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第3章:宮廷の闇、血塗られた神事
第1話:男装の陰陽師は穢された祈りの謎を追う4
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「ああ。こっちは安部朔夜。オレの同僚で、大事な……親友だ」
真白が、少しだけ言葉を選びながら、僕を紹介する。
その「大事な」という部分に、妙な力がこもっていたのを、僕は聞き逃さなかった。
(今のって、どういう意味で言ったんだろう……)
顔がカッと熱くなるのを感じながらも、僕は丁寧に頭を下げた。
「安部朔夜と申します。以後、お見知りおきを」
「菅原紅子と申します。こちらこそ、どうぞよしなに」
紅子さんは、僕を上から下まで一瞥し、軽く会釈を返した。
その視線は、まるで品定めでもするかのような、鋭さを含んでいる。
でも、不思議と敵意のようなものは感じられない。
むしろ、好奇心に近い何かだろうか。
僕は、その射るような視線を受け止めながら、この女官は一筋縄ではいかない相手だと直感した。
「紅子、お前、たしか後宮に勤めているんだったよな?」
真白が、思い出したように尋ねる。
「ええ、左様ですわ。何か、後宮にご用でも?」
紅子さんは、少し訝しげに、小首を傾げて問い返す。
その仕草が妙に色っぽくて、ドキドキした僕は、思わず目を逸らしてしまった。
真白の様子が気になって、チラ見したけど、あいつは平然としてた。
見慣れてるってこと?
「先日の神事の件で、ちょっと調べていてさ。何か変わったことを見たり、聞いたりしなかったかと思って」
真白の言葉に、紅子さんの表情が、僅かに曇った。
「……あの日のこと、でございますか。正直、思い出したくもありませんわ。わたくしも、あの恐ろしい場のすぐ近くにおりましたのよ。あとほんの少し逃げるのが遅れていたら、わたくしも……」
紅子さんは、そっと袖で口元を覆い、小さく身震いする。
あの日の恐怖の記憶が、鮮明に蘇ってきたのだろう。
その瞳が、痛々しく揺れた。
「そうか……すまない、嫌なことを思い出させてしまって」
真白が、心底申し訳なさそうな顔で言う。
本当、こういうところ、優しいんだよな。
「いいえ、お気になさらないで。それで、何か変わったこと、でしたわね……」
紅子さんは、少し考え込むように俯き、やがてハッと顔を上げた。
何かを思い出したようだ。
「そういえば……神事の数日前、夕暮れ時だったかしら。正陽殿の北側で、妙な人影を見かけましたわ」
「人影、ですか?」
僕は、鋭く問い返す。
これは聞き逃せない情報だ。
「ええ。わたくし、昔から目には自信がありますの。白張姿の男でしたので、最初は雑用の者が神事の準備をしているのかと思ったのですけれど……」
記憶を手繰り寄せるように、紅子さんは涼やかな瞳を斜め上に向ける。
「その、仕草が、どこか優雅すぎると申しますか、まるで高位貴族のような、そんな立ち居振る舞いに感じましたの」
紅子さんの口ぶりには、単なる一介の女官には到底思えない、冷静な観察眼が滲んでいた。
(この人、やっぱりただ者じゃない……)
僕は確信する。
「それに、顔立ちも……何だか、変でしたのよ。薄暗くてよくは見えなかったのですが、松明の光が当たっても、輪郭がぼんやりとしていて」
もしかすると、視認妨害の術かもしれない。
「まるで、誰か“よほど見られたくないお方”が、術か何かで偽装でもしているかのようでしたわ」
やっぱり、彼女もそう思ったみたいだ。
「……それから、何か気づいたことは?」
僕は、思わず身を乗り出すようにして尋ねる。
「すぐに姿を消してしまいましたが……その場から、風に乗って、ふわりと流れてきた香り……いえ、香りと呼ぶにはあまりに不自然で、強烈な匂いがいたしましたわ」
「強烈な匂いですか?」
「ええ。練香のような雅なものではなく、もっと……そう、陰陽寮の密具に使われる、強い油と、幾種類もの薬草が混じり合ったような匂い――ツンと鼻につく、あの独特のものですわ」
真白が、ハッと目を見開いた。
「……ああ、そういえば、あれ、結構キツイ匂いだよな。この間、陰陽寮の中でも、特に偉いさんしか入れない部屋の近くで、確かに嗅いだ覚えがあるぞ、オレ」
「あの一番奥まった、普段は誰も近寄らない部屋でか?」
僕は、驚いて真白を振り向いた。
真白は、その強烈な臭いを思い出したのか、顔をしかめて何度も頷いた。
紅子さんは、ふっと目を伏せてから、意味ありげに言った。
「ふふ、あくまで“わたくしの気のせい”かもしれませんけれど。あのとき見た人影、どうにも“よほど高貴なお方、もしくは、その方に深く付き従う者”のように感じられましたの」
そこで言葉を切り、紅子さんは、僕をじっと見つめた。
「……宮廷というのは、表と裏で、まるで違う顔を持っておりますから。ねえ、朔夜様?」
その切れ長の瞳が、どこか僕の心の奥底を試すような、妖しい光を宿して、細められた。
(え……? なにその言い方。まるで、僕が何か隠してるのを見抜いてるみたいな……)
ゴクリと息を呑んだ。
この人、僕が女だってこと、もしかして気づいてる……?
いや、まさか。
……今はとにかく情報収集だ。
「その人影について、現場に行って、もう少し詳しくお話を聞かせ願えないでしょうか」
僕は、真剣な眼差しで紅子さんに頼む。
紅子さんは、ふん、と小さく鼻を鳴らした。
その態度は、ちょっと偉そうにも見えるけれど、不思議と嫌味は感じない。
むしろ、その勝気さが、彼女の聡明さをより一層引き立てているように思えた。
「よろしゅうございますわ。ただし、わたくしも暇ではございませんの。手短にお願いいたしますわよ」
軽く肩をすくめ、悪戯っぽく笑ってから、紅子さんは顎をしゃくって二人に建物内に入るよう促す。
そして、くるりと背を向けると、迷いのない足取りで正陽殿の方角へと歩き始めた。
僕と真白は、顔を見合わせ、静かに頷くと、そのあとに続いた。
僕は、紅子さんに、奇妙な好感を抱いていた。
口ぶりは少々尊大だけど、頭脳明晰で、根は真面目そうだ。
そして、何よりも、頼りになりそうな気がする。
この出会いが、あるいは、この膠着した事件を解決する、大きな鍵になるのかもしれない。
そんな予感が、僕の胸を掠めた。
きっと、真白も同じように感じているに違いない。
彼の横顔には、いつもの軽やかさとは違う、真剣な光が宿っていたから。
僕も、彼に負けないように、しっかりと前を見据えなければ。
◇◇◇
【あとがき】
カオス会議:第3章第1話「男装の陰陽師は穢された祈りの謎を追う」編
朔夜:男装陰陽師。自他共に厳しい生真面目枠。フラグ建築士。
真白:親友陰陽師。軽口と煽りとフラグ回収の名人。
夜刀:式神。抱きつきと過保護と警戒モードフル稼働。
紅子:宮廷女官。優雅に見せかけて、内心バチバチな毒舌メイド枠。
真白:
「いや~派手だったなぁ、今回の妖魔出現イベント! オレの登場もバッチリでさ~」
朔夜:
「それどころじゃなかったろ!? あれ、貴族の前で堂々と『臨・兵・闘…』やって、式場、火花吹いてたじゃん!」
真白:(ドヤ顔)
「オレの霊符が火を吹いた!ってやつ? うん、知ってる!」
夜刀:(食い気味に)
「その“火”が主の袖を焦がしたことについては、後ほど説教部屋で詳細を――」
朔夜:(じと目)
「本当に焦げたんだよ……下ろしたてだったのに、ちょっと穴空いたし……」
真白:(目逸らし)
「いや~思ったより火力出ちゃって……わりぃわりぃ」
紅子:(ふう、と扇子を閉じる)
「まったく、あんな清らかな祭祀の場で妖魔乱入なんて……貴族方の気絶率、七割を超えましたわよ?」
真白:(やや楽しそう)
「貴族って、ビックリするとホントに気絶するんだな!根性ねぇなーw」
紅子:(にっこり)
「真白様、救護要請が山のように届いておりますので、後ほどご指名でお呼びしますね?」
真白:(引きつり笑い)
「オレ、回復担当じゃないから……!」
朔夜:(ボソッと)
「でも紅子さん、あの時、けっこう冷静に対処してたっぽいよね?」
紅子:(目を細める)
「ふふふ、非常時の対応も宮廷女官の嗜みですわ。それに――」
紅子:(急に声を潜めて)
「この事件、表に出せない“裏”があります。どうか朔夜様、ご無事でいてくださいね……」
朔夜:
「……え、今、すごく意味深なこと言われた!?」
真白:(横から肘ツン)
「おーおー、朔夜、フラグ立てられてやんの~」
夜刀:(即反応)
「そのような旗は全力で折ります」
紅子:(涼しい顔で)
「……式神の主愛が激重なのも考えものですわね」
真白:(ヒソヒソ)
「バチバチしてる……そういや紅子、昔からちょっと怖いタイプだっ……」
紅子:(涼しい顔で肘打ち)
「……(ドスッ)」
真白:(崩れ落ち)
「……グハッ……」
朔夜:(涙声)
「ねー、“裏”ってなに!? こわっ!! 誰か……誰か助けて……!」
夜刀:(しっかり腕を取って)
「主、脈が早い。抱きしめによる応急安定処置を――」
朔夜:
「もうそれやめてぇぇええ!? 人前でやらないでぇええっ!!」
紅子:(クスリと笑って)
「ふふ、皆さま……本当に、賑やかですわね。こんな時だからこそ、“笑い”も必要でしょう」
真白:(わき腹を押さえながら)
「それ黒い笑顔で言うのやめれる!?」
朔夜:(深呼吸して)
「……というわけで、護国豊穣祭は一転して、妖魔の脅威に晒される混乱の幕開けとなってしまいました。でも僕たちは、希望を守るために立ち向かいます――っていうことで、次回も、どうぞお楽しみに!」
真白:
「はいはい! 次回は『真白、疾風怒濤の大活躍!?』でお届けしまーす!」
夜刀:
「それは事実であるか、確認が必要です……」
紅子:
「では、わたくしは影からこっそりとサポートを。……あくまで、“影”から、ですけれど」
全員:
「影の方が怖いわ!!」
◇◇◇
紅子さん、かなり好きなキャラです(笑)
よろしければ、♡や、お気に入りで応援していただけるとありがたいです!
真白が、少しだけ言葉を選びながら、僕を紹介する。
その「大事な」という部分に、妙な力がこもっていたのを、僕は聞き逃さなかった。
(今のって、どういう意味で言ったんだろう……)
顔がカッと熱くなるのを感じながらも、僕は丁寧に頭を下げた。
「安部朔夜と申します。以後、お見知りおきを」
「菅原紅子と申します。こちらこそ、どうぞよしなに」
紅子さんは、僕を上から下まで一瞥し、軽く会釈を返した。
その視線は、まるで品定めでもするかのような、鋭さを含んでいる。
でも、不思議と敵意のようなものは感じられない。
むしろ、好奇心に近い何かだろうか。
僕は、その射るような視線を受け止めながら、この女官は一筋縄ではいかない相手だと直感した。
「紅子、お前、たしか後宮に勤めているんだったよな?」
真白が、思い出したように尋ねる。
「ええ、左様ですわ。何か、後宮にご用でも?」
紅子さんは、少し訝しげに、小首を傾げて問い返す。
その仕草が妙に色っぽくて、ドキドキした僕は、思わず目を逸らしてしまった。
真白の様子が気になって、チラ見したけど、あいつは平然としてた。
見慣れてるってこと?
「先日の神事の件で、ちょっと調べていてさ。何か変わったことを見たり、聞いたりしなかったかと思って」
真白の言葉に、紅子さんの表情が、僅かに曇った。
「……あの日のこと、でございますか。正直、思い出したくもありませんわ。わたくしも、あの恐ろしい場のすぐ近くにおりましたのよ。あとほんの少し逃げるのが遅れていたら、わたくしも……」
紅子さんは、そっと袖で口元を覆い、小さく身震いする。
あの日の恐怖の記憶が、鮮明に蘇ってきたのだろう。
その瞳が、痛々しく揺れた。
「そうか……すまない、嫌なことを思い出させてしまって」
真白が、心底申し訳なさそうな顔で言う。
本当、こういうところ、優しいんだよな。
「いいえ、お気になさらないで。それで、何か変わったこと、でしたわね……」
紅子さんは、少し考え込むように俯き、やがてハッと顔を上げた。
何かを思い出したようだ。
「そういえば……神事の数日前、夕暮れ時だったかしら。正陽殿の北側で、妙な人影を見かけましたわ」
「人影、ですか?」
僕は、鋭く問い返す。
これは聞き逃せない情報だ。
「ええ。わたくし、昔から目には自信がありますの。白張姿の男でしたので、最初は雑用の者が神事の準備をしているのかと思ったのですけれど……」
記憶を手繰り寄せるように、紅子さんは涼やかな瞳を斜め上に向ける。
「その、仕草が、どこか優雅すぎると申しますか、まるで高位貴族のような、そんな立ち居振る舞いに感じましたの」
紅子さんの口ぶりには、単なる一介の女官には到底思えない、冷静な観察眼が滲んでいた。
(この人、やっぱりただ者じゃない……)
僕は確信する。
「それに、顔立ちも……何だか、変でしたのよ。薄暗くてよくは見えなかったのですが、松明の光が当たっても、輪郭がぼんやりとしていて」
もしかすると、視認妨害の術かもしれない。
「まるで、誰か“よほど見られたくないお方”が、術か何かで偽装でもしているかのようでしたわ」
やっぱり、彼女もそう思ったみたいだ。
「……それから、何か気づいたことは?」
僕は、思わず身を乗り出すようにして尋ねる。
「すぐに姿を消してしまいましたが……その場から、風に乗って、ふわりと流れてきた香り……いえ、香りと呼ぶにはあまりに不自然で、強烈な匂いがいたしましたわ」
「強烈な匂いですか?」
「ええ。練香のような雅なものではなく、もっと……そう、陰陽寮の密具に使われる、強い油と、幾種類もの薬草が混じり合ったような匂い――ツンと鼻につく、あの独特のものですわ」
真白が、ハッと目を見開いた。
「……ああ、そういえば、あれ、結構キツイ匂いだよな。この間、陰陽寮の中でも、特に偉いさんしか入れない部屋の近くで、確かに嗅いだ覚えがあるぞ、オレ」
「あの一番奥まった、普段は誰も近寄らない部屋でか?」
僕は、驚いて真白を振り向いた。
真白は、その強烈な臭いを思い出したのか、顔をしかめて何度も頷いた。
紅子さんは、ふっと目を伏せてから、意味ありげに言った。
「ふふ、あくまで“わたくしの気のせい”かもしれませんけれど。あのとき見た人影、どうにも“よほど高貴なお方、もしくは、その方に深く付き従う者”のように感じられましたの」
そこで言葉を切り、紅子さんは、僕をじっと見つめた。
「……宮廷というのは、表と裏で、まるで違う顔を持っておりますから。ねえ、朔夜様?」
その切れ長の瞳が、どこか僕の心の奥底を試すような、妖しい光を宿して、細められた。
(え……? なにその言い方。まるで、僕が何か隠してるのを見抜いてるみたいな……)
ゴクリと息を呑んだ。
この人、僕が女だってこと、もしかして気づいてる……?
いや、まさか。
……今はとにかく情報収集だ。
「その人影について、現場に行って、もう少し詳しくお話を聞かせ願えないでしょうか」
僕は、真剣な眼差しで紅子さんに頼む。
紅子さんは、ふん、と小さく鼻を鳴らした。
その態度は、ちょっと偉そうにも見えるけれど、不思議と嫌味は感じない。
むしろ、その勝気さが、彼女の聡明さをより一層引き立てているように思えた。
「よろしゅうございますわ。ただし、わたくしも暇ではございませんの。手短にお願いいたしますわよ」
軽く肩をすくめ、悪戯っぽく笑ってから、紅子さんは顎をしゃくって二人に建物内に入るよう促す。
そして、くるりと背を向けると、迷いのない足取りで正陽殿の方角へと歩き始めた。
僕と真白は、顔を見合わせ、静かに頷くと、そのあとに続いた。
僕は、紅子さんに、奇妙な好感を抱いていた。
口ぶりは少々尊大だけど、頭脳明晰で、根は真面目そうだ。
そして、何よりも、頼りになりそうな気がする。
この出会いが、あるいは、この膠着した事件を解決する、大きな鍵になるのかもしれない。
そんな予感が、僕の胸を掠めた。
きっと、真白も同じように感じているに違いない。
彼の横顔には、いつもの軽やかさとは違う、真剣な光が宿っていたから。
僕も、彼に負けないように、しっかりと前を見据えなければ。
◇◇◇
【あとがき】
カオス会議:第3章第1話「男装の陰陽師は穢された祈りの謎を追う」編
朔夜:男装陰陽師。自他共に厳しい生真面目枠。フラグ建築士。
真白:親友陰陽師。軽口と煽りとフラグ回収の名人。
夜刀:式神。抱きつきと過保護と警戒モードフル稼働。
紅子:宮廷女官。優雅に見せかけて、内心バチバチな毒舌メイド枠。
真白:
「いや~派手だったなぁ、今回の妖魔出現イベント! オレの登場もバッチリでさ~」
朔夜:
「それどころじゃなかったろ!? あれ、貴族の前で堂々と『臨・兵・闘…』やって、式場、火花吹いてたじゃん!」
真白:(ドヤ顔)
「オレの霊符が火を吹いた!ってやつ? うん、知ってる!」
夜刀:(食い気味に)
「その“火”が主の袖を焦がしたことについては、後ほど説教部屋で詳細を――」
朔夜:(じと目)
「本当に焦げたんだよ……下ろしたてだったのに、ちょっと穴空いたし……」
真白:(目逸らし)
「いや~思ったより火力出ちゃって……わりぃわりぃ」
紅子:(ふう、と扇子を閉じる)
「まったく、あんな清らかな祭祀の場で妖魔乱入なんて……貴族方の気絶率、七割を超えましたわよ?」
真白:(やや楽しそう)
「貴族って、ビックリするとホントに気絶するんだな!根性ねぇなーw」
紅子:(にっこり)
「真白様、救護要請が山のように届いておりますので、後ほどご指名でお呼びしますね?」
真白:(引きつり笑い)
「オレ、回復担当じゃないから……!」
朔夜:(ボソッと)
「でも紅子さん、あの時、けっこう冷静に対処してたっぽいよね?」
紅子:(目を細める)
「ふふふ、非常時の対応も宮廷女官の嗜みですわ。それに――」
紅子:(急に声を潜めて)
「この事件、表に出せない“裏”があります。どうか朔夜様、ご無事でいてくださいね……」
朔夜:
「……え、今、すごく意味深なこと言われた!?」
真白:(横から肘ツン)
「おーおー、朔夜、フラグ立てられてやんの~」
夜刀:(即反応)
「そのような旗は全力で折ります」
紅子:(涼しい顔で)
「……式神の主愛が激重なのも考えものですわね」
真白:(ヒソヒソ)
「バチバチしてる……そういや紅子、昔からちょっと怖いタイプだっ……」
紅子:(涼しい顔で肘打ち)
「……(ドスッ)」
真白:(崩れ落ち)
「……グハッ……」
朔夜:(涙声)
「ねー、“裏”ってなに!? こわっ!! 誰か……誰か助けて……!」
夜刀:(しっかり腕を取って)
「主、脈が早い。抱きしめによる応急安定処置を――」
朔夜:
「もうそれやめてぇぇええ!? 人前でやらないでぇええっ!!」
紅子:(クスリと笑って)
「ふふ、皆さま……本当に、賑やかですわね。こんな時だからこそ、“笑い”も必要でしょう」
真白:(わき腹を押さえながら)
「それ黒い笑顔で言うのやめれる!?」
朔夜:(深呼吸して)
「……というわけで、護国豊穣祭は一転して、妖魔の脅威に晒される混乱の幕開けとなってしまいました。でも僕たちは、希望を守るために立ち向かいます――っていうことで、次回も、どうぞお楽しみに!」
真白:
「はいはい! 次回は『真白、疾風怒濤の大活躍!?』でお届けしまーす!」
夜刀:
「それは事実であるか、確認が必要です……」
紅子:
「では、わたくしは影からこっそりとサポートを。……あくまで、“影”から、ですけれど」
全員:
「影の方が怖いわ!!」
◇◇◇
紅子さん、かなり好きなキャラです(笑)
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