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第7話 決断
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「う、浮気したんです。私…。」
しばらく夏姫は黙っていたがやがてゆっくりと輪廻に近づくとその唇に己の唇を重ねる。
「ん、う…!?」
その行動が予想外で輪廻はビクリと身を震わせる。
身をよじって離れようとするが抱きしめられる力は更に強まり許してくれない。
「な、何考えてるんですかっ!?」
「何って、今日の治療を始めようと思って。」
「今はそんなことしてる場合じゃ…。」
「そんなことの為に今日会う約束してたんでしょ。」
(怒ってる…?まあ、当然か…。)
「ごめんなさい…私もう、夏姫先生と会うのやめます。だから…放して下さい。」
「嫌よ。」
ぴしゃりと言い切られる。
「どうして…?」
「私は怒っているわ。」
「知ってます、私が仮とはいえ付き合ってるのに別の人に…」
「…そこに怒っているんじゃ無いわ。貴女も言ったでしょ、その人は孤独だからって。“好きになってした”のではなく、“同情”でしょ。だからまだ、理解出来る。放っておけなかったんだって。貴女は優しいから…。」
「…じゃあ…何に怒って…んっ」
シャツのボタン隙間から夏姫の細くて長い指が侵入し、胸の頂へ触れる。
「…本気で言っているの?」
「ふ…わかん、な…っ」
「…そう」
夏姫の指が離れる。
「あ…」
「なあに?切なそうにして…。貴女には“そんなこと”でしょ?」
「あれは…状況が…」
「それは言い訳だわ。」
「っ!!ごめん…なさい。」
「…それに、もう会わないなら最後くらい思い出くらいくれても良いんじゃない?」
「…あの…私も悪かったです。ごめんなさい。でも…」
輪廻はしばらく黙り込み、やがて夏姫に目を合わせて口を開く。
「一番、悪いのは私…です。それは認めます。ごめんなさい。…でも、夏姫さんも悪い…です。言葉足らず、です。会うのやめるって言ったのは私なりけじめです。本当は……いえ、私には言う資格なんてない…。」
「…聞かせて。」
「…本当は、夏姫さんが許してくれなら一緒にいたい。私を孤独から救ってくれた貴女とずっと一緒に…。でも…あの人も孤独。かつての私。…でも“同情”であって“好き”とは違う。でも放っておけなくて…。」
「そう、それが貴女の今の考え?ところで私のどこが言葉足らずだったのかしら?」
「…夏姫さんはいつでも私優先で…自分の気持ちを、意思をあまり教えてくれません。私はエスパーでも心理学者でも無いから直接言葉に出して伝えてくれなきゃ分からない…。」
「そう…。…そうだわ、私をその人のところへ連れてってくれないかしら?」
「へ?撫子さんのとこに?」
「貴女は私の物って言うの。それでも一緒が良いなら私が2人とも治療してあげる。どう?」
「…わがまま言うと私以外にして欲しくない…です。触れて欲しくない…。」
「あら、誰が触ると言ったの?私はただ“治療”するとは言ったけど“触る”とは言って無いわ。ふふ、もしかして嫉妬?」
「っ、そうですよ。悪いですか。」
「あら、素直。前なら顔赤くしてからかわないでって言ってたのに。」
「…夏姫さん、前言撤回します。私達、“仮の”恋人でした。…試しで付き合って来て分かりました。私は、夏姫さんがどうしようもなく好き…です。優しくて暖かくて…。だから…もし、もしも…叶うなら、ちゃんと今度は“本当”の恋人になって下さい。」
夏姫は驚いた後、すぐに微笑む。
「あら、良いの?」
「夏姫さんじゃなきゃ駄目なんです。だから…」
「ふふ、嬉しいわ。」
「じゃ、じゃあ」
「ええ、改めてよろしくね。」
輪廻の目に涙が溢れていく。
「ちょっと、どうしたの?」
「だって…こんな事の後だったから…絶対断られるって思って…。だから嬉しくて、安心して…。」
「私はずっと貴女が好きなの。それに貴女はちゃんと正直に言ってくれたわ。だから私はそれが嬉しいの。確かに別の人と…って嫉妬はしたけど、それでもちゃんと話してくれた。怖かったと思うのに。」
「怖かった、です。でも…黙っている方が裏切っている気がしてもっと怖かったから。」
夏姫は輪廻を優しく抱きしめる。
「ありがとう。…さ、貴女の家に行きましょう?」
そう耳元で囁かれ、輪廻は頷いた。
家に着くと夏姫に引っ張られベッドへ押し倒される。
「さ、正直者の良い子にはご褒美をあげなきゃ、ね?」
「下さい、ご褒美。」
輪廻の言葉に一瞬驚き優しい笑みを浮かべる夏姫。
「あら、いつの間に貪欲になったのかしら?」
「私はずっと貪欲ですよ。…貴女がそうさせたんです。」
「ふふ、素敵。私好みだわ。さ、どうしたいの?」
「…私を好きにして、下さい。」
「良いのかしら?私そんなこと言われたら制御出来なくてそれこそ壊してしまうくらい激しくしてしまうわよ?」
「良いんです。…その前に、私の独り言…聞いてくれますか?」
「ええ。」
夏姫は優しく笑い、体制を変え自分の膝に輪廻を座らせる。
「…ある少女は昔から不幸体質でした。小さい頃は学校でいじめられて親からも構って貰えず、教師にもあしらわれて…。いつしか少女は本の世界に引きこもる様になりました。しかし、いくら読んでも嫌なことは忘れられるけれど、寂しさは埋まらなくて…。少女はいつしか孤独に潰れてしまいそうになっていました。そんな時に不思議な人に会いました。その人はいきなりその少女を襲って来ました。少女は訳も分からずに犯されて…。でもそれは無理矢理なのに暖かくて優しくて…。人に絶望し人間不信だった彼女は初めてのその温もり、優しさに戸惑いました。それにその人は少女が好きだと言うのです。初めての好意に驚き、どうしたら良いのか…自分の感情に整理のつかなくて。それから少女はその不思議な人と過ごしていると不思議な事が起き始めました。人に嫌われてきた少女がいきなり人に好かれ始めたのです。少女は困りました。人から愛情を受けることに慣れてなかったから。しかし、不思議な人は少女に関わるもを辞めません。理由を問うたら好きだから…と。それから少女はその人の愛に触れて、いつしかその人を心から愛するように。それまでの少女は脆い、シャボン玉の様な心を必死に凍らせきたから、その感情を理解するのに時間を要しました。その人の優しさに漬け込んで…のらりくらりの日々…。でも少女はその傲慢さから取り返しのつかないことをします。それでも不思議なその人は優しく笑って許してくれました。その時、少女は罪悪感と幸福が押し寄せてきました。そしてその少女は今、幸福に満たされている。」
「ふふ、エッチが好きだから?」
「ち、違いますよ!…いえ、そうですね。夏姫さんだから…それも…。違いますね。ねえ、夏姫さんって七つの大罪って知ってます?」
「詳しくは知らないけれど、7つが傲慢、嫉妬、色欲、怠惰、暴食、強欲、憤怒ってことなら。」
輪廻は頷く。
「私含めて私とエ…関わった人ってそれに当てはまると思うんです。さしずめ、私は色欲でしょうか。」
「あら、やっぱり好きなんじゃない。」
そう笑い夏姫の指が秘部を弄り出す。
「んん、でも…誰でもは…嫌、あ」
「じゃあ他は?」
「指、一回止めて…ん、くれな、きゃ…ふ、しゃべ、れなっ!!」
びくんと小さく輪廻の身体が跳ねる。
「あらあら、軽くイッたみたいね。話の続き聞きたいし続きは話を聞いてからにするわ。それで?きっと誠は傲慢でしょうけど。」
「よく分かりましたね。」
「まあ、幼馴染だからね。で、私は?」
「嫉妬…かな。」
「その心は?」
「いや、謎かけじゃないんですから…。馨子さんの時に行くこと凄い嫌がってたの見て…。」
「ああ、あの人はろくな人じゃないから…。確かに嫉妬してたわね。」
「不謹慎だけど、嬉しかったんですよ。私がこの美人で余裕のある大人な人の余裕を奪ってるって。私の為に感情を動かしてくれてるって。馨子さんは怠惰ですね。自分ネタ集めすれば良いのに私を使おうとしてましたし。」
「とんだ小悪魔ね。…馨子は一回シメたいわね。で、残りは私が会ったことない人ってことになるわね。」
「今から会う予定の撫子さんは暴食かな。言い方悪いけど私以外にも少しでも優しくされたらその人を…。」
「食べちゃう?」
「そ、そんなこと言ってないですよ!…まあ、似た様な事を言おうとしましたけど…。あと、前に話した電車で助けてくれた人が憤怒です。私が痴漢されてた時に痴漢に怒ってたって言ってましたし。あと…私のストーカー?の犹守さんは強欲ですね。人の話を全く聞かないくらいに…。」
「あの子が本当にごめんなさいね。誠から聞いたけど貴女に一目惚れだったらしいわ。私もまさか身近に犯罪者がいるなんて思わないし…。」
「い、いえ、良いんです。…今が一番大切な時間だから過去の事なんて…。それを忘れさせてくれるんでしょう、先生が。」
「あら、良いのかしら?先生、なんて呼んで。」
「良いんです。だって…」
輪廻はスカートの下からパンツだけ取り、シャツはボタンだけ外し、ベットへ寝転ぶ。
「色欲な私はお仕置き目当てですから。」
「ふふ、すっかり淫乱になっちゃって。嫌いじゃないわよ。」
夏姫は自ら服を取り去ると、己の秘部を輪廻の秘部へ重ねる。
「ふあっ!?」
擦れ合う度にグチュ、クチュ、と卑猥な音が響き渡る。
「ん、ふふ、分かる?私と輪廻ちゃんのが混ざり合って、ん、繋がっているの。はあん」
夏姫も気持ち良い様で顔が紅潮して息遣いが少し乱れている。
「んん、わた、し…イ、きそ…。」
「早いわね。ん、でも私…も来る、わ。」
夏姫は「一緒に、ね」と輪廻の耳元で呟くと動くペースを上げる。
「んあっ!?そん、な、激しく…され、たらっ!!」
輪廻はぎゅっと夏姫にしがみつく。
「んあああああっっっっ!!!」
輪廻は耐えきれず大きく身体が跳ね潮を吹きながら絶頂を迎える。
「あはあっ!!」
それとほぼ同時に夏姫も身体震わせ絶頂に達した。
それから2人は幾度となく絶頂を迎え、日が陰りを見せる時間になる。
「はあ、いくら色欲でももう体力が…。」
「あら、それは大変ね。今から行くのでしょ?その、撫子さん、だっけ?“暴食の君”の所へ。」
「そうですけど…夏姫さんも一緒なら大丈夫じゃ…。」
「どうかしらね。ふふ」
夏姫は妖艶に笑いながら輪廻の手を引き、撫子の所へ向かった。
ピンポンー。
チャイムを鳴らすとバタバタと足音がし、すぐにドアが開く。
「輪廻ちゃん!!来てくれたのね。…嬉しい。」
「撫子さん、昨日言い忘れてましたが私…恋人がいて。だから…その…。」
「そう…ですか。私、浮気させてしまったの、ですね。」
撫子は悲しそうに目を伏せる。
「いや、あれは拒まなかった私が笑いですから…。」
「貴女は優しいから拒めなかったのでしょう?」
「…そ、それは…。その、撫子さん。私の恋人が貴女に会いたいと言ったので連れてきました。大丈夫です、怒られる訳じゃないので…。一緒に話をしましょう?」
撫子はしばらく悩んだ後、了承してくれた。
2人は家が家に上がり、しばらく重い沈黙が続く。
その沈黙を夏姫が打ち打ち破る。
「撫子さん、寂しいのでしょう?私は精神科医の夏姫と言います。貴女がもし、精神的に悩みがあるならうちを受診して下さい。」
「…寂しいわ。ですが、私は輪廻ちゃんを抱きしめて…人肌の暖かさを…優しさを知ってしまった。」
「…輪廻は私には貴女に触って欲しくないというし…なら、私は理性を優先して輪廻を貸すしかなくなる。…本当に悪い子ね、輪廻は。」
輪廻は驚いた。
初めて夏姫に呼び捨てにされた事に。
「撫子さんは身体を重ねたい、普通の治療じゃ駄目…なのね。…輪廻じゃないといけないの?」
「…前はそう思ってました。誰でも良いからって。でも…輪廻ちゃんは私に誰でもは出来ない優しい、暖かい…儚いものを教えてくれました。」
「…一つ、条件があるわ。輪廻の知り合い4人を紹介する。それでも本当に駄目な時には輪廻を貸してあげる。それで我慢してくれない?輪廻は私の全て。嫉妬に身を焼かれておかしくなるくらいに好きなの。」
「…私の知り合いってまさか…」
「そう、貴女に手を出した人達よ。」
「…なっ」
輪廻は呆気に取られ、絶句している。
「お願い、します。」
深々と頭を下げる夏姫を撫子は慌てて止める。
「そんな、私が手を出したのが悪いんですから。…こんなに可愛い子に相手が居ないなんておかしいですものね。ちゃんと聞くべきだったのに私はしなかった…。早くその甘そうな身体を味わってみたくて。…私の悪い癖ですね。」
撫子は悲しそうに笑う。
「夏姫さん、撫子さんは…ちょっと前まで彼氏さんが居て…その…」
「DVされてた?」
「…何で分かったんですか!?」
「私を誰だと思ってるの?天才精神科医よ。輪廻ちゃんの話を少し聞いてたらなんとなくの想像はつくわ。」
「自分で天才って言いますか。それで…その、私思ったんです。正義感の強い誠さんなら…きっと撫子さんも安心出来るんじゃないかなって。」
「なるほど…一理あるわね。誠なら大事にしてくれるおと思うわ。じゃ、私から連絡しとくわね。」
「…あの、ありがとうございます。」
「別に貴女じゃなく輪廻の為よ。…まあ、最後にキスくらいならさせてあげるわよ。でも、それでおしまい。」
夏姫は「先に部屋に帰ってるわ」と言い残して行った。
「輪廻ちゃん、私を助けてくれてありがとう。」
撫子はそう言って輪廻の額にキスを落として微笑むのだった。
それから数日後だった、輪廻の部屋に夏姫が引っ越してきた。
「恋人になったんだから同棲しないとね。」
と…。
「…夏姫さん、2人はどうです?」
「2人って撫子さんと誠?うまくいってるみたいよ。…誠から写メが来たけど、ほら」
そう言って見せてくれた写メには幸せそうに微笑み合いながらご飯を食べている2人が写っていた。
「輪廻ちゃんの見立て通り、相性良かったみたいね。でも…」
夏姫はその場に輪廻を押し倒す。
「私達程じゃないけどね。」
「あ…夏姫、さん」
夏姫の舌が耳を這う。
「ふ、んんっ!や、やめっ」
「やっぱり耳が弱いのね。可愛い。」
「いじ、悪です…。」
「だって可愛い声出るからつい、ね。」
夏姫は笑いながら、輪廻の服を取り去る。
「身体も相性良いからほら、耳だけでここはぐちゃぐちゃになってるわよ。」
そう言って秘部に指を這わせる。
「ん、夏姫さん…だ、め…。い、一緒に…あ、一緒になり、たい」
「っ!!本当、いつからそんなにおねだりが上手になったのかしら。涙目で上目遣いでそんなこと言われたら我慢出来ないじゃない。」
夏姫はそう言って自分の服を取り去ると輪廻に覆い被さる。
「ふあ、い!きも、ちいい」
「ん、私も…よ。」
輪廻は夏姫の背に手を回ししっかりと抱きつくと唇を耳元に寄せ囁いた。
「私、夏姫さんのおかげで今、幸せだよ。」
ーfinー
しばらく夏姫は黙っていたがやがてゆっくりと輪廻に近づくとその唇に己の唇を重ねる。
「ん、う…!?」
その行動が予想外で輪廻はビクリと身を震わせる。
身をよじって離れようとするが抱きしめられる力は更に強まり許してくれない。
「な、何考えてるんですかっ!?」
「何って、今日の治療を始めようと思って。」
「今はそんなことしてる場合じゃ…。」
「そんなことの為に今日会う約束してたんでしょ。」
(怒ってる…?まあ、当然か…。)
「ごめんなさい…私もう、夏姫先生と会うのやめます。だから…放して下さい。」
「嫌よ。」
ぴしゃりと言い切られる。
「どうして…?」
「私は怒っているわ。」
「知ってます、私が仮とはいえ付き合ってるのに別の人に…」
「…そこに怒っているんじゃ無いわ。貴女も言ったでしょ、その人は孤独だからって。“好きになってした”のではなく、“同情”でしょ。だからまだ、理解出来る。放っておけなかったんだって。貴女は優しいから…。」
「…じゃあ…何に怒って…んっ」
シャツのボタン隙間から夏姫の細くて長い指が侵入し、胸の頂へ触れる。
「…本気で言っているの?」
「ふ…わかん、な…っ」
「…そう」
夏姫の指が離れる。
「あ…」
「なあに?切なそうにして…。貴女には“そんなこと”でしょ?」
「あれは…状況が…」
「それは言い訳だわ。」
「っ!!ごめん…なさい。」
「…それに、もう会わないなら最後くらい思い出くらいくれても良いんじゃない?」
「…あの…私も悪かったです。ごめんなさい。でも…」
輪廻はしばらく黙り込み、やがて夏姫に目を合わせて口を開く。
「一番、悪いのは私…です。それは認めます。ごめんなさい。…でも、夏姫さんも悪い…です。言葉足らず、です。会うのやめるって言ったのは私なりけじめです。本当は……いえ、私には言う資格なんてない…。」
「…聞かせて。」
「…本当は、夏姫さんが許してくれなら一緒にいたい。私を孤独から救ってくれた貴女とずっと一緒に…。でも…あの人も孤独。かつての私。…でも“同情”であって“好き”とは違う。でも放っておけなくて…。」
「そう、それが貴女の今の考え?ところで私のどこが言葉足らずだったのかしら?」
「…夏姫さんはいつでも私優先で…自分の気持ちを、意思をあまり教えてくれません。私はエスパーでも心理学者でも無いから直接言葉に出して伝えてくれなきゃ分からない…。」
「そう…。…そうだわ、私をその人のところへ連れてってくれないかしら?」
「へ?撫子さんのとこに?」
「貴女は私の物って言うの。それでも一緒が良いなら私が2人とも治療してあげる。どう?」
「…わがまま言うと私以外にして欲しくない…です。触れて欲しくない…。」
「あら、誰が触ると言ったの?私はただ“治療”するとは言ったけど“触る”とは言って無いわ。ふふ、もしかして嫉妬?」
「っ、そうですよ。悪いですか。」
「あら、素直。前なら顔赤くしてからかわないでって言ってたのに。」
「…夏姫さん、前言撤回します。私達、“仮の”恋人でした。…試しで付き合って来て分かりました。私は、夏姫さんがどうしようもなく好き…です。優しくて暖かくて…。だから…もし、もしも…叶うなら、ちゃんと今度は“本当”の恋人になって下さい。」
夏姫は驚いた後、すぐに微笑む。
「あら、良いの?」
「夏姫さんじゃなきゃ駄目なんです。だから…」
「ふふ、嬉しいわ。」
「じゃ、じゃあ」
「ええ、改めてよろしくね。」
輪廻の目に涙が溢れていく。
「ちょっと、どうしたの?」
「だって…こんな事の後だったから…絶対断られるって思って…。だから嬉しくて、安心して…。」
「私はずっと貴女が好きなの。それに貴女はちゃんと正直に言ってくれたわ。だから私はそれが嬉しいの。確かに別の人と…って嫉妬はしたけど、それでもちゃんと話してくれた。怖かったと思うのに。」
「怖かった、です。でも…黙っている方が裏切っている気がしてもっと怖かったから。」
夏姫は輪廻を優しく抱きしめる。
「ありがとう。…さ、貴女の家に行きましょう?」
そう耳元で囁かれ、輪廻は頷いた。
家に着くと夏姫に引っ張られベッドへ押し倒される。
「さ、正直者の良い子にはご褒美をあげなきゃ、ね?」
「下さい、ご褒美。」
輪廻の言葉に一瞬驚き優しい笑みを浮かべる夏姫。
「あら、いつの間に貪欲になったのかしら?」
「私はずっと貪欲ですよ。…貴女がそうさせたんです。」
「ふふ、素敵。私好みだわ。さ、どうしたいの?」
「…私を好きにして、下さい。」
「良いのかしら?私そんなこと言われたら制御出来なくてそれこそ壊してしまうくらい激しくしてしまうわよ?」
「良いんです。…その前に、私の独り言…聞いてくれますか?」
「ええ。」
夏姫は優しく笑い、体制を変え自分の膝に輪廻を座らせる。
「…ある少女は昔から不幸体質でした。小さい頃は学校でいじめられて親からも構って貰えず、教師にもあしらわれて…。いつしか少女は本の世界に引きこもる様になりました。しかし、いくら読んでも嫌なことは忘れられるけれど、寂しさは埋まらなくて…。少女はいつしか孤独に潰れてしまいそうになっていました。そんな時に不思議な人に会いました。その人はいきなりその少女を襲って来ました。少女は訳も分からずに犯されて…。でもそれは無理矢理なのに暖かくて優しくて…。人に絶望し人間不信だった彼女は初めてのその温もり、優しさに戸惑いました。それにその人は少女が好きだと言うのです。初めての好意に驚き、どうしたら良いのか…自分の感情に整理のつかなくて。それから少女はその不思議な人と過ごしていると不思議な事が起き始めました。人に嫌われてきた少女がいきなり人に好かれ始めたのです。少女は困りました。人から愛情を受けることに慣れてなかったから。しかし、不思議な人は少女に関わるもを辞めません。理由を問うたら好きだから…と。それから少女はその人の愛に触れて、いつしかその人を心から愛するように。それまでの少女は脆い、シャボン玉の様な心を必死に凍らせきたから、その感情を理解するのに時間を要しました。その人の優しさに漬け込んで…のらりくらりの日々…。でも少女はその傲慢さから取り返しのつかないことをします。それでも不思議なその人は優しく笑って許してくれました。その時、少女は罪悪感と幸福が押し寄せてきました。そしてその少女は今、幸福に満たされている。」
「ふふ、エッチが好きだから?」
「ち、違いますよ!…いえ、そうですね。夏姫さんだから…それも…。違いますね。ねえ、夏姫さんって七つの大罪って知ってます?」
「詳しくは知らないけれど、7つが傲慢、嫉妬、色欲、怠惰、暴食、強欲、憤怒ってことなら。」
輪廻は頷く。
「私含めて私とエ…関わった人ってそれに当てはまると思うんです。さしずめ、私は色欲でしょうか。」
「あら、やっぱり好きなんじゃない。」
そう笑い夏姫の指が秘部を弄り出す。
「んん、でも…誰でもは…嫌、あ」
「じゃあ他は?」
「指、一回止めて…ん、くれな、きゃ…ふ、しゃべ、れなっ!!」
びくんと小さく輪廻の身体が跳ねる。
「あらあら、軽くイッたみたいね。話の続き聞きたいし続きは話を聞いてからにするわ。それで?きっと誠は傲慢でしょうけど。」
「よく分かりましたね。」
「まあ、幼馴染だからね。で、私は?」
「嫉妬…かな。」
「その心は?」
「いや、謎かけじゃないんですから…。馨子さんの時に行くこと凄い嫌がってたの見て…。」
「ああ、あの人はろくな人じゃないから…。確かに嫉妬してたわね。」
「不謹慎だけど、嬉しかったんですよ。私がこの美人で余裕のある大人な人の余裕を奪ってるって。私の為に感情を動かしてくれてるって。馨子さんは怠惰ですね。自分ネタ集めすれば良いのに私を使おうとしてましたし。」
「とんだ小悪魔ね。…馨子は一回シメたいわね。で、残りは私が会ったことない人ってことになるわね。」
「今から会う予定の撫子さんは暴食かな。言い方悪いけど私以外にも少しでも優しくされたらその人を…。」
「食べちゃう?」
「そ、そんなこと言ってないですよ!…まあ、似た様な事を言おうとしましたけど…。あと、前に話した電車で助けてくれた人が憤怒です。私が痴漢されてた時に痴漢に怒ってたって言ってましたし。あと…私のストーカー?の犹守さんは強欲ですね。人の話を全く聞かないくらいに…。」
「あの子が本当にごめんなさいね。誠から聞いたけど貴女に一目惚れだったらしいわ。私もまさか身近に犯罪者がいるなんて思わないし…。」
「い、いえ、良いんです。…今が一番大切な時間だから過去の事なんて…。それを忘れさせてくれるんでしょう、先生が。」
「あら、良いのかしら?先生、なんて呼んで。」
「良いんです。だって…」
輪廻はスカートの下からパンツだけ取り、シャツはボタンだけ外し、ベットへ寝転ぶ。
「色欲な私はお仕置き目当てですから。」
「ふふ、すっかり淫乱になっちゃって。嫌いじゃないわよ。」
夏姫は自ら服を取り去ると、己の秘部を輪廻の秘部へ重ねる。
「ふあっ!?」
擦れ合う度にグチュ、クチュ、と卑猥な音が響き渡る。
「ん、ふふ、分かる?私と輪廻ちゃんのが混ざり合って、ん、繋がっているの。はあん」
夏姫も気持ち良い様で顔が紅潮して息遣いが少し乱れている。
「んん、わた、し…イ、きそ…。」
「早いわね。ん、でも私…も来る、わ。」
夏姫は「一緒に、ね」と輪廻の耳元で呟くと動くペースを上げる。
「んあっ!?そん、な、激しく…され、たらっ!!」
輪廻はぎゅっと夏姫にしがみつく。
「んあああああっっっっ!!!」
輪廻は耐えきれず大きく身体が跳ね潮を吹きながら絶頂を迎える。
「あはあっ!!」
それとほぼ同時に夏姫も身体震わせ絶頂に達した。
それから2人は幾度となく絶頂を迎え、日が陰りを見せる時間になる。
「はあ、いくら色欲でももう体力が…。」
「あら、それは大変ね。今から行くのでしょ?その、撫子さん、だっけ?“暴食の君”の所へ。」
「そうですけど…夏姫さんも一緒なら大丈夫じゃ…。」
「どうかしらね。ふふ」
夏姫は妖艶に笑いながら輪廻の手を引き、撫子の所へ向かった。
ピンポンー。
チャイムを鳴らすとバタバタと足音がし、すぐにドアが開く。
「輪廻ちゃん!!来てくれたのね。…嬉しい。」
「撫子さん、昨日言い忘れてましたが私…恋人がいて。だから…その…。」
「そう…ですか。私、浮気させてしまったの、ですね。」
撫子は悲しそうに目を伏せる。
「いや、あれは拒まなかった私が笑いですから…。」
「貴女は優しいから拒めなかったのでしょう?」
「…そ、それは…。その、撫子さん。私の恋人が貴女に会いたいと言ったので連れてきました。大丈夫です、怒られる訳じゃないので…。一緒に話をしましょう?」
撫子はしばらく悩んだ後、了承してくれた。
2人は家が家に上がり、しばらく重い沈黙が続く。
その沈黙を夏姫が打ち打ち破る。
「撫子さん、寂しいのでしょう?私は精神科医の夏姫と言います。貴女がもし、精神的に悩みがあるならうちを受診して下さい。」
「…寂しいわ。ですが、私は輪廻ちゃんを抱きしめて…人肌の暖かさを…優しさを知ってしまった。」
「…輪廻は私には貴女に触って欲しくないというし…なら、私は理性を優先して輪廻を貸すしかなくなる。…本当に悪い子ね、輪廻は。」
輪廻は驚いた。
初めて夏姫に呼び捨てにされた事に。
「撫子さんは身体を重ねたい、普通の治療じゃ駄目…なのね。…輪廻じゃないといけないの?」
「…前はそう思ってました。誰でも良いからって。でも…輪廻ちゃんは私に誰でもは出来ない優しい、暖かい…儚いものを教えてくれました。」
「…一つ、条件があるわ。輪廻の知り合い4人を紹介する。それでも本当に駄目な時には輪廻を貸してあげる。それで我慢してくれない?輪廻は私の全て。嫉妬に身を焼かれておかしくなるくらいに好きなの。」
「…私の知り合いってまさか…」
「そう、貴女に手を出した人達よ。」
「…なっ」
輪廻は呆気に取られ、絶句している。
「お願い、します。」
深々と頭を下げる夏姫を撫子は慌てて止める。
「そんな、私が手を出したのが悪いんですから。…こんなに可愛い子に相手が居ないなんておかしいですものね。ちゃんと聞くべきだったのに私はしなかった…。早くその甘そうな身体を味わってみたくて。…私の悪い癖ですね。」
撫子は悲しそうに笑う。
「夏姫さん、撫子さんは…ちょっと前まで彼氏さんが居て…その…」
「DVされてた?」
「…何で分かったんですか!?」
「私を誰だと思ってるの?天才精神科医よ。輪廻ちゃんの話を少し聞いてたらなんとなくの想像はつくわ。」
「自分で天才って言いますか。それで…その、私思ったんです。正義感の強い誠さんなら…きっと撫子さんも安心出来るんじゃないかなって。」
「なるほど…一理あるわね。誠なら大事にしてくれるおと思うわ。じゃ、私から連絡しとくわね。」
「…あの、ありがとうございます。」
「別に貴女じゃなく輪廻の為よ。…まあ、最後にキスくらいならさせてあげるわよ。でも、それでおしまい。」
夏姫は「先に部屋に帰ってるわ」と言い残して行った。
「輪廻ちゃん、私を助けてくれてありがとう。」
撫子はそう言って輪廻の額にキスを落として微笑むのだった。
それから数日後だった、輪廻の部屋に夏姫が引っ越してきた。
「恋人になったんだから同棲しないとね。」
と…。
「…夏姫さん、2人はどうです?」
「2人って撫子さんと誠?うまくいってるみたいよ。…誠から写メが来たけど、ほら」
そう言って見せてくれた写メには幸せそうに微笑み合いながらご飯を食べている2人が写っていた。
「輪廻ちゃんの見立て通り、相性良かったみたいね。でも…」
夏姫はその場に輪廻を押し倒す。
「私達程じゃないけどね。」
「あ…夏姫、さん」
夏姫の舌が耳を這う。
「ふ、んんっ!や、やめっ」
「やっぱり耳が弱いのね。可愛い。」
「いじ、悪です…。」
「だって可愛い声出るからつい、ね。」
夏姫は笑いながら、輪廻の服を取り去る。
「身体も相性良いからほら、耳だけでここはぐちゃぐちゃになってるわよ。」
そう言って秘部に指を這わせる。
「ん、夏姫さん…だ、め…。い、一緒に…あ、一緒になり、たい」
「っ!!本当、いつからそんなにおねだりが上手になったのかしら。涙目で上目遣いでそんなこと言われたら我慢出来ないじゃない。」
夏姫はそう言って自分の服を取り去ると輪廻に覆い被さる。
「ふあ、い!きも、ちいい」
「ん、私も…よ。」
輪廻は夏姫の背に手を回ししっかりと抱きつくと唇を耳元に寄せ囁いた。
「私、夏姫さんのおかげで今、幸せだよ。」
ーfinー
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疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
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「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
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支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
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