63 / 92
治療開始 15
しおりを挟む
「そこまでの気持ちでいるならお願いがあるんだけど、私は高野さんを何とか救いたい。でも病名をきちんと告げ、治療方針も伝えなければならない。そして本格的な治療が始まれば、今よりも副作用で苦しむことになるだろう。現在は嘔吐感とか食欲がない程度のようだけど、脱毛ということも出てくる。若い女性にとっては耐え難いことだろう。そういう時の支えになってもらえないか、ということなんだ」
「分かりました。僕で良ければ」
坂本は力強く即答した。
「主治医が佐々木先生ということが分かりましたので、僕も本気でサポートできます。高野さんとはできれば大学も一緒に通いたいし・・・。医学部志望かどうかは分かりませんが、例え違う学部でも同じ大学であれば大学生活も一緒です。そこでは高校入学の時のような悲しい思いはさせません。高野さん、頭が良いので、きっと今の遅れを取り戻し、合格できると思います」
坂本は両親や主治医の顔をきちんと観ながら言った。
「では、高野さんに病名の告知をする時には同席してくれるね」
「もちろんです。何時お話しされますか? もし2日から3日くらいの猶予があれば、もう少し高野さんと親しくなり、少しでもショックを和らげるようにしたいのですが・・・」
「分かりました。では、3日後に、ということで良いですか? それまではこれまでの投薬を続けます」
「坂本君、さくらのこと、よろしくお願いします。母親だから分かるんですが、多分さくらはあなたのこと、気に入っています。あなたが見舞いに来てくれた時の表情や、帰った後の会話がとても楽しそうですもの。きっと告知の時、あなたがいてくれたらショックも和らぐと思う。気が重いかもしれませんが、私たちではどうしようもできないことですから・・・」
「お母さん、そんな風に考えないでください。僕は僕の気持ちでやることです」
その言葉を聞き、父は両手で坂本の手を握った。言葉こそ交わさなかったが、感謝の気持ちで溢れていた。
告知についての話が一段落したところで、坂本は帰った。
「敦君で良かった。これが他の人だったら話が複雑になるし、引き受けてくれなかったかもしれない。彼は良い医者になりますよ。お父さんもそうだけど・・・。今回のこと、私から先輩に話をしておきます。たぶん、いろいろアドバイスを受けるんじゃないかな。偶然とはいえ、良い巡り会わせでした」
「先生、ありがとうございました。私たち、病室に行って、それから帰ります。お時間を取っていただきすみませんでした」
両親はそう言って診察室を後にした。
再び病室に戻った両親。その様子は先ほどとどこか違う。そのことで私は尋ねた。
「どうしたの? さっきより表情が明るい。最初、作り笑顔のような感じだったけど、今は自然に明るい」
「そうか? 実はちょっと坂本君と話していたんだ。初めて会っただろう。どんな子か知りたかったんだ。大事な娘に近づく男は、父親としてきちんと見極めなければならない」
一見怖そうな顔で言ったが、目は優しい。言葉と目は真逆だった。
「そんな・・・。坂本君は良い人よ。失礼だわ」
私は言葉に反応して言ったが、目を見て父の本心ではないことをすぐに感じた。父の言葉については、同室の人が言った。
「さくらちゃん、男親なんてそんなものだよ。娘の彼氏に対しては厳しくなる。特に初めて会ったならなおさらだ。だから許してあげな」
「分かっている。目が違うって言ってたもん。私、人の心を見抜く目は持っているつもり。だからお父さん本心は、信用したっていうことでしょう」
「その通り。さくらは鋭いなあ。時間的に短かったけど、真剣に話してくれた。信用できる。さくらもああいう男性に惚れなさい。そしたらお父さんも安心だ」
「ほら、お父さんからもお許しが出たよ。最大の難関を坂本君は突破した」
工藤が言った。他の人も首を縦に振り、同意している。部屋の中が一気に明るくなった。この時、私は薬の副作用に不快感は一切感じていなかった。
≪日記≫
『今日はとっても嬉しい。お父さんが坂本君のこと、認めてくれた。
同室の人たちも一緒に喜んでくれた。
私、坂本君のこと、本気で好きになっても良いのかな。
夢の中の私だったら普通の高校生だけど、現実を考えると申し訳ない。
今後、私も彼もどういう人に出会うか分からないけれど、今、私は坂本君が好き。
片思いでも良い。だから、見舞いに来てくれる時間を大切にしたい。
夢の時間でも良い。夢の中で健康な私と一緒にいてくれる坂本君でも良い。
同じ時間の共有、それが今の私にとって至福の時間なのだ。
私には両親、坂本君、それからミーちゃんがいる。みんな、私のことをきちんと見てくれている。最高に幸せだ』
「分かりました。僕で良ければ」
坂本は力強く即答した。
「主治医が佐々木先生ということが分かりましたので、僕も本気でサポートできます。高野さんとはできれば大学も一緒に通いたいし・・・。医学部志望かどうかは分かりませんが、例え違う学部でも同じ大学であれば大学生活も一緒です。そこでは高校入学の時のような悲しい思いはさせません。高野さん、頭が良いので、きっと今の遅れを取り戻し、合格できると思います」
坂本は両親や主治医の顔をきちんと観ながら言った。
「では、高野さんに病名の告知をする時には同席してくれるね」
「もちろんです。何時お話しされますか? もし2日から3日くらいの猶予があれば、もう少し高野さんと親しくなり、少しでもショックを和らげるようにしたいのですが・・・」
「分かりました。では、3日後に、ということで良いですか? それまではこれまでの投薬を続けます」
「坂本君、さくらのこと、よろしくお願いします。母親だから分かるんですが、多分さくらはあなたのこと、気に入っています。あなたが見舞いに来てくれた時の表情や、帰った後の会話がとても楽しそうですもの。きっと告知の時、あなたがいてくれたらショックも和らぐと思う。気が重いかもしれませんが、私たちではどうしようもできないことですから・・・」
「お母さん、そんな風に考えないでください。僕は僕の気持ちでやることです」
その言葉を聞き、父は両手で坂本の手を握った。言葉こそ交わさなかったが、感謝の気持ちで溢れていた。
告知についての話が一段落したところで、坂本は帰った。
「敦君で良かった。これが他の人だったら話が複雑になるし、引き受けてくれなかったかもしれない。彼は良い医者になりますよ。お父さんもそうだけど・・・。今回のこと、私から先輩に話をしておきます。たぶん、いろいろアドバイスを受けるんじゃないかな。偶然とはいえ、良い巡り会わせでした」
「先生、ありがとうございました。私たち、病室に行って、それから帰ります。お時間を取っていただきすみませんでした」
両親はそう言って診察室を後にした。
再び病室に戻った両親。その様子は先ほどとどこか違う。そのことで私は尋ねた。
「どうしたの? さっきより表情が明るい。最初、作り笑顔のような感じだったけど、今は自然に明るい」
「そうか? 実はちょっと坂本君と話していたんだ。初めて会っただろう。どんな子か知りたかったんだ。大事な娘に近づく男は、父親としてきちんと見極めなければならない」
一見怖そうな顔で言ったが、目は優しい。言葉と目は真逆だった。
「そんな・・・。坂本君は良い人よ。失礼だわ」
私は言葉に反応して言ったが、目を見て父の本心ではないことをすぐに感じた。父の言葉については、同室の人が言った。
「さくらちゃん、男親なんてそんなものだよ。娘の彼氏に対しては厳しくなる。特に初めて会ったならなおさらだ。だから許してあげな」
「分かっている。目が違うって言ってたもん。私、人の心を見抜く目は持っているつもり。だからお父さん本心は、信用したっていうことでしょう」
「その通り。さくらは鋭いなあ。時間的に短かったけど、真剣に話してくれた。信用できる。さくらもああいう男性に惚れなさい。そしたらお父さんも安心だ」
「ほら、お父さんからもお許しが出たよ。最大の難関を坂本君は突破した」
工藤が言った。他の人も首を縦に振り、同意している。部屋の中が一気に明るくなった。この時、私は薬の副作用に不快感は一切感じていなかった。
≪日記≫
『今日はとっても嬉しい。お父さんが坂本君のこと、認めてくれた。
同室の人たちも一緒に喜んでくれた。
私、坂本君のこと、本気で好きになっても良いのかな。
夢の中の私だったら普通の高校生だけど、現実を考えると申し訳ない。
今後、私も彼もどういう人に出会うか分からないけれど、今、私は坂本君が好き。
片思いでも良い。だから、見舞いに来てくれる時間を大切にしたい。
夢の時間でも良い。夢の中で健康な私と一緒にいてくれる坂本君でも良い。
同じ時間の共有、それが今の私にとって至福の時間なのだ。
私には両親、坂本君、それからミーちゃんがいる。みんな、私のことをきちんと見てくれている。最高に幸せだ』
30
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
小さなパン屋の恋物語
あさの紅茶
ライト文芸
住宅地にひっそりと佇む小さなパン屋さん。
毎日美味しいパンを心を込めて焼いている。
一人でお店を切り盛りしてがむしゃらに働いている、そんな毎日に何の疑問も感じていなかった。
いつもの日常。
いつものルーチンワーク。
◆小さなパン屋minamiのオーナー◆
南部琴葉(ナンブコトハ) 25
早瀬設計事務所の御曹司にして若き副社長。
自分の仕事に誇りを持ち、建築士としてもバリバリ働く。
この先もずっと仕事人間なんだろう。
別にそれで構わない。
そんな風に思っていた。
◆早瀬設計事務所 副社長◆
早瀬雄大(ハヤセユウダイ) 27
二人の出会いはたったひとつのパンだった。
**********
作中に出てきます三浦杏奈のスピンオフ【そんな恋もありかなって。】もどうぞよろしくお願い致します。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら
瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。
タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。
しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。
剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。
お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。
「だって顔に大きな傷があるんだもん!」
体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。
実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。
寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。
スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。
※フィクションです。
※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる