双子の姉は『勇者』ですが、弟の僕は『聖女』です。

ミアキス

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第八章 魔導具の聖地?

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「っふ……。ぶぶっ!!」

    ガンツ会頭が魔導具の仕入れに行ってる間は自由時間となるため、三人で魔導具の店を覗いていたところ、レオノーラが口を押さえては肩を震わせることが増えた。

「……ノーラ?どうした?」

    痙攣してるかのようにビクつきだすと、アルテが心配になったのか声をかける。

「ふえ?あ、うん…。ちょっと……」

    笑いをこらえていたらしく、目尻に涙が滲んでいた。

    魔導具の何が面白かったんだ?

    クルトが首を傾げていると、同じようにアルテも首を傾げていた。

「〘呼んでるくん〙がどうかしたのか?」

    とある細長い棒より少し太めの魔導具をアルテが指差す。

「そう言えば、その魔導具はこちらの〘呼ばれたさん〙と対になってましたね」

    同じ形で色違いのそれをクルトが見る。

「…ネーミング………」

   ヒーヒーと涙目になり、とうとう彼女はお腹を抱えてそこにしゃがみこんでしまった。

「お。〘お待たせくん〙の新しいの出てんな!」

「ふえ?〘お待たせくん〙?…って、ひ、ぐっ…」

    何気に手に取ったアルテの魔導具を見て、レオノーラはもう笑いが止められない。だって、何が転がっても笑ってしまうお年頃だから。

    あちらでは〘電話〙と呼ばれていた物が、〘呼んでるくん〙と〘呼ばれたさん〙などという名前の魔導具に。
    〘砂時計〙は〘お待たせくん〙などと名前が付いているのだ。

    いや、これ。御影さんと話したい……っ!!

    次々と出てくる品と名前の違いに、ひたすら笑いの発作と戦っている。

    やばい…。これ、戦闘よりお腹にくる…………。

    笑い通しで腹筋が攣りそうな気配に、レオノーラ、ピンチであった。

「あ。隣の店は調理関係の魔導具店みたいですね」

    アルテに腕を引かれながら、クルトの後に続いて店に入る。

「ゲフッ!」

   入るなり目に付いた商品名に、思いっきり噎せる。

「「………ノーラ……」」

「いや、だって……」

    正直、腹筋が痛くて勘弁して欲しいのである。それほど、商品名が攻撃してくるのだ。

    〘愛の立ち回り〙って……。立ち回り………。

    ちなみにその魔導具は、あちらの世界では〘ハンドミキサー〙と呼ばれている。

    ここまで来れば、好奇心が買ってしまい、笑いと戦いながらも店内の商品を見ていく。

    〘愛情の重さ〙=〘キッチンスケール〙

    〘聖なる愛〙=〘食洗機〙 

    どうやらこの店は〘愛〙という言葉を好んでいるらしい。

「基準が分かんないよねぇ……」

    〘キッチンスケール〙はまだ分かるが、〘食洗機〙の方は意味が分からない。
    笑いながらも悩んでいると、〘愛情の重さ〙をクルトが購入していた。

「……何に使うの?」

「え?ああ、薬を作るのに便利かと思いまして。これなら、在庫の管理も正確性が増すでしょう?」

    クルトの言葉に納得して店を出ると、先程の店で何かを買ったらしいアルテが戻ってきた。

「…アルテは何買ったの?」

 「ん?オレは母さんと自分用で〘お待たせくん〙買ってきた」

    使い方を聞けば、必要な時間分の魔力を注ぐと、上の部分に魔力が溢れ、下の部分に落ちきればパッと光るらしい。

「光るんだ…。側に居ないと使えなくない?音の方がよくない?」

   好きな時間を設定できるというなら、〘砂時計〙より〘キッチンタイマー〙かな?などと思いつつ、口にしたレオノーラは、背後から感じた視線にバッと振り返った。

「……素晴らしいっ!そうです!音を出せれるようにすれば良かったんです!!」

    感動に震えているらしい男は、レオノーラの前まで来ると、深々と頭を下げた。

「その案!お売りいただきたいっ!!」

「え?別に気にしないから、作るなら勝手にどうぞ……」

「いえいえ。そんなわけにはいきません!こんな素晴らしい改良案をタダでなどと…」

「…あー。じゃあ、新しく出来たら、それを三つ譲ってください」

   しばらく押し問答になったが、最終的にレオノーラの希望を押し通し、後日、改良品がガンツ商会に届けられることになったーーーー。



    



  



    
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