惑星監視官、魔王になる - 助けて魔王様って言われてもそりゃ銀河条約違反だっての! 勘弁してくれよ、ったくしょうがねぇなぁ!? -

ふつうのにーちゃん

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・サイボーグ魔王、赤の英雄を骨にする 1/2

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 翌々日、ウンブラは約300名の難民を迎えた。難民たちは自ら伐採し、原木を抱え、製材と大工をする魔王に絶句していた。
 しかしその魔王が自分たちの家を建ててくれていると知ると、彼らの驚きは感動に変わった。

「デス、オレタチ、間違ッテタ……。コノ、男、魔王ノ中ノ、魔王……!」

 ゴブリン族の勇者は魔王バーニィへの忠誠を誓った。

「出会い頭に首を撫でられたときは殺されるかと思ったワン……。けど、とってもいい人だったワーン♪」

 コボルト族たちは二足歩行するワンコにしか見えねぇ。俺は地上に降りてこれをモフる日を夢見ていた。
 感無量だ……。俺も、コボルト族の勇者も、感無量で喜びを噛みしめた。

 彼らゴブリンやコボルトは弱い種族だ。魔界においての不変の労働階級にして雑兵だ。少し前に開拓していた土地を他の派閥に横取りされ、ひどく困窮していた。

「ま、よろしくな、ゴブ勇、コボ勇!」

「ガウガウ、俺ラ、食イ物ノ恩ハ、忘レナイ!」

「ひ、人前で撫で撫では止めて欲しいキャワァァンッッ?! アッアッアッ、アォォォーンッッ♪」

 シバイヌそっくりのコボ勇様をモフらずにはいられなかった。撫でるとコボルトの勇者がアホみたいな顔をするところが最高だった。

 しかしそんな折り、事件が起きた。ここウンブラに招かれざる客が訪れ、俺の民に手をかけた。
 客人の名は赤の英雄ドキルマ。俺と同じここではない別の世界からやってきた存在だ。

 魔王が召喚された異世界の者ならば、彼ら英雄もまた同じ。彼らは魔王の天敵、彼らだけが魔王を傷つけられる特別な力を持っていた。

 その英雄のうち一人、赤の英雄ドキルマがウンブラを強襲したと火急の報が入った。

「ちょ、ちょっとまずいよ、これ……っ。なんでデスがいないときに限ってきちゃうわけ……っ!?」

 古の玉座の間でパイアはうろたえた。通常、魔王が英雄の相手をすることはなかった。相性が悪い上に、斬られたら組織が崩壊するからだ。

「なんだよ、俺っちがいるのにうろたえんじゃねぇよ、パイア」

「アンタ全然わかってないっ! あいつらは神の尖兵なのっ! 確かにアンタは最強無敵だけど、あいつら英雄はアンタを殺す力を持ってるのっ!」

「いやそんなん知ってっし」

 玉座を立とうとするとステラが羽根を羽ばたかせて飛び込んできて、俺の道を阻んだ。

「た、戦っちゃ、ダメ……ッ!! デス様を、待って……お願い……!!」

「先代魔王を殺したのもあいつらっ! 行けばいくらアンタでも死ぬからっ!」

 伝令にやってきたシルフ族の男は『タンタルス様が時間を稼いでいるので大丈夫です!』と俺に叫んだ。
 タンとは昨日、一緒に仕込んだワインを飲もうって約束しているんだ。死なれたらそれこそ一大事じゃねぇか。

「あんま見くびんねぇでくれねぇか? こんな成りだが、これでも昔は騎士だったんだぜ、俺っちはよ」

 エネルギーブレードで敵対宇宙人と切り結び合ったこと千度。外宇宙探検隊の仕事はそこいらの艦隊の白兵戦闘員より過酷だ。

「死ぬって言ってるでしょっ!! アンタに死なれたら気分悪いから止めてよっ!!」

「タンに死なれる方が俺っちは不快だね。まあ見てな、俺ぁ魔王以前に――神様なんだよ」

 神様はステラに魔王の玉座を譲って、謁見の間を取び出した。当然ながら制止の言葉が上がったが、悪いが心配は何も要らない。

 赤の英雄ドキルマが俺のウンブラで暴れ回っているなんてそんな悪夢、さっさと終わらせなきゃならなかった。ドキルマは英雄の中でも特に頭のイカレたサディストだ。

 東部の住宅地から火の手が上がっていた。2歩で25メートルを駆け抜ける足で、俺はウンブラのリーダーとしてそこに飛び込んだ。

 ブリザードの魔法で住宅火災を鎮火させた。辺りは血塗れ、やつは俺の民に手をかけた。未開惑星の原始人ごときが、俺の民を虐殺したのだ。

 ドクンと、破壊衝動が全身を包み込み、俺は歴代の魔王と同じてつを踏みかけた。

 これに身を任せた魔王は敗北する。その歴史を俺は8年間も見つめてきた。勝ちたければ魔王の肉体がもたらす破壊衝動に勝たなければならなかった。

 そこに笛のようにヒューヒューとなる奇妙な音が届いた。音を追って建物を回り込んでみると、俺は大地を蹴っていた。

「おいっ、大丈夫かっ!? おいしっかりしろっ!!」

 シルフ族の親子が羽を折られ、吊るし首にされかけていた。頭上から吊されたロープに首を縛られ、不安定な岩の上に立たされていた。

 ロープを震動ナイフで斬ってやったが父親の方が動かない。息子は喉を笛のようにして、救いに涙を浮かべていた。

 息子の喉を絞めるロープを切り、歴代の中で最も慈悲深かった魔王クルトベレェが使ったハイヒールをかけてやることにした。だが息子は俺に言った。

「わ……な……にげ……て……」

 これは罠。自分たちは餌。なるほどあの卑劣漢がやりそうなことだった。しかしいったい、どこから……?

「死にさらせやぁぁぁぁーっっ!!!!」

 ドキルマは建物の屋根に身を隠していた。そこからやつは飛び降り、魔王殺しのために特別に鍛えられた赤の聖剣で魔王バーニィ・ゴライアスの頸部を斬り落とそうとした。

 そいつを俺は避けなかった。いや厳密に言うと避けられなかった。避ければ俺の下にいるシルフ族の男の子が死ぬ。だから俺はそれをあえて首で受けた。

 それで死んでねぇってことはそういうことだ。生き延びた俺は立ち上がった。
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