お母さん、私、恋したよ!

藤堂慎人

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入院 4

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 退院の日だ。私はその準備をしているところに母がやってきた。一緒に片づけをしてくれたが、そこに看護師さんがやってきた。
「高野さん、退院前に診察室に行ってください。先生がいらっしゃいます」
 この日に主治医から話があることは知っていたので、検査結果などのことだろうと考えていた。
 私はドアをノックし、母と一緒に診察室に入った。医者の前の椅子に座り、母はその後ろに立っていた。
「高野さん、退院おめでとう。検査入院だったけどいろいろ心配したんじゃない?」
 医者は優しい表情で私の目を見て語りかけた。
「はい、最初は少し心配でしたが、検査も苦しいことなんかなくて、逆に病室にずっと大人しくしていることの方が大変でした」
「そう、まだ若いんだものね。元気のほうが前に出てくるんだね」
 主治医のその言葉に少し気分を良くして、少しはにかんでいた。
「それで検査の結果ですが、どうでした? 私、何かの病気でした?」
 検査のために入院していたのだから、この点が一番気になる。
「うん、数字的に少し気になる点があるので、しばらく1ヶ月に1回程度、検査にお越しください。入院中にやったような検査ですから、通院で大丈夫です。学校に通いながらで大丈夫ですよ。最初の診察の時、疲れやすいといったことをおっしゃっていましたので、そういうことも含め、定期的に検査してもし何か感じたことがあればご相談いただく、ということでお越しください。心配なさることはありません。それから女性ですから、日焼けなどにはお気を付けくださいね」
 最後の言葉が少し気になったけれど、そこは一般論として聞き流した。
「それからお母さん、退院の手続きについて説明がありますので、少し残っていただけますか?」
「はい。じゃあ、さくら。私は先生とお話ししていくから、待合室で待っていて」
「分かった」
 話の流れに特別な違和感もなかったので、私は診察室を出て、待合室のほうに行った。明日からはまた学校に行ける、という気持ちのほうが勝っていたのだ。
 一方、診察室に残った母は主治医から検査の詳しい結果を聞いていた。
「先生。さくらの病名についてのお話なんでしょう。娘の前では何もお尋ねしませんでしたが、私も親です。去年から何かおかしいと思っていました。でも受験があるから黙っていました。他のお友達とは様子が違うことは客観的に感じていました」
「・・・うーん。そうですか。私もどこまでお話しして良いのか考えていましたが、お母様にはお伝えします。さくらさんはウェルナー症候群です」
「えっ、何ですか、その病気?」
「早老症の一種です。本来の年齢よりも早く年を取る病気と言えば分かりやすいと思います」
「そんな、あの子は今年高校生になったばかりですよ。それがそんな病気になるなんて・・・」
 病名を聞いて母は全身の力が抜けた。
「この病気の場合、成人してから発症するケースが多いのですが、10代で発症することもあります。でも、長生きされるケースもあります。だからこそ、日常のケアが必要なんです。お母さんも気を付けてあげてください」
「・・・」
 医者の言葉に母は何も答えられなかった。目から涙が出そうになっていたが、待合室で待っている私に気付かれまいと、必死で溢れ出すのを止めていた。
 少し時間をおいて母は顔を上げ、ただ一言「はい」とだけ言って病室を出た。
 そのまま待合室のほうに行き、私に声をかけた後、会計のほうに行き、支払いを済ませていた。私は母の表情が気になったので、再び私のほうに来た時に尋ねた。
「お母さん、どうかした?」
「何でもない。診察室の消毒薬の匂い、少しきつくなかった? 私、あれが苦手なの。だからちょっと目に染みたのかな」
 母はそう言ってごまかしたが、何か違和感があった。
≪日記≫
『今日、退院した。嬉しいことのはずなのに、母の様子が何か変。私、やっぱり何かの病気だったのかな?
 でも、しつこく聞くとお母さんがかわいそうなので、聞かない。今はネットがあるから、自分の状態や病院での検査のことなどで調べよう。
 私は元気! まだ若いんだから、もし病気でもそんなことは吹き飛ばす。絶対にお父さん、お母さんを悲しませない』
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