元アンティーク修復家の異世界転生 - 人質として帝国に差し出された俺がチート能力【アイテム転生】で、皇女と釣り合う男に成り上がるまで -

ふつうのにーちゃん

文字の大きさ
29 / 41

・人攫いと皇女と人質王子

しおりを挟む
「ではお一人でソーミャ皇女を誘拐すると?」

「依頼人はソーミャ皇女を無傷で捕らえろと言っている」

 探りを入れると彼はあっけなく吐いた。

「それはおやさしいことで」

「違うな。フリントゥスは拷問を楽しみたいだけだ。ヤツは女を何人も、ただの肉塊に変えてきた怪物だよ」

 フリントゥス皇子のおぞましい本性に怖気が走った。ここを築いたクローゼ皇后の再来のような男が皇帝となったら、帝国とその属国に本当の暗黒時代が訪れる。

「見れば綺麗な顔をしている……。お前も、フリントゥスに、解体されてみるか……?」

「私は協力者です。現在の赤竜宮は厳戒態勢。貴方だけで侵入できるなど――」

 燭台とたいまつだけが照らす暗闇の中で、銀色の光がひらめいた。不意打ちのナイフが俺の喉を水平に切り裂こうとした。
 あと少し反応が遅れたらゲームオーバーだった。

「はっ、やっぱり男か」

「はい、男です。ですが、どうしてわかったのですか?」

「歩幅と歩き方だ。お前は女にしては足を外側に向けて歩く。カマ野郎ならば納得だ」

「好きでこんな格好をしているのではありません」

 そう静かに返しながら、武神王のバンテージを軽く締めた。

「まあどちらにしろ――」

 再びヤツの刃がひらめき、俺は胸を狙った刃をギリギリのところでかわした。

「消えてもらうぜ、綺麗なお坊ちゃん」

「残念ですが、貴方に俺は殺せません」

「ハハハハッ、手ぶらで何を言う!! そうだっ、そこの鉄の処女にぶち込んでやるよっ!!」

 ナイフではなく男の長い腕が、少年の喉を狙って襲いかかってきた。それは戦闘とはとても言えない、完全にこちらを舐めくさった動作だった。

「その動き、隙だらけです!!」

 身を深く屈めて腕をよけた。それからバネのように足腰を弾ませて、脳震盪を狙ったアッパーを敵のアゴに叩き込んだ。

「ンガッッ?!!」

 続けて敵の視界が天井に向いた隙に背後に回り込んだ。

「き、消え――うごぁぁっっ?!!」

 その次は足払い。体格に勝る大人を背中から転倒させた。

「貴様っ、ちょこまかとっっ!! だがこの程度――うっ、か、体が……!?」

「最初にアゴを狙ったのは貴方をスタンさせるためです。後は貴方を無力化させるだけ。先日の暗殺者より歯ごたえがありませんでした」

「な、なんだと……!?」

「僕はアルヴェイグ。父の名はオラフ。アリラテの王子です。これから俺は貴方を――」

「や、止めろ……っ、俺に危害を加えれば皇后の命はないぞっ!!」

 そう脅されて皇后様の姿が目に浮かんだ。あの方はとても厳しい人だ。皇太子殿下よりもずっと恐ろしい人だ。

 けれど皇后様は頭ごなしに俺とソーミャを引き離そうとはしなかった。皇后様は恐い人だけれど、成果を上げれば認めてくれる寛大な方だ。

「俺は、ソーミャと皇后様にあだなす貴方を――これから、蹴り潰します……」

 宝石が見えないよう逆向きに着けたオーラカフスを握り、片足を上げた。

「はははっ、こいよ……!! やれるもんならやってみろ、ガキがっ!!」

「では失礼」

 この誘拐犯は若造の蹴りをつかんで組み伏せるつもりだったのだろう。起死回生のチャンスをそこに見つけたのだろう。
 しかし彼を待っていたのは実体のない衝撃、オーラ踏み踏みだった。

「うっ、がっ、げっ、がはっ、ぎひっ、うががががががぁぁっっ?!!」

 誘拐犯の真上に飛び上がって、踏み付けの連打を放った。

「や、止め……っ、ギャッ、ゲフッ、ゲハッ、うぎっ、アッ、アガハァァッッ?!!」

 踏み付けるたびに俺の体は軽く浮き、そのたびに潰された男が悲鳴を上げた。それは全体重がかかった蹴りを連発されたようなものだった。

 まだ攻撃力に欠ける俺なりの、重さを生かした連打が、絹のアクトンをまとったエセ紳士をボロ雑巾に変えていった。
 全身打撲による無力化まで、そう時間はかからなかった。

「突然ごきげんよう! わたくし、ソーミャ・ガラド・アザゼルともうしまーす!」

 俺が目的を達成すると、拷問場には到底似合わないウキウキのスキップでソーミャ皇女が乱入してきた。

「わたくしの彼ピヨピヨの、ワイヤーアクション映画ばりの蹴りの嵐、いかがでございましたでしょうか!!」

「ぁ……ぅ……ぁ……ぅ、ぅぁ…………」

「まあっ、そのお言葉をお母様にもお聞かせ差し上げかったですが、生憎、現在! 貴方方にさらわれてしまっておりまして!」

 爽やかさすら感じられるハキハキとした恨み節だった。
 間者の彼からすればこれは計算外のアクシデントだ。誘拐計画の途上で思わぬ強敵に破れてしまった、現在進行形の危機だ。

 けれどそれは俺たちからすれば、皇后様を誘拐したクズどもの末端の捕獲に成功。これから始まる尋問へのゴングだった。

「おやおや……? そちらにございますのは、まあっ、なんと愛らしき、鉄の処女……! 中はサビ付いた針でビッシリにございます!」

 鉄の処女というのは人間の形をした縦長の箱だ。内部は針で覆われて、古の拷問人は尋問相手をこの箱の内に閉じこめたとされている。
 ソーミャはその拷問器具に駆け寄った。

「う、うぅ……っ、うぐ……っ」

「『なぜここに皇女が!?』と、そうおっしゃいたいのでございますね。わたくし、ただいまデート中にございます」

 初耳だ。それに拷問場は断じてデートスポットではない。

「して先ほどより、ウサギのように耳を立ててうかがっておりましたが、はて誘拐魔様」

 彼女はサビまみれの鉄の処女を撫でた。

「貴方方がかどわかされましたうちのお母様は、お元気でございましょうか?」

 それから彼女とは到底思えない、処刑場で惨死した少女と見間違えるほどの怨念にまみれた顔をした。

「ひ……っっ?!」

 その幽鬼は鉄の処女のふたを開こうとしている。その幽鬼は俺にドン引きされるとは考えもしないようだった。
 
「ま……待て……っ!! お、俺は……っ、皇后の誘拐には関わってない!! この件は頼まれただけなんだ……っっ!!」

「まあ、左様にございますか♪」

 ソーミャ皇女は幽鬼を止めてたおやかに微笑み、鉄の処女を断末魔のように軋ませて全開にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

足手まといだと言われて冒険者パーティから追放されたのに、なぜか元メンバーが追いかけてきました

ちくわ食べます
ファンタジー
「ユウト。正直にいうけど、最近のあなたは足手まといになっている。もう、ここらへんが限界だと思う」 優秀なアタッカー、メイジ、タンクの3人に囲まれていたヒーラーのユウトは、実力不足を理由に冒険者パーティを追放されてしまう。 ――僕には才能がなかった。 打ちひしがれ、故郷の実家へと帰省を決意したユウトを待ち受けていたのは、彼の知らない真実だった。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

処理中です...