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竜将軍大会第二回戦:実力派の超ド素人クルシュ VS 外道傀儡師ドローミ
・上は熱々トロトロ、下は地獄、これなーんだ? - 正解はタコパ -
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地上に戻ると帰還の手続きをして廊下に出て、ソコノネの迷宮が有するモールに入った。
迷宮帰りだからか、食べ物の匂いがこの前よりも強烈だった。
「あ、おかえりー! うわぁ、汗くさぁー!」
「お疲れさまです。はふはふ……」
モールの一角の席にティティスとココロさんを見つけた。
二人は非常に美味しそうな、たこ焼きを食べていた。
「それ、いいな……分けてくれないか?」
「やーだー。自分で買ったらー?」
「人から金を巻き上げてよくそういうことが言えるな、お前……っ」
「はふはふ……。イーラジュ様は、ご一緒ではないのですか?」
「ああ、イーラジュ様ならキョウコさんとご出勤だ。なにせ千竜将軍だからな」
イーラジュ様は竜将大会の賓客だ。
全日程とまでは言わなくとも、大会を観戦するのが仕事だ。
「キョウコ様ですか、それなら問題なさそうですね」
「問題とは?」
「勝手に飲み屋に行かれたりすると、体調管理を任されている者として困るのです……。イーラジュ様の飲酒量を報告する義務が、私にはありまして……」
それは聖帝からの頼みか何かだろうか。
「そりゃ大変だ」
「ココロはクルシュの栄養バランスも考えてくれてるんだよ。もっとココロに感謝しなさいよーっ!」
「そうだったのですか! ありがとうございます、ココロさん!」
「え……!? わ、私はただ、皆さんを支えたくて、好きでやっているだけですから……」
腹が減っていた私はたこ焼きを3舟買った。
今の私ならばこの程度、熱々だろうと5分でペロリだ。
「うわ、クルシュってば気が利くーっ!」
「ありがとうございます! ちょっと足りないと、思っていたところでして……!」
「な……」
私のたこ焼きは一瞬で3分の1になった。
もしや私は、この美しい花たちにたかられていたりはしないだろうか……?
「はふはふ、うんまーっ!!」
「美味しい……。こういうところのご飯って、どうしてこんなに美味しいのでしょうね!」
いや、この笑顔が見られるなら安いものか。
「それは、こういうところだから美味しいのですよ」
「それあたしが言おうとしてたセリフだから!」
私はスーパーヒーローになる男だ。
スーパーヒーローは少したかられた程度で気分など害さない。
「よろしかったらまた迎えにきて下さい。誰かに迎えにきてもらえることが、こんなに嬉しいことだとは知りませんでした……」
「じゃ、クルシュの投資からここの飲食代抜いとくね!」
「お前はちょっとくらい遠慮しろよっ!?」
「あはははっ、大丈夫、順調に増えてるよ!」
「それ本当だろうな……」
増やしてなんて一言も言っていない。
商会の金庫で保管してくれるだけでいいのに……。
ああ、それにしても、ありがとう、聖帝……。
貴方が先にこの世界にきていてくれたおかげで、私はたこ焼きが食べられる……。
「あ、そうそう、青騎士物語の作者さんね、引退するかもって」
「ブフゥゥッッ?!!」
「あーっ、もったいなーっ!?」
「なっ、なんだとぉぉぉぉーーっっ?!!」
喜びに浸っているところに、不意打ちで悪いニュースをたれ流すのは条約違反にしてもよいと私は思うのだが!
「そんな、すごく面白かったのに……残念ですね……」
「ちょっと趣味はマニアックだけど、絵も上手いし、結構光る物がいっぱいあるだけに、残念だよねー」
「そうですよっ、地道に続ければ、成功できる作風だと思います!」
私も同感だ。
引退するのは気が早いと、今すぐ伝えに行きたい。
だがこの時代にはSNSがない。
無論、古きよきアンケートはがきもだ。
「光る個性がある作家は引退するべきではない……。なぜなら引退なんてされては、もう二度とその作風を楽しめなくなってしまうではないか……!」
私は机に拳を叩きつけた。
ティティスは私などお構いなしで、私の舟からたこ焼きを奪っていった……。
「そう思いますっ、私もそう思いますっ、続きを読みたいです! 引退なんて早――痛……っ?!」
ところがちょっと迷惑なオタトークが盛り上がっているところで、ココロさんが手首を抱いた。
ココロさんの表の手首に、小さな鋲が刺さっていた。
「ちょ、大丈夫っ!?」
「え、ええ……でも、なんでしょう、これ……?」
ココロさんは手首から鋲を抜いて、それをテーブルに置いた。
見たところ真鍮製の鋲だった。
針部分は鉄だろうか。
それだけでもだいぶ珍しい物品に見える。
「もしかして、誰かにやられたのか?」
「あっ、そうだよ! だってそんなのテーブルに置いてあったら普通気づくもん!」
私たちは辺りを見回した。
しかし既に時遅く、それらしい姿はどこにもなかった。
「そうだとしたら、気味が悪いです……」
「あたしらが楽しそうにしてたのが気に入らなかったのかな……なんか最悪っ」
気分をそがれた私たちは、たこ焼きをもう2舟買って食べてから屋敷に帰った。
まだ食べられるからと言って、1舟を二人に奪われたのはまあ、詳しく解説するまでもないことだろう。
迷宮帰りだからか、食べ物の匂いがこの前よりも強烈だった。
「あ、おかえりー! うわぁ、汗くさぁー!」
「お疲れさまです。はふはふ……」
モールの一角の席にティティスとココロさんを見つけた。
二人は非常に美味しそうな、たこ焼きを食べていた。
「それ、いいな……分けてくれないか?」
「やーだー。自分で買ったらー?」
「人から金を巻き上げてよくそういうことが言えるな、お前……っ」
「はふはふ……。イーラジュ様は、ご一緒ではないのですか?」
「ああ、イーラジュ様ならキョウコさんとご出勤だ。なにせ千竜将軍だからな」
イーラジュ様は竜将大会の賓客だ。
全日程とまでは言わなくとも、大会を観戦するのが仕事だ。
「キョウコ様ですか、それなら問題なさそうですね」
「問題とは?」
「勝手に飲み屋に行かれたりすると、体調管理を任されている者として困るのです……。イーラジュ様の飲酒量を報告する義務が、私にはありまして……」
それは聖帝からの頼みか何かだろうか。
「そりゃ大変だ」
「ココロはクルシュの栄養バランスも考えてくれてるんだよ。もっとココロに感謝しなさいよーっ!」
「そうだったのですか! ありがとうございます、ココロさん!」
「え……!? わ、私はただ、皆さんを支えたくて、好きでやっているだけですから……」
腹が減っていた私はたこ焼きを3舟買った。
今の私ならばこの程度、熱々だろうと5分でペロリだ。
「うわ、クルシュってば気が利くーっ!」
「ありがとうございます! ちょっと足りないと、思っていたところでして……!」
「な……」
私のたこ焼きは一瞬で3分の1になった。
もしや私は、この美しい花たちにたかられていたりはしないだろうか……?
「はふはふ、うんまーっ!!」
「美味しい……。こういうところのご飯って、どうしてこんなに美味しいのでしょうね!」
いや、この笑顔が見られるなら安いものか。
「それは、こういうところだから美味しいのですよ」
「それあたしが言おうとしてたセリフだから!」
私はスーパーヒーローになる男だ。
スーパーヒーローは少したかられた程度で気分など害さない。
「よろしかったらまた迎えにきて下さい。誰かに迎えにきてもらえることが、こんなに嬉しいことだとは知りませんでした……」
「じゃ、クルシュの投資からここの飲食代抜いとくね!」
「お前はちょっとくらい遠慮しろよっ!?」
「あはははっ、大丈夫、順調に増えてるよ!」
「それ本当だろうな……」
増やしてなんて一言も言っていない。
商会の金庫で保管してくれるだけでいいのに……。
ああ、それにしても、ありがとう、聖帝……。
貴方が先にこの世界にきていてくれたおかげで、私はたこ焼きが食べられる……。
「あ、そうそう、青騎士物語の作者さんね、引退するかもって」
「ブフゥゥッッ?!!」
「あーっ、もったいなーっ!?」
「なっ、なんだとぉぉぉぉーーっっ?!!」
喜びに浸っているところに、不意打ちで悪いニュースをたれ流すのは条約違反にしてもよいと私は思うのだが!
「そんな、すごく面白かったのに……残念ですね……」
「ちょっと趣味はマニアックだけど、絵も上手いし、結構光る物がいっぱいあるだけに、残念だよねー」
「そうですよっ、地道に続ければ、成功できる作風だと思います!」
私も同感だ。
引退するのは気が早いと、今すぐ伝えに行きたい。
だがこの時代にはSNSがない。
無論、古きよきアンケートはがきもだ。
「光る個性がある作家は引退するべきではない……。なぜなら引退なんてされては、もう二度とその作風を楽しめなくなってしまうではないか……!」
私は机に拳を叩きつけた。
ティティスは私などお構いなしで、私の舟からたこ焼きを奪っていった……。
「そう思いますっ、私もそう思いますっ、続きを読みたいです! 引退なんて早――痛……っ?!」
ところがちょっと迷惑なオタトークが盛り上がっているところで、ココロさんが手首を抱いた。
ココロさんの表の手首に、小さな鋲が刺さっていた。
「ちょ、大丈夫っ!?」
「え、ええ……でも、なんでしょう、これ……?」
ココロさんは手首から鋲を抜いて、それをテーブルに置いた。
見たところ真鍮製の鋲だった。
針部分は鉄だろうか。
それだけでもだいぶ珍しい物品に見える。
「もしかして、誰かにやられたのか?」
「あっ、そうだよ! だってそんなのテーブルに置いてあったら普通気づくもん!」
私たちは辺りを見回した。
しかし既に時遅く、それらしい姿はどこにもなかった。
「そうだとしたら、気味が悪いです……」
「あたしらが楽しそうにしてたのが気に入らなかったのかな……なんか最悪っ」
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まだ食べられるからと言って、1舟を二人に奪われたのはまあ、詳しく解説するまでもないことだろう。
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