アプリを起動したらリアル脱出ゲームでした

鷹夜月子

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第弍話 地獄の始まり

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「痛って」
黒い渦から放り投げられる私達。
「大丈夫?」
すぐさま声が聞こえて、パートナーが一緒だと安堵する。
「監獄って言ってたっけ?」
落ちた所は埃臭い部屋だ。スクラップ帳が乱雑している。
どうやら飛ばされた先は資料室の様だ。
「どうしよう、優。」
「とりあえずここで情報を集めて行こう。」
「でも必要な情報が何かも分からないよ。そんな多く覚えれないし…。」
「大丈夫、ある程度なら絞り込める。さっきの説明を思い出して?ダンジョンは4つ。ここ、監獄と病院、学校、家。つまり、ゲームマスターの少女は学校に行っていた。その学校で事件を起こして捕まった。それから精神病か何かと判断されて病院へ送れた。この条件に当てはまるのを探せば良い。」
「す、凄い。」
「ま、まあ、伊達にゲーマーやってないから。」
照れ隠しにそう答える。
だって褒められ慣れてないんだもん。
それから私達は手分けして資料を探す。
…まあ、いくらゲーマーでもまさか自分のスマホに引きずり込まれてホラー脱出ゲームになるなんて想像出来ないけど。
それに今の私は罪悪感に苛まれている。大切な人を私のワガママでデスゲームに巻き込んでしまった。想定外とはいえ、私がしようと言い出さなければ…そんな気持ちがぐるぐるしている。だから、絶対この人を守り抜いて脱出しなければ。
つまりは私はかなり本気を出している。これ、終わったらきっと知恵熱だな。
まあ、罰としてそのくらいは甘んじて受けるけど。…脱出出来るならな。
「あ、もしかしてこれ?」
調べ始めてしばらくして愛姉が何か見つけた様だ。
「見せて。」
その資料には新聞記事がスクラップされていた。



ー平成×年◯月◯×日。18歳の高校生による殺人事件が発生。被害者はクラスメイトの女子3人。宮原香(17)、内村加奈枝(17)、野田智晴(18)。犯人は貞岡尚。動機は虐めへの復讐。貞岡は2年半くらい虐められていたというクラスメイトの証言も取れており、間違いないであろう。しかし、これに対し、学校側や教育委員会は対処を怠った為、今回の事件に繋がったと推測される。ー



さらに下にボールペンで走り書きされた字がある。


ー被告、貞岡尚は精神的に疾患がある様だ。よって、総合病院へ送り、検査を予定している。ー



「これはビンゴだね。完璧にこれじゃん。」
「やったね、優。」
「うん、ありがとう。とりあえず、ゲームマスターにして地縛霊は貞岡尚って女の子。各ステージの内、学校の霊は3人の中の誰か、もしくは3人共ってとこだね。欲しい情報は手に入ったし、そろそろ移動しようか。」
「う…やっぱり行かなきゃダメだよね。」
「移動してこのステージの鍵となる霊を成仏させないと一生このままだよ。ここにいてもいつ何があるかわからないし、極力離れないようにしなきゃ。そしたらその…ま、守ってあげれるから、ね。」
少し恥ずかしいセリフだな、これ。
「あ、ありがとう。ふふ、どっちがお姉ちゃんか分かんないね。」
「いやいや、私が一個下だから。」
それに私の素がかなり甘えたなの知ってるでしょ。
「私ビビりだけど優はしっかりしててさ。」
「私だって怖いよ。でも…。」
「でも?」
「何でもない。ほら、早く行ってこんなとこ脱出しようよ。」
きっと私のせいでこんな…なんて言ったら優しい貴女は絶対気を使うから…。
だから言わない。
ドアに手をかけるとあっさり開き、薄暗い廊下が広がっていた。
「懐中電灯照らしながら私の後ろを歩いて。あと、後ろも警戒しながらね。」
「うん。分かった。」
懐中電灯電灯で足元が明るくなる。
しばらく進むと人が倒れているのが見えた。
「大丈夫かな、あの人。」
心配そうにしている愛姉。
「確認してみようか。…もしもし?」
揺さぶるが反応がない。
脈を測ろうと首に触れたら凄く冷たくて…。
「ダメだ、亡くなってる。」
「そんなっ」
死体は男性の様だ。血が出てないところを見ると窒息死の様だ。
「ん?」
手に紙切れが握られている。
ヒントになる何かかもしれない。
紙切れを貰うことにした私はそれを取り、広げてみる。


ー誰も信じちゃいけない。人は簡単に欲に負けて裏切る生き物だ。信じられるのは己のみ。ー


「どういうことだろうことかな?」
「分からない。けど、この人は私達と同じプレイヤーでパートナーか誰かに裏切られて殺されたってとこかな?もしくは逃げてるうちに別の誰か…もしくは霊によって。詳しくは分からないけど欲に負けるって何のだろう?」
「…分からないけど私達には関係ないんじゃない?嘘なら見抜くし裏切るかそうじゃないかは分かると思う。」
「ん、そう…だね。」
私が裏切るなんてありえないし論外。裏切られることも愛姉ならないと信じられる。
だけどなんだろう、この違和感は。
とりあえず考えるのは置いといて、先に進まなきゃ。
数メートル先に扉があるのを発見する。
「とりあえず開けてみよう。少し下がって。」
開けたらなんかあるなんて定番だからね。
慎重に扉を開く。
とりあえず危険はまだ無さそう。しかし…
「凄い悪臭…。愛姉、大丈夫そう?」
生臭さと腐臭が混ざった匂いが充満してて胃液が逆流しそうだ。
「う…頑張る。」
「無理だったら我慢しないで言って。」
「うん。」
先に少し進むと骨が落ちていた。
その先にはボロボロの洋服。
更に近くにバケツがあり…。
「うぐっ!?」
慌てて口を押さえ、吐きそうになったものを無理やり飲み込む。
「大丈夫?」
「バケツ、極力見ちゃダメ。わかった?」
「え?う、うん。優がそう言うなら…。」
こんなグロいのとてもじゃないが見て欲しくない。
バケツの中は何かって?
…内臓 。人の内臓がぎっしりと。大腸やら胃袋やら…。
…ん?ちょっと待てよ?ここにこれがあるってことはだよ?つまりはこんなグロいことをするやつがいるってことだよな?人なのか霊なのかは分からないけども。出来れば人であって欲しくはない。てかどっちも嫌だけども。
また奥へと歩みを進める。
と、突き当たって左右に曲がり角が現れる。
「どっちに行く?優に任せるよ。」
そう愛姉が言ってきた時だった、左の方から何やら音する。
耳をすませて聞いてみる。
グチュー、にゅちゅ、ブチー。
不気味な音だ。
とりあえず確認しておくか。
「左から音が聞こえてくる。音の正体を確認したいからちょっと見に行くからここにいる?」
音的にやな予感しかしない。しかし、置いて行くのも危ないし…。
「ううん。着いて行く。て、離れないでって言ったじゃん。」
まあ、そうなるな。
私は頷き慎重に進んで行く。
「っ!?」
悲鳴をあげそうになった愛姉の口を慌てて手で塞ぐ。
無理もない。
目の前ではグロテスクな光景が広がっていた。
人なのか幽霊なのかは不明だが、男がいて、下に転がってる死体を貪り食べていたのだ。
音の正体はこいつが肉をちぎって食べてる音だったのか。
幸いにも食べることに夢中で私達に気づいてない。
私は小さい声で愛姉に耳打ちする。
「ここ通ろう。今なら通れる。多分この道が正解だよ。」
大体、こういうゲームってこういう危険な道が正規ルートだからね。私のゲーマー力なめんなよ。
「で、でも…」
やっぱ怖いよなぁ。
「大丈夫。大きな音さえ立てず、ゆっくり通れば向こうは食べるのに夢中で気付かないから。」
渋々だが分かってくれたようで小さく頷いてくれた。
少しでも愛姉の怖さがなくなるようにぎゅっと手を握ってみる。
「ありがとう。」
少し震えていた愛姉の震えが止まった。
それから慎重に進んでなんとかバレずに通るとまた扉がある。今度は2つ。
右が監視室、左が休憩室と書いてある。
「扉の向こうに何かいるかとか分かったりする?」
「えっと…監視室に気配が1つあるかな。」
「そう。じゃあ、休憩室に入って見よう。」
ガチャっと音がして扉が開く。中はロッカーが並んでベンチが置いてある。
ロッカーは鍵がついていない。
「よし、片っ端から開けて行こう。」
「え?危なくない?もしトラップとかあったら…。」
「そうかもだけど手がかりとかもあると思うよ?私が開けるから端っこに寄って待ってて。」
「気をつけてね?」
そういうと扉の近くまで離れていった。
さて、ロッカーは全部で12個。
カチャー。
1つ目、空。
カチャー。
2つ目もから。
カチャー。
3つ目、…人の頭蓋骨が出てきた。一緒にボロボロの服が出てきた。看守服のようだ。
「ここ、頭蓋骨入ってた。看守服も一緒。多分ここの看守がなんでか死んで、骨になったのちここに入れられたみたい。腐臭はあまりしないからそう考えるのが妥当ね。」
「でも何の為に?」
「そこまでは分からない。とりあえず残り開けていくよ。」
4つ目、空。
5つ目、空。
6つ目、空。
7つ目、空。
8つ目、…うわ!?生首!?まだ新しい。
「ちょ…この生首もしかしてゲームのプレイヤーの?血の感じからして新しいし。…でも他の部位はどこに?」
「な、な、な、生首!?」
あ、しまった。声に出してた。
「うん、男の人の。とりあえず死んだら身体バラバラにされてロッカーに入れられる可能性が…。て、やばいな。ここ危ない部屋じゃん。えっと、愛姉の能力ってどのくらいの範囲の気配を感じれるの?」
「え?えっと…50Mくらいかな。」
「なら大丈夫。私は今から急いで他のロッカーの中全部開けて必要なのだけ持ち出せるようにするから愛姉は近くに人の気配が来たら教えて。」
「分かった。あ、隣の部屋以外だよね?」
「隣の部屋は動きがあったらすぐ出る。」
「了解。」
よし、早くしなきゃ。
9つ目、空。
10つ目、っ!?沢山の人の目玉が…。瓶に沢山詰められて…。駄目だ、気持ち悪い。
11つ目、お?当たりかな?ノート発見。とりあえず後で読もう。
12つ目、やべえじゃん。凶器置き場だよ。鉄パイプ鉈、鋸、鋏、縄…。おおう。ここ、もしかしなくても殺人鬼の使ってる部屋じゃんか。
とりあえず凶器は触らないのが一番。ノートだけ持って行こう。
「こっちは謎のノート見つけた。これ持ってとりあえず出よう。」
私がそう言った時だった。
「優!!左側から誰かくる。気配は2人!」
「出よう、今すぐ。」
慌てて部屋を出る。
「…ねえ、とりあえず様子を伺おう。そこ、丁度棚があってかがんでれば向こうからじゃ見えない。」
私の指差す方には空の瓶が並んでいる棚があった。ちなみに右に通路があって、そっちは私達がさっき通った場所。
「危ないよ…。」
確かにこの棚は危ない。さっき見つけた目玉がぎっしり入った瓶と同じ瓶だから。もし、気配のうちに殺人鬼が居たらこの瓶を取りに来るに違いない。
「大丈夫、少しの間は安全。危険だと判断したらすぐに離れるから。」
「う、うん。信じるよ…。」
本当はとても怖いはずなのにそう言って笑顔を向けてくれる愛姉。申し訳無さすぎて胸が痛いな。
そしてやがて足音とすすり泣く声が聞こえてくる。
「っ!?」
殺人鬼のお出ましだ。片手には鎌、もう片手は誰かを引きずってる。女の子だ。多分、私達と同じプレイヤー。
「やだよ…ヒック、死にたくない、よ…。」
申し訳ないが今は下手に動けない。
殺人鬼は囚人服を着ている。
間違いない。このステージの鍵となる霊だ。
しかし困ったな。見つけたのは良いがどうやってあんな凶悪なん成仏させろと?
とりあえずはヒント集めるしかないか?
と、ー。
ぎゅっ。
いきなり愛姉がしがみついてくる。
同時に
「痛い、痛いっ!!!やだっ!!ああああっ!!!」
もの凄い叫び声が響く。
見ると女の子の右足が切られていくところで…。
「うっ…。」
吐きそうなのをぐっとこらえる。
「やだっ!助けて!!ひぎっ!?」
女の子の声が途切れる。死んじゃったのかな?でも倒す術を知らないからどうにもできない。
「とりあえず逃げよう。出来るだけ音を立てないように這って行くの。出来る?」
小声で聞くが返事がない。
「…大丈夫。私がついてる。気配も向こう、ないんでしょ?あいつがここのボスキャラみたいなもんだからとりあえず一旦いないとこ行こう。ね?」
ぎゅっと手を握りながら言うと、小さく「分かった」と聞こえてきた。
そして這って角をまっがってすぐに囚人服を着た男が隠れてた棚の瓶を取りにきていた。
男は瓶を取って戻っていった。
間も無く…
「痛い痛い痛いっ!!いやあ!!目!!私の目え!!!」
と、叫ぶ声が響く。
「あぎゃっ、目、かえ…し…い、た…。」
それから声が聞こえなくなり、女の子が死んだことが分かった。
それから男は私達が最初に歩いてきた方へと歩いていった。
「大丈夫、行ったよ。」
「はあ…こ、怖かった。」
安堵のため息をつく愛姉。
「とりあえずこの周りは今誰もいないよね?」
「え?うん。」
「そっち。端っこに寄って。さっきロッカーで気になるノートを見つけたから見て見よう。ヒントかなんかあればいいんだけど…。」
そして私はノートを開いた。


ー某日。ここの看守は腐ってる。どうして無実である人間を閉じ込めるのか…。
某日。彼女が泣いている。助けてあげたいが罪人の声なんかあいつらは聞きやしない。無知でを振るい痛みと恐怖で支配してくる。
某日。可愛い彼女の顔が腫れている。看守に殴られたらしい。許せない。
某日。尚ちゃんがまた泣いている。看守達に強姦されたって…。許せない…。
某日。尚ちゃん、尚ちゃん、尚ちゃん、尚ちゃん、尚ちゃん、尚ちゃん。
某日。尚ちゃんが僕にだけ真実を話してくれた。クラスメイトに嵌められたのだと。彼女達が苛めすぎて死んだ下級生を尚ちゃんのせいにしたのだと。許せない。
某日。尚ちゃんがまた泣いている。面会に行っていたはず。…苛めっ子の人達が来て言葉の暴力を受けたって…。
許せない。看守も見てたはずなのに。許せない。憎い。ー



日記の様なそれは途切れ、ページをめくると…


ー憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い、憎い
殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す
尚ちゃん、尚ちゃん、尚ちゃん、尚ちゃん、喜んでー


そこでページが終わった。
「なるほど。ここの鍵となるのはさっきの奴で間違い。彼は貞岡尚に好意を寄せていた。貞岡尚を助けたい一心で何か事件を起こしたと見て間違いなさそう。問題は、彼の未練ってとこか。成仏させるには未練を断たないとってよく言うし。今度はその情報を集めなければって感じだね。」
「優、凄い。探偵みたい。」
「えー?探偵はちょっとなー。歩く死神みたいじゃん?」
まあ、それは某アニメの話の中だけかもだけど。
「とりあえず、監視室に行ってみない?」
「え!?人の気配があるし危ないんじゃ…。」
「大丈夫。危なかったらすぐに逃げるから。勿論、愛姉も守るから、ね?」
「…必要なことなんだよね?わかった。」
愛姉の承諾をもらい、2人で監視室へ向かう。
ゆっくりとドアを開くと、沢山のモニターに囲まれ、中央に鎮座している椅子へ人が座っていた。
看守の服を着ており、紺色の短髪に隻眼の瞳。こちらを真っ直ぐに見据えている。
「どうした?入るなら入れ。私はお前達を殺したりしない。」
「…あなたは?」
「私は紅月零亞(こうづきれいあ)。ここの看守長だった。今は霊体だが。お前達はここに迷いこんだんだろう?貞岡尚の霊によって。」
「…どこまで貴方は把握しているの?」
「君達が貞岡尚の霊が始めたゲームとやらに巻き込まれ、既に15人死んでいる。君達が一番このステージのクリア条件に近い位置にいるってところか。」
「私は月夜優。隣は私のパートナー。私達は特殊な能力と一つの道具のみ与えられ、飛ばされてきた。」
「飛ばされてきてからはモニターに映っていたからわかる。実に頭の切れる娘だ。」
「…会話も筒抜けなの?」
「ああ、聴こえていた。お前に情報を必要なだけ、答えられる範囲内で。これは私の罪滅ぼしみたいなものだが…役にはたつだろう。」
「罪滅ぼし?」
「囚人の日記を見たろう?看守という立場を利用し拷問していたと。勿論、極一部だが私の部下の管理不足が招いた結果だから私にも事の責任がある。」
「日記の囚人についてまず聞きたい。」
「囚人ナンバー1009、名は春日清彦。罪状は殺人未遂。病気の妹が男に拉致されて薬を飲めなかったせいで亡くなってな。妹は貞岡尚に似ているんだ。顔も雰囲気も。だから彼は貞岡尚を妹の様に大事に思ってた。貞岡尚が看守に色々されてついに壊れ始めた時、彼は檻をこっそり隠していた鉄パイプでこじ開け、看守を次々殺していった。それから私を含め6人がかりで捕縛し、彼は死刑になったよ。彼は死ぬ間際に『尚ちゃんを助けてくれ!』
と残して逝ったよ。それから私は貞岡尚を総合病院へ入院させた。」
「彼の未練って貞岡尚の安否だった?あ、でも…」
「何か気になることでもあるのか?」
「うん、ロッカー室に目玉が沢山入った瓶があった。春日清彦は目玉を集めてなにする気なんだろうなって。」
「なるほど。おそらく、貞岡尚の為だな。彼女、目が悪くてな。当時はまだ見えていたがいずれ見えなくなると。それも近いうちに。そんな話があったな。」
「なるほど。彼は貞岡尚が病院にいったかどうか。いっているのなら目を直してあげたい。そう徘徊してるのね。」
しかし、成仏させるにしても近づいた瞬間殺されそうだよな…。
「でも、あんな怖い人、どうやって成仏させるの?」
私の心を代弁ありがとう、愛姉。
「入院させた際の手続きした資料のコピーがある。しかし、看守を恨んでいるから私の言葉には聞く耳持たんだろうな。」
「…私がやってみる。それ、貸して欲しい。」
「え?優、危ないよ!」
「そうだけど、何か行動起こさないと何も起きないよ。…本当は怖いよ。震えてるもん。だから、愛姉、手を握って欲しい。勇気を私に貸して欲しい。」
情け無い話、自分で言っておいて震えが出てきてしまった。
「うん。優、無理させてごめんね?」
なんで謝るの?私はしたくてしてるんだよ?
愛姉は優しく抱きしめてくれて、その暖かく心地いい体温に安心したのか震えは収まってくれた。
「私、やってみる。」



紅月と別れて愛姉の目を頼りに春日清彦の霊を探す。
「見つからないね。」
愛姉が申し訳なさそうに言う。
「…分かった、ロッカー室にいれば良いんだよ。」
「ロッカー室?」
「何故かあそこに目を集めて瓶に詰めて置いてある。あと、凶器もあった。つまりあそこを拠点としてるってことじゃないかな?あそこで待ってれば必ず現れる。」
「なるほど。でも優はどうやって成仏させるの?」
「…まだ成仏はさせない。味方にするの。」
「は?」
「まあ、見てて。成功させてみせる。」
やがてロッカー室の前に着く。
ドアを開ける。
「ひっ!?」
愛姉が小さく悲鳴をあげる。
開けた先にはさっき殺された女の子の死体。両目が刳り抜かれており、片足が切断されている。手はロープで縛られて抵抗できなかったのが分かる。
血の匂いにむせ返りそうなのを堪えて、奥の方へ行く。
愛姉を背に庇う様に立ち、春日清彦が来るのを待つ。
しばらくして…
「気配が2つ。多分また誰か捕まったのかな?」
「ってことはここに来るよ。私の後ろから出ないで。」
程なくして、ドアを開ける音がして、春日清彦とまたもや女の子が連れ去られている。
「がああ!!」
人としての言葉を失っているのか春日清彦は叫んでいる。
「痛い…。」
女の子は我慢強い様で唇を噛み締め耐えている。
「春日清彦さん!!」
名前を叫んでみる。
「が?」
反応あり。話は聞いてくれそう。
「貴方が貞岡尚ちゃんを心配してこういうことをしているのだと知りました。私達に協力して欲しい。そうしたら、貞岡尚ちゃんに会えるから。彼女がどうなっているか知れる。」
「な、おちゃ…?」
「そう、貴方が大切に思っていた尚ちゃん。私達は尚ちゃんが始めた脱出ゲームのプレイヤー。進んでいけば必ず尚ちゃんに行き着く。これ、病院書類のコピー。貴方にあげる。」
春日清彦は紙を受け取る。
「精神科…?尚ちゃんニハ眼科ガ必要…。」
「次、私達は病院に飛ばされてまたステージを進まなくてはいけない。貴方も一緒にきて眼科にってお願いすれば良いんじゃないかな?どう?悪い話じゃないはず。」
春日清彦は黙り込んだ。どうやら考えているようだ。
「もし嘘だと思っているならとりあえずついてきて、嘘だった場合私を好きにすれば良いわ。信じて貰う為なら命をかけてやる。」
「ちょ!?優!?」
「大丈夫。嘘を言ってないんだから私は死なない。そうでしょ?だから心配ないわ。」
「ワカッタ。オ前の言う事信じて見る。お前は看守トハチガウから。」
「ありがとう。」
良かった。仲間にできた。殺されそうだった子も助かった。
「貴女、大丈夫?」
「はい、ありがとうございます。私は柳類(やなぎるい)っていいます。」
「な!?」
「優?」
「知り合い。仕事一緒…。」
「え?」
「私よ、月夜優。」
「月夜さん!?」
優で気づいてなかったのか。まあ、ありふれた名前だしな。
何はともあれ良かった。
と、ー



[ステージ1、監獄クリアおめでとうございます。]
と文字が浮かんでいる。
「やったぜ。」
[ステージ1での脱落者、58名。残り50名。]
半分ちょい減ってんじゃん!?
「嘘…。」
愛姉もショックだった様だ。
しかし、ショックを受けている暇などない。
またあの黒い渦が出現する。
「行こう。次のステージへ。」
3人と1体は頷き、黒い渦へと飛び込んだ。
ここからが本当の地獄とも知らずに。…ー。
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