10 / 46
・サイボーグ魔王、赤の英雄を骨にする 1/2
しおりを挟む
翌々日、ウンブラは約300名の難民を迎えた。難民たちは自ら伐採し、原木を抱え、製材と大工をする魔王に絶句していた。
しかしその魔王が自分たちの家を建ててくれていると知ると、彼らの驚きは感動に変わった。
「デス、オレタチ、間違ッテタ……。コノ、男、魔王ノ中ノ、魔王……!」
ゴブリン族の勇者は魔王バーニィへの忠誠を誓った。
「出会い頭に首を撫でられたときは殺されるかと思ったワン……。けど、とってもいい人だったワーン♪」
コボルト族たちは二足歩行するワンコにしか見えねぇ。俺は地上に降りてこれをモフる日を夢見ていた。
感無量だ……。俺も、コボルト族の勇者も、感無量で喜びを噛みしめた。
彼らゴブリンやコボルトは弱い種族だ。魔界においての不変の労働階級にして雑兵だ。少し前に開拓していた土地を他の派閥に横取りされ、ひどく困窮していた。
「ま、よろしくな、ゴブ勇、コボ勇!」
「ガウガウ、俺ラ、食イ物ノ恩ハ、忘レナイ!」
「ひ、人前で撫で撫では止めて欲しいキャワァァンッッ?! アッアッアッ、アォォォーンッッ♪」
シバイヌそっくりのコボ勇様をモフらずにはいられなかった。撫でるとコボルトの勇者がアホみたいな顔をするところが最高だった。
しかしそんな折り、事件が起きた。ここウンブラに招かれざる客が訪れ、俺の民に手をかけた。
客人の名は赤の英雄ドキルマ。俺と同じここではない別の世界からやってきた存在だ。
魔王が召喚された異世界の者ならば、彼ら英雄もまた同じ。彼らは魔王の天敵、彼らだけが魔王を傷つけられる特別な力を持っていた。
その英雄のうち一人、赤の英雄ドキルマがウンブラを強襲したと火急の報が入った。
「ちょ、ちょっとまずいよ、これ……っ。なんでデスがいないときに限ってきちゃうわけ……っ!?」
古の玉座の間でパイアはうろたえた。通常、魔王が英雄の相手をすることはなかった。相性が悪い上に、斬られたら組織が崩壊するからだ。
「なんだよ、俺っちがいるのにうろたえんじゃねぇよ、パイア」
「アンタ全然わかってないっ! あいつらは神の尖兵なのっ! 確かにアンタは最強無敵だけど、あいつら英雄はアンタを殺す力を持ってるのっ!」
「いやそんなん知ってっし」
玉座を立とうとするとステラが羽根を羽ばたかせて飛び込んできて、俺の道を阻んだ。
「た、戦っちゃ、ダメ……ッ!! デス様を、待って……お願い……!!」
「先代魔王を殺したのもあいつらっ! 行けばいくらアンタでも死ぬからっ!」
伝令にやってきたシルフ族の男は『タンタルス様が時間を稼いでいるので大丈夫です!』と俺に叫んだ。
タンとは昨日、一緒に仕込んだワインを飲もうって約束しているんだ。死なれたらそれこそ一大事じゃねぇか。
「あんま見くびんねぇでくれねぇか? こんな成りだが、これでも昔は騎士だったんだぜ、俺っちはよ」
エネルギーブレードで敵対宇宙人と切り結び合ったこと千度。外宇宙探検隊の仕事はそこいらの艦隊の白兵戦闘員より過酷だ。
「死ぬって言ってるでしょっ!! アンタに死なれたら気分悪いから止めてよっ!!」
「タンに死なれる方が俺っちは不快だね。まあ見てな、俺ぁ魔王以前に――神様なんだよ」
神様はステラに魔王の玉座を譲って、謁見の間を取び出した。当然ながら制止の言葉が上がったが、悪いが心配は何も要らない。
赤の英雄ドキルマが俺のウンブラで暴れ回っているなんてそんな悪夢、さっさと終わらせなきゃならなかった。ドキルマは英雄の中でも特に頭のイカレたサディストだ。
東部の住宅地から火の手が上がっていた。2歩で25メートルを駆け抜ける足で、俺はウンブラのリーダーとしてそこに飛び込んだ。
ブリザードの魔法で住宅火災を鎮火させた。辺りは血塗れ、やつは俺の民に手をかけた。未開惑星の原始人ごときが、俺の民を虐殺したのだ。
ドクンと、破壊衝動が全身を包み込み、俺は歴代の魔王と同じてつを踏みかけた。
これに身を任せた魔王は敗北する。その歴史を俺は8年間も見つめてきた。勝ちたければ魔王の肉体がもたらす破壊衝動に勝たなければならなかった。
そこに笛のようにヒューヒューとなる奇妙な音が届いた。音を追って建物を回り込んでみると、俺は大地を蹴っていた。
「おいっ、大丈夫かっ!? おいしっかりしろっ!!」
シルフ族の親子が羽を折られ、吊るし首にされかけていた。頭上から吊されたロープに首を縛られ、不安定な岩の上に立たされていた。
ロープを震動ナイフで斬ってやったが父親の方が動かない。息子は喉を笛のようにして、救いに涙を浮かべていた。
息子の喉を絞めるロープを切り、歴代の中で最も慈悲深かった魔王クルトベレェが使ったハイヒールをかけてやることにした。だが息子は俺に言った。
「わ……な……にげ……て……」
これは罠。自分たちは餌。なるほどあの卑劣漢がやりそうなことだった。しかしいったい、どこから……?
「死にさらせやぁぁぁぁーっっ!!!!」
ドキルマは建物の屋根に身を隠していた。そこからやつは飛び降り、魔王殺しのために特別に鍛えられた赤の聖剣で魔王バーニィ・ゴライアスの頸部を斬り落とそうとした。
そいつを俺は避けなかった。いや厳密に言うと避けられなかった。避ければ俺の下にいるシルフ族の男の子が死ぬ。だから俺はそれをあえて首で受けた。
それで死んでねぇってことはそういうことだ。生き延びた俺は立ち上がった。
しかしその魔王が自分たちの家を建ててくれていると知ると、彼らの驚きは感動に変わった。
「デス、オレタチ、間違ッテタ……。コノ、男、魔王ノ中ノ、魔王……!」
ゴブリン族の勇者は魔王バーニィへの忠誠を誓った。
「出会い頭に首を撫でられたときは殺されるかと思ったワン……。けど、とってもいい人だったワーン♪」
コボルト族たちは二足歩行するワンコにしか見えねぇ。俺は地上に降りてこれをモフる日を夢見ていた。
感無量だ……。俺も、コボルト族の勇者も、感無量で喜びを噛みしめた。
彼らゴブリンやコボルトは弱い種族だ。魔界においての不変の労働階級にして雑兵だ。少し前に開拓していた土地を他の派閥に横取りされ、ひどく困窮していた。
「ま、よろしくな、ゴブ勇、コボ勇!」
「ガウガウ、俺ラ、食イ物ノ恩ハ、忘レナイ!」
「ひ、人前で撫で撫では止めて欲しいキャワァァンッッ?! アッアッアッ、アォォォーンッッ♪」
シバイヌそっくりのコボ勇様をモフらずにはいられなかった。撫でるとコボルトの勇者がアホみたいな顔をするところが最高だった。
しかしそんな折り、事件が起きた。ここウンブラに招かれざる客が訪れ、俺の民に手をかけた。
客人の名は赤の英雄ドキルマ。俺と同じここではない別の世界からやってきた存在だ。
魔王が召喚された異世界の者ならば、彼ら英雄もまた同じ。彼らは魔王の天敵、彼らだけが魔王を傷つけられる特別な力を持っていた。
その英雄のうち一人、赤の英雄ドキルマがウンブラを強襲したと火急の報が入った。
「ちょ、ちょっとまずいよ、これ……っ。なんでデスがいないときに限ってきちゃうわけ……っ!?」
古の玉座の間でパイアはうろたえた。通常、魔王が英雄の相手をすることはなかった。相性が悪い上に、斬られたら組織が崩壊するからだ。
「なんだよ、俺っちがいるのにうろたえんじゃねぇよ、パイア」
「アンタ全然わかってないっ! あいつらは神の尖兵なのっ! 確かにアンタは最強無敵だけど、あいつら英雄はアンタを殺す力を持ってるのっ!」
「いやそんなん知ってっし」
玉座を立とうとするとステラが羽根を羽ばたかせて飛び込んできて、俺の道を阻んだ。
「た、戦っちゃ、ダメ……ッ!! デス様を、待って……お願い……!!」
「先代魔王を殺したのもあいつらっ! 行けばいくらアンタでも死ぬからっ!」
伝令にやってきたシルフ族の男は『タンタルス様が時間を稼いでいるので大丈夫です!』と俺に叫んだ。
タンとは昨日、一緒に仕込んだワインを飲もうって約束しているんだ。死なれたらそれこそ一大事じゃねぇか。
「あんま見くびんねぇでくれねぇか? こんな成りだが、これでも昔は騎士だったんだぜ、俺っちはよ」
エネルギーブレードで敵対宇宙人と切り結び合ったこと千度。外宇宙探検隊の仕事はそこいらの艦隊の白兵戦闘員より過酷だ。
「死ぬって言ってるでしょっ!! アンタに死なれたら気分悪いから止めてよっ!!」
「タンに死なれる方が俺っちは不快だね。まあ見てな、俺ぁ魔王以前に――神様なんだよ」
神様はステラに魔王の玉座を譲って、謁見の間を取び出した。当然ながら制止の言葉が上がったが、悪いが心配は何も要らない。
赤の英雄ドキルマが俺のウンブラで暴れ回っているなんてそんな悪夢、さっさと終わらせなきゃならなかった。ドキルマは英雄の中でも特に頭のイカレたサディストだ。
東部の住宅地から火の手が上がっていた。2歩で25メートルを駆け抜ける足で、俺はウンブラのリーダーとしてそこに飛び込んだ。
ブリザードの魔法で住宅火災を鎮火させた。辺りは血塗れ、やつは俺の民に手をかけた。未開惑星の原始人ごときが、俺の民を虐殺したのだ。
ドクンと、破壊衝動が全身を包み込み、俺は歴代の魔王と同じてつを踏みかけた。
これに身を任せた魔王は敗北する。その歴史を俺は8年間も見つめてきた。勝ちたければ魔王の肉体がもたらす破壊衝動に勝たなければならなかった。
そこに笛のようにヒューヒューとなる奇妙な音が届いた。音を追って建物を回り込んでみると、俺は大地を蹴っていた。
「おいっ、大丈夫かっ!? おいしっかりしろっ!!」
シルフ族の親子が羽を折られ、吊るし首にされかけていた。頭上から吊されたロープに首を縛られ、不安定な岩の上に立たされていた。
ロープを震動ナイフで斬ってやったが父親の方が動かない。息子は喉を笛のようにして、救いに涙を浮かべていた。
息子の喉を絞めるロープを切り、歴代の中で最も慈悲深かった魔王クルトベレェが使ったハイヒールをかけてやることにした。だが息子は俺に言った。
「わ……な……にげ……て……」
これは罠。自分たちは餌。なるほどあの卑劣漢がやりそうなことだった。しかしいったい、どこから……?
「死にさらせやぁぁぁぁーっっ!!!!」
ドキルマは建物の屋根に身を隠していた。そこからやつは飛び降り、魔王殺しのために特別に鍛えられた赤の聖剣で魔王バーニィ・ゴライアスの頸部を斬り落とそうとした。
そいつを俺は避けなかった。いや厳密に言うと避けられなかった。避ければ俺の下にいるシルフ族の男の子が死ぬ。だから俺はそれをあえて首で受けた。
それで死んでねぇってことはそういうことだ。生き延びた俺は立ち上がった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
王国の女王即位を巡るレイラとカンナの双子王女姉妹バトル
ヒロワークス
ファンタジー
豊かな大国アピル国の国王は、自らの跡継ぎに悩んでいた。長男がおらず、2人の双子姉妹しかいないからだ。
しかも、その双子姉妹レイラとカンナは、2人とも王妃の美貌を引き継ぎ、学問にも武術にも優れている。
甲乙つけがたい実力を持つ2人に、国王は、相談してどちらが女王になるか決めるよう命じる。
2人の相談は決裂し、体を使った激しいバトルで決着を図ろうとするのだった。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる