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・逆賊フリントゥスを制圧する
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「死にたくないなら手を引け。母上、貴女もです。噂によるとカーレッド公爵らは、母上、ソーミャ、ベルナディオ兄上の首に、総額で大金貨4000枚の懸賞金を闇の世界にかけたらしいですよ」
日本円にして約8億円。だったそれだけで政府をひっくり返せるなら安いものだろうか。
「なんと愚かな……。そんなことをすれば、無為に世を荒らすばかりでしょう」
「これだけの懸賞金が約束されれば、昨日親しく語り合っていたここの近衛兵や女官が、明日からは金に目がくらんだ人殺しに変わり果てるでしょうな? 精々、小鳥のように怯えて暮らすと――」
バカにするようにフリントゥスが妹の黒髪に手をかけようとした。間にいる雑草には目もくれずに。
「おい、貴様、何をする……?」
当然、護衛の者としてその暴挙を身をていして止めた。
「ゴミが……っ、下浅のゴミごときがっ、この我の道を阻むなっっ!!」
フリントゥスはこちらの行為に激昂し、14歳の少年を平手打ちにしようとした。
相手は皇族。今後の情勢次第では、次の皇帝となるかもしれない男だ。ここはあえて殴らせておいた方が角が立たなかった。
「ソーミャッッ!?」
そう、割り切ったはず、なのだけど……。
「なっ、貴様なぜそのような雑草をかばうっ!?」
ソーミャが前に出て、俺の代わりに平手打ちを受けた。
「失礼、フリントゥス皇子殿下……」
俺は無意識にそう口にしていた。いつの間にか身体が勝手に動いて、外道野郎の襟首を左手でつかんでいた。
「な、何を――うっ、かっ、かはっっ?!!」
それは喉を締めるのではなく、投げて無力化するためだった。
怒りに駆られていた俺は、小太りの皇子をくるりと背負い投げて、ヤツが背中から応接テーブルに叩き付けられるのを目撃した。
「うっ、うがっっ?! お、おぉぉぉぉ…………っっ」
激痛に悶絶する男を冷たく見下ろした。
普段穏やかに生きる自分に、こんな危険な一面があるなんて知らなかった。怒りが俺の身体を突き動かしていた。
「まあ素敵、殴られたかいがございました」
「わらわが証人となりましょう。アルヴェイグは正しく護衛の務めを果たしました。……一瞬、オラフ王が重なって見えましたよ」
「わたくし『キュン……ッ』といたしました。いいものですね、自らの彼ピッピでファンネルアタックするこの快感……格別にございます」
二人はそう言ってくれるが、明らかにやり過ぎてしまった。祖国の家族に大きな迷惑がかかるかもしれない。けれど後悔の情はこの胸にない。
「フリントゥス皇子殿下、皇太子様と皇女様は俺の大切な友人です。二人に手を出すおつもりならば、俺も貴方に容赦はしません」
「き、貴様……っ、後悔するぞ……っ!! 我が皇帝となった暁には、貴様らアリラテの民を皆殺しにしてくれるぞっっ!!」
「貴方は皇帝にふさわしくない。皇太子ベルナディオこそが、次の皇帝にふさわしい。ここから出て行け、逆賊フリントゥスッッ!!」
今確信した。こんな男が皇帝となったら、怒りを買おうと買うまいと祖国はおしまいだ。祖国アリラテの命綱はベルナディオ皇太子殿下だ。
「なっ、なんたる侮辱……!! 滅ぼしてやる……っっ、貴様の国を、滅ぼしてやるやらからなぁぁ……っっ?!! 覚えていろよぉぉ、雑草のクソガキごときがっっ!!」
敵意を押し隠す近衛兵に第三皇子フリントゥスは助け起こされて、この赤竜宮の住まいを逃げるように去っていった。
「見直しましたよ、オラフ王の息子よ」
「いっそここで、アレの息の根を止めて下さればよろしかったのに……」
「すみません……ソーミャ皇女が殴られてカッとなって、そしたらいつの間にか、あの人を投げていました……」
それは若さか、あるいは血染めのオラフより継いだ遺伝子か。無意識の暴力に俺自身が驚いていた。
「貴方の気概と勇気に敬意を表して、わらわも覚悟を決めるといたしましょう」
「え……それは、どういう……?」
「わらわは赤竜宮を出ます。正しき皇子を皇帝にするために、説得にまいります。ソーミャを任せましたよ、アルヴェイグ王子」
命を狙われているというのに、皇后様は美形の護衛たちを引き連れて赤竜宮を出ていった。
宮廷と呼ばれる鬼の住まう戦場で、ベルナディオ皇太子の皇帝継承を支援するために。
「あふ……。なんだか、わたくし、急に眠くなってまいりました……」
「寝ましょう。君は俺が守るから、安心して休んで下さい」
「貴方に心から感謝を。死に怯えなければならないとは、有限の命を与えられし子らは、ひどく難儀でございますね……」
「最近知り合った俺の友人は、人生に終わりがあることは幸せなことだって言っていました」
青く輝くカフスボタンに手をかけて、元天使様の皇女様に笑いかけた。
「ええ、わたくしもいつかは、貴方に看取られて、人生の大団円を迎えてみたく存じます」
「それもいいけど、今は幸せな未来を想像しませんか?」
「まあっ、明るい家族計画にございますね」
ソーミャ皇女をベッドにお連れすると、彼女はすぐに目を閉じて、ほどなくして寝息を立て始めた。
皇太子殿下の生死が俺たちの運命の分岐点だ。彼だけは絶対に死なせてはいけなかった。
日本円にして約8億円。だったそれだけで政府をひっくり返せるなら安いものだろうか。
「なんと愚かな……。そんなことをすれば、無為に世を荒らすばかりでしょう」
「これだけの懸賞金が約束されれば、昨日親しく語り合っていたここの近衛兵や女官が、明日からは金に目がくらんだ人殺しに変わり果てるでしょうな? 精々、小鳥のように怯えて暮らすと――」
バカにするようにフリントゥスが妹の黒髪に手をかけようとした。間にいる雑草には目もくれずに。
「おい、貴様、何をする……?」
当然、護衛の者としてその暴挙を身をていして止めた。
「ゴミが……っ、下浅のゴミごときがっ、この我の道を阻むなっっ!!」
フリントゥスはこちらの行為に激昂し、14歳の少年を平手打ちにしようとした。
相手は皇族。今後の情勢次第では、次の皇帝となるかもしれない男だ。ここはあえて殴らせておいた方が角が立たなかった。
「ソーミャッッ!?」
そう、割り切ったはず、なのだけど……。
「なっ、貴様なぜそのような雑草をかばうっ!?」
ソーミャが前に出て、俺の代わりに平手打ちを受けた。
「失礼、フリントゥス皇子殿下……」
俺は無意識にそう口にしていた。いつの間にか身体が勝手に動いて、外道野郎の襟首を左手でつかんでいた。
「な、何を――うっ、かっ、かはっっ?!!」
それは喉を締めるのではなく、投げて無力化するためだった。
怒りに駆られていた俺は、小太りの皇子をくるりと背負い投げて、ヤツが背中から応接テーブルに叩き付けられるのを目撃した。
「うっ、うがっっ?! お、おぉぉぉぉ…………っっ」
激痛に悶絶する男を冷たく見下ろした。
普段穏やかに生きる自分に、こんな危険な一面があるなんて知らなかった。怒りが俺の身体を突き動かしていた。
「まあ素敵、殴られたかいがございました」
「わらわが証人となりましょう。アルヴェイグは正しく護衛の務めを果たしました。……一瞬、オラフ王が重なって見えましたよ」
「わたくし『キュン……ッ』といたしました。いいものですね、自らの彼ピッピでファンネルアタックするこの快感……格別にございます」
二人はそう言ってくれるが、明らかにやり過ぎてしまった。祖国の家族に大きな迷惑がかかるかもしれない。けれど後悔の情はこの胸にない。
「フリントゥス皇子殿下、皇太子様と皇女様は俺の大切な友人です。二人に手を出すおつもりならば、俺も貴方に容赦はしません」
「き、貴様……っ、後悔するぞ……っ!! 我が皇帝となった暁には、貴様らアリラテの民を皆殺しにしてくれるぞっっ!!」
「貴方は皇帝にふさわしくない。皇太子ベルナディオこそが、次の皇帝にふさわしい。ここから出て行け、逆賊フリントゥスッッ!!」
今確信した。こんな男が皇帝となったら、怒りを買おうと買うまいと祖国はおしまいだ。祖国アリラテの命綱はベルナディオ皇太子殿下だ。
「なっ、なんたる侮辱……!! 滅ぼしてやる……っっ、貴様の国を、滅ぼしてやるやらからなぁぁ……っっ?!! 覚えていろよぉぉ、雑草のクソガキごときがっっ!!」
敵意を押し隠す近衛兵に第三皇子フリントゥスは助け起こされて、この赤竜宮の住まいを逃げるように去っていった。
「見直しましたよ、オラフ王の息子よ」
「いっそここで、アレの息の根を止めて下さればよろしかったのに……」
「すみません……ソーミャ皇女が殴られてカッとなって、そしたらいつの間にか、あの人を投げていました……」
それは若さか、あるいは血染めのオラフより継いだ遺伝子か。無意識の暴力に俺自身が驚いていた。
「貴方の気概と勇気に敬意を表して、わらわも覚悟を決めるといたしましょう」
「え……それは、どういう……?」
「わらわは赤竜宮を出ます。正しき皇子を皇帝にするために、説得にまいります。ソーミャを任せましたよ、アルヴェイグ王子」
命を狙われているというのに、皇后様は美形の護衛たちを引き連れて赤竜宮を出ていった。
宮廷と呼ばれる鬼の住まう戦場で、ベルナディオ皇太子の皇帝継承を支援するために。
「あふ……。なんだか、わたくし、急に眠くなってまいりました……」
「寝ましょう。君は俺が守るから、安心して休んで下さい」
「貴方に心から感謝を。死に怯えなければならないとは、有限の命を与えられし子らは、ひどく難儀でございますね……」
「最近知り合った俺の友人は、人生に終わりがあることは幸せなことだって言っていました」
青く輝くカフスボタンに手をかけて、元天使様の皇女様に笑いかけた。
「ええ、わたくしもいつかは、貴方に看取られて、人生の大団円を迎えてみたく存じます」
「それもいいけど、今は幸せな未来を想像しませんか?」
「まあっ、明るい家族計画にございますね」
ソーミャ皇女をベッドにお連れすると、彼女はすぐに目を閉じて、ほどなくして寝息を立て始めた。
皇太子殿下の生死が俺たちの運命の分岐点だ。彼だけは絶対に死なせてはいけなかった。
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