140 / 182
相談 6
しおりを挟む
次の日の朝、美津子はいつもより早く家を出た。1号店に行くためである。事前に矢島に電話をし、昨日私と話したことに関してそれとなく確認するためだ。
本来の出店時間より1時間早く美津子と矢島は1号店にいた。
「おはよう、矢島君。今日はごめんね、いつもよりも早起きさせちゃって」
「いいえ、大丈夫です。それより店長の腰の具合はどうですか?」
矢島は心配そうに尋ねた。この時点では立ち話だったので、店内の椅子に座り、きちんと話をすることになった。
「おかげさまできちんと休養でき、調子良いみたい。今日、また奥田先生のところ行って施術してもらうそうだけど、見た目は仕事に復帰しても大丈夫そうよ」
「それは良かったです。また一緒に頑張りたいですね」
「ありがとう。それで一人で大変だったでしょう。短期間の内に続けて迷惑かけちゃったね」
「いいえ、アルバイトのみんなに助けてもらっていますし、自分も考えるところがいろいろあって、すごく勉強になりました。店長がお休みにならなければ分からないことが多く、改めて商売の難しさが分かった気がします。まだまた足りないことが多いとは思いますが・・・」
謙虚な感じで矢島が言ったが、その表情や瞳の奥には何か自信のようなものが見えた。
「そういう言葉を聞いて、私も嬉しいわ。なんだか矢島君、ちょっと逞しくなったみたい。これなら、店長がいなくてもやっていけそうね」
ちょっと直球過ぎたかもしれないが、この時点では矢島もこれまでの話の延長という意識で聞いている。だから話も苦笑しながらしているが、美津子には別の姿が見えていた。
「家で話していたんだけど、2回も続けて体調を壊したでしょう。それぞれ原因は別だけど、もしかすると今後もこういったことがあるかもしれないわ。でも、矢島君の活躍ぶりを見ていたら、店を任せても大丈夫な気がしている。矢島君は将来、自分の店を持ちたいといったことは考えているの?」
美津子は少し真顔になって尋ねた。
「以前、店長からも同じようなことを訊かれましたが、夢としてはあります。俺はこの仕事が好きですし、お客様の笑顔を見ていると気持ちが温かくなるんです。今は大変な時期ではありますが、そういう時だからこそいろいろ工夫する、ということも学ばせてもらえました。そしてその結果も今、感じていますし、自分の感覚としては天職、という感じです。だから、店長が今後もし、体調を崩されてお店を休むようなことがあっても、俺、頑張ります。任せてください。あっ、でも、本当にまたそんなことがあってはいけませんけどね。これは俺の決意のようなことだと考えてください」
真剣に答える矢島に、美津子は安堵を感じていた。口だけでなく、私が休んでいた時もきちんと店を回していたわけだし、責任感も十分と感じた。
ただ、今日は私の近況報告と労いのつもりで1号店を訪れた、という体(てい)なので、話はここまでにした。だが、矢島の思いは美津子にも伝わった。
本来の出店時間より1時間早く美津子と矢島は1号店にいた。
「おはよう、矢島君。今日はごめんね、いつもよりも早起きさせちゃって」
「いいえ、大丈夫です。それより店長の腰の具合はどうですか?」
矢島は心配そうに尋ねた。この時点では立ち話だったので、店内の椅子に座り、きちんと話をすることになった。
「おかげさまできちんと休養でき、調子良いみたい。今日、また奥田先生のところ行って施術してもらうそうだけど、見た目は仕事に復帰しても大丈夫そうよ」
「それは良かったです。また一緒に頑張りたいですね」
「ありがとう。それで一人で大変だったでしょう。短期間の内に続けて迷惑かけちゃったね」
「いいえ、アルバイトのみんなに助けてもらっていますし、自分も考えるところがいろいろあって、すごく勉強になりました。店長がお休みにならなければ分からないことが多く、改めて商売の難しさが分かった気がします。まだまた足りないことが多いとは思いますが・・・」
謙虚な感じで矢島が言ったが、その表情や瞳の奥には何か自信のようなものが見えた。
「そういう言葉を聞いて、私も嬉しいわ。なんだか矢島君、ちょっと逞しくなったみたい。これなら、店長がいなくてもやっていけそうね」
ちょっと直球過ぎたかもしれないが、この時点では矢島もこれまでの話の延長という意識で聞いている。だから話も苦笑しながらしているが、美津子には別の姿が見えていた。
「家で話していたんだけど、2回も続けて体調を壊したでしょう。それぞれ原因は別だけど、もしかすると今後もこういったことがあるかもしれないわ。でも、矢島君の活躍ぶりを見ていたら、店を任せても大丈夫な気がしている。矢島君は将来、自分の店を持ちたいといったことは考えているの?」
美津子は少し真顔になって尋ねた。
「以前、店長からも同じようなことを訊かれましたが、夢としてはあります。俺はこの仕事が好きですし、お客様の笑顔を見ていると気持ちが温かくなるんです。今は大変な時期ではありますが、そういう時だからこそいろいろ工夫する、ということも学ばせてもらえました。そしてその結果も今、感じていますし、自分の感覚としては天職、という感じです。だから、店長が今後もし、体調を崩されてお店を休むようなことがあっても、俺、頑張ります。任せてください。あっ、でも、本当にまたそんなことがあってはいけませんけどね。これは俺の決意のようなことだと考えてください」
真剣に答える矢島に、美津子は安堵を感じていた。口だけでなく、私が休んでいた時もきちんと店を回していたわけだし、責任感も十分と感じた。
ただ、今日は私の近況報告と労いのつもりで1号店を訪れた、という体(てい)なので、話はここまでにした。だが、矢島の思いは美津子にも伝わった。
20
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
僕らの10パーセントは無限大
華子
青春
10%の確率でしか未来を生きられない少女と
過去に辛い経験をしたことがある幼ななじみと
やたらとポジティブなホームレス
「あり得ない今を生きてるんだったら、あり得ない未来だってあるんじゃねえの?」
「そうやって、信じたいものを信じて生きる人生って、楽しいもんだよ」
もし、あたなら。
10パーセントの確率で訪れる幸せな未来と
90パーセントの確率で訪れる悲惨な未来。
そのどちらを信じますか。
***
心臓に病を患う和子(わこ)は、医者からアメリカでの手術を勧められるが、成功率10パーセントというあまりにも酷な現実に打ちひしがれ、渡米する勇気が出ずにいる。しかしこのまま日本にいても、死を待つだけ。
追い詰められた和子は、誰に何をされても気に食わない日々が続くが、そんな時出逢ったやたらとポジティブなホームレスに、段々と影響を受けていく。
幼ななじみの裕一にも支えられながら、彼女が前を向くまでの物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
レオナルド先生創世記
ポルネス・フリューゲル
ファンタジー
ビッグバーンを皮切りに宇宙が誕生し、やがて展開された宇宙の背景をユーモアたっぷりにとてもこっけいなジャック・レオナルド氏のサプライズの幕開け、幕開け!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる