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中編
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【まえがき】
逆境をものともせず、優雅に「ざまぁ」する貴族令嬢の、マイペースなひとり語り。
中編。
------------------------------------------------
後日、わたくしはテオ様にお付き合いいただいて宝飾店を訪れ、テオ様の瞳と同じ、きれいなスカイブルーの宝石をブローチに加工していただいて、「テオ様のお見立て」と言って、お二人にプレゼントいたしました。
こうでも言わないと、受け取っていただけなそうでしたからね。
お二人は「これ、テオの瞳の色ね! テオが見立ててくれたなんて、嬉しいわ!」「テオ兄様が貰って欲しいと言うなら、貰ってあげるわ」と、それは嬉しそうにおっしゃっていましたわね。
わたくしからのプレゼントなのですけれどね……。
でも結局、プレゼントによる懐柔作戦は失敗に終わり、あのご姉妹はわたくしとテオ様の婚約を破棄させようと、あの手この手で妨害工作や嫌がらせをするようになりましたの。
テオ様も結局、お二人を説得することはできなかったようですわ。
でも、ブローチ自体は気に入ったのか、「テオ様の見立て」と言うところを「テオ様からのプレゼント」と変換して解釈なさって、毎日肌身離さず、つけてくださっているようですけれど。
妹のフェルミナ様は、とても単純でわかりやすい嫌がらせをなさる程度だったのですけれど、姉のフェリシア様の方は、他の方の目からご自身が悲劇のヒロインのように映るように、それはもう上手いこと立ち回られて、ちょっと厄介でしたのよ?
テオ様にあれだけしっかりフラれたのに、しつこ……健気な方ね。
それに、ご本人たちは誰にもバレないように画策しているつもりのようでしたけれど、完全犯罪って、結構難しいものですのよ?
それと、わたくし、ただ指を咥えてじっと耐え忍ぶような、大人しい性格ではございませんの。
うふふ。
まあそれで、具体的にどんなことをされたかと申しますと、確か初めは、婚約のお披露目パーティーに備えて、お義母様が手配してくださったベテラン講師の方に、マナーを学んでいた時のことでしたわね。
授業の後、フェリシア様とフェルミナ様がやって来て、「ベラ様、ごきげんよう。先日は妹共々、大変失礼いたしました。本当に悪気はなかったのです。」「お姉様の言うとおり、悪気はなかったのだけど、両親にも叱られてしまったわ。いきなり押しかけて、申し訳ございませんでした……」と謝罪なさいましたの。
……愛称で呼ばれるほど親しくなったつもりはないのですけれどね。
まあ、謝罪してくださるなら素直に受け取ろうと、「いいえ、お気になさらないで。フェリシア様のお立場を考えれば、仕方のないことですわ」と笑顔で応じたのです。
すると、フェルミナ様が「そうよね、仕方ないわよね。あなた、物分かりが良いじゃない。なら、身を引いてくれるわよね?」と流れるようにおっしゃるので、少し面食らって、「いえ、それはまた、別のお話ではございませんこと? 先日、テオ様がおっしゃっていたとおり、この婚約はテオ様が望まれたもの。もちろん、今はわたくしもテオ様をお慕いしておりますけれど。」と、戸惑いながらもはっきりと申し上げましたの。
フェルミナ様、顔を真っ赤になさったので、また食って掛かっていらっしゃるのかと思ったのですけれど、そこでグッと言葉を飲み込んで、わざとらしい笑顔を作られましたの。
そして、「……まあ、その話は改めてすることにするわ。ところで、あなた、今、この国のマナーを学んでいるのよね? あの先生、マナー講師として有名ではあるけど、ちょっと固いというか、情報が古いのよ。お姉様にトレンドを教えていただくと良いわ」とおっしゃいましたの。
既に、罠の香りがプンプン臭いますでしょう?
でも、フェリシア様も、「私でよろしければ、お力になりたいですわ……」とあくまでも控えめに、善意を装っておっしゃるので、無下にもできず、「まあ! 親切な方たちですのね。さすがはテオ様の幼馴染でいらっしゃるわ。ありがとうございます!」と、さも感激しているようにお答えましたわ。
お二人は顔を見合わせると満足そうに頷いて、早速“ウソ”のマナーを教えてくださいました。
え、なぜウソとわかるかですって?
実はわたくし、昔から他国の文化や風習に興味があって、世界中からその方面について書かれた本を集めては、読み漁ってきましたの。
パーティーに参加する際も、色々な国の方からお話を聞いて、常に最新情報を集めておりまして。
だから、この国の本当のトレンドも、当然知っておりましたの。
お二人はお披露目パーティーでわたくしに恥をかかせて、由緒ある辺境伯家の婚約者としては失格、という烙印を押させたかったのでしょうけれど、残念でしたわね?
お披露目パーティー当日、わたくしはマナー講師に習ったとおりの模範的な立ち居振る舞いで、貴族のみなさまから賞賛のお言葉をたくさんいただきましたわ。
「イザベラ様は勤勉でいらっしゃいますわね。もう我が国のマナーを覚えてしまわれたなんて!」「本当に完璧ですな。美しいだけでなく聡明とは、ブランシェール家も安泰ですな。」と、みなさま口々に褒めてくださるものですから、さすがに恥ずかしくなってしまいましたわ。
テオ様はわたくしの隣で満面の笑みをたたえながら、ご自身が褒められているかのように喜んでくださいました。
あのご姉妹は少し離れたところで、苦虫を嚙み潰したようなお顔をなさっていましたけれど。
フェリシア様ったら、テオ様がわたくしの傍を離れた隙に音もなく近づいていらして、「ひどいわ、ベラ様。私が教えたこと、ひとつも実践してくださらないなんて……。」と涙ながらに訴えていらしたので、「ごめんなさい。せっかく、わたくしのために教えてくださったのに、緊張してしまって、すっかり頭から抜けてしまったのですわ。本当にごめんなさい……。」としおらしく答えておきましたわ。
フェリシア様は「それなら、仕方ありませんわね……」と悲し気なお顔のまま、痛々しい微笑を浮かべたかと思うと、どこかのご令息と楽しそうにお話をしている妹様のところへ去って行かれようとしたのですけれど。
そのまま去られてしまっては、周りの方々から、わたくしがフェリシア様を虐めたように見えてしまうでしょう?
彼女もきっとそれを狙ったのでしょうけれど、そうはいかなくてよ?
意図を察したわたくしは、咄嗟にフェリシア様を呼び止め、周囲に聞こえるようにわざと少し声を大きくして、「ご親切に色々ご教示くださり、ありがとう存じます。本日のわたくしへの賞賛は、フェリシア様とフェルミナ様のお陰ですわ。心より感謝申し上げます」と感激に身を震わせるようにして言いながら、深々とお辞儀をいたしましたの。
そして、ダメ押しとばかりに、とびきりの笑顔で微笑んで差し上げたのですわ。
それを見た周囲の方々は、「あの方は、アルベール伯爵家のご令嬢だったわね。」「確か、ブランシェール家と懇意になさっていて、ご令息とは幼馴染でいらしたはず。」「イザベラ様は、幼馴染の方にも認められていらっしゃるのね!」と、わたくしの思惑どおりの反応を返してくださいました。
“幼馴染も認める婚約者”──その評価を、わたくしはこのお披露目パーティーで得ることになったのですわ。
フェリシア様のお陰ですわね。
うふふ。
フェリシア様はご自身の目論見が大きく外れて、一瞬だけ悔しそうなお顔をされましたけれど、すぐに取り繕うように微笑んで、「とんでもないことでございますわ。これもテオのためですもの。」とおっしゃると、「ちょっと、妹の様子を見てまいりますわ。」と言って、そそくさとその場を離れて行かれましたわ。
まったく、この程度で尻尾を巻いてお逃げになるなんて、まだまだですわね。
というより、そもそも意地悪するのに慣れていらっしゃらないのかしら?
本当は良い方なのか、それともただのおバカさ……んんっ、純粋な方なのか。
慣れないことはおやめになった方がよろしくてよ?
そんなことがあった後も、あのご姉妹は諦めることなく、あれこれベタな嫌がらせをしてきましたわ。
使用人を買収してわたくしのドレスに細工をしたり、飲み物に毒らしき異物を混入したり、数え上げたらきりがないくらい。
まあ、そういったわかりやすい嫌がらせは主に妹様の仕業で、お姉様は相変わらず目立たないように狡猾に立ち回られていらっしゃいましたけれど。
でも、お披露目パーティーの時のようにすべて上手くかわして、逆にこちらの株が上がるように利用させていただきましたから、寧ろありがたいくらいでしたわ。
うふふ。
でもそんなことがしばらく続きましたので、わたくしも、さすがにどうにかしたくなりましたの。
結婚式まであと1年ほど。
その間ずっと、この状態のままでいるのも面倒でしょう?
そしてそのチャンスは、唐突に訪れたのですわ。
お披露目パーティーから1ヶ月が過ぎた頃、社交界でわたくしの悪い噂が流れ始めましたの。
わたくしが、エルディア帝国で無情にも家族を追い出し、罪人に仕立て上げた悪女だというのです。
事実無根というわけではないですけれど、だいぶ曲解されていますわね。
こういう噂が大好きなのは、どこの国も変わらないようで、悪い方向に尾ひれの付いた噂は、瞬く間に広まっていきましたわ。
それがついに、テオ様とお義父様、お義母様のお耳にも届いたようで。
「ベラがそんな人でないことは、わかっているけれど、運悪く王妃様の耳にも届いてしまって、俺たちの結婚に待ったがかかってしまったんです。」と、テオ様が慌てて報告にいらっしゃいましたの。
実は、テオ様のお母様と王妃様は親友でいらっしゃって、王妃様はテオ様を小さい頃からとても可愛がっていらっしゃるのですって。
王妃様は二人の王子様のお母様でもいらっしゃるのですけれど、テオ様は、王子様方とも友人として親しくされていて、王都に行った際にはいつも王子様方の話相手になられるのだとか。
そんな関係ですから、テオ様が悪女に掴まってしまったのではないかと、王妃様も王子様方も、たいそうご心配なさっているそうなのですわ。
王族の覚えもめでたいなんて、本当にわたくしの婚約者様は素晴らしい方ですわね!
なんて、呑気に思っておりましたら、「誤解を解かなくては、貴女との結婚の準備が進められないのです。まずは、王妃様主催のお茶会に参加せよとのお達しで……すみません……。」と、申し訳なさそうに謝られるものですから、わたくし、慌てて否定しましたわ。
「悪いのはわたくしの方ですわ! いえ、違いますわね。そんないい加減な噂を流した方々が悪いのですわ。それより、わたくしに考えがありますの。どうかこの件は、わたくしにお任せになって?」
そう言って微笑むと、テオ様は心配そうにわたくしの頬を撫でて、「ベラのことは信じているけれど、無理はしないでください。頼りないかもしれないけれど、俺のことも頼ってくださいね?」とおっしゃってくださったのです。
本当に、なんてお優しくて愛しい方なのかしら。
わたくしの最愛にこんな心配をさせるなんて、どなたが相手でも、許さなくてよ?
うふふ。
それからすぐに、有能なわたくしの侍女に噂の出所を探らせたところ、思ったとおり、あのご姉妹に辿り着きましたわ。
わたくしの祖国、エルディア帝国のパーティーにわざわざ足を運んで、自ら情報収集なさったようで。
随分とお暇……アクティブな方たちですわね。
さて、ここからがわたくしの腕の見せ所。
お茶会で何が起こるか、楽しみになさって?
逆境をものともせず、優雅に「ざまぁ」する貴族令嬢の、マイペースなひとり語り。
中編。
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後日、わたくしはテオ様にお付き合いいただいて宝飾店を訪れ、テオ様の瞳と同じ、きれいなスカイブルーの宝石をブローチに加工していただいて、「テオ様のお見立て」と言って、お二人にプレゼントいたしました。
こうでも言わないと、受け取っていただけなそうでしたからね。
お二人は「これ、テオの瞳の色ね! テオが見立ててくれたなんて、嬉しいわ!」「テオ兄様が貰って欲しいと言うなら、貰ってあげるわ」と、それは嬉しそうにおっしゃっていましたわね。
わたくしからのプレゼントなのですけれどね……。
でも結局、プレゼントによる懐柔作戦は失敗に終わり、あのご姉妹はわたくしとテオ様の婚約を破棄させようと、あの手この手で妨害工作や嫌がらせをするようになりましたの。
テオ様も結局、お二人を説得することはできなかったようですわ。
でも、ブローチ自体は気に入ったのか、「テオ様の見立て」と言うところを「テオ様からのプレゼント」と変換して解釈なさって、毎日肌身離さず、つけてくださっているようですけれど。
妹のフェルミナ様は、とても単純でわかりやすい嫌がらせをなさる程度だったのですけれど、姉のフェリシア様の方は、他の方の目からご自身が悲劇のヒロインのように映るように、それはもう上手いこと立ち回られて、ちょっと厄介でしたのよ?
テオ様にあれだけしっかりフラれたのに、しつこ……健気な方ね。
それに、ご本人たちは誰にもバレないように画策しているつもりのようでしたけれど、完全犯罪って、結構難しいものですのよ?
それと、わたくし、ただ指を咥えてじっと耐え忍ぶような、大人しい性格ではございませんの。
うふふ。
まあそれで、具体的にどんなことをされたかと申しますと、確か初めは、婚約のお披露目パーティーに備えて、お義母様が手配してくださったベテラン講師の方に、マナーを学んでいた時のことでしたわね。
授業の後、フェリシア様とフェルミナ様がやって来て、「ベラ様、ごきげんよう。先日は妹共々、大変失礼いたしました。本当に悪気はなかったのです。」「お姉様の言うとおり、悪気はなかったのだけど、両親にも叱られてしまったわ。いきなり押しかけて、申し訳ございませんでした……」と謝罪なさいましたの。
……愛称で呼ばれるほど親しくなったつもりはないのですけれどね。
まあ、謝罪してくださるなら素直に受け取ろうと、「いいえ、お気になさらないで。フェリシア様のお立場を考えれば、仕方のないことですわ」と笑顔で応じたのです。
すると、フェルミナ様が「そうよね、仕方ないわよね。あなた、物分かりが良いじゃない。なら、身を引いてくれるわよね?」と流れるようにおっしゃるので、少し面食らって、「いえ、それはまた、別のお話ではございませんこと? 先日、テオ様がおっしゃっていたとおり、この婚約はテオ様が望まれたもの。もちろん、今はわたくしもテオ様をお慕いしておりますけれど。」と、戸惑いながらもはっきりと申し上げましたの。
フェルミナ様、顔を真っ赤になさったので、また食って掛かっていらっしゃるのかと思ったのですけれど、そこでグッと言葉を飲み込んで、わざとらしい笑顔を作られましたの。
そして、「……まあ、その話は改めてすることにするわ。ところで、あなた、今、この国のマナーを学んでいるのよね? あの先生、マナー講師として有名ではあるけど、ちょっと固いというか、情報が古いのよ。お姉様にトレンドを教えていただくと良いわ」とおっしゃいましたの。
既に、罠の香りがプンプン臭いますでしょう?
でも、フェリシア様も、「私でよろしければ、お力になりたいですわ……」とあくまでも控えめに、善意を装っておっしゃるので、無下にもできず、「まあ! 親切な方たちですのね。さすがはテオ様の幼馴染でいらっしゃるわ。ありがとうございます!」と、さも感激しているようにお答えましたわ。
お二人は顔を見合わせると満足そうに頷いて、早速“ウソ”のマナーを教えてくださいました。
え、なぜウソとわかるかですって?
実はわたくし、昔から他国の文化や風習に興味があって、世界中からその方面について書かれた本を集めては、読み漁ってきましたの。
パーティーに参加する際も、色々な国の方からお話を聞いて、常に最新情報を集めておりまして。
だから、この国の本当のトレンドも、当然知っておりましたの。
お二人はお披露目パーティーでわたくしに恥をかかせて、由緒ある辺境伯家の婚約者としては失格、という烙印を押させたかったのでしょうけれど、残念でしたわね?
お披露目パーティー当日、わたくしはマナー講師に習ったとおりの模範的な立ち居振る舞いで、貴族のみなさまから賞賛のお言葉をたくさんいただきましたわ。
「イザベラ様は勤勉でいらっしゃいますわね。もう我が国のマナーを覚えてしまわれたなんて!」「本当に完璧ですな。美しいだけでなく聡明とは、ブランシェール家も安泰ですな。」と、みなさま口々に褒めてくださるものですから、さすがに恥ずかしくなってしまいましたわ。
テオ様はわたくしの隣で満面の笑みをたたえながら、ご自身が褒められているかのように喜んでくださいました。
あのご姉妹は少し離れたところで、苦虫を嚙み潰したようなお顔をなさっていましたけれど。
フェリシア様ったら、テオ様がわたくしの傍を離れた隙に音もなく近づいていらして、「ひどいわ、ベラ様。私が教えたこと、ひとつも実践してくださらないなんて……。」と涙ながらに訴えていらしたので、「ごめんなさい。せっかく、わたくしのために教えてくださったのに、緊張してしまって、すっかり頭から抜けてしまったのですわ。本当にごめんなさい……。」としおらしく答えておきましたわ。
フェリシア様は「それなら、仕方ありませんわね……」と悲し気なお顔のまま、痛々しい微笑を浮かべたかと思うと、どこかのご令息と楽しそうにお話をしている妹様のところへ去って行かれようとしたのですけれど。
そのまま去られてしまっては、周りの方々から、わたくしがフェリシア様を虐めたように見えてしまうでしょう?
彼女もきっとそれを狙ったのでしょうけれど、そうはいかなくてよ?
意図を察したわたくしは、咄嗟にフェリシア様を呼び止め、周囲に聞こえるようにわざと少し声を大きくして、「ご親切に色々ご教示くださり、ありがとう存じます。本日のわたくしへの賞賛は、フェリシア様とフェルミナ様のお陰ですわ。心より感謝申し上げます」と感激に身を震わせるようにして言いながら、深々とお辞儀をいたしましたの。
そして、ダメ押しとばかりに、とびきりの笑顔で微笑んで差し上げたのですわ。
それを見た周囲の方々は、「あの方は、アルベール伯爵家のご令嬢だったわね。」「確か、ブランシェール家と懇意になさっていて、ご令息とは幼馴染でいらしたはず。」「イザベラ様は、幼馴染の方にも認められていらっしゃるのね!」と、わたくしの思惑どおりの反応を返してくださいました。
“幼馴染も認める婚約者”──その評価を、わたくしはこのお披露目パーティーで得ることになったのですわ。
フェリシア様のお陰ですわね。
うふふ。
フェリシア様はご自身の目論見が大きく外れて、一瞬だけ悔しそうなお顔をされましたけれど、すぐに取り繕うように微笑んで、「とんでもないことでございますわ。これもテオのためですもの。」とおっしゃると、「ちょっと、妹の様子を見てまいりますわ。」と言って、そそくさとその場を離れて行かれましたわ。
まったく、この程度で尻尾を巻いてお逃げになるなんて、まだまだですわね。
というより、そもそも意地悪するのに慣れていらっしゃらないのかしら?
本当は良い方なのか、それともただのおバカさ……んんっ、純粋な方なのか。
慣れないことはおやめになった方がよろしくてよ?
そんなことがあった後も、あのご姉妹は諦めることなく、あれこれベタな嫌がらせをしてきましたわ。
使用人を買収してわたくしのドレスに細工をしたり、飲み物に毒らしき異物を混入したり、数え上げたらきりがないくらい。
まあ、そういったわかりやすい嫌がらせは主に妹様の仕業で、お姉様は相変わらず目立たないように狡猾に立ち回られていらっしゃいましたけれど。
でも、お披露目パーティーの時のようにすべて上手くかわして、逆にこちらの株が上がるように利用させていただきましたから、寧ろありがたいくらいでしたわ。
うふふ。
でもそんなことがしばらく続きましたので、わたくしも、さすがにどうにかしたくなりましたの。
結婚式まであと1年ほど。
その間ずっと、この状態のままでいるのも面倒でしょう?
そしてそのチャンスは、唐突に訪れたのですわ。
お披露目パーティーから1ヶ月が過ぎた頃、社交界でわたくしの悪い噂が流れ始めましたの。
わたくしが、エルディア帝国で無情にも家族を追い出し、罪人に仕立て上げた悪女だというのです。
事実無根というわけではないですけれど、だいぶ曲解されていますわね。
こういう噂が大好きなのは、どこの国も変わらないようで、悪い方向に尾ひれの付いた噂は、瞬く間に広まっていきましたわ。
それがついに、テオ様とお義父様、お義母様のお耳にも届いたようで。
「ベラがそんな人でないことは、わかっているけれど、運悪く王妃様の耳にも届いてしまって、俺たちの結婚に待ったがかかってしまったんです。」と、テオ様が慌てて報告にいらっしゃいましたの。
実は、テオ様のお母様と王妃様は親友でいらっしゃって、王妃様はテオ様を小さい頃からとても可愛がっていらっしゃるのですって。
王妃様は二人の王子様のお母様でもいらっしゃるのですけれど、テオ様は、王子様方とも友人として親しくされていて、王都に行った際にはいつも王子様方の話相手になられるのだとか。
そんな関係ですから、テオ様が悪女に掴まってしまったのではないかと、王妃様も王子様方も、たいそうご心配なさっているそうなのですわ。
王族の覚えもめでたいなんて、本当にわたくしの婚約者様は素晴らしい方ですわね!
なんて、呑気に思っておりましたら、「誤解を解かなくては、貴女との結婚の準備が進められないのです。まずは、王妃様主催のお茶会に参加せよとのお達しで……すみません……。」と、申し訳なさそうに謝られるものですから、わたくし、慌てて否定しましたわ。
「悪いのはわたくしの方ですわ! いえ、違いますわね。そんないい加減な噂を流した方々が悪いのですわ。それより、わたくしに考えがありますの。どうかこの件は、わたくしにお任せになって?」
そう言って微笑むと、テオ様は心配そうにわたくしの頬を撫でて、「ベラのことは信じているけれど、無理はしないでください。頼りないかもしれないけれど、俺のことも頼ってくださいね?」とおっしゃってくださったのです。
本当に、なんてお優しくて愛しい方なのかしら。
わたくしの最愛にこんな心配をさせるなんて、どなたが相手でも、許さなくてよ?
うふふ。
それからすぐに、有能なわたくしの侍女に噂の出所を探らせたところ、思ったとおり、あのご姉妹に辿り着きましたわ。
わたくしの祖国、エルディア帝国のパーティーにわざわざ足を運んで、自ら情報収集なさったようで。
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