神スキル『イチャつくだけで最強バフ』 - 春の貞操観念逆転種族を添えて -

ふつうのにーちゃん

文字の大きさ
61 / 69
mission 2 オーリオーンの暗闇

・総力戦:オーリオーンの闇計画 - 欲深き円環 -

しおりを挟む
・パルヴァス

 その日、俺はエメラルドの石柱輝くポータルに立っていた。
 オーリオーンの闇計画の第一段階、アルバレア自由主義連邦国との同盟締結を支援するために、外交使節に加わることになった。

 幸運の根源であるパルヴァス・レイクナスをオルヴァールの外に出すことをミルディンさんは渋ったが、ファフナさんの後押しで願いが叶うことになった。

 これから世界の命運を塗り替える計画が始動する。
 いくら戦えないからといって、安全なオルヴァールに引きこもっているのは堪えられなかった。

「常々、もっとわがままを言ってほしいとは思っていました……。ですが……困ったものですね……」
「そう心配するな、ミルディン殿。いざとなったら番犬である俺が大将を守る」
「君は狼だよ」

 俺の足下で耳をかく狼の後ろに回って、代わりにかいてあげた。

「うむ、そして大将はレイクナス王国の元王太子。外交使節に加えない理由はない」
「そうっすよ。それにこの作戦が失敗してザナーム騎士団が半壊したら、それこそ緩やかな世界の終わりっす」

 ポータルが、美しいエメラルドの石柱が輝きだした。
 俺、シルバ、ミルディンさん、カチューシャさん、それぞれが石柱の前に集まって、見送りのみんなに手を振った。

「行ってきます……。ガルガンチュア、不在の間、よろしくお願いいたします……」
「わふっ、パンタグリュエルに伝えておこう! 気を付けて行くのじゃよ、愛弟子よ」
「うんっ、全部コギ仙人のおかげだよ!」

「軽蔑して止みませんが、効果はありました。私のファフナに、あんなことをさせるなんて……いつか報いを受けさせます」
「ワヒョヒョヒョヒョ!! ……冗談じゃろ?」

 ミルディンさんが首を切るようなジェスチャーをすると、美しいオルヴァールが消えた。
 世界がオルヴァールの夜のように暗くなり、それがしばらく続いた。

 世界が正常な状態に戻ったのは、それから1分ほどが経った後だった。
 俺たちはいつの間にか昼の太陽の下にいた。

 幽閉生活の中で憧れて止まなかった高い青空、銀色の輝く雲、草木の香りの混じる湿った風を感じた。

「では参りましょうか、アルバレア連邦議会に」

 そこは人気のない林道だった。
 林道を抜けるとそこは大通りで、立ち並ぶ店や露店の彼方にお城がそびえていた。

 王族が排斥された後も政府の中枢施設は変わらなかったのだと、ミルディンさんが語ってくれた。

「少し、浮いていますね、私……」
「大丈夫っす、そこはミルディン殿だけではないっす」
「長耳の女に、盾と槍の巨女、品のいい美少年に、灰色狼。誰から見ても奇妙だろう」
「喋らないって約束だったでしょ、シルバ」

「わんわんっ」

 俺たちは街の人たちの注目を一身に浴びながら、お城に続く大通りを進んだ。
 王様がいなくなっても、門衛さんは仕事を首になったりしないようだった。

「ミルディン様ですね、議長たちが中でお待ちです、どうぞこちらへ」

 門衛の人にお城の中に通された。
 俺とシルバの姿になぜか驚いていたようだけど、それ意外はあっさりとしていた。

「謁見の間……?」
「今は応接間です」

 応接間には人が4人いた。
 お爺さんと、お婆さんと、初老のおじさんと、線の細い紳士が真剣に何かを話し合っていた。

「議長、ミルディン様をお連れしました」
「ミルディン……? 誰だね? 今日は他に会談の予定などなかったはずだが……」

 お爺さんは不思議そうにそう言った。
 お婆さんはこちらに疑いの目を向け、おじさんは書類を確認した。
 紳士だけが落ち着き払っていた。

「ミルディン様ですよ、ほら、あの――ええと……ど忘れしてしまいましたが、あのミルディン様です!」

 門衛さんの様子がどうもおかしい。
 ミルディンさんはそれを気にも止めずに前に出た。

「私はミルディン。ザナーム騎士団の副団長兼参謀のミルディンと申します」

 え、まさか、これ……。
 アポイントメント……取って、ない……?

「騎士や傭兵には見えないが……しかし、その耳は、もしや……」
「ええ、見たところ彼女は神族のようです」

 お爺さんの疑問に紳士が答えた。
 その紳士は来賓のようだ。
 黒檀の長テーブルの端にぽつんと独りで座っていた。

「申し訳ありませんわ、ナーイさん。何かの手違いのようですわ」
「なかなか面白いダジャレですね、レディ」

「……は?」

 来賓のナーイさんが席を立ち、何を思ったのかミルディンの前に立った。
 頬の痩せこけた40代ほどの紳士が、唇に手を当ててミルディンさんを観察した。

「もしや、貴女きじょがギュゲスですか?」
「いえ、初めて聞く名詞です。ギュゲスとは……?」

「……ええ、我々にもその問いの答えがわかりませんでしたが、つい先ほど、氷塊いたしました。ギュゲスの正体は貴女ですね」

 この紳士、何を言っているのだろう……。
 お婆さんはこの人を気に入っているようだけど、なんだか不気味に感じてきた。

「すみません、イミフです」
「もしや、そちらにいるのは――パルヴァス・レイクナス王子ですか?」
「……えっ?!」

 急に怖くなって後ずさった。
 そうするとすぐに前に出てくれるシルバとカチューシャさんが頼もしく前に出てくれた。

 ミルディンさんもすぐに俺の隣に下がって、この奇妙な紳士を警戒した。
 何か、非人間的な何かを感じさせる、得体の知れない表情をする人だ……。

「なるほど、なるほど……これは困りましたね……」
「ダリウス議長、この紳士は何者でしょうか……? なぜ、いまだ孤立状態にある国レイクナスの、元王太子の名を知っているのでしょうか……?」

 向こうからすると、アポなしで押し掛けてきたそっちこそ何者だ、という状況だ。
 お爺さんとお婆さんとおじさんは顔を寄せて、こそこそと話し合いを始めた。

 そしてふいにお爺さんとおじさん席を立ち、壁際まで寄るとそこにあった剣を取る。
 まさかその剣で、俺たちを襲うつもりなのではないかと焦った。

「ハポナ夫人、貴女とのひとときは掛け替えのない時間だった」
「ああ、ナーイ……残念だわ……」

 お婆さんとナーイさんは恋人……?
 でも歳が離れているように見えるけど……。

「交渉は決裂のようだね、ダリウス議長。今後の参考に、なぜ私にその剣を向けるのか、教えてはくれまいか?」
「我々アルバレアは、自由主義連邦は、円環との契約をひた隠しにした王朝を、粛正して生まれた政府だ」

 王族の粛正。
 元王子からすれば、背中が凍るような恐ろしい言葉だった。
 ヘリートのことが心配になった……。

「だがね、議長。生き残るためには、これが最前とは思わないかね? ニンゲンの言葉で言うところの『背に腹は変えられない』状況ではないか?」

 まるで自分が人間ではないような言い方だ。
 交渉が決裂したというのに、紳士はどこか機嫌がよかった。

「欲深き円環……」

 ミルディンさんがそうつぶやいた。
 その言葉は議長たち三人を凍り付かせ、カチューシャさんに緊張を、シルバにうなり声を上げさせた。

「貴方が欲深き円環なのですか……?」

 続けてミルディンさんは聞いた。
 言葉は落ち着いていても、ミルディンさんの顔には鋭い敵意があった。

「そう言うそちらは、ギュゲスで間違いないようだ。……しかし、奇妙だ。なぜ君たちが、人間の味方をするのだね?」

「貴方が人間を骨の髄までしゃぶり尽くした後に、私たちが貴方のカモにされるからです」
「ああ、私の交渉術ならそれもあり得るかも知れない。……うん、遅かれ遠かれ、そうなるだろう」

 これが俺たちの敵……?
 これが俺たちが魔王と恐れた最悪の存在……?
 不気味だけど、あまりにちっぽけだ……。

「私はね、私たちはビジネスをしているだけなのだよ。私たちは代償相応の恩恵を与えているはずだ。それを踏み倒そうとする人間たちこそ、真の不法者ではないかね?」

 攻撃するつもりなのか、カチューシャさんが流し目でミルディンさんを見た。
 ミルディンさんは静かにそれにうなづいた。

「ムダかとは思いますが、排除する他にないでしょう。どうでしょうか、ダリウス議長?」
「我々は欲深き円環には屈せん。我々は贄にされるために生まれたのではない。交渉は決裂だ!」

「お別れの時間のようだ。さようなら、ハポナ夫人、楽しかった……」
「ああ……ナーイ……貴方が敵でなかったら……」

「私を殺せばエーテル体の大襲撃が始まる。猶予は約二日といったところか。私は円環を構成する一部であるが、私個人が存在すると仮定した上で、あえて言うなれば――」

 二本の剣と一本の槍が紳士ナーイを襲った。
 彼はそれを避けようとしなかった。
 死をまったく恐れていなかった。

「君たちの勝利を願わん」

 俺たちは円環を構成する一部を倒した。
 その円環の一部は、円環の役目を否定して散っていった。

 何から何まで、奇妙な人だった。

「これは私の仮説ですが……彼は契約を取り付けるための、人間に近い個体だったのでしょう……。円環を構成する、末端の営業マンといったところでしょうか……。まあ、私の勝手な推測ですが……」

 ただ一つ確かなことがあるとすれば、大襲撃のトリガーを引いてしまったということだ。

 猶予は二日。ナーイさんが最期に教えてくれた貴重なアドバイスだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

処理中です...