双子の姉は『勇者』ですが、弟の僕は『聖女』です。

ミアキス

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第十章 他国訪問〔ユーディアナ〕

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[ガディル視点]


    人の番に兄妹揃って夜這いに来るという飛んでもない王族を、朝になるなり母親である女王に突き出した。

「…何じゃ。同意を取れなんだのかえ?」

「母上ぇ、媚薬香が無効化されちゃったぁ♪」

「うむ。そもそもガディル殿が床に居ては、我らは手出しが出来ぬ…」

    ……こいつら、全然反省の色がないな……。

「…………」

    レオは不気味な生き物を見るかのように、俺の後ろから三人を見ている。

    それもそうだろう。番の俺の目の前で、

「んもう!いいですわ!いっそ四人で楽しみましょうよ、『勇者』様♪」

「ふむ。それは良い考えです…」

   などと、服を脱ぎながら言い出したのだ。

「ひっ…」

    怯えたレオは、彼らを弾く《障壁バリア》を張って、始終俺の背中に隠れていた。
    公にはこのユーディアナは、【恋愛事に寛容な国】などと言われているが、俺に言わせれば【下半身に節操のない国】でしかない。

「ユーディアナの女王よ。『勇者これ』は俺の番だと知ったうえでのこの所業。我が魔族領と事を構える気と受け取るのだが?」

    番至上主義の魔族領だ。しかも王族の番を害そうなどと、民達が許すはずもない。まあ、番である俺自身も許す気は無い。

「ふむ。魔族の御仁は若いのぉ。妾の子らでは満足出来ぬならば、妾…「申し訳ありませんが、討伐に向かう時間でございますっ!!」」

    何を考えたのかーいや、想像はつくが…ー、衣を肩から滑り落とそうとした女王の言葉を遮りながら、エレ達が飛び込んできた。

「行くよ、レオ!女王陛下。魔物が増えそうな気配がしております!我々は急ぎ討伐に向かいますので、申し訳ありませんが、これで失礼しますっ!!」

「さあ、ガディル殿下もご一緒にっ!」

    レオはエレに、俺はアルテに腕を引かれて、その場から連れ出された。

「………何かあったの?」

   討伐に向かうはずの騎士達の何人かは、目が血走っていたので、レオが恐る恐る尋ねていた。

「……今は聞くな…」
「後でな……」

    殺気立つ彼らに何も言えなくなったレオは、俺やエレと共に馬車に乗り込んだ。

「……レオは昨日、大丈夫だった?」

「……エレは誰が来たの?」

    しばらくすると、エレがそう尋ねてきたのに対して、レオは逆に聞き返した。

「…第二王子がきた……」

    答えるエレの瞳は死んでいる。気持ちは分かる!
    第二王子は筋肉の目立つ脳筋だ。あんなのに狙われたら、恐怖でしかないだろう。

「うちは第一王子と第一王女がきて、ガディルいるの見たら、四人でしようと誘われた……」

    双子は頭を抱えて、大きな溜息をついた。

「あのね、レオ。実はアルテと他の騎士が数人、お嫁さん連れて帰ることになったから…」

「え?食べられた?食べられちゃったの!?」

   気持ちは分かるが、その表現は如何なものか……。

「違う違う。逆に食べられそうになってるのを助けてくれた人達でね。この国に馴染めないから国を出たかったんだって。でも、この国って特別な許可証がないと、国外出たら捕まるんだって。国外に嫁ぐしか方法ないんだって…」

「え?結婚詐欺?結婚詐欺で連れてくの??」

   その表現もどうかと思うのだが……。

「いや、それが。結構、お互いに意気投合しちゃったみたいで、そのまま結婚するみたいだよ…」

「え?そんなに簡単にできるの?」

「書類揃えて出すだけだってさ……。後は国外の相手確認して、許可証が出るらしいよ…」

「……この国、本当に大丈夫なの?」

    すごいな、レオ。それは多分、この国以外の王族みんなが思ってることなんだぞ………。

    口に出したら、何させられるか分からないから、誰も言わないらしいけどなーーーー。






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