっきりなしに走らせ続けられたらしい。

    ……そなたらの腰より先に馬が痩せてるではないか……。

   そして、翌日から今日まで、筋肉痛で動けなくなった者達多数。
    仕事を休めずに働いてる最中に、激痛で動けなくなったメイド達。
    今日も何かあるのではと、王宮を訪れた令嬢達も我慢の限界が来たのか廊下のあちらこちらで座り込んでいた。

    余りの多さと何とも言えない理由に、サラが激怒した。

「自業自得というものです!《回復ヒール》やポーションの使用は許しません!!」

   そう全員に伝えるなり、原因であるエマだけは、さっさと完治して巻き込んだ者達の手当を手伝うようにと、マッサージによる治療を受けさせた。

「いやぁっ!痛い痛い痛ーいぃぃっ!!」
 
「申し訳ございません。王妃様からのお言いつけでございますので………」
   
    痛がるエマを押さえつけ、年配のベテラン侍女達がマッサージを施していく。

    これに懲りて大人しくなれば良いのだが………。


    ……………無理だろうなぁ………………。


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