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第一章 侯爵家は混乱する
護衛メイドは溜息をつく
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世界樹グローシアの根元には様々な種族がそれぞれの場所で栄えている。
✰聖王国グランラディア。
✰獣王国エランディア。
✰精霊国エスタルディア。
✰魔王国ディクルディア。
✰神聖国ブランディア。
✰商業国家マーケディア。
✰工業公国クロスディア。
✰医学連合国ナースディア。
これらの国が存在する世界樹グローシアに支えられた世界をアグローシアと言う。
人族の多い国ーー聖王国グランディア。
その国の貴族筆頭侯爵・中央侯グランディバルカス家に待望の嫡男が生まれた。
母親譲りの黒髪に、グランディバルカス家の直系血筋の証たる紫水晶の瞳を持つ赤子は、
エヴァン・マリウス・ルクセン・グランディバルカス
と名付けられた。
喜び溢れる侯爵家。だがそれはすぐに飛んでもない騒ぎの続く日々と化した。
産後の肥立ちの悪い侯爵夫人のためにすぐに乳母が手配され、エヴァンを抱き上げて乳を含ませた乳母が、目を開けたエヴァンの顔を覗き込んだ瞬間だった。
「あはぁん♡」
突然、甘ったるい声を上げた乳母が、乳を吸っているエヴァンの頭を更に胸に押し付けるように抱きしめたのだ。
これには側にいたメイド達も驚いた。
「いっぱい吸ってぇ♡若様、もっとぉ♡」
恍惚とした表情で乳児を乳に押し付けて叫ぶ乳母。
その胸元では恐らく呼吸困難になりつつあるエヴァンの体がビクビクと震えていた。
慌ててメイド達が乳母から引き離すも、乳母は髪を振り乱しながら、エヴァンを取り返そうと暴れる。
「なんてことでしょう?若様。若様は私がちゃんとお守りしま……」
ケホンケホンと噎せるエヴァンの首を支えたメイドがエヴァンを見た。
パッチリと潤んだ紫水晶の瞳が目に入った。
「はあぁん♡若様ぁ、私がお守りしますわぁ♡」
まだ首のすわらない赤子を、しっかりと頬ずりするメイド。そのメイドに乳母が激怒した。
「わたくしの若様をお返しっ!」
「はん!若様は若い私をお望みですわ!」
産まれたばかりの赤子を取り合う争いが始まり、慌てて残り二人のメイドが割って入って、エヴァンを取り上げた。
「「若様を返せっ!!」」
手を伸ばす二人に、手隙のメイドが瞬時に鳩尾を打って意識を刈り取った。
「……一体、何があったの?フェリテ、若様は大丈夫だった?」
振り返ったメイドはフェリテの様子がおかしい事に気がついた。
体をブルブル震わせながら、必死で赤子を床に置こうとするのに手放すことができないのだ。
「……ラフィン。ダメ……。私の意識も奪って、このままだと私も危ない……。若様には【スキル封じ】か【呪い避け】の魔道具を……」
その言葉を聞くなり、ラフィンと呼ばれたメイドはフェリテの意識を奪う。
意識を失う瞬間、フェリテはほっと息を吐き出しながら、優しく床にエヴァンを下ろしながら倒れ込んだ。
「………っ!」
床に寝かされたエヴァンは泣きながら、ラフィンの方を向こうとした。
視線が合う前に、ラフィンは遠く離れたドアまで飛び退く。
「………【鑑定】」
産まれたばかりの赤子なら、これだけ離れれば姿を把握できないとふんで、彼女は己のスキルを使った。
【人物名】エヴァン・マリウス・ルクセン・グランディバルカス
【年齢】生後0日
【性別】男
【加護スキル】《魅力》レベルMAX
「……嘘でしょ?加護スキルMAXで産まれるなんて、聞いたことないわよ……」
泣いてるエヴァンに近づく訳にも行かず、かといって目を離す訳にもいかない。
彼女とフェリテは普通のメイドではなかった。
『護衛メイド』と呼ばれる彼女達は、使える主を護ることこそが本分なのだ。
溜息を付きながらラフィンは懐から細い銀の管を取り出し銜えた。
ヒューォ。
護衛メイド達の使う緊急事態を伝えるその音色に無数の気配が部屋に集まるのを感じる。
「…これは面倒なことになるわね……」
これからの騒ぎを思い、ラフィンは溜息をつきながら肩を落とすのだったーーーー。
✰聖王国グランラディア。
✰獣王国エランディア。
✰精霊国エスタルディア。
✰魔王国ディクルディア。
✰神聖国ブランディア。
✰商業国家マーケディア。
✰工業公国クロスディア。
✰医学連合国ナースディア。
これらの国が存在する世界樹グローシアに支えられた世界をアグローシアと言う。
人族の多い国ーー聖王国グランディア。
その国の貴族筆頭侯爵・中央侯グランディバルカス家に待望の嫡男が生まれた。
母親譲りの黒髪に、グランディバルカス家の直系血筋の証たる紫水晶の瞳を持つ赤子は、
エヴァン・マリウス・ルクセン・グランディバルカス
と名付けられた。
喜び溢れる侯爵家。だがそれはすぐに飛んでもない騒ぎの続く日々と化した。
産後の肥立ちの悪い侯爵夫人のためにすぐに乳母が手配され、エヴァンを抱き上げて乳を含ませた乳母が、目を開けたエヴァンの顔を覗き込んだ瞬間だった。
「あはぁん♡」
突然、甘ったるい声を上げた乳母が、乳を吸っているエヴァンの頭を更に胸に押し付けるように抱きしめたのだ。
これには側にいたメイド達も驚いた。
「いっぱい吸ってぇ♡若様、もっとぉ♡」
恍惚とした表情で乳児を乳に押し付けて叫ぶ乳母。
その胸元では恐らく呼吸困難になりつつあるエヴァンの体がビクビクと震えていた。
慌ててメイド達が乳母から引き離すも、乳母は髪を振り乱しながら、エヴァンを取り返そうと暴れる。
「なんてことでしょう?若様。若様は私がちゃんとお守りしま……」
ケホンケホンと噎せるエヴァンの首を支えたメイドがエヴァンを見た。
パッチリと潤んだ紫水晶の瞳が目に入った。
「はあぁん♡若様ぁ、私がお守りしますわぁ♡」
まだ首のすわらない赤子を、しっかりと頬ずりするメイド。そのメイドに乳母が激怒した。
「わたくしの若様をお返しっ!」
「はん!若様は若い私をお望みですわ!」
産まれたばかりの赤子を取り合う争いが始まり、慌てて残り二人のメイドが割って入って、エヴァンを取り上げた。
「「若様を返せっ!!」」
手を伸ばす二人に、手隙のメイドが瞬時に鳩尾を打って意識を刈り取った。
「……一体、何があったの?フェリテ、若様は大丈夫だった?」
振り返ったメイドはフェリテの様子がおかしい事に気がついた。
体をブルブル震わせながら、必死で赤子を床に置こうとするのに手放すことができないのだ。
「……ラフィン。ダメ……。私の意識も奪って、このままだと私も危ない……。若様には【スキル封じ】か【呪い避け】の魔道具を……」
その言葉を聞くなり、ラフィンと呼ばれたメイドはフェリテの意識を奪う。
意識を失う瞬間、フェリテはほっと息を吐き出しながら、優しく床にエヴァンを下ろしながら倒れ込んだ。
「………っ!」
床に寝かされたエヴァンは泣きながら、ラフィンの方を向こうとした。
視線が合う前に、ラフィンは遠く離れたドアまで飛び退く。
「………【鑑定】」
産まれたばかりの赤子なら、これだけ離れれば姿を把握できないとふんで、彼女は己のスキルを使った。
【人物名】エヴァン・マリウス・ルクセン・グランディバルカス
【年齢】生後0日
【性別】男
【加護スキル】《魅力》レベルMAX
「……嘘でしょ?加護スキルMAXで産まれるなんて、聞いたことないわよ……」
泣いてるエヴァンに近づく訳にも行かず、かといって目を離す訳にもいかない。
彼女とフェリテは普通のメイドではなかった。
『護衛メイド』と呼ばれる彼女達は、使える主を護ることこそが本分なのだ。
溜息を付きながらラフィンは懐から細い銀の管を取り出し銜えた。
ヒューォ。
護衛メイド達の使う緊急事態を伝えるその音色に無数の気配が部屋に集まるのを感じる。
「…これは面倒なことになるわね……」
これからの騒ぎを思い、ラフィンは溜息をつきながら肩を落とすのだったーーーー。
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