97 / 110
第十章 他国訪問〔ユーディアナ〕
4
しおりを挟む
[アルテ視点]
「『聖女』様のお部屋は必ず警備の方が付いていてください…」
オレ達を部屋に案内した侍女殿が、ポツリとそう呟くのが聞こえた瞬間、オレの手は彼女の腕を掴んでいた。
「……どういう意味ですかね?」
気まずそうな顔が、何だか母に似ている女性だった。
「…この国の恋愛事情をご存知ないのですか?」
下を向いたまま語る姿は、生国を嫌っていた母の姿と重なる。
「……この国の恋愛事情が合いませんか?」
「っ!?」
オレの言葉に驚いて見上げてきた顔は、やはり母に近い顔立ちで、潤んだ瞳に少しドキッとした。
「…ご存知なのですか?私は叔父と姪の関係だった両親から生まれたのですが、今は祖父から私に関係を迫られていて、城に逃げているのですが…」
「…城も一方的に迫ってくる連中が多くて意味が無い…と…」
オレの言葉にこくりと頷く。
「これまでなら、異性だけに気をつけていれば良かったのですが、今代の陛下は同性婚も認められているため、同性といえど気を許せないのです…」
つまり、油断すれば老若男女問わず、襲われる可能性が誰にでもあると言う訳だよな……。
頭に浮かぶのは、性別詐称時代から襲われまくるエレの姿と、追いかけ回されるレオの姿。
レオは殿下いるから大丈夫だろうけど、エレは確実に狙われそうだよなぁ……。
そもそも今、忠告されたとこだ。
「…国外に出ないのですか?」
「出たくとも出れないのです。国外に嫁ぐ相手がいると認められなくては、国境で捕まります……」
「……は?捕まる?」
「捕まるのです。国民の義務の放棄だという理由で……」
何だ、それ。訳分からん……。
「私の事よりも、『聖女』様です!第二王子殿下が、今夜は『聖女』様を伽の相手にすると仰っていたそうなのです」
「『聖女』ですが、性別は男ですよ?」
「ですから、現在の我が国は同性婚も認められてます!まして、第二王子殿下と第一王女殿下、は美しければどちらでもいいと言う方々なのですっ!!」
そこから、実は国外の人間を何人相手にするかを競っている連中がいるとか、最近は寝室に媚薬香を焚いて忍び込んで関係を持つのが多いとか、諸々の情報を貰ったわけで。
「…ところで、親戚に国外に嫁いだ女性はいませんか?」
話してるとどうしても母と重なる部分があって、思わず尋ねてみた。
「……おります。母の姉に当たる方が…、伯父に関係を迫られて国外へ嫁いだという話しなら聞いたことがありますけど?」
「……その女性と貴女の母君は父親が違うとかではないですか?」
「…そうですけれど、何故そのことを?」
……マジか。彼女、オレの従妹ですね。
顔立ちは母に似てますが、声や話し方。仕草なんかがモロにオレ好み。これはある意味チャンスです。
「どうやらオレは貴女の従兄になるようだ。従兄のオレでよければ、協力しますよ♪」
「………」
驚いたのか、彼女はキョトンとしてオレの顔を見ています。
「どうします?」
「え?は、はい?協力…ですか?」
「そ。オレに嫁ぎませんか?一目惚れです♪」
「~~~っ!!」
ボンと音が聞こえそうなくらい真っ赤になって、アタフタしてるのがまた可愛い!
「もし良ければ、他にも貴女と同じ方がいるなら、うちの連中も紹介しますよ。オレ達は何人も互いに相手がいるのはお断りな連中ばかりなので…」
「…いいのですか?」
そう言って彼女が何人かを連れて来る間に、仲間達に説明する。
少しの間、話しただけで、オレ以外の何人かも無事に相手を決めてしまい、彼女達はオレ達が討伐してる間に必要な手続きの用意をすることになり、話がつく頃には第二王子がエレのとこに向かう時間が来ていると知らされ、慌ててエレの元に駆けつけたのは、エレには内緒だーーーー。
「『聖女』様のお部屋は必ず警備の方が付いていてください…」
オレ達を部屋に案内した侍女殿が、ポツリとそう呟くのが聞こえた瞬間、オレの手は彼女の腕を掴んでいた。
「……どういう意味ですかね?」
気まずそうな顔が、何だか母に似ている女性だった。
「…この国の恋愛事情をご存知ないのですか?」
下を向いたまま語る姿は、生国を嫌っていた母の姿と重なる。
「……この国の恋愛事情が合いませんか?」
「っ!?」
オレの言葉に驚いて見上げてきた顔は、やはり母に近い顔立ちで、潤んだ瞳に少しドキッとした。
「…ご存知なのですか?私は叔父と姪の関係だった両親から生まれたのですが、今は祖父から私に関係を迫られていて、城に逃げているのですが…」
「…城も一方的に迫ってくる連中が多くて意味が無い…と…」
オレの言葉にこくりと頷く。
「これまでなら、異性だけに気をつけていれば良かったのですが、今代の陛下は同性婚も認められているため、同性といえど気を許せないのです…」
つまり、油断すれば老若男女問わず、襲われる可能性が誰にでもあると言う訳だよな……。
頭に浮かぶのは、性別詐称時代から襲われまくるエレの姿と、追いかけ回されるレオの姿。
レオは殿下いるから大丈夫だろうけど、エレは確実に狙われそうだよなぁ……。
そもそも今、忠告されたとこだ。
「…国外に出ないのですか?」
「出たくとも出れないのです。国外に嫁ぐ相手がいると認められなくては、国境で捕まります……」
「……は?捕まる?」
「捕まるのです。国民の義務の放棄だという理由で……」
何だ、それ。訳分からん……。
「私の事よりも、『聖女』様です!第二王子殿下が、今夜は『聖女』様を伽の相手にすると仰っていたそうなのです」
「『聖女』ですが、性別は男ですよ?」
「ですから、現在の我が国は同性婚も認められてます!まして、第二王子殿下と第一王女殿下、は美しければどちらでもいいと言う方々なのですっ!!」
そこから、実は国外の人間を何人相手にするかを競っている連中がいるとか、最近は寝室に媚薬香を焚いて忍び込んで関係を持つのが多いとか、諸々の情報を貰ったわけで。
「…ところで、親戚に国外に嫁いだ女性はいませんか?」
話してるとどうしても母と重なる部分があって、思わず尋ねてみた。
「……おります。母の姉に当たる方が…、伯父に関係を迫られて国外へ嫁いだという話しなら聞いたことがありますけど?」
「……その女性と貴女の母君は父親が違うとかではないですか?」
「…そうですけれど、何故そのことを?」
……マジか。彼女、オレの従妹ですね。
顔立ちは母に似てますが、声や話し方。仕草なんかがモロにオレ好み。これはある意味チャンスです。
「どうやらオレは貴女の従兄になるようだ。従兄のオレでよければ、協力しますよ♪」
「………」
驚いたのか、彼女はキョトンとしてオレの顔を見ています。
「どうします?」
「え?は、はい?協力…ですか?」
「そ。オレに嫁ぎませんか?一目惚れです♪」
「~~~っ!!」
ボンと音が聞こえそうなくらい真っ赤になって、アタフタしてるのがまた可愛い!
「もし良ければ、他にも貴女と同じ方がいるなら、うちの連中も紹介しますよ。オレ達は何人も互いに相手がいるのはお断りな連中ばかりなので…」
「…いいのですか?」
そう言って彼女が何人かを連れて来る間に、仲間達に説明する。
少しの間、話しただけで、オレ以外の何人かも無事に相手を決めてしまい、彼女達はオレ達が討伐してる間に必要な手続きの用意をすることになり、話がつく頃には第二王子がエレのとこに向かう時間が来ていると知らされ、慌ててエレの元に駆けつけたのは、エレには内緒だーーーー。
10
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる