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第八章 波乱ばかりの婚姻式
高祖父は喜ぶ
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ーー魔王国ディクルディア。
住人のほとんどが魔族であるこの国の王は、名をバスティン・カウス・ディーグルと言う。
地に着くか着かないくらいの長い黒髪。その頭部には二本の山羊の角が生えている。
肌は白く、瞳は黒に近い程の濃い紫色。その唇は血のように赤く、女性らしい美しさではないが、それでも美しいと周りから讃えられる美形であった。
ただし、見かけだけである。
「ふむ……。ティリアはグランディバルカス家に嫁ぐか……」
玉座に足を組んで座り、グランラディアからの使者の言葉に、彼は自身の愛しい玄孫の今後を口にした。
「我の可愛い玄孫の祝いだ。もちろん。参加しようではないか!」
腕を組んで後ろに持たれ、満足気に頷いてみせると、使者は深々と頭を下げて退出した。
「……よし!まずは祝いの品として、手始めにエステルディアを滅ぼし「止めんかっ!」」
玉座から立ち上がり、拳を握ってそう口にした途端、隣に控えていた男から頭をはたかれた。
「何をする、マテロス!父を敬わぬかっ!」
「敬って欲しけりゃ、馬鹿な真似すんじゃねえ……。いいか、親父殿。んなことしたら、確実にティリアに嫌われっぞ。可愛い玄孫に嫌われてもいーのかよ?」
隣にいたのはバスティンの末子であるマテロス・ガロン・ディーグル。
口は悪いが頭のキレるディクルディアの宰相である。
少し紫がかった黒髪は肩にかかる長さで乱雑に切られており、左の瞳は金色。右の瞳は深い藍色をしていた。
彼は父親の角とは違い、背中に髪と同色の一対の翼が生えていた。
「むむ。ティリアに嫌われるのはいかん……」
自分の血を引く子供や孫達に、さほど執着していなかったバスティンだったが、何故か突然見つかった玄孫のアリスティリアを気に入り、ディクルディアに訪れたと分かるや否や、謁見中だろうが会議中だろうが、迎えに行く始末。
そこで、家臣から苦言でもあればよいが、家臣達からもアリスティリアは可愛がられていたため、政務に支障が出ないようにと、陰ながらマテロスはアリスティリアの訪問を調整しているのである。
彼とて、今は亡き長姉の血を引くアリスティリアが可愛いのだから。
「ティリアはあの姉上の血を引く子だ。確実に自分でやり返したがるだろうから、こちらからの手出しはダメだぞ、親父殿…」
「確かに……。あれは自分の獲物を横取りされると国を滅ぼしかねんくらいの勢いで怒り狂ったな…」
ふむと納得し、バスティンは再び玉座に腰を下ろした。
「ならば、マテロス。お主は祝いに何を用意すべきと思う?」
「マリアステラ殿から、ティリアのドレスの材料を頼まれている。取り急ぎ【アラクネの織物】が欲しいとの事なので、こちらはアリスの衣装に使う物だな。相手のグランディバルカス家の嫡男は、《魅力》の加護持ちだから、そちら用の物がいいかもしれないな…」
「あの仮面小僧か……。ふむ。ティリアの晴れ舞台にあのような無粋な仮面が隣りに立つのは些か不愉快というものよ……」
バスティンはしばらく黙り込んだ後、マテロスを見上げた。
「水棲馬の皮を使って、《魅力》封じの魔導具を作ったのがおらなんだか?」
「……親父殿。それを作ったカフィルが、あの仮面を作ってんだよ……」
「あやつはブランディアで大神官をしておらなんだか?」
「とうに任期終えて、嫁もらってグランディバルカス家に魔導具師として雇われてるよ。いつから止まってんだよ……」
呆れ顔のマテロスを放置し、バスティンは唸り出した。
「せめて、婚姻式の間くらいは仮面を外させたいところだの。ふむ、必要な物は手配する故、カフィルに仮面を外せるようなものを作れと伝えておけ!」
「承知した…」
「楽しみよのう♪あれは愛らしい故、着飾りがいもあろうて♪」
バスティンは、可愛い可愛い玄孫の晴れ姿を、今か今かと楽しみにするのであったーーーー。
住人のほとんどが魔族であるこの国の王は、名をバスティン・カウス・ディーグルと言う。
地に着くか着かないくらいの長い黒髪。その頭部には二本の山羊の角が生えている。
肌は白く、瞳は黒に近い程の濃い紫色。その唇は血のように赤く、女性らしい美しさではないが、それでも美しいと周りから讃えられる美形であった。
ただし、見かけだけである。
「ふむ……。ティリアはグランディバルカス家に嫁ぐか……」
玉座に足を組んで座り、グランラディアからの使者の言葉に、彼は自身の愛しい玄孫の今後を口にした。
「我の可愛い玄孫の祝いだ。もちろん。参加しようではないか!」
腕を組んで後ろに持たれ、満足気に頷いてみせると、使者は深々と頭を下げて退出した。
「……よし!まずは祝いの品として、手始めにエステルディアを滅ぼし「止めんかっ!」」
玉座から立ち上がり、拳を握ってそう口にした途端、隣に控えていた男から頭をはたかれた。
「何をする、マテロス!父を敬わぬかっ!」
「敬って欲しけりゃ、馬鹿な真似すんじゃねえ……。いいか、親父殿。んなことしたら、確実にティリアに嫌われっぞ。可愛い玄孫に嫌われてもいーのかよ?」
隣にいたのはバスティンの末子であるマテロス・ガロン・ディーグル。
口は悪いが頭のキレるディクルディアの宰相である。
少し紫がかった黒髪は肩にかかる長さで乱雑に切られており、左の瞳は金色。右の瞳は深い藍色をしていた。
彼は父親の角とは違い、背中に髪と同色の一対の翼が生えていた。
「むむ。ティリアに嫌われるのはいかん……」
自分の血を引く子供や孫達に、さほど執着していなかったバスティンだったが、何故か突然見つかった玄孫のアリスティリアを気に入り、ディクルディアに訪れたと分かるや否や、謁見中だろうが会議中だろうが、迎えに行く始末。
そこで、家臣から苦言でもあればよいが、家臣達からもアリスティリアは可愛がられていたため、政務に支障が出ないようにと、陰ながらマテロスはアリスティリアの訪問を調整しているのである。
彼とて、今は亡き長姉の血を引くアリスティリアが可愛いのだから。
「ティリアはあの姉上の血を引く子だ。確実に自分でやり返したがるだろうから、こちらからの手出しはダメだぞ、親父殿…」
「確かに……。あれは自分の獲物を横取りされると国を滅ぼしかねんくらいの勢いで怒り狂ったな…」
ふむと納得し、バスティンは再び玉座に腰を下ろした。
「ならば、マテロス。お主は祝いに何を用意すべきと思う?」
「マリアステラ殿から、ティリアのドレスの材料を頼まれている。取り急ぎ【アラクネの織物】が欲しいとの事なので、こちらはアリスの衣装に使う物だな。相手のグランディバルカス家の嫡男は、《魅力》の加護持ちだから、そちら用の物がいいかもしれないな…」
「あの仮面小僧か……。ふむ。ティリアの晴れ舞台にあのような無粋な仮面が隣りに立つのは些か不愉快というものよ……」
バスティンはしばらく黙り込んだ後、マテロスを見上げた。
「水棲馬の皮を使って、《魅力》封じの魔導具を作ったのがおらなんだか?」
「……親父殿。それを作ったカフィルが、あの仮面を作ってんだよ……」
「あやつはブランディアで大神官をしておらなんだか?」
「とうに任期終えて、嫁もらってグランディバルカス家に魔導具師として雇われてるよ。いつから止まってんだよ……」
呆れ顔のマテロスを放置し、バスティンは唸り出した。
「せめて、婚姻式の間くらいは仮面を外させたいところだの。ふむ、必要な物は手配する故、カフィルに仮面を外せるようなものを作れと伝えておけ!」
「承知した…」
「楽しみよのう♪あれは愛らしい故、着飾りがいもあろうて♪」
バスティンは、可愛い可愛い玄孫の晴れ姿を、今か今かと楽しみにするのであったーーーー。
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