転生陰陽師は男装少女!?~月影の少女と神々の呪い~(ライト版)

水無月 星璃

文字の大きさ
22 / 86
第3章:宮廷の闇、血塗られた神事

第3話:男装の陰陽師は絡み合う宿命に巻き込まれる2

しおりを挟む
それからしばらくして、僕はゆっくりと意識を取り戻した。
ぼんやりとした視界の中で、心配そうに僕を見守る真白ましろ紅子べにこさんの顔が見えた。
胸の傷は塞がっている。
そうだ、僕の秘密は……
冷たい恐怖が心を掠めた、その時だった。

「……朔夜さくや

真白ましろが、ちょっと気まずそうに僕の名前を呼んだ。
顔、真っ赤だ。

「お、お前が……その、女の子だったってことには……正直、めちゃくちゃ驚いた……っていうか、まあ……その……本当は、何となく……いや、かなり前から、気づいては……いた、んだけどな……たぶん」

彼は照れくさそうにガシガシ頭を掻きながらも、真っ直ぐに僕の潤んだ瞳を見て、たどたどしいけど、力強く言ってくれた。

「前にも、言っただろ? 万が一、お前がとんでもない秘密抱えてたとしても、オレは気にしないって。オレは、これからも、ずっとお前のそばにいる。必ず、お前を守る。だから……だから、もう一人で何もかも抱え込むなよ。な?」

その言葉は、不器用で、全然飾ってなんかないけど、嘘のない、真摯な響きがあった。
真白ましろ、もうそれ、ほとんど告白だよ……

「ま、真白ましろ……」

僕は、ただ彼の名前を呼ぶだけで、もういっぱいいっぱいだった。
顔が熱い。
真白ましろの顔、ちゃんと見れないよ……
心臓、バクバクしてる。

そんな僕に、今度は紅子べにこさんが、優しく続けてくれた。

真白ましろ様の仰る通りですわ、朔夜さくや様」

穏やかだけど、どこまでも強い意志を込めた声。

「わたくしも、これからは、貴女のお力になりますわ。貴女が、その大切な秘密を守り抜き、陰陽師おんみょうじとして、貴女らしく生き続けられるように。出来ることがあれば、何なりとお申し付けくださいませ」

紅子べにこさんの美しい瞳には、ただの同情だけじゃない、確かな友情と、同じ困難に立ち向かう仲間としての、強い想いが宿っていた。

僕が意識を失ってる間に、紅子べにこさんは、夜刀やとから、僕が男装してる理由を全部聞いてたらしい。

実は紅子べにこさん自身も、小さい頃に、実のお父さんとお兄さんを妖魔に無残に殺されて、その後引き取られた先の継父に、ずっと虐げられてきたっていう、辛い過去を持ってたんだ。
家族を守れなかった無力感と、理不尽な運命へのやり場のない怒り。
僕の境遇と、自分の過去の深い痛みを重ねて。
そして、その運命にたった一人で立ち向かう僕に、強く惹かれて、深い共感と、憧れみたいな感情を抱いてくれてたんだって。
めちゃくちゃ、うれしい……

二人の、あまりにも温かくて、力強い言葉に、僕の瞳から、こらえきれなかった涙が、止めどなく溢れ出た。
うぅ……だめだ、止まらない。
これは、師匠と兄弟子が死んでからずっと、気を張り詰めて生きてきた僕が、本当に久しぶりに流した、心の底からの安心と、深い感謝の涙だった。
自分の最大の秘密を知られても、変わらずに僕を受け入れて、心から支えようとしてくれる仲間が、こんなに近くにいてくれるなんて。
その揺るぎない事実が、僕の強張ってた心を優しくほぐしていく。

「……ありがとう……ありがとう、真白ましろ紅子べにこ殿……っ」

しゃくり上げながら、それでも、涙でぐしゃぐしゃの顔を上げて、二人に精一杯の笑顔で微笑んでみせた。
長い雨がようやく止んで、雲の間から太陽の光が差したみたいな気分だった。
この絆がある限り、僕はきっと大丈夫。もっと強くなれる。
そう、心の底から、強く、強く思えた。

そばで僕たちの様子を見ていた夜刀やとは、僕の笑顔に小さく微笑んだ。
でも、その深紅の瞳には、僕が仲間を得た喜びとは裏腹の、何かが燃えるような暗い光が宿っていた。
いつも感情を見せない夜刀の、明らかに異なる気配を感じ、僕は戸惑う。
夜刀やと、どうしちゃったんだろう……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】海外在住だったので、異世界転移なんてなんともありません

ソニエッタ
ファンタジー
言葉が通じない? それ、日常でした。 文化が違う? 慣れてます。 命の危機? まあ、それはちょっと驚きましたけど。 NGO調整員として、砂漠の難民キャンプから、宗教対立がくすぶる交渉の現場まで――。 いろんな修羅場をくぐってきた私が、今度は魔族の村に“神託の者”として召喚されました。 スーツケース一つで、どこにでも行ける体質なんです。 今回の目的地が、たまたま魔王のいる世界だっただけ。 「聖剣? 魔法? それよりまず、水と食糧と、宗教的禁忌の確認ですね」 ちょっとズレてて、でもやたらと現場慣れしてる。 そんな“救世主”、エミリの異世界ロジカル生活、はじまります。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

処理中です...