33 / 41
・【無窮のスコップ】と【無限のポーチ】で超高速トンネル掘削 1/2
しおりを挟む
一通りの話を聞き終えると父上は応接間の席を立った。
「若い頃の僕も大概でしたが、君もやりますね」
「いえ、父上には遠くおよびません!」
憧れの父上に褒めていただけて嬉しかった。
「そんなことはありません。平民の血しか流れていない僕が、伯爵令嬢マルサを皇太子ベルナディオと奪い合ったの大概でしたが、今の君にはおよびません」
「…………え?」
けれどそれは武勇や功績を称えるものではなかった。
「ご主人様ったらかわいいんですよ、王様♪ 催しで大好きなソーミャ皇女に会えるとわかると、暗い表情がパァァーッと華やぐんです♪」
「嘘……!? 絶対そんな顔してませんよ、俺っっ!?」
「ほぅ、それは微笑ましい一方で、親として少し嫉妬してしまいますね……」
父上は話の続きを求めてまた着席してしまった。
「ええ、ええわかります、わかりますそのお気持ち!」
「君はとても話上手ですね。ではもう少し詳しく、うちの子について根ほり葉ほりと、うかがってもよろしいですか?」
「はい王様、喜んで!」
今が非常事態なのをこの人たちは理解しているのだろうか。
「俺、トンネル工事に入りますから、終わったら父上を呼びに戻りますね」
「おっと、そうでした。申し訳ないエマさん、プアン皇后を牢獄でお待たせしているのを忘れていました」
「ふふふっ、王様は面白い方ですねっ」
「後で時間を作ります。その時にぜひ、この子の恋路から日常生活まで、全て僕に教えて下さい」
父上にあきれ果てた俺は応接間を出て、早足でエントランスを抜けて庭園のトンネルの中に移動した。
父上は年に一度しか会えない息子と会えて、だいぶ舞い上がっているようだった。
計算によるとロメイン邸までの距離は約195歩。他のお屋敷に2階層の地下室があると仮定して、まずはこのスロープ路を地下三階の深さまで螺旋の道にする。
「それじゃ、工事再開だ。両名ともどうかよろしく」
【無窮のスコップ】と【無限のポーチ】をそれぞれ撫でて工事に入った。
そのスコップは岩であろうとなんだろうと『硬さ』を無視して真っ二つに穿ち、ポーチは大粒の岩塊であろうと大口を開いて飲み込んでいった。
『オラフはお主が心配なんじゃろう。若い頃の自分を見ているような気になるんじゃろうて』
「貴方はその頃の父上の服だったんですよね? 俺たちそんなに似ていますか?」
『似てはおらんの。オラフは当時やさぐれておってのぅ、手のかかる子じゃった……』
「へぇ、父上、本当に不良だったんですか……」
やさぐれた父上。今のやさしい人物像を知っていると想像すらできない。
『じゃがやっていることはだいたい同じじゃな』
「そうなのですか?」
『うむ、オラフは身分違いの恋に情熱を燃やし、恋敵にして親友ベルナディオの護衛のため危険に身を投じた。人質の王子という身分でじゃ。面白い男じゃろ? だからワシは――ウップッッ!?』
「え、ちょっと、どうかしたんですか……!?」
土砂の吸引が止まった。もしやと思って魔法のタブレットを開くと、【無限のポーチ】が容量オーバーになっていた。
――――――――――――
【無限のポーチ】
容量:806/777L
状態:容量オーバー
内容物のリスト:
赤土:608L
水:124L
粘土: 31L
古木: 11L
石英: 9L
硝石: 5L
その他人工物
: 18L
――――――――――――
『う、うぷっ……調子に乗って食い過ぎたわい……っ』
『だらしねー爺さんですぜ、こんちくしょーっ! おい孫っ、吐かれたらオダブツですぜ、おめーっ!』
『す、すまぬ……吐きそうじゃ……』
「ちょっ、ちょっダメッ、待って待って待って待ってっ、ここで吐いたらダメだよ、お爺ちゃんっっ!!」
全力疾走で地上へと駆けた。
夢中になっているうちに長大な直線路となっていた地下トンネルを瞬発力倍加の力で一直線で抜けて、はいずるように螺旋の道を駆け上がった。
「うっ、まぶし……っっ。【無限のポーチ】よっ、水を30L吐き出してっっ!!」
そう命じると、ポーチは俺の腰から離れて頭上へと飛び上がり、そして冷たい地下水を噴水のように天高く放散させた。
空高く打ち上げられたそれは拡散して、大粒の雨となって一帯に降り注いだ。
『キャハハハッ、おもしれーじゃねーですか、爺さん! おらもっと吐くですよーっ!』
「それはダメです、ご近所さんにご迷惑が――」
『うっ、うぼぼぼぼっっ?! す、すまぬ、止まらぬぅぅぅ……っっ!!』
「え、ええええーーっっ?!」
そのポーチは貴族街の一角に局所的豪雨をもたらした。帝国が陰謀の暗雲に包まれているというのに雲のない青空から天気雨が降り注ぎ、拡散した水滴が大きな虹を描き出した。
当然ながらご近所は騒然。うちの屋敷から天高くそびえ立つ水柱も目撃されたことだろう。
土に含まれていた124Lもの地下水は、2分も続く大粒の雨となって辺りそこ中を水浸しにしていった。
「若い頃の僕も大概でしたが、君もやりますね」
「いえ、父上には遠くおよびません!」
憧れの父上に褒めていただけて嬉しかった。
「そんなことはありません。平民の血しか流れていない僕が、伯爵令嬢マルサを皇太子ベルナディオと奪い合ったの大概でしたが、今の君にはおよびません」
「…………え?」
けれどそれは武勇や功績を称えるものではなかった。
「ご主人様ったらかわいいんですよ、王様♪ 催しで大好きなソーミャ皇女に会えるとわかると、暗い表情がパァァーッと華やぐんです♪」
「嘘……!? 絶対そんな顔してませんよ、俺っっ!?」
「ほぅ、それは微笑ましい一方で、親として少し嫉妬してしまいますね……」
父上は話の続きを求めてまた着席してしまった。
「ええ、ええわかります、わかりますそのお気持ち!」
「君はとても話上手ですね。ではもう少し詳しく、うちの子について根ほり葉ほりと、うかがってもよろしいですか?」
「はい王様、喜んで!」
今が非常事態なのをこの人たちは理解しているのだろうか。
「俺、トンネル工事に入りますから、終わったら父上を呼びに戻りますね」
「おっと、そうでした。申し訳ないエマさん、プアン皇后を牢獄でお待たせしているのを忘れていました」
「ふふふっ、王様は面白い方ですねっ」
「後で時間を作ります。その時にぜひ、この子の恋路から日常生活まで、全て僕に教えて下さい」
父上にあきれ果てた俺は応接間を出て、早足でエントランスを抜けて庭園のトンネルの中に移動した。
父上は年に一度しか会えない息子と会えて、だいぶ舞い上がっているようだった。
計算によるとロメイン邸までの距離は約195歩。他のお屋敷に2階層の地下室があると仮定して、まずはこのスロープ路を地下三階の深さまで螺旋の道にする。
「それじゃ、工事再開だ。両名ともどうかよろしく」
【無窮のスコップ】と【無限のポーチ】をそれぞれ撫でて工事に入った。
そのスコップは岩であろうとなんだろうと『硬さ』を無視して真っ二つに穿ち、ポーチは大粒の岩塊であろうと大口を開いて飲み込んでいった。
『オラフはお主が心配なんじゃろう。若い頃の自分を見ているような気になるんじゃろうて』
「貴方はその頃の父上の服だったんですよね? 俺たちそんなに似ていますか?」
『似てはおらんの。オラフは当時やさぐれておってのぅ、手のかかる子じゃった……』
「へぇ、父上、本当に不良だったんですか……」
やさぐれた父上。今のやさしい人物像を知っていると想像すらできない。
『じゃがやっていることはだいたい同じじゃな』
「そうなのですか?」
『うむ、オラフは身分違いの恋に情熱を燃やし、恋敵にして親友ベルナディオの護衛のため危険に身を投じた。人質の王子という身分でじゃ。面白い男じゃろ? だからワシは――ウップッッ!?』
「え、ちょっと、どうかしたんですか……!?」
土砂の吸引が止まった。もしやと思って魔法のタブレットを開くと、【無限のポーチ】が容量オーバーになっていた。
――――――――――――
【無限のポーチ】
容量:806/777L
状態:容量オーバー
内容物のリスト:
赤土:608L
水:124L
粘土: 31L
古木: 11L
石英: 9L
硝石: 5L
その他人工物
: 18L
――――――――――――
『う、うぷっ……調子に乗って食い過ぎたわい……っ』
『だらしねー爺さんですぜ、こんちくしょーっ! おい孫っ、吐かれたらオダブツですぜ、おめーっ!』
『す、すまぬ……吐きそうじゃ……』
「ちょっ、ちょっダメッ、待って待って待って待ってっ、ここで吐いたらダメだよ、お爺ちゃんっっ!!」
全力疾走で地上へと駆けた。
夢中になっているうちに長大な直線路となっていた地下トンネルを瞬発力倍加の力で一直線で抜けて、はいずるように螺旋の道を駆け上がった。
「うっ、まぶし……っっ。【無限のポーチ】よっ、水を30L吐き出してっっ!!」
そう命じると、ポーチは俺の腰から離れて頭上へと飛び上がり、そして冷たい地下水を噴水のように天高く放散させた。
空高く打ち上げられたそれは拡散して、大粒の雨となって一帯に降り注いだ。
『キャハハハッ、おもしれーじゃねーですか、爺さん! おらもっと吐くですよーっ!』
「それはダメです、ご近所さんにご迷惑が――」
『うっ、うぼぼぼぼっっ?! す、すまぬ、止まらぬぅぅぅ……っっ!!』
「え、ええええーーっっ?!」
そのポーチは貴族街の一角に局所的豪雨をもたらした。帝国が陰謀の暗雲に包まれているというのに雲のない青空から天気雨が降り注ぎ、拡散した水滴が大きな虹を描き出した。
当然ながらご近所は騒然。うちの屋敷から天高くそびえ立つ水柱も目撃されたことだろう。
土に含まれていた124Lもの地下水は、2分も続く大粒の雨となって辺りそこ中を水浸しにしていった。
60
あなたにおすすめの小説
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
無属性魔法しか使えない少年冒険者!!
藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。
不定期投稿作品です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ぽっちゃり女子の異世界人生
猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。
最強主人公はイケメンでハーレム。
脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。
落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。
=主人公は男でも女でも顔が良い。
そして、ハンパなく強い。
そんな常識いりませんっ。
私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。
【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
足手まといだと言われて冒険者パーティから追放されたのに、なぜか元メンバーが追いかけてきました
ちくわ食べます
ファンタジー
「ユウト。正直にいうけど、最近のあなたは足手まといになっている。もう、ここらへんが限界だと思う」
優秀なアタッカー、メイジ、タンクの3人に囲まれていたヒーラーのユウトは、実力不足を理由に冒険者パーティを追放されてしまう。
――僕には才能がなかった。
打ちひしがれ、故郷の実家へと帰省を決意したユウトを待ち受けていたのは、彼の知らない真実だった。
学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について
マカロニ
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。
クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる