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第八章 波乱ばかりの婚姻式
次兄は虚しさを知る
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「ラス兄様のぶわかぁーっ!!」
ボスンと顔面に飛んできたクッションが、音を立てて命中する。
「…リア。そんなに怒んなくてもいいだろ?」
部屋に入るなり、泣きながら妹にクッションを投げつけられ、更には罵倒される始末。
ーー泣きたいのは僕の方だってば…。
自分達の母親の出自が公にされるなり、アリスティリアはエヴァンが相手となったが、ラスティンは婚約者も恋人もいなかったために、各国から見合いの話が山ときた。
【王家の影】を兄であるカインベルの代わりに取り仕切っているため、婿養子にと望まれた話は全て断ったものの、それでも見合いはまだ山とあり、選ぶだけでも面倒くさく思えた。
よってラスティンは、兄に精査してもらった中から、適当に選ぶことにした。
20ほど残った中から、目隠しをして投げたナイフが刺さった相手と見合いすることにしたのだ。
そうして見事に相手に選ばれたのは、北方侯令嬢フローリア・セント・ロンドウォールである。
両親から選んだ理由を問われ、素直に答えたところ、何とも言えない顔をされ、挙句にカインベルまで同じ方法でラスティンから相手を選ばれていたとアリスティリアの耳に入った。
「怒るに決まってるでしょっ!!ローリィをそんな選び方で選んだなんて、失礼極まりないです!」
姉妹のように仲の良いフローリアが、そんな選び方で選ばれたことに、アリスティリアの怒りは爆発していた。
「しかも、カイン兄様のお相手も、同じようにしてラス兄様が決めたってなんですかっ!?」
ボスボスとクッションでテーブルを叩きながら、アリスティリアは話し続けた。
「お父様達が決めるならともかく、何でカイン兄様でなくて、ラス兄様がそんな方法で選んでんですかっ!?」
「………何となく?」
首を傾げながらそう言うと、ボスンと再びクッションが飛んできた。
「せめて、カイン兄様に選ばせなさーいっ!!」
「そうは言うけどね、アリス。兄上も自分で選ぶのが嫌だったみたいで、適当に選んでくれって僕に言ってきたんだよ?僕は悪くないと思うんだけど?」
「わ、わたしの兄様達が酷すぎる~~っ!」
ワッと両手で顔を覆い、アリスティリアが泣きながら落ち込んだ。
「酷すぎるって言うけどね。ローリィなんか、見合いの席で選んだ理由聞いて、何て言ったか知ってるかい?」
両脇に投げられたクッションを挟み、顔を見上げてきたアリスティリアと視線を合わせる。
『まあ、そんな方法でワタクシが選ばれましたの?つまり、これは運命ですわね!ワタクシがアリスと、義理の姉妹になるのは運命と言うことですのね!!』
フローリアは両手を握りしめ、目をキラキラと輝かせながらそう言ったのだ。
「…もんのすごくイイ笑顔でそう言われた僕の気持ち分かる?ローリィ、僕よりアリス選んでんだからね?」
「それは……、どっちもどっち…としか、言えない……」
ひくりと口の端を引き攣らせながら、アリスティリアはそう答えた。
「兄上の相手のコーネル男爵令嬢も似たようなこと言ったらしいよ。まあ、兄上はその発言で確実に決めたみたいだったけど…」
カインベルの相手となったのは、男爵令嬢のマレーナ・ルイ・コーネル。
ふわふわした金色の髪に、淡い紫の瞳の持ち主である。
『そ、それではわたくしが産んだ嫡男が、アリスティリア様のご息女の婚約者となるのですか?』
見合いの席で、嫡男が生まれてすぐに婚約が決まることになると話を聞かされたマレーナは、泣き出したという。
『な、なんて恐れ多いことですの……。カインベル様の妻となれば、アリスティリア様の義理の姉という立場。それだけでも、光栄なことですのに…。さらにはそのお子様の義理の母親にもなれるなど……。神はわたくしに死をお望みなのでしょうか…?』
感激のあまり泣き出したマレーナに、弟妹溺愛のカインベルは、これほど妹を想ってくれるマレーナなら、問題ないと判断して決めたらしい。
「……えぇぇ……」
現状ですら家族の愛が重すぎるのに、さらに重さが増しそうな事態に、アリスティリアはドン引いた。
「…ちなみに確認させたところ、僕達の見合いの申し込み。半数以上が、アリスに姉と呼ばれたいって理由での申し込みだったんだからね…」
自分達の大事な妹に理解のある伴侶を選べたことは喜ばしいが、自分達よりも妹を優先しそうな婚約者達に、少し虚しさを感じたのは内緒であったーーーー。
ボスンと顔面に飛んできたクッションが、音を立てて命中する。
「…リア。そんなに怒んなくてもいいだろ?」
部屋に入るなり、泣きながら妹にクッションを投げつけられ、更には罵倒される始末。
ーー泣きたいのは僕の方だってば…。
自分達の母親の出自が公にされるなり、アリスティリアはエヴァンが相手となったが、ラスティンは婚約者も恋人もいなかったために、各国から見合いの話が山ときた。
【王家の影】を兄であるカインベルの代わりに取り仕切っているため、婿養子にと望まれた話は全て断ったものの、それでも見合いはまだ山とあり、選ぶだけでも面倒くさく思えた。
よってラスティンは、兄に精査してもらった中から、適当に選ぶことにした。
20ほど残った中から、目隠しをして投げたナイフが刺さった相手と見合いすることにしたのだ。
そうして見事に相手に選ばれたのは、北方侯令嬢フローリア・セント・ロンドウォールである。
両親から選んだ理由を問われ、素直に答えたところ、何とも言えない顔をされ、挙句にカインベルまで同じ方法でラスティンから相手を選ばれていたとアリスティリアの耳に入った。
「怒るに決まってるでしょっ!!ローリィをそんな選び方で選んだなんて、失礼極まりないです!」
姉妹のように仲の良いフローリアが、そんな選び方で選ばれたことに、アリスティリアの怒りは爆発していた。
「しかも、カイン兄様のお相手も、同じようにしてラス兄様が決めたってなんですかっ!?」
ボスボスとクッションでテーブルを叩きながら、アリスティリアは話し続けた。
「お父様達が決めるならともかく、何でカイン兄様でなくて、ラス兄様がそんな方法で選んでんですかっ!?」
「………何となく?」
首を傾げながらそう言うと、ボスンと再びクッションが飛んできた。
「せめて、カイン兄様に選ばせなさーいっ!!」
「そうは言うけどね、アリス。兄上も自分で選ぶのが嫌だったみたいで、適当に選んでくれって僕に言ってきたんだよ?僕は悪くないと思うんだけど?」
「わ、わたしの兄様達が酷すぎる~~っ!」
ワッと両手で顔を覆い、アリスティリアが泣きながら落ち込んだ。
「酷すぎるって言うけどね。ローリィなんか、見合いの席で選んだ理由聞いて、何て言ったか知ってるかい?」
両脇に投げられたクッションを挟み、顔を見上げてきたアリスティリアと視線を合わせる。
『まあ、そんな方法でワタクシが選ばれましたの?つまり、これは運命ですわね!ワタクシがアリスと、義理の姉妹になるのは運命と言うことですのね!!』
フローリアは両手を握りしめ、目をキラキラと輝かせながらそう言ったのだ。
「…もんのすごくイイ笑顔でそう言われた僕の気持ち分かる?ローリィ、僕よりアリス選んでんだからね?」
「それは……、どっちもどっち…としか、言えない……」
ひくりと口の端を引き攣らせながら、アリスティリアはそう答えた。
「兄上の相手のコーネル男爵令嬢も似たようなこと言ったらしいよ。まあ、兄上はその発言で確実に決めたみたいだったけど…」
カインベルの相手となったのは、男爵令嬢のマレーナ・ルイ・コーネル。
ふわふわした金色の髪に、淡い紫の瞳の持ち主である。
『そ、それではわたくしが産んだ嫡男が、アリスティリア様のご息女の婚約者となるのですか?』
見合いの席で、嫡男が生まれてすぐに婚約が決まることになると話を聞かされたマレーナは、泣き出したという。
『な、なんて恐れ多いことですの……。カインベル様の妻となれば、アリスティリア様の義理の姉という立場。それだけでも、光栄なことですのに…。さらにはそのお子様の義理の母親にもなれるなど……。神はわたくしに死をお望みなのでしょうか…?』
感激のあまり泣き出したマレーナに、弟妹溺愛のカインベルは、これほど妹を想ってくれるマレーナなら、問題ないと判断して決めたらしい。
「……えぇぇ……」
現状ですら家族の愛が重すぎるのに、さらに重さが増しそうな事態に、アリスティリアはドン引いた。
「…ちなみに確認させたところ、僕達の見合いの申し込み。半数以上が、アリスに姉と呼ばれたいって理由での申し込みだったんだからね…」
自分達の大事な妹に理解のある伴侶を選べたことは喜ばしいが、自分達よりも妹を優先しそうな婚約者達に、少し虚しさを感じたのは内緒であったーーーー。
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