死の予言のかわし方

海野宵人

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本編(シーニュ王国編)

災厄の種 (3)

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 予想もしていない来客に、アンヌマリーは言葉を失って固まってしまった。
 確かに手紙を出して、返事を心待ちにしてはいた。けれども、まさかはるか遠く隣国から本人が直接やって来るなどと誰が思うだろう。

 部屋の入り口で呆然と立ち尽くす娘に苦笑して、父ロベールは彼女に手招きした。

「ほら、こちらに来てご挨拶しなさい」

 父の言葉でハッと我に返ったアンヌマリーは、あわてて父の近くに歩み寄り、歓迎の挨拶を口にしてお辞儀した。

「ようこそ、いらっしゃいませ」

 父にうながされて、隣に座る。それまでの会話内容がわからないので、問うように父の顔を見上げると、ロベールは真面目な表情で客人を紹介した。

「紹介するまでもないだろうが、ニクラス・フォン・クライン子爵と、そのお嬢さんのマグダレーナ嬢だ。お前の出した手紙を読んで、心配して来てくださったんだよ」
「えっ」

 父の言葉を聞いて、アンヌマリーは再び絶句した。
 マグダレーナに手紙を出したのは間違いないが、なぜこんな大ごとになっているのか。あくまでも個人的な質問をしただけなのに。足を運ばせてしまった側が言ってよいことではないかもしれないが、わざわざ子爵までお出ましになる必要はどこにもないように思われた。
 どうしてこのようなことになったのか、何だか申し訳なくてアンヌマリーは悄然と肩を落とした。

 ついぽろっと「お返事くだされば、それで十分だったのに」とこぼしてしまうと、マグダレーナは真剣な視線をアンヌマリーに向け、首を横に振った。

「いいえ。とても大事なお話だから、お手紙のやり取りをする時間が惜しかったの」

 自分の出した手紙のいったいどこにそんな重要性があるのか思い当たらず、アンヌマリーは怪訝そうに眉をひそめる。それを見て、父ロベールはため息をついた。

「マリーには『未来を視る者』のことをまだ教えてなかったからな。わからなくても仕方ない」

 そして各国の王家には「未来を視る者」についての伝承があるのだと説明した。
 その伝承とは「王家にまつわる大きな出来事が起きるとき、それに先立って『未来を視る者』が現れることがある」というものだ。

 それだけだとほとんど意味のない言い伝えだが、もちろんそれだけでは終わらない。伝承はその後に「『未来を視る者』が語る未来の出来事は、どれほど荒唐無稽であろうと必ず起きる。ただし、その者の語る未来が真実であるとは限らない。対処を誤れば身の破滅を招く。心せよ」と続くのだ。

 最後まで聞いても、アンヌマリーにはあまりピンと来なかった。
 どうやら百発百中の予言者らしき人が現れることがあるらしい、というところまではわかる。けれども、その予言者の予言が真実とは限らない、というのがわからない。言っていることが矛盾していないか。当たる予言なら、それは真実ということではないのだろうか。
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