2 / 2
一 これは夢です。
しおりを挟む
「『わたセカ』の重版、並びにコミカライズ決定、おめでとー!」
「あざーすっ!これも、阿良々木さんの指導のおかげでぇす!!」
カンパーイ!と、二人でジョッキを軽く打ち合わせ、グイッと一気にビールを流し込む。
私、泉詩織二十五歳。ネットでひっそり書いてた小説が、妹さんが読んでくれてたとこに兄の阿良々木さんが加わって…。
出版社で働いていた阿良々木さんが、色々助言してくれて、気がつけば作家デビューしてて、さらに阿良々木さんの担当作家さん(漫画家)がノリノリで挿絵担当してくれたばかりか、コミカライズの話をしてくれて…と。
「阿良々木大明神様様のお陰で、私は食べていけるのです!」
ドン!とテーブルにジョッキを下ろし、力説する私は、うん。完全に酔っ払いです。
「酔ってんなぁ……。ちゃんと帰れるのか?薫流くん呼んどくか…」
手に負えなくなる前にと、阿良々木さんが私の弟の薫流に連絡をしてるのも気づかずに、私の感謝語りは止まらない。
「重版したのは、挿絵担当して下さった、ユエ先生のお陰です!そして、ユエ先生の担当が阿良々木さんだったから!ユエ先生が挿絵を引き受けてくださったとも言えるのです!!」
もう本心ダダ漏れで、止まんなかったよね。
「姉ちゃん、飲みすぎだろっ!」
迎えに来た薫流にしがみつき、苦笑する阿良々木さんに見送られながら帰途につく。
「薫流ぅ~。か~お~るくぅ~ん…」
「んだよ…」
両親は一昨年、事故で亡くなり、二人っきりの家族になって、五歳下の弟は進学を諦めて…。
「ごめんねぇ、姉ちゃんがもっと速くデビューできてたら、大学行けたよねぇ……」
就職したばかりの私は自分のことだけで手一杯だった。そんな折の両親の死亡。諸々の手続きに走り回り、家のことは薫流に押し付けっぱなしの最低の姉だったと思う。
それでも文句言わずに支えてくれた大事な弟。
「薫流の仕事が休めるようになったら、行けなかった温泉旅行行こうねぇ……」
「……だな…」
フラフラしながら、薫流より前を歩く。
歩道橋を上がり、反対側の階段を降りようとした時だった。
ドン!
「へ?」
肩に何かが当たったと思った瞬間、フワッと体が浮いた気がした。
「姉ちゃん!!」
目の前に地面があると認識した瞬間、私の意識は途切れてしまったーーーー。
**********
『渡る世界は君のために』。通称『わたセカ』は、私のデビュー作にして、唯一の作品だ。
主人公の高校男子、駿河竜貴が歩道橋から足を滑らせて死んだ所から作品は始まる。
そして、テンプレの異世界転生。そこからのチート能力を駆使して、ヒロインのアルティシアと共に、時には恋敵と手を組んだり、時にはすれ違ったりと、色んな人に出会って成長しながら、仲を深めていくラブコメっぽい、異世界転生物。
ぶっちゃけ挿絵で売れたような気がする。
挿絵効果あるある。ジャケ買いの鉄板効果恐るべし……。
それでも、ファンレター貰ったり、ネットで感想貰ったりしたら、そりゃ調子に乗るよね、嬉しくて。
たまに修羅場中のユエ先生のとこに差し入れがてら、おさんどんしてたら四コマ書いてくれたのネットに上げてて、そこから興味を持った人達にも買って貰えたのは本当にあると思う。
まあ、作品的には二人を結婚させて…めでたしめでたし。の王道予定だった。
……だった?何で過去形?
ふらつく頭を押さえながら体を起こそうとしたが、手も足もピクリと動かせた感じがない。
何だ、これ?
直前までの記憶を振り返れば、どう考えても歩道橋から落ちたような記憶で終わっている。
あ、これ。私、死んでるやつだわ……。
自作のキャラと同じ死因かよ!って突っ込みながらも、一人残すことになってしまった薫流の事が頭をよぎる。
ごめんよ、薫流。よりにもよって、最後の肉親の私があんたの目の前で死んじゃうなんて……。
とりあえず私の財産はあんたが全部貰ってよね。借金は……、多分なかったはずだから。印税とかの手続きも阿良々木さんが教えてくれるよね。
あー……。阿良々木さんやユエ先生にも迷惑かけちゃうな。
未完成のまんまになっちゃった『わたセカ』だけど、最終的にどんな感じになるのかは伝えてあるんだし、…って、無理だよね。人様の作品、勝手にするような人達じゃないもん……。
ま、これも運命だよね、仕方ないかぁ…。
なあんて、意識をゆっくりと手放そうとした時だった。
「ふざけんなっ!こんな死に方してんじゃねえよ!!」
「ひいっ!」
耳元で叫ばれ、その勢いで体が飛び起きた。
んん?起きれた?あれ?生きてる??
周りを見回せば、どこもかしこも真っ白な空間で、そこになんか見覚えのある集団がいました。
「……え?竜貴?竜貴とアルティシア?え?え?」
目の前にいたのは、『わたセカ』の主要キャラ達です。
「………なあんだ。死んだんじゃなくって、夢見てんのかぁ……」
ホッとしました。
だって自作のキャラと作者が話せるなんて、夢の中の話ですよ。妄想です、妄想w
気絶してるのか、重体なのか分かりませんが、とりあえず生きてるのだと安心した。
「…いえ。あの創造主様はお亡くなりになってますのよ?」
金髪碧眼というお約束とも言える姿の聖女であるアルティシアが、頬に手を当てて可愛らしく首を傾げながら、とんでもない事を口にしてくれた。
「…………なんて?」
「ですから。創造主様はお亡くなりになっているのですわ」
……よし。寝よう!
私はどうやら夢の世界にいるのだと、再び眠りにつくのだったーーーー。
「あざーすっ!これも、阿良々木さんの指導のおかげでぇす!!」
カンパーイ!と、二人でジョッキを軽く打ち合わせ、グイッと一気にビールを流し込む。
私、泉詩織二十五歳。ネットでひっそり書いてた小説が、妹さんが読んでくれてたとこに兄の阿良々木さんが加わって…。
出版社で働いていた阿良々木さんが、色々助言してくれて、気がつけば作家デビューしてて、さらに阿良々木さんの担当作家さん(漫画家)がノリノリで挿絵担当してくれたばかりか、コミカライズの話をしてくれて…と。
「阿良々木大明神様様のお陰で、私は食べていけるのです!」
ドン!とテーブルにジョッキを下ろし、力説する私は、うん。完全に酔っ払いです。
「酔ってんなぁ……。ちゃんと帰れるのか?薫流くん呼んどくか…」
手に負えなくなる前にと、阿良々木さんが私の弟の薫流に連絡をしてるのも気づかずに、私の感謝語りは止まらない。
「重版したのは、挿絵担当して下さった、ユエ先生のお陰です!そして、ユエ先生の担当が阿良々木さんだったから!ユエ先生が挿絵を引き受けてくださったとも言えるのです!!」
もう本心ダダ漏れで、止まんなかったよね。
「姉ちゃん、飲みすぎだろっ!」
迎えに来た薫流にしがみつき、苦笑する阿良々木さんに見送られながら帰途につく。
「薫流ぅ~。か~お~るくぅ~ん…」
「んだよ…」
両親は一昨年、事故で亡くなり、二人っきりの家族になって、五歳下の弟は進学を諦めて…。
「ごめんねぇ、姉ちゃんがもっと速くデビューできてたら、大学行けたよねぇ……」
就職したばかりの私は自分のことだけで手一杯だった。そんな折の両親の死亡。諸々の手続きに走り回り、家のことは薫流に押し付けっぱなしの最低の姉だったと思う。
それでも文句言わずに支えてくれた大事な弟。
「薫流の仕事が休めるようになったら、行けなかった温泉旅行行こうねぇ……」
「……だな…」
フラフラしながら、薫流より前を歩く。
歩道橋を上がり、反対側の階段を降りようとした時だった。
ドン!
「へ?」
肩に何かが当たったと思った瞬間、フワッと体が浮いた気がした。
「姉ちゃん!!」
目の前に地面があると認識した瞬間、私の意識は途切れてしまったーーーー。
**********
『渡る世界は君のために』。通称『わたセカ』は、私のデビュー作にして、唯一の作品だ。
主人公の高校男子、駿河竜貴が歩道橋から足を滑らせて死んだ所から作品は始まる。
そして、テンプレの異世界転生。そこからのチート能力を駆使して、ヒロインのアルティシアと共に、時には恋敵と手を組んだり、時にはすれ違ったりと、色んな人に出会って成長しながら、仲を深めていくラブコメっぽい、異世界転生物。
ぶっちゃけ挿絵で売れたような気がする。
挿絵効果あるある。ジャケ買いの鉄板効果恐るべし……。
それでも、ファンレター貰ったり、ネットで感想貰ったりしたら、そりゃ調子に乗るよね、嬉しくて。
たまに修羅場中のユエ先生のとこに差し入れがてら、おさんどんしてたら四コマ書いてくれたのネットに上げてて、そこから興味を持った人達にも買って貰えたのは本当にあると思う。
まあ、作品的には二人を結婚させて…めでたしめでたし。の王道予定だった。
……だった?何で過去形?
ふらつく頭を押さえながら体を起こそうとしたが、手も足もピクリと動かせた感じがない。
何だ、これ?
直前までの記憶を振り返れば、どう考えても歩道橋から落ちたような記憶で終わっている。
あ、これ。私、死んでるやつだわ……。
自作のキャラと同じ死因かよ!って突っ込みながらも、一人残すことになってしまった薫流の事が頭をよぎる。
ごめんよ、薫流。よりにもよって、最後の肉親の私があんたの目の前で死んじゃうなんて……。
とりあえず私の財産はあんたが全部貰ってよね。借金は……、多分なかったはずだから。印税とかの手続きも阿良々木さんが教えてくれるよね。
あー……。阿良々木さんやユエ先生にも迷惑かけちゃうな。
未完成のまんまになっちゃった『わたセカ』だけど、最終的にどんな感じになるのかは伝えてあるんだし、…って、無理だよね。人様の作品、勝手にするような人達じゃないもん……。
ま、これも運命だよね、仕方ないかぁ…。
なあんて、意識をゆっくりと手放そうとした時だった。
「ふざけんなっ!こんな死に方してんじゃねえよ!!」
「ひいっ!」
耳元で叫ばれ、その勢いで体が飛び起きた。
んん?起きれた?あれ?生きてる??
周りを見回せば、どこもかしこも真っ白な空間で、そこになんか見覚えのある集団がいました。
「……え?竜貴?竜貴とアルティシア?え?え?」
目の前にいたのは、『わたセカ』の主要キャラ達です。
「………なあんだ。死んだんじゃなくって、夢見てんのかぁ……」
ホッとしました。
だって自作のキャラと作者が話せるなんて、夢の中の話ですよ。妄想です、妄想w
気絶してるのか、重体なのか分かりませんが、とりあえず生きてるのだと安心した。
「…いえ。あの創造主様はお亡くなりになってますのよ?」
金髪碧眼というお約束とも言える姿の聖女であるアルティシアが、頬に手を当てて可愛らしく首を傾げながら、とんでもない事を口にしてくれた。
「…………なんて?」
「ですから。創造主様はお亡くなりになっているのですわ」
……よし。寝よう!
私はどうやら夢の世界にいるのだと、再び眠りにつくのだったーーーー。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
そりゃ長期戦突入だねぇ(笑)