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第八章 波乱ばかりの婚姻式
伯爵令嬢は逃げ出したい
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「は?【アラクネの織物】使ったドレスが8枚?これ、全部【アラクネの織物】なんですか?」
グランディバルカス家に養母と共に招かれたアリスティリアは、サロンで見せられていたドレス用の布を手に固まった。
「そうなのよ。貴女の婚礼衣装だけで頼んだのだけど、マテロス様からお聞きした話だと、アラクネ達が貴女のドレスの話を聞いて、是非にと張り切って作ったらしくてね。頼んでいた物以外は、バスティン様からのお祝いとして下さるそうよ」
サラッとマリアステラが口にした言葉に、アリスティリアの内心はダラダラと冷汗が流れている。
ーー王族ですら婚姻式に使えるか否かの【アラクネの織物】が、伯爵令嬢の婚姻式用に8枚……。
ドレスが8枚なので、布もそれに合わせれる様に数種類の色合いが用意されている。
軽く国家予算数年分の金額を越えていることに、アリスティリアはゾッとした。
「まあ。アリスは本当に皆から愛されてますのね♪」
母親二人が盛り上がっていく中、当の本人は心臓が口から飛び出そうになっている。
動揺のあまり、《悟り》スキルを使えば良いことにも気づけない。
「エランディアからは是非使って欲しいと、宝石も頂いたとか…。婚姻式が楽しみですわね、マリアステラ様♪」
「ええ、本当に。皆様の驚くお顔が楽しみですわね、エマリー様♪」
※※※※※※※※
[ラフィン視点]
和気藹々と盛り上がる奥様達の側で、並べられた大量の布を前に、アリス様は口から魂が抜けているのではないかと、心配になるくらい動かれません。
分かります!
1枚だけでも国家予算一年分越えの衣装が8枚。花嫁衣裳のみでそれだけのお品です。
歴代の各国王族の皆様ですら、そんな恐ろしい衣装は身に纏われてはいないでしょう…。
一国家の侯爵家嫡男と、伯爵令嬢の婚姻に、誰がこんなに豪華な衣装を何枚も纏うと想像できましょうか。
お嬢様にはまだお伝えされていませんが、若様の衣装もとんでもない事になっているのです。
花嫁の隣に怪しい仮面姿の花婿など論外だと、お嬢様贔屓の各国の王族の皆様から、婚姻式と披露宴の間だけでも素顔で参加しろと、カフィル様を筆頭に各国の魔導具師の皆様が、式場や花婿衣装に手を加えているのです。
しかも材料は主に【水棲馬の皮】…。滅多に手に入る品ではありません。
婚姻式の衣装の代金はマリアステラ様が全額持たれるとか……。
国家予算の数年分払えるって、どんだけ稼いでるんですか!?
とりあえず、盛り上がる奥様達をそのままに、お嬢様に近寄りました。
「無理……。着るだけで死ぬ……、こんな恐ろしい衣装着たくない……。逃げたい……」
小さなお声でブツブツと涙目で呟かれておりました。
そのお気持ちが分かるだけに、慰めの言葉など出てまいりません。
「そうそう。あのね、アリス。バスティン様達がせっかくの婚姻式にエヴァン様が仮面姿では様にならないからと、婚姻式と披露宴で、仮面がなくてもいいようにとしてくださるそうよ。良かったわね♪」
「!!」
不意にかけられたマリアステラ様からのそのお言葉に、お嬢様はビクリと体を震わせました。
「……お嬢様?」
お嬢様は無の境地に立たれておいででした。
無事のお戻りをお待ちしております…………。
グランディバルカス家に養母と共に招かれたアリスティリアは、サロンで見せられていたドレス用の布を手に固まった。
「そうなのよ。貴女の婚礼衣装だけで頼んだのだけど、マテロス様からお聞きした話だと、アラクネ達が貴女のドレスの話を聞いて、是非にと張り切って作ったらしくてね。頼んでいた物以外は、バスティン様からのお祝いとして下さるそうよ」
サラッとマリアステラが口にした言葉に、アリスティリアの内心はダラダラと冷汗が流れている。
ーー王族ですら婚姻式に使えるか否かの【アラクネの織物】が、伯爵令嬢の婚姻式用に8枚……。
ドレスが8枚なので、布もそれに合わせれる様に数種類の色合いが用意されている。
軽く国家予算数年分の金額を越えていることに、アリスティリアはゾッとした。
「まあ。アリスは本当に皆から愛されてますのね♪」
母親二人が盛り上がっていく中、当の本人は心臓が口から飛び出そうになっている。
動揺のあまり、《悟り》スキルを使えば良いことにも気づけない。
「エランディアからは是非使って欲しいと、宝石も頂いたとか…。婚姻式が楽しみですわね、マリアステラ様♪」
「ええ、本当に。皆様の驚くお顔が楽しみですわね、エマリー様♪」
※※※※※※※※
[ラフィン視点]
和気藹々と盛り上がる奥様達の側で、並べられた大量の布を前に、アリス様は口から魂が抜けているのではないかと、心配になるくらい動かれません。
分かります!
1枚だけでも国家予算一年分越えの衣装が8枚。花嫁衣裳のみでそれだけのお品です。
歴代の各国王族の皆様ですら、そんな恐ろしい衣装は身に纏われてはいないでしょう…。
一国家の侯爵家嫡男と、伯爵令嬢の婚姻に、誰がこんなに豪華な衣装を何枚も纏うと想像できましょうか。
お嬢様にはまだお伝えされていませんが、若様の衣装もとんでもない事になっているのです。
花嫁の隣に怪しい仮面姿の花婿など論外だと、お嬢様贔屓の各国の王族の皆様から、婚姻式と披露宴の間だけでも素顔で参加しろと、カフィル様を筆頭に各国の魔導具師の皆様が、式場や花婿衣装に手を加えているのです。
しかも材料は主に【水棲馬の皮】…。滅多に手に入る品ではありません。
婚姻式の衣装の代金はマリアステラ様が全額持たれるとか……。
国家予算の数年分払えるって、どんだけ稼いでるんですか!?
とりあえず、盛り上がる奥様達をそのままに、お嬢様に近寄りました。
「無理……。着るだけで死ぬ……、こんな恐ろしい衣装着たくない……。逃げたい……」
小さなお声でブツブツと涙目で呟かれておりました。
そのお気持ちが分かるだけに、慰めの言葉など出てまいりません。
「そうそう。あのね、アリス。バスティン様達がせっかくの婚姻式にエヴァン様が仮面姿では様にならないからと、婚姻式と披露宴で、仮面がなくてもいいようにとしてくださるそうよ。良かったわね♪」
「!!」
不意にかけられたマリアステラ様からのそのお言葉に、お嬢様はビクリと体を震わせました。
「……お嬢様?」
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無事のお戻りをお待ちしております…………。
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