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第三章 そして、少年は運命に出会った
エヴァンの心中
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私はエヴァン・マリウス・ルクセン・グランディバルカス。
侯爵家唯一の嫡男だ。
生まれ持った加護スキルのせいで、物心付く前から私の側には人がいなかった。
両親と『護衛メイド』のフェリテとラフィン、魔道具師のカフィル殿くらいしか私に近寄れなかったせいだ。
《魅力》スキルが強すぎて、《耐性》スキルが弱いと私の身が危険なのだと聞いてはいた。
聞いていたけど、その意味を、理由を理解していなかった。
初めてのパーティ。初めての同世代の子供達。
私は事前に何度も魔道具を手放さないようにと言われ、それだけはしっかりと約束して守るつもりだったのだ。
なのに、一人の令嬢にメガネを奪われ、周りに視線を向けた途端だった。
突如、みんなが取っ組み合いのケンカを始めたのだ。
それも理由は私を『独り占め』しようとしたから。
自分のスキルのせいで、こんなことが起こるとは想像もしていなかった。
まだ子供同士だから、これですんでいるのだ。
成長して剣を携えていたら、流血沙汰は間違いない。
私の意図しないことで、
『誰かが誰かを私のために殺すかもしれない』
そのことに気づいた私は、体の震えが止まらなくなった。
その日からはひたすら泣いて吐いた。
両親もラフィン達も心配して、誰かが必ず側にいてくれる日々が続き、父上から気分転換にと別荘へ行かされたのだ。
私有地だから、許可なく誰かが来ることは無い。
「この辺りは安全とはいえ、稀に魔物も出ます。絶対に一人では出歩かないで下さいませね」
ラフィンにそう言われていたのに、庭で見つけた珍しい鳥の姿に心奪われ、別荘から離れてしまった。
鳥を見失い、ガサリと聞こえた物音に振り返ると、そこには禍々しい気配を持った人の姿をした豚のような魔物・オークが立っていた。
「ひっ!」
腰を抜かした私を、オークはニヤリと笑うとー私にはそう見えたー、抱き上げて歩き出した。
混乱してる間に、気がつけばどんどん森の深くへ向かっていることに慌てたが、さらに現れたオークに、自分の死を感じた。
「グゴォーーッ!!」
「ウガァーーッ!」
私と目が合った途端、新たに現れたオークが、私を抱き上げていたオークに飛びかかってきた。
「うっ!」
地面に投げ出された私は、這いずりながら近くの木の後ろに隠れた。
騒ぎを聞きつけたのか、たくさんのオークが集まってくる。
「…誰か、助けて…」
ポツリと呟いた瞬間、木陰に隠れていた私に、オーク達が一斉に視線を向けた。
ーー殺される!!
恐怖のあまり声も出せずに駆け出した私を、オーク達はゆっくりと追いかけてくる。
「若様!」
向こうから駆けつけてきたラフィンを見つけると、必死でしがみついた。
「ラフィン、ラフィン!!」
「若様、無事ですか?とりあえず、これ被って後ろから出ないでくださいね!」
ラフィンは腕にかけていた【封印布】で私を覆うと、両手をオークに向けて振った。
ヒュンと鋭い音を立て、オークが数匹バラバラになった。
「…なんでオークがこんな所に…」
舌打ちをしながら、ラフィンが腰のベルトを引き抜くと、それはしなやかな剣に変わった。
近寄るオークを斬っては蹴り飛ばし、殴り倒しては突き刺し、ラフィンは返り血を浴びて真っ赤に染まってく。
オークが全て倒れた頃には、買出しに出かけていたフェリテも駆けつけた。
そうして、別荘に戻った私達は、互いにこれからを確認して、どうするかを決めた。
一つ。出かける時はちゃんと声をかけて許可をとる。
二つ。必ず結界魔道具を持ち歩く。何かあったら、救急用の魔道具も起動させる。
頷く私をホッとした顔のラフィンとフェリテが抱きしめてくれた。
それでも、万が一に備えてと、カフィル殿が魔物が入れないように結界道具をあちこちに展開してくださって、そこから出なければ自由に歩いて構わないことになった。
数日が過ぎ、退屈していた私は、一番遠くの結界道具の所まで行ってみようと急に思い立って、フェリテの許可を取って向かった。
そこに大事な何かがあるような気がしてーーーー。
侯爵家唯一の嫡男だ。
生まれ持った加護スキルのせいで、物心付く前から私の側には人がいなかった。
両親と『護衛メイド』のフェリテとラフィン、魔道具師のカフィル殿くらいしか私に近寄れなかったせいだ。
《魅力》スキルが強すぎて、《耐性》スキルが弱いと私の身が危険なのだと聞いてはいた。
聞いていたけど、その意味を、理由を理解していなかった。
初めてのパーティ。初めての同世代の子供達。
私は事前に何度も魔道具を手放さないようにと言われ、それだけはしっかりと約束して守るつもりだったのだ。
なのに、一人の令嬢にメガネを奪われ、周りに視線を向けた途端だった。
突如、みんなが取っ組み合いのケンカを始めたのだ。
それも理由は私を『独り占め』しようとしたから。
自分のスキルのせいで、こんなことが起こるとは想像もしていなかった。
まだ子供同士だから、これですんでいるのだ。
成長して剣を携えていたら、流血沙汰は間違いない。
私の意図しないことで、
『誰かが誰かを私のために殺すかもしれない』
そのことに気づいた私は、体の震えが止まらなくなった。
その日からはひたすら泣いて吐いた。
両親もラフィン達も心配して、誰かが必ず側にいてくれる日々が続き、父上から気分転換にと別荘へ行かされたのだ。
私有地だから、許可なく誰かが来ることは無い。
「この辺りは安全とはいえ、稀に魔物も出ます。絶対に一人では出歩かないで下さいませね」
ラフィンにそう言われていたのに、庭で見つけた珍しい鳥の姿に心奪われ、別荘から離れてしまった。
鳥を見失い、ガサリと聞こえた物音に振り返ると、そこには禍々しい気配を持った人の姿をした豚のような魔物・オークが立っていた。
「ひっ!」
腰を抜かした私を、オークはニヤリと笑うとー私にはそう見えたー、抱き上げて歩き出した。
混乱してる間に、気がつけばどんどん森の深くへ向かっていることに慌てたが、さらに現れたオークに、自分の死を感じた。
「グゴォーーッ!!」
「ウガァーーッ!」
私と目が合った途端、新たに現れたオークが、私を抱き上げていたオークに飛びかかってきた。
「うっ!」
地面に投げ出された私は、這いずりながら近くの木の後ろに隠れた。
騒ぎを聞きつけたのか、たくさんのオークが集まってくる。
「…誰か、助けて…」
ポツリと呟いた瞬間、木陰に隠れていた私に、オーク達が一斉に視線を向けた。
ーー殺される!!
恐怖のあまり声も出せずに駆け出した私を、オーク達はゆっくりと追いかけてくる。
「若様!」
向こうから駆けつけてきたラフィンを見つけると、必死でしがみついた。
「ラフィン、ラフィン!!」
「若様、無事ですか?とりあえず、これ被って後ろから出ないでくださいね!」
ラフィンは腕にかけていた【封印布】で私を覆うと、両手をオークに向けて振った。
ヒュンと鋭い音を立て、オークが数匹バラバラになった。
「…なんでオークがこんな所に…」
舌打ちをしながら、ラフィンが腰のベルトを引き抜くと、それはしなやかな剣に変わった。
近寄るオークを斬っては蹴り飛ばし、殴り倒しては突き刺し、ラフィンは返り血を浴びて真っ赤に染まってく。
オークが全て倒れた頃には、買出しに出かけていたフェリテも駆けつけた。
そうして、別荘に戻った私達は、互いにこれからを確認して、どうするかを決めた。
一つ。出かける時はちゃんと声をかけて許可をとる。
二つ。必ず結界魔道具を持ち歩く。何かあったら、救急用の魔道具も起動させる。
頷く私をホッとした顔のラフィンとフェリテが抱きしめてくれた。
それでも、万が一に備えてと、カフィル殿が魔物が入れないように結界道具をあちこちに展開してくださって、そこから出なければ自由に歩いて構わないことになった。
数日が過ぎ、退屈していた私は、一番遠くの結界道具の所まで行ってみようと急に思い立って、フェリテの許可を取って向かった。
そこに大事な何かがあるような気がしてーーーー。
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