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主治医からの告知 3
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「強い娘さんですね」
主治医が優しい笑みを浮かべながら言った。
「ガンのことは申し上げませんでした。でも、そのベースになっているウェルナー症候群についてはご自身もネットからの知識でご理解されているようです。何もそのことをおっしゃらないところに意思の強さを感じ、治療にも前向きに取り組んでいただけるのではと思い、現時点での心の状態を大切にしました。治療もウェルナー症候群に関係することと思われるでしょうから、しばらくはガンのことは伏せてやっていきます。病気にはご本人の気力が大切ですから、心配されるような情報はたとえ本当のことであっても躊躇します。さくらさんの場合、周りに対する思いやりや心の強さをお持ちのようですから、それを信じて対応したいと思います」
「私もさっきさくらが自分の病気のことや思いを話すまでは知りませんでした。わが娘ながら、本当に良い子に育ってくれました」
母はそう言いながら、また涙ぐんでいた。
「お母さん、さくらさんのガンの治療、明日から始めます。まだ病巣が小さいし、若い身体に傷を付けることも良くないと思いますので、投薬と放射線でやっていきます。副作用が大変かもしれませんが、できる限りフォローしていきますので、お母さんもご協力をお願いします」
「もちろんです。今日帰って、主人にも今お話ししたことをきちんと伝えます」
母はそう言って主治医に一礼し、診察室を出た。
少し前に病室に戻った私は、同室の人たちと談笑していた。
「退院、何時になった?」
「その話じゃなかった。退院は分からなくて、私の病気の治療を本格的に始めるって言われた」
「見た感じじゃ元気そうだけどね」
「でも、その見た目がこの前見舞いに来てくれたクラスの人たちと全然違うでしょう。これまではっきり先生から聞いていたわけじゃないけど、私、ネットで調べて自分のこと理解していた。それを今日、先生に確認したってこと。だからかな、治療の話が出てきたの。私の病気、ウェルナー症候群って言うのよ」
「ウェルナー症候群? 初めて聞く病名だね」
「早老症って病気の一種らしいけど、私の顔を見れば分かるでしょう。本当の年齢の顔じゃないもの」
この話をした時、私の表情は少し曇った。私も年頃の女の子だ。容姿も気になる。他の同年代の人たちのようなおしゃれはできない。そのことをはっきり言うことはないけれど、心には深く刺さっている。だから、そういう話をする時にはどうしても暗い感じになるのだ。その雰囲気を察してくれた同室の人たちはすぐに話題を変えた。
先日、見舞いに来てくれた坂本の話になったのだ。私もその話なら楽しく話せる。同室の人たちからは自分たちの恋の経験を交えた話も出てきて、部屋の中は明るい笑い声で溢れていた。
そういうタイミングで母がやってきた。
「さくら、楽しそうね。何をお話ししていたの?」
「皆さんの恋バナ。いろいろなパターンがあるんだなって勉強になった。私も自分だけの恋バナ、作りたいな。だから治療、頑張るね」
私は努めて明るく話した。母はその言葉を心で感じ、また涙が出そうになったので、理由を付けて部屋を出ていった。
≪日記≫
『今日、先生から私の病名を聞いた。スマホで調べ、察しはついていたけれど、実際に伝えられるとやっぱり辛い。
でも、そこで悲しい顔をしたり、嘆いたりするとお母さんが苦しむ。
病気になっているのは私だ。戦うのも私。だから他の人には迷惑をかけない。
それが今、私ができる精一杯のこと。
多分、お父さんやお母さんも知っていたに違いない。それを黙っていたことも辛かったと思う。私に話してもどうにもできないことだから、苦しんだと思う。
ただ、実際に聞くとショックだった。おそらく、私の命も短いのだろう。早く年を取る病気だから仕方ない。
だから、生きていることに感謝し、毎日を精一杯生きる。私がいなくなっても、私のことを良い記憶として残しておいてほしいから。
そうは言っても、そういう気持ちをいつまで保てるかな。いよいよとなったら、感情が弾けるかもしれない。
私、不安。』
主治医が優しい笑みを浮かべながら言った。
「ガンのことは申し上げませんでした。でも、そのベースになっているウェルナー症候群についてはご自身もネットからの知識でご理解されているようです。何もそのことをおっしゃらないところに意思の強さを感じ、治療にも前向きに取り組んでいただけるのではと思い、現時点での心の状態を大切にしました。治療もウェルナー症候群に関係することと思われるでしょうから、しばらくはガンのことは伏せてやっていきます。病気にはご本人の気力が大切ですから、心配されるような情報はたとえ本当のことであっても躊躇します。さくらさんの場合、周りに対する思いやりや心の強さをお持ちのようですから、それを信じて対応したいと思います」
「私もさっきさくらが自分の病気のことや思いを話すまでは知りませんでした。わが娘ながら、本当に良い子に育ってくれました」
母はそう言いながら、また涙ぐんでいた。
「お母さん、さくらさんのガンの治療、明日から始めます。まだ病巣が小さいし、若い身体に傷を付けることも良くないと思いますので、投薬と放射線でやっていきます。副作用が大変かもしれませんが、できる限りフォローしていきますので、お母さんもご協力をお願いします」
「もちろんです。今日帰って、主人にも今お話ししたことをきちんと伝えます」
母はそう言って主治医に一礼し、診察室を出た。
少し前に病室に戻った私は、同室の人たちと談笑していた。
「退院、何時になった?」
「その話じゃなかった。退院は分からなくて、私の病気の治療を本格的に始めるって言われた」
「見た感じじゃ元気そうだけどね」
「でも、その見た目がこの前見舞いに来てくれたクラスの人たちと全然違うでしょう。これまではっきり先生から聞いていたわけじゃないけど、私、ネットで調べて自分のこと理解していた。それを今日、先生に確認したってこと。だからかな、治療の話が出てきたの。私の病気、ウェルナー症候群って言うのよ」
「ウェルナー症候群? 初めて聞く病名だね」
「早老症って病気の一種らしいけど、私の顔を見れば分かるでしょう。本当の年齢の顔じゃないもの」
この話をした時、私の表情は少し曇った。私も年頃の女の子だ。容姿も気になる。他の同年代の人たちのようなおしゃれはできない。そのことをはっきり言うことはないけれど、心には深く刺さっている。だから、そういう話をする時にはどうしても暗い感じになるのだ。その雰囲気を察してくれた同室の人たちはすぐに話題を変えた。
先日、見舞いに来てくれた坂本の話になったのだ。私もその話なら楽しく話せる。同室の人たちからは自分たちの恋の経験を交えた話も出てきて、部屋の中は明るい笑い声で溢れていた。
そういうタイミングで母がやってきた。
「さくら、楽しそうね。何をお話ししていたの?」
「皆さんの恋バナ。いろいろなパターンがあるんだなって勉強になった。私も自分だけの恋バナ、作りたいな。だから治療、頑張るね」
私は努めて明るく話した。母はその言葉を心で感じ、また涙が出そうになったので、理由を付けて部屋を出ていった。
≪日記≫
『今日、先生から私の病名を聞いた。スマホで調べ、察しはついていたけれど、実際に伝えられるとやっぱり辛い。
でも、そこで悲しい顔をしたり、嘆いたりするとお母さんが苦しむ。
病気になっているのは私だ。戦うのも私。だから他の人には迷惑をかけない。
それが今、私ができる精一杯のこと。
多分、お父さんやお母さんも知っていたに違いない。それを黙っていたことも辛かったと思う。私に話してもどうにもできないことだから、苦しんだと思う。
ただ、実際に聞くとショックだった。おそらく、私の命も短いのだろう。早く年を取る病気だから仕方ない。
だから、生きていることに感謝し、毎日を精一杯生きる。私がいなくなっても、私のことを良い記憶として残しておいてほしいから。
そうは言っても、そういう気持ちをいつまで保てるかな。いよいよとなったら、感情が弾けるかもしれない。
私、不安。』
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