9 / 46
・難民のわんこそば、きたる
しおりを挟む
その日、7つの星を墜とした魔王は日暮れまでに11の集合住宅を築き、122名もの民に自宅を与えた。
人々からは笑顔があふれ、何もなかったこのウンブラを希望と活気が包み込んだ。
『我らのぉ~魔王~っっ♪ その名は~っっ、バァーニィィィ~ッッ♪♪ 魔界一のぉぉ~っっ、働き者ぉぉ~っっ♪♪』
夕飯は賑やかなもんだった。魔王バーニィ・ゴライアスがただの気のいいおっさんだとわかると、大半の連中が畏まらなくなっていった。タンの下手くそな歌は不評だったがな。
「魔王様、ただいま戻りました」
「おう、デスか」
あの時、デスに建築の監督を任せなかったのには理由がある。デスにはあの後、別件の仕事を任せていた。
それは近隣の独立勢力への使者だ。デスとその腹心たちは飯をたらふく積んだ荷台を押して、困窮する同胞へと食料を届けて回った。
「魔王様、この騒ぎはいったい……?」
「へへへ、嬉しいぜ。あいつらやっと俺っちを仲間と認めてくれたみてぇだ」
「はて、魔王様は初めから我らの主でございましょう」
「下らねぇ定義論になっちまうが、仲間と主は違うだろ?」
「は、人身掌握に長じた主を得られて、この魔剣めは幸せにございます」
デスは反論せずに膝を突き、そのカボチャ頭を魔王にたれた。
「で、首尾は?」
「本日だけで7つの勢力を訪ねましたが、うち2つは即答で、魔王様への恭順を誓いました」
「おっと、そりゃ幸先がいい!」
「3日以内に300名ほどがここに加わり、計1000名の大所帯となりましょう」
「む、1000人か……。衣食住を満たすだけでも一苦労だな、そりゃ……」
その一派はひどく飢えていたのだろう。すぐにくるということはそういうことだ。
「では、しばらく待たせますか?」
「何言ってんだ、受け入れるに決まってるだろ。300人の難民くらいどうってことねぇ、どうにかしてやるよっ!」
「は、御意に。このデス、数多くの魔王に仕えて参りましたが、貴方ほど頼もしい方は他におりませぬ」
いつまでも足下にはいつくばられても話しにくい。俺はデスの手を引いて立ち上がらせると、玉座にふんぞり返ってこれからのことを考えた。
「で、他の連中は?」
「正直ではない派閥もおりますが、内心は我らに加わりたがっております。食料が尽きればじきに魔王様のお望み通りになるかと」
そうなるとますます住宅供給の帳尻が合わなくなる。建てても建てても食料目当ての難民がここウンブラに集まることになる……。
「こりゃ、もうちょいイカサマしねぇと釣り合わねぇな……」
対処しなければトラブルに発展することになるだろう。魔界は種族のサラダボールだ。理性より感情を優先する者も多い。
「イカサマ……? 貴方様がもたらす全ては奇跡そのものでございましょう」
「ところがどっこい、俺の奇跡には種と仕掛けがあんだよ」
「……だとしても、貴方が我々にして下さっていることは変わりますまい」
せっかく立ち上がらせたのに、デスはまた俺の足下にひざまずいた。俺はそれを好きにさせて、しばらく難しい顔をして先のことを考えた。
「デス、俺っちは神じゃない。ただのイカサマ師だ」
「いいえ、事実だけに目を向ければ、貴方は神も同然の魔王にございます! 貴方の慈悲深さが多くの命を救うのです、何を恥じる必要がございましょう!」
俺のやっていることは子供の砂場に混じって暴れ回るような行為だ。だがお前は間違っていないと、情熱的にデスは言う。
「ならもうちょい派手に奇跡を起こしても、許されちまうかね……?」
「神にすら見捨てられた我らを救えるのは、貴方様だけにございます。どうか、偉大なるそのお力で、お慈悲を」
「ありがとよ。なら、自重しねぇでぶっ込んでやるさ! お慈悲ってやつをな!」
帳尻を合わせるために、俺はまた軌道上のコルベット船から星を降らせることにした。
全てが本国に発覚した日にはこう弁解しよう。
俺はただ難民を助けただけだ。一人の人間として、救いを求める声に応えただけだ。悪いとは思っている、すまん。……と。
人々からは笑顔があふれ、何もなかったこのウンブラを希望と活気が包み込んだ。
『我らのぉ~魔王~っっ♪ その名は~っっ、バァーニィィィ~ッッ♪♪ 魔界一のぉぉ~っっ、働き者ぉぉ~っっ♪♪』
夕飯は賑やかなもんだった。魔王バーニィ・ゴライアスがただの気のいいおっさんだとわかると、大半の連中が畏まらなくなっていった。タンの下手くそな歌は不評だったがな。
「魔王様、ただいま戻りました」
「おう、デスか」
あの時、デスに建築の監督を任せなかったのには理由がある。デスにはあの後、別件の仕事を任せていた。
それは近隣の独立勢力への使者だ。デスとその腹心たちは飯をたらふく積んだ荷台を押して、困窮する同胞へと食料を届けて回った。
「魔王様、この騒ぎはいったい……?」
「へへへ、嬉しいぜ。あいつらやっと俺っちを仲間と認めてくれたみてぇだ」
「はて、魔王様は初めから我らの主でございましょう」
「下らねぇ定義論になっちまうが、仲間と主は違うだろ?」
「は、人身掌握に長じた主を得られて、この魔剣めは幸せにございます」
デスは反論せずに膝を突き、そのカボチャ頭を魔王にたれた。
「で、首尾は?」
「本日だけで7つの勢力を訪ねましたが、うち2つは即答で、魔王様への恭順を誓いました」
「おっと、そりゃ幸先がいい!」
「3日以内に300名ほどがここに加わり、計1000名の大所帯となりましょう」
「む、1000人か……。衣食住を満たすだけでも一苦労だな、そりゃ……」
その一派はひどく飢えていたのだろう。すぐにくるということはそういうことだ。
「では、しばらく待たせますか?」
「何言ってんだ、受け入れるに決まってるだろ。300人の難民くらいどうってことねぇ、どうにかしてやるよっ!」
「は、御意に。このデス、数多くの魔王に仕えて参りましたが、貴方ほど頼もしい方は他におりませぬ」
いつまでも足下にはいつくばられても話しにくい。俺はデスの手を引いて立ち上がらせると、玉座にふんぞり返ってこれからのことを考えた。
「で、他の連中は?」
「正直ではない派閥もおりますが、内心は我らに加わりたがっております。食料が尽きればじきに魔王様のお望み通りになるかと」
そうなるとますます住宅供給の帳尻が合わなくなる。建てても建てても食料目当ての難民がここウンブラに集まることになる……。
「こりゃ、もうちょいイカサマしねぇと釣り合わねぇな……」
対処しなければトラブルに発展することになるだろう。魔界は種族のサラダボールだ。理性より感情を優先する者も多い。
「イカサマ……? 貴方様がもたらす全ては奇跡そのものでございましょう」
「ところがどっこい、俺の奇跡には種と仕掛けがあんだよ」
「……だとしても、貴方が我々にして下さっていることは変わりますまい」
せっかく立ち上がらせたのに、デスはまた俺の足下にひざまずいた。俺はそれを好きにさせて、しばらく難しい顔をして先のことを考えた。
「デス、俺っちは神じゃない。ただのイカサマ師だ」
「いいえ、事実だけに目を向ければ、貴方は神も同然の魔王にございます! 貴方の慈悲深さが多くの命を救うのです、何を恥じる必要がございましょう!」
俺のやっていることは子供の砂場に混じって暴れ回るような行為だ。だがお前は間違っていないと、情熱的にデスは言う。
「ならもうちょい派手に奇跡を起こしても、許されちまうかね……?」
「神にすら見捨てられた我らを救えるのは、貴方様だけにございます。どうか、偉大なるそのお力で、お慈悲を」
「ありがとよ。なら、自重しねぇでぶっ込んでやるさ! お慈悲ってやつをな!」
帳尻を合わせるために、俺はまた軌道上のコルベット船から星を降らせることにした。
全てが本国に発覚した日にはこう弁解しよう。
俺はただ難民を助けただけだ。一人の人間として、救いを求める声に応えただけだ。悪いとは思っている、すまん。……と。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
王国の女王即位を巡るレイラとカンナの双子王女姉妹バトル
ヒロワークス
ファンタジー
豊かな大国アピル国の国王は、自らの跡継ぎに悩んでいた。長男がおらず、2人の双子姉妹しかいないからだ。
しかも、その双子姉妹レイラとカンナは、2人とも王妃の美貌を引き継ぎ、学問にも武術にも優れている。
甲乙つけがたい実力を持つ2人に、国王は、相談してどちらが女王になるか決めるよう命じる。
2人の相談は決裂し、体を使った激しいバトルで決着を図ろうとするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる