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第十一章 家族は家族
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[レオノーラ視点]
ぶっちゃけた話。私がこの世界に来たのは、自殺を考えてる時に神様に声をかけられ、返事するより前に一方的にあちらから連れてこられたからだ。
何でそんなことを考えていたかと聞かれると、なんてことは無い。
単に自分の居場所がなく、存在も空気にされてたからだ。
「ほんっと、あんたって子はなんでお父さんに似たのかしら……」
祖父を嫌っていた母は、生まれた時から祖父に似た顔立ちの私を嫌って、母乳すら飲ませなかったくらい、私に手をかけなかった。
「ムカつくのよ、『いい子ちゃん』。目障りだから視界に入んないでくれる?」
「お前さぁ。自分だけ可愛がってもらおうと『いい子』ぶってんじゃねえよ…。うっぜぇっ!」
少しでも両親の視線を向けて欲しくて、言うことを聞いていれば兄姉には嫌われた。
「……」
母からも兄姉からも煙たがられてる私を、父はチラリと見るだけだ。
そこにいるけど、いるだけの私は、未成年の身では育ててもらうしかなく、そうなると揉め事を起こさぬように学校では過ごすしかない。
ほどほどの成績。問題のない素行。バイトの許可はもらえず、自由になるお金もそんなにないので、付き合いは悪い。
「楠木さんって、『お堅い』よね?ちょっとぐらいアタシらに付き合ってもいいんじゃない?」
「はあ?提出物?んなもん、知るかよ!『真面目』ちゃん、おれの分もやってくんね?」
周りはこっちの都合なんかお構い無しで、こうと決めつけるとそれを譲らない。
気に入らないことは全部私のせいにされてくる。
何をしてもしなくても、自分という存在を認めてもらえない日々。
『普通』であることすら面倒になってきたある日。
ふと顔を上げた向こうに見える青い海原に目を奪われ、防波堤に座って無心で眺めてた。
『家族』から『家族』として扱われていない私が、他人との関わりをどうすればいいのか分かる訳もなく。
「………疲れたなぁ…」
考えることも、望むことも、生きることにも疲れていた。
「貴女をスカウトに来ました♪」
何も考えずに、目の前の風景に溶け込もうとしていた時、バカみたいに明るい声で声をかけられ、手をさしのべられたあの日。
私は《異世界転生》という最後の賭けに出たのだ。
「ノーラ、お母さんのとこに行こう!」
生まれ変わった私は、前世の記憶があるせいか、両親との距離感を測れずに戸惑っていたけど、そんな時は必ずエレが声をかけ、手を引いてくれた。
両親も私の様子に戸惑いながらも、エレと同じように接してくれた。
少しずつ。本当に少しずつ、家族の愛情を受け取ることを覚えながら、過ごしていて忘れていたのだ。
自分達が『勇者』と『聖女』である故に、家族と引き離されるということをーーーー。
「ノーラ……。女の子のあなたが『勇者』だなんて…。無茶をしないでね。辛ければ戻ってきていいの。あなたもノールも私達の大事な子供なのだからね」
「……お母さん……」
王都に向かう前日の夜。そう言って、母は私を抱きしめて眠った。
嬉しいのに、哀しい。初めての感覚。
それでも、それは確かに私自身の感情で、産まれる前から諦めていたものを手に入れた喜びでもあった。
「……魔族と結婚しますなんて、どんな顔されるんだろ…」
寿命も変わってしまったから、エレのように年をとることはなくなった。
今はまだ大丈夫でも、年をとることのない我が子に、どんなことを思うのだろうか……。
久しぶりに会える両親に、嬉しい気持ちと同じくらい、不安が共に付いてくる。
泊まった宿の部屋の窓から夜空を見上げ、ただひたすらに嫌われないように願っていることなんて、誰にも分からないだろうとずっとそこで過ごしたーーーー。
ぶっちゃけた話。私がこの世界に来たのは、自殺を考えてる時に神様に声をかけられ、返事するより前に一方的にあちらから連れてこられたからだ。
何でそんなことを考えていたかと聞かれると、なんてことは無い。
単に自分の居場所がなく、存在も空気にされてたからだ。
「ほんっと、あんたって子はなんでお父さんに似たのかしら……」
祖父を嫌っていた母は、生まれた時から祖父に似た顔立ちの私を嫌って、母乳すら飲ませなかったくらい、私に手をかけなかった。
「ムカつくのよ、『いい子ちゃん』。目障りだから視界に入んないでくれる?」
「お前さぁ。自分だけ可愛がってもらおうと『いい子』ぶってんじゃねえよ…。うっぜぇっ!」
少しでも両親の視線を向けて欲しくて、言うことを聞いていれば兄姉には嫌われた。
「……」
母からも兄姉からも煙たがられてる私を、父はチラリと見るだけだ。
そこにいるけど、いるだけの私は、未成年の身では育ててもらうしかなく、そうなると揉め事を起こさぬように学校では過ごすしかない。
ほどほどの成績。問題のない素行。バイトの許可はもらえず、自由になるお金もそんなにないので、付き合いは悪い。
「楠木さんって、『お堅い』よね?ちょっとぐらいアタシらに付き合ってもいいんじゃない?」
「はあ?提出物?んなもん、知るかよ!『真面目』ちゃん、おれの分もやってくんね?」
周りはこっちの都合なんかお構い無しで、こうと決めつけるとそれを譲らない。
気に入らないことは全部私のせいにされてくる。
何をしてもしなくても、自分という存在を認めてもらえない日々。
『普通』であることすら面倒になってきたある日。
ふと顔を上げた向こうに見える青い海原に目を奪われ、防波堤に座って無心で眺めてた。
『家族』から『家族』として扱われていない私が、他人との関わりをどうすればいいのか分かる訳もなく。
「………疲れたなぁ…」
考えることも、望むことも、生きることにも疲れていた。
「貴女をスカウトに来ました♪」
何も考えずに、目の前の風景に溶け込もうとしていた時、バカみたいに明るい声で声をかけられ、手をさしのべられたあの日。
私は《異世界転生》という最後の賭けに出たのだ。
「ノーラ、お母さんのとこに行こう!」
生まれ変わった私は、前世の記憶があるせいか、両親との距離感を測れずに戸惑っていたけど、そんな時は必ずエレが声をかけ、手を引いてくれた。
両親も私の様子に戸惑いながらも、エレと同じように接してくれた。
少しずつ。本当に少しずつ、家族の愛情を受け取ることを覚えながら、過ごしていて忘れていたのだ。
自分達が『勇者』と『聖女』である故に、家族と引き離されるということをーーーー。
「ノーラ……。女の子のあなたが『勇者』だなんて…。無茶をしないでね。辛ければ戻ってきていいの。あなたもノールも私達の大事な子供なのだからね」
「……お母さん……」
王都に向かう前日の夜。そう言って、母は私を抱きしめて眠った。
嬉しいのに、哀しい。初めての感覚。
それでも、それは確かに私自身の感情で、産まれる前から諦めていたものを手に入れた喜びでもあった。
「……魔族と結婚しますなんて、どんな顔されるんだろ…」
寿命も変わってしまったから、エレのように年をとることはなくなった。
今はまだ大丈夫でも、年をとることのない我が子に、どんなことを思うのだろうか……。
久しぶりに会える両親に、嬉しい気持ちと同じくらい、不安が共に付いてくる。
泊まった宿の部屋の窓から夜空を見上げ、ただひたすらに嫌われないように願っていることなんて、誰にも分からないだろうとずっとそこで過ごしたーーーー。
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