76 / 154
第十章 アリスティリアは人気者
四候訪問1
しおりを挟む
「んまあっ!んまああぁぁっ!!なんて愛らしいんですのっ!!」
四候訪問が始まった。
最初に訪れたのは東方侯爵のヴォルジュ領。
カサンドラ・ルーラ・サーヴォルジュは、自身の考案したドレスを纏ったアリスティリアの姿に、握っていた扇をへし折ってしまうくらい興奮している。
「…これ、変わったデザインですね?」
詰襟で袖無しの鮮やかな青いシャツが、腰の近くまであり、シャツの下から何層もの白いレースのスカートが、ほっそりとまとわりつくように見えるのに、歩き出すと流れるように離れていき、踊ると回る度に裾が広がる。
エヴァンとダンスを踊っている間、周りからは裾が広がる度に感嘆の溜息が、あちこちから聞こえてきていた。
「ふふ。アリスの可愛らしさを、皆と追求した結果ですわ♪」
満足気に微笑み、上から下まで何度も視線を往復させる。
「完璧ですわ。エヴァン様!イゾルデ!例のものを!!」
カサンドラの言葉に側にいた侍従らしき男が、ワゴンを運んできた。
ワゴンの上には、両手で掴めるほどの大きさの四角いハコがあった。
「アリス。此方にいらして♪」
ニコニコ笑うカサンドラに手を引かれ、アリスティリアは共に並んで壁の前に立った。
招かれていた他の招待客は、遠巻きながらも何事かと視線をチラチラと向けていた。
「少しの間あちらを向いて、じっとしていて下さいませね」
ハコを手にした侍従を指差し、アリスを自分の隣へとピッタリと寄り添わせる。
「?」
不思議に思いながら、しばらくそちらを向いていると、箱の中から紙が出てきた。
「イゾルデ!出来はどうなの?」
出てきた紙を手にし、乾かすように振る男にカサンドラが早足で歩み寄った。
「いかがでしょうか?」
差し出された紙を手にし、カサンドラは空いた方の手を頬に添えた。
「んまあぁぁぁっ!!完璧だわっ!!」
クルリとアリスティリアへと振り返ったその瞳は、キラキラと輝いていた。
「サンドラ様?」
「ご覧になって、アリスティリア!」
渡された紙には、カサンドラとアリスティリアが寄り添った先程までの姿がそこにはあった。
「すごい……」
ポカンとそれを見るアリスティリアに、エヴァンが後ろから覗き込む。
「アリス?一体、どうしまし…」
手の中の紙に写し出されたそれに、エヴァンは言葉を失った。
「……カサンドラ殿……。それは何処の魔導具ですか?」
カサンドラを見るエヴァンの目はすわっていた。
「お、落ち着きなさいな。…これは我が家の魔導具師がやっと作り上げた物ですわ♪〖写実機〗と名付けましたの!」
仮面から覗くその視線にたじろぎながらも、カサンドラは侍従から受け取った〖写実機〗を片手に持ち上げる。
「初めてアリスと出会ってからというもの、愛らしいアリスの姿を即座に描けるものが欲しいと…。苦節六年目にして完成したのですわ!!」
ドヤ顔で言い切ったカサンドラ。
そして、その手元の魔導具〖写実機〗に、周囲の視線が集まった。
ーーどこから突っ込めばいいのか、分かりません……。
〖写実機〗に熱い視線を送るエヴァンの隣で、アリスティリアは遠い目になっている。
「売ってください!ダメなら、作り方を!!」
「……売りませんわよ。それに作り方を聞いても、多分、作れませんわよ?」
侍従に〖写実機〗を戻し、カサンドラは首を振った。
「何故です?」
「材料が分からないものがあるのですわ。《鑑定》で、【神獣の髭】としか出なくて、どの神獣なのか分からないのです。しかも神獣ですわよ。手に入るわけないでしょう?」
カサンドラの言葉に、エヴァンはアリスティリアを見た。
「えっと、《鑑定》してもいいですか?」
そして、出た結果にアリスティリアは脱力し、カサンドラとエヴァンは、固く握手を交わしたのである。
ーー銀亀様の髭ですかあああぁぁぁぁっ!!
バスティン経由で手に入れたそれで、カサンドラ達は特定の人物の数だけ、〖写実機〗を作り出した。
特定の人物……。
アリスを愛でている人物達のことであったーーーー。
四候訪問が始まった。
最初に訪れたのは東方侯爵のヴォルジュ領。
カサンドラ・ルーラ・サーヴォルジュは、自身の考案したドレスを纏ったアリスティリアの姿に、握っていた扇をへし折ってしまうくらい興奮している。
「…これ、変わったデザインですね?」
詰襟で袖無しの鮮やかな青いシャツが、腰の近くまであり、シャツの下から何層もの白いレースのスカートが、ほっそりとまとわりつくように見えるのに、歩き出すと流れるように離れていき、踊ると回る度に裾が広がる。
エヴァンとダンスを踊っている間、周りからは裾が広がる度に感嘆の溜息が、あちこちから聞こえてきていた。
「ふふ。アリスの可愛らしさを、皆と追求した結果ですわ♪」
満足気に微笑み、上から下まで何度も視線を往復させる。
「完璧ですわ。エヴァン様!イゾルデ!例のものを!!」
カサンドラの言葉に側にいた侍従らしき男が、ワゴンを運んできた。
ワゴンの上には、両手で掴めるほどの大きさの四角いハコがあった。
「アリス。此方にいらして♪」
ニコニコ笑うカサンドラに手を引かれ、アリスティリアは共に並んで壁の前に立った。
招かれていた他の招待客は、遠巻きながらも何事かと視線をチラチラと向けていた。
「少しの間あちらを向いて、じっとしていて下さいませね」
ハコを手にした侍従を指差し、アリスを自分の隣へとピッタリと寄り添わせる。
「?」
不思議に思いながら、しばらくそちらを向いていると、箱の中から紙が出てきた。
「イゾルデ!出来はどうなの?」
出てきた紙を手にし、乾かすように振る男にカサンドラが早足で歩み寄った。
「いかがでしょうか?」
差し出された紙を手にし、カサンドラは空いた方の手を頬に添えた。
「んまあぁぁぁっ!!完璧だわっ!!」
クルリとアリスティリアへと振り返ったその瞳は、キラキラと輝いていた。
「サンドラ様?」
「ご覧になって、アリスティリア!」
渡された紙には、カサンドラとアリスティリアが寄り添った先程までの姿がそこにはあった。
「すごい……」
ポカンとそれを見るアリスティリアに、エヴァンが後ろから覗き込む。
「アリス?一体、どうしまし…」
手の中の紙に写し出されたそれに、エヴァンは言葉を失った。
「……カサンドラ殿……。それは何処の魔導具ですか?」
カサンドラを見るエヴァンの目はすわっていた。
「お、落ち着きなさいな。…これは我が家の魔導具師がやっと作り上げた物ですわ♪〖写実機〗と名付けましたの!」
仮面から覗くその視線にたじろぎながらも、カサンドラは侍従から受け取った〖写実機〗を片手に持ち上げる。
「初めてアリスと出会ってからというもの、愛らしいアリスの姿を即座に描けるものが欲しいと…。苦節六年目にして完成したのですわ!!」
ドヤ顔で言い切ったカサンドラ。
そして、その手元の魔導具〖写実機〗に、周囲の視線が集まった。
ーーどこから突っ込めばいいのか、分かりません……。
〖写実機〗に熱い視線を送るエヴァンの隣で、アリスティリアは遠い目になっている。
「売ってください!ダメなら、作り方を!!」
「……売りませんわよ。それに作り方を聞いても、多分、作れませんわよ?」
侍従に〖写実機〗を戻し、カサンドラは首を振った。
「何故です?」
「材料が分からないものがあるのですわ。《鑑定》で、【神獣の髭】としか出なくて、どの神獣なのか分からないのです。しかも神獣ですわよ。手に入るわけないでしょう?」
カサンドラの言葉に、エヴァンはアリスティリアを見た。
「えっと、《鑑定》してもいいですか?」
そして、出た結果にアリスティリアは脱力し、カサンドラとエヴァンは、固く握手を交わしたのである。
ーー銀亀様の髭ですかあああぁぁぁぁっ!!
バスティン経由で手に入れたそれで、カサンドラ達は特定の人物の数だけ、〖写実機〗を作り出した。
特定の人物……。
アリスを愛でている人物達のことであったーーーー。
0
あなたにおすすめの小説
冷遇妃ライフを満喫するはずが、皇帝陛下の溺愛ルートに捕まりました!?
由香
恋愛
冷遇妃として後宮の片隅で静かに暮らすはずだった翠鈴。
皇帝に呼ばれない日々は、むしろ自由で快適——そう思っていたのに。
ある夜、突然現れた皇帝に顎を掴まれ、深く口づけられる。
「誰が、お前を愛していないと言った」
守るための“冷遇”だったと明かされ、逃げ道を塞がれ、甘く囲われ、何度も唇を奪われて——。
これは冷遇妃のはずだった少女が、気づけば皇帝の唯一へと捕獲されてしまう甘く濃密な溺愛物語。
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
オオカミ課長は、部下のウサギちゃんを溺愛したくてたまらない
若松だんご
恋愛
――俺には、将来を誓った相手がいるんです。
お昼休み。通りがかった一階ロビーで繰り広げられてた修羅場。あ~課長だあ~、大変だな~、女性の方、とっても美人だな~、ぐらいで通り過ぎようと思ってたのに。
――この人です! この人と結婚を前提につき合ってるんです。
ほげええっ!?
ちょっ、ちょっと待ってください、課長!
あたしと課長って、ただの上司と部下ですよねっ!? いつから本人の了承もなく、そういう関係になったんですかっ!? あたし、おっそろしいオオカミ課長とそんな未来は予定しておりませんがっ!?
課長が、専務の令嬢とのおつき合いを断るネタにされてしまったあたし。それだけでも大変なのに、あたしの住むアパートの部屋が、上の住人の失態で水浸しになって引っ越しを余儀なくされて。
――俺のところに来い。
オオカミ課長に、強引に同居させられた。
――この方が、恋人らしいだろ。
うん。そうなんだけど。そうなんですけど。
気分は、オオカミの巣穴に連れ込まれたウサギ。
イケメンだけどおっかないオオカミ課長と、どんくさくって天然の部下ウサギ。
(仮)の恋人なのに、どうやらオオカミ課長は、ウサギをかまいたくてしかたないようで――???
すれ違いと勘違いと溺愛がすぎる二人の物語。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
Emerald
藍沢咲良
恋愛
教師という仕事に嫌気が差した結城美咲(ゆうき みさき)は、叔母の住む自然豊かな郊外で時々アルバイトをして生活していた。
叔母の勧めで再び教員業に戻ってみようと人材バンクに登録すると、すぐに話が来る。
自分にとっては完全に新しい場所。
しかし仕事は一度投げ出した教員業。嫌だと言っても他に出来る仕事は無い。
仕方無しに仕事復帰をする美咲。仕事帰りにカフェに寄るとそこには…。
〜main cast〜
結城美咲(Yuki Misaki)
黒瀬 悠(Kurose Haruka)
※作中の地名、団体名は架空のものです。
※この作品はエブリスタ、小説家になろうでも連載されています。
※素敵な表紙をポリン先生に描いて頂きました。
ポリン先生の作品はこちら↓
https://manga.line.me/indies/product/detail?id=8911
https://www.comico.jp/challenge/comic/33031
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる