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・【無窮のスコップ】と【無限のポーチ】で超高速トンネル掘削 2/2
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『ぜぇ、ぜぇ……あ、危うく主人を生き埋めにするところじゃったわい……』
「次に気分が悪くなったときは早めに下さい……」
『おお、水も滴るいい男じゃわいっ、ほっほっほっ』
雨が止んだので駆け込んだ東屋から出ると、虹に興奮するエマさんの声がエントランスから響いた。
父上は濡れた芝生で靴やズボンが汚れるのもいとわず、やらかした息子の前に悠々と歩いてきた。
「滝が逆さになったかのような水柱でしたが、いったい何が起きたのですか?」
「【無限のポーチ】に飲み込ませた地下水が逆流しました……」
『おう、オラフ、一度話してみたかったぞいっ! ほれこっちじゃこっち、ワシを回収しておくれ!』
父上は得体の知れない声に呼ばれて不可解そうに探り、トンネル入り口付近で【無限のポーチ】を拾い上げた。
『おう悪いのぅ、久しぶりじゃのぅ、オラフ』
「はて、どなたでしょう? 革製の友人に覚えがないのですが」
『ワシじゃよ、お主が息子に託したあのボロ着じゃ。お主の息子は奇跡の力【リィン・サイクル】でワシをこの姿に変えたのじゃ』
「先ほど話には聞きましたが、にわかに信じられませんね……」
『ほっほっほっ、ならばマルサ以外の女に惹かれていた頃の話を、ワシの口からさせてもらうかのぅ?』
「な……っっ?!!」
息子には聞かせられない話のようだった。父上は目を泳がすほどに動揺し、過去を知る謎の革袋に丸め込まれた。
「【無限のポーチ】よ、性能の説明ついでに、先ほど吸い込んだ石英を俺の手に吐き出してみてくれますか?」
『おう、お安いご用じゃ! 見てろよい、オラフよ、ワシの生まれ変わった姿を!』
父上からポーチを返してもらって、手のひらの上で逆さにした。
石英というのはざっくり言うと天然のガラスだ。透明度が高く、砂利道でキラキラ輝いている小石があればそれが石英だ。
俺の手のひらの上で、砂のように細やかな石英が美しい山を作った。
「これがこの【無限のポーチ】の力です。これを鍛冶屋に持って行けば、ガラスに加工できるはずです」
「すごい……後でそれ、ちょっと分けてもらえるかな? 母さんへのおみやげにしましょう」
父上は時々天然だ。石英の砂粒を渡されて喜ぶ成人女性がいるとは思えない。
「それはかまいませんが父上、土砂の処分を任せたいのですが、頼まれて下さいませんか?」
一度石英をポーチに戻して、そのポーチを父上の手に返した。それからあの画面を出して、ポーチに何がどれだけ入っているのか紹介した。
「この608Lの赤土を、どこか目立たないところに捨ててきて欲しいんです」
うちの庭にこの量の残土を捨てたら庭師が発狂する。事実上の残土置き場になって、ご近所さんにトンネルか何かを掘っているのではないかと疑われてしまう。
「もしかしてこのポーチ、僕にも使えるのかい……?」
『道具自身がそう望めばの。ほれオラフ、つもる話もあろう、ちょっとワシに付き合え。お主の息子がどれほどの者か、道すがら教えてやろうではないか』
「夢でも見ているかのような気分です……。ああ、エマさん、すみませんがずぶ濡れの息子を着替えさせてやって下さい」
「お着替え! ええっ、ご命令とあらば喜んで!」
着替えくらい1人でできるよ、と言ってもエマさんがその話を聞いてくれるはずもなかった。
俺は屋敷の部屋に引っぱり戻されると、泥まみれの水浸しの女官の服を脱ぎ、やたらに楽しそうなエマさんに全身を拭かれて、上下の肌着に着替え直した。
「このエマ……もう死んでもかまいません……。ああ、楽しかった……」
エマさんにとってそれは人形遊びの延長線だった。プラチナブロンドのかわいい王子を愛でる絶好のチャンスだった。
冷たい雨に鳥肌の立った肌や、縮こまった下腹部をニタニタと見つめられたりもした……。
「それにしても素敵なお父様ですね」
「いつもはもっと静かで普通のおじさんですよ。……血の匂いのする一点をのぞけば、普通のね」
「そうなのですね。私、血の匂いのする男性は初めてです」
「匂いはあのマントのせいです。あの人は皇帝への拝謁にまであれを着ていくんですよ……」
お茶で身体を暖めながら少し休むと、父上がもう帰ってきた。出かけて15分ほどしか経っていなかった。
「ヴェイクッ、このポーチは最高ですよ!」
「は、早いですね……? 念のためうかがいますけど、どこに捨ててきたんですか……?」
「君が気にすることはありません、最も適切な場所に投棄してきました。さあ、そのスコップをこちらに!」
「え……っ!? え、ちょっ、なっ、なんで脱ぐんですか父上ぇっ!?」
父上が血染めのマントを脱いだ。鈍色の鎧を脱いだ。その下の服とズボンを脱いだ。
全身傷跡だらけの男がおしゃれなポーチを腰に、パンツ一枚でこちらに手を差し出していた。
「まあっ、これはこれは……♪ 王様、ご所望はこちらの緑色のスコップでよろしいでしょうか?」
「ああっ、エマさんまで何を勝手に!?」
「残りのトンネル工事は僕がやりましょう。君はここで休んで計画を修正して下さい」
「はい? 計画の修正、ですか……?」
「血染めのオラフ。そう呼ばれる男の合流で、状況が少し変わったのではありませんか?」
それだけ言って父上は肉体労働者のようにスコップを担いで、気持ちがに股で庭へと出て行った。
「新しいお茶を入れてまいりましょう。オラフ王様……本当に、素敵なお父様ですね……」
「はぁぁぁ……俺からすればただの赤っ恥ですよ……」
帝国最強の男。そう言っても過言ではない男がこの救出作戦に加わったら、状況はどう変わる?
当然守るだけではなく、攻めることになる。
皇太子殿下の命令書の到着を待たずに事態を動かすことができる。
皇后様の脱走を手引きして安全な赤竜宮へと護送するのではなく、現行犯による首謀者の捕縛に挑める。
第三皇子フリントゥスは実の妹ソーミャを拷問したがっているような異常者だ。共犯者であるロメイン子爵もまた、どれだけのメイドを不幸にしたかわからない悪党だ。
彼らは正しく裁かれなければならない者たちだった。
「次に気分が悪くなったときは早めに下さい……」
『おお、水も滴るいい男じゃわいっ、ほっほっほっ』
雨が止んだので駆け込んだ東屋から出ると、虹に興奮するエマさんの声がエントランスから響いた。
父上は濡れた芝生で靴やズボンが汚れるのもいとわず、やらかした息子の前に悠々と歩いてきた。
「滝が逆さになったかのような水柱でしたが、いったい何が起きたのですか?」
「【無限のポーチ】に飲み込ませた地下水が逆流しました……」
『おう、オラフ、一度話してみたかったぞいっ! ほれこっちじゃこっち、ワシを回収しておくれ!』
父上は得体の知れない声に呼ばれて不可解そうに探り、トンネル入り口付近で【無限のポーチ】を拾い上げた。
『おう悪いのぅ、久しぶりじゃのぅ、オラフ』
「はて、どなたでしょう? 革製の友人に覚えがないのですが」
『ワシじゃよ、お主が息子に託したあのボロ着じゃ。お主の息子は奇跡の力【リィン・サイクル】でワシをこの姿に変えたのじゃ』
「先ほど話には聞きましたが、にわかに信じられませんね……」
『ほっほっほっ、ならばマルサ以外の女に惹かれていた頃の話を、ワシの口からさせてもらうかのぅ?』
「な……っっ?!!」
息子には聞かせられない話のようだった。父上は目を泳がすほどに動揺し、過去を知る謎の革袋に丸め込まれた。
「【無限のポーチ】よ、性能の説明ついでに、先ほど吸い込んだ石英を俺の手に吐き出してみてくれますか?」
『おう、お安いご用じゃ! 見てろよい、オラフよ、ワシの生まれ変わった姿を!』
父上からポーチを返してもらって、手のひらの上で逆さにした。
石英というのはざっくり言うと天然のガラスだ。透明度が高く、砂利道でキラキラ輝いている小石があればそれが石英だ。
俺の手のひらの上で、砂のように細やかな石英が美しい山を作った。
「これがこの【無限のポーチ】の力です。これを鍛冶屋に持って行けば、ガラスに加工できるはずです」
「すごい……後でそれ、ちょっと分けてもらえるかな? 母さんへのおみやげにしましょう」
父上は時々天然だ。石英の砂粒を渡されて喜ぶ成人女性がいるとは思えない。
「それはかまいませんが父上、土砂の処分を任せたいのですが、頼まれて下さいませんか?」
一度石英をポーチに戻して、そのポーチを父上の手に返した。それからあの画面を出して、ポーチに何がどれだけ入っているのか紹介した。
「この608Lの赤土を、どこか目立たないところに捨ててきて欲しいんです」
うちの庭にこの量の残土を捨てたら庭師が発狂する。事実上の残土置き場になって、ご近所さんにトンネルか何かを掘っているのではないかと疑われてしまう。
「もしかしてこのポーチ、僕にも使えるのかい……?」
『道具自身がそう望めばの。ほれオラフ、つもる話もあろう、ちょっとワシに付き合え。お主の息子がどれほどの者か、道すがら教えてやろうではないか』
「夢でも見ているかのような気分です……。ああ、エマさん、すみませんがずぶ濡れの息子を着替えさせてやって下さい」
「お着替え! ええっ、ご命令とあらば喜んで!」
着替えくらい1人でできるよ、と言ってもエマさんがその話を聞いてくれるはずもなかった。
俺は屋敷の部屋に引っぱり戻されると、泥まみれの水浸しの女官の服を脱ぎ、やたらに楽しそうなエマさんに全身を拭かれて、上下の肌着に着替え直した。
「このエマ……もう死んでもかまいません……。ああ、楽しかった……」
エマさんにとってそれは人形遊びの延長線だった。プラチナブロンドのかわいい王子を愛でる絶好のチャンスだった。
冷たい雨に鳥肌の立った肌や、縮こまった下腹部をニタニタと見つめられたりもした……。
「それにしても素敵なお父様ですね」
「いつもはもっと静かで普通のおじさんですよ。……血の匂いのする一点をのぞけば、普通のね」
「そうなのですね。私、血の匂いのする男性は初めてです」
「匂いはあのマントのせいです。あの人は皇帝への拝謁にまであれを着ていくんですよ……」
お茶で身体を暖めながら少し休むと、父上がもう帰ってきた。出かけて15分ほどしか経っていなかった。
「ヴェイクッ、このポーチは最高ですよ!」
「は、早いですね……? 念のためうかがいますけど、どこに捨ててきたんですか……?」
「君が気にすることはありません、最も適切な場所に投棄してきました。さあ、そのスコップをこちらに!」
「え……っ!? え、ちょっ、なっ、なんで脱ぐんですか父上ぇっ!?」
父上が血染めのマントを脱いだ。鈍色の鎧を脱いだ。その下の服とズボンを脱いだ。
全身傷跡だらけの男がおしゃれなポーチを腰に、パンツ一枚でこちらに手を差し出していた。
「まあっ、これはこれは……♪ 王様、ご所望はこちらの緑色のスコップでよろしいでしょうか?」
「ああっ、エマさんまで何を勝手に!?」
「残りのトンネル工事は僕がやりましょう。君はここで休んで計画を修正して下さい」
「はい? 計画の修正、ですか……?」
「血染めのオラフ。そう呼ばれる男の合流で、状況が少し変わったのではありませんか?」
それだけ言って父上は肉体労働者のようにスコップを担いで、気持ちがに股で庭へと出て行った。
「新しいお茶を入れてまいりましょう。オラフ王様……本当に、素敵なお父様ですね……」
「はぁぁぁ……俺からすればただの赤っ恥ですよ……」
帝国最強の男。そう言っても過言ではない男がこの救出作戦に加わったら、状況はどう変わる?
当然守るだけではなく、攻めることになる。
皇太子殿下の命令書の到着を待たずに事態を動かすことができる。
皇后様の脱走を手引きして安全な赤竜宮へと護送するのではなく、現行犯による首謀者の捕縛に挑める。
第三皇子フリントゥスは実の妹ソーミャを拷問したがっているような異常者だ。共犯者であるロメイン子爵もまた、どれだけのメイドを不幸にしたかわからない悪党だ。
彼らは正しく裁かれなければならない者たちだった。
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