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病状変化 14
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次の日、なるべくこれまで通りということを意識して母がさくらの病室を訪れた。毎日のことであり、いつも通り必要なお世話をし、日常的な話をしていた。
「昨日、お父さんが久しぶりに病院にやってきたのは嬉しかった。仕事があるからなかなか来れないだろうけど、たまには顔を見たいな」
「そう、それは良かった。昨日お父さんが言っていたけど、仕事、少し余裕ができて、しばらくの間、顔を出せそうだって言っていた。多分今日も夕方ごろ来ると思うわよ」
「本当? 嬉しい。やっぱり家族が揃うって嬉しいね。私が元気でいれば夏休み、みんなでどこかに行けたかもしれないのに、ごめんね」
「謝ることなんかないわ。そんなことを考えず、今は自分の身体のことだけを考えなさい。私たちはそれだけが望み。多分、敦君だって同じ気持ちのはずよ」
「えっ、突然敦君の名前が出てくるの? 嬉しいけど、恥ずかしい。私、頑張るからね」
母は私のその言葉を聞いて表情が少し曇った。そのことは気になったが、突っ込むことはしなかった。
最近、呼吸しにくい状況が続いており、声が細く、会話が長くなると辛いことが多い。楽しい話なら続けたいが、私のそのような状態に会話が止まる。その度に背中を擦ってくれ、少し楽になる。それは坂本もやってくれており、2人の優しい手をその度に感じている。
いつものような病院の日常が過ぎていき、午後、坂本が見舞いにやってきた。
「さくらちゃん、調子はどう?」
「今日は少し気分が良い。昨日、お父さんが来てくれたでしょう。これからしばらく、もっと来てくれそうなの。病室だけど、家族が顔を合わせることができるのは嬉しい。それから敦君が顔を見せてくれるのも嬉しい。後、強いて言うならミーちゃんがここにいてくれたらもっと嬉しいけど、病院だからそれは無理ね。だから早く退院して、ミーちゃんともまた遊びたい」
「そうだよ。さくらちゃん、ミーちゃんを娘のようだと言っていたでしょう。きっと会えなくて寂しがっているよ。だから1日も早く元気になって退院しよう。約束したよね、元気になったら2人でいろいろなところに行こうって。僕、楽しみにしているんだ」
屈託のない笑顔で話す坂本。母は横でその様子を微笑ましく思いながら眺めていたが、その顔には憂いが滲んでいた。この2人の会話が現実化することが無いことを知っていたからだ。
いつものような話が進んだところで、父がやってきた。
「あっ、お父さん。お邪魔しています」
「いつもありがとう。さくら、敦君がいると元気だな。結構、結構」
「お父さん、恥ずかしい、止めて」
「おや、違うのか?」
父の言葉に私は顔を赤らめていた。
「お父さん、そんなこと、本人たちの目の前で言うものじゃないわ。2人とも照れているじゃない。かわいそうよ」
母が言った。
「そうか、そうか。悪かったね。でも本当に2人とも良い顔をしている。親として嬉しいよ。敦君、いつもありがとう」
父親が見舞いにやってきたタイミングで敦が帰る時間になった。
病室を出る時、母も一緒に出ていった。
「私、敦君を見送ってくるね。帰りに売店によって来るから」
母はそういって父の方を見た。アイコンタクトで敦にさくらのことを話すことを伝えた。父もそのことを感じて言った。
「買い物、ゆっくりしてきなさい。俺はさくらと一緒にいろいろ話しているよ。なかなか父娘でゆっくり話すことなんてないからな」
「昨日、お父さんが久しぶりに病院にやってきたのは嬉しかった。仕事があるからなかなか来れないだろうけど、たまには顔を見たいな」
「そう、それは良かった。昨日お父さんが言っていたけど、仕事、少し余裕ができて、しばらくの間、顔を出せそうだって言っていた。多分今日も夕方ごろ来ると思うわよ」
「本当? 嬉しい。やっぱり家族が揃うって嬉しいね。私が元気でいれば夏休み、みんなでどこかに行けたかもしれないのに、ごめんね」
「謝ることなんかないわ。そんなことを考えず、今は自分の身体のことだけを考えなさい。私たちはそれだけが望み。多分、敦君だって同じ気持ちのはずよ」
「えっ、突然敦君の名前が出てくるの? 嬉しいけど、恥ずかしい。私、頑張るからね」
母は私のその言葉を聞いて表情が少し曇った。そのことは気になったが、突っ込むことはしなかった。
最近、呼吸しにくい状況が続いており、声が細く、会話が長くなると辛いことが多い。楽しい話なら続けたいが、私のそのような状態に会話が止まる。その度に背中を擦ってくれ、少し楽になる。それは坂本もやってくれており、2人の優しい手をその度に感じている。
いつものような病院の日常が過ぎていき、午後、坂本が見舞いにやってきた。
「さくらちゃん、調子はどう?」
「今日は少し気分が良い。昨日、お父さんが来てくれたでしょう。これからしばらく、もっと来てくれそうなの。病室だけど、家族が顔を合わせることができるのは嬉しい。それから敦君が顔を見せてくれるのも嬉しい。後、強いて言うならミーちゃんがここにいてくれたらもっと嬉しいけど、病院だからそれは無理ね。だから早く退院して、ミーちゃんともまた遊びたい」
「そうだよ。さくらちゃん、ミーちゃんを娘のようだと言っていたでしょう。きっと会えなくて寂しがっているよ。だから1日も早く元気になって退院しよう。約束したよね、元気になったら2人でいろいろなところに行こうって。僕、楽しみにしているんだ」
屈託のない笑顔で話す坂本。母は横でその様子を微笑ましく思いながら眺めていたが、その顔には憂いが滲んでいた。この2人の会話が現実化することが無いことを知っていたからだ。
いつものような話が進んだところで、父がやってきた。
「あっ、お父さん。お邪魔しています」
「いつもありがとう。さくら、敦君がいると元気だな。結構、結構」
「お父さん、恥ずかしい、止めて」
「おや、違うのか?」
父の言葉に私は顔を赤らめていた。
「お父さん、そんなこと、本人たちの目の前で言うものじゃないわ。2人とも照れているじゃない。かわいそうよ」
母が言った。
「そうか、そうか。悪かったね。でも本当に2人とも良い顔をしている。親として嬉しいよ。敦君、いつもありがとう」
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母はそういって父の方を見た。アイコンタクトで敦にさくらのことを話すことを伝えた。父もそのことを感じて言った。
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