16 / 104
稽古再開 11
しおりを挟む
次の日、祖父に会った時、颯玄は昨日の稽古のことについて質問した。
「どうして昨日、何も言わなかったの? 何か問題があった? もしあれば直すから言って。もっと空手が上手くなりたいので、言われた通りにする。だから教えて」
昨日は祖父に対して質問する気も出なかったが、一夜明け、気持ちの整理がついていたので疑問を解消しようとしていた。
「颯玄、やっている時、途中までは何回やれば良いのかとか、どういう意味があるのかを考えながらやっていただろう。そしてある時を境に、そういうことを何も考えずにやるようになったな?」
祖父は颯玄の目を見ながら語り掛けるような感じで言った。
「そうだけど、何で分かるの? 昨日、何も話していないし、今言われたことは自分の中のことだ。外から見ているだけでは分からないんじゃないの」
不思議そうな表情で颯玄は言った。
祖父はわずかに笑みを浮かべながら、また静かな口調で颯玄に言った。
「そうだな、わしはお前からは何も聞かなった。尋ねもしなかった。だが、やっている様子や表情からどういうことを考えているか、感じているかはある程度分かる」
「えっ、そうなの?」
颯玄は不思議そうな顔で返事した。
「うむ、もし、お前が最初と同じような感じのままだったら、途中で止めて、何か言ったかもしれない。わしがそろそろ止めようかと思った頃、お前の様子が違ってきた。だから、それが本物なのかどうかを判断するためそのままにして、最後までやってもらった。そして、帰る時も何も言わなかったな。本気で教えるとなると、どこから始めれば良いかをどうしても考えてしまう。お前は大事な久米家の武術を継ぐものだ。わしはそう理解している。だからどうしてもいろいろなことを意識してしまう。昨日はお前の心の様子を見るためのことだった。前にも言ったように、武術の段階には守破離という段階があり、守では教えをただひたすら守って同じことを繰り返さなければならない。カタチだけになってはいけないのだ。また、いろいろなことを聞くだけで強くなった錯覚に陥ることも良くない。とは言いながらも、この前は四方拝についての背景を話した。中にはそういうことを知るだけですべてを理解したつもりになる者がいるが、お前の心が純粋であれば同じことを言ってもその吸収度が違う。安易に知識を求め、分かったつもりの上でやる性格なのかどうかを判断すると共に、自分がやったことに対してどう感じたかをわしのほうから尋ねるための機会にした。ということで尋ねるが、昨日の稽古で何を感じた?」
そう尋ねられでも、はっきりこうだった、というほどのことは無いと思っている颯玄に明確な返事はできなかった。それでも自分の言葉でできる限り説明を試みた。
「どうして昨日、何も言わなかったの? 何か問題があった? もしあれば直すから言って。もっと空手が上手くなりたいので、言われた通りにする。だから教えて」
昨日は祖父に対して質問する気も出なかったが、一夜明け、気持ちの整理がついていたので疑問を解消しようとしていた。
「颯玄、やっている時、途中までは何回やれば良いのかとか、どういう意味があるのかを考えながらやっていただろう。そしてある時を境に、そういうことを何も考えずにやるようになったな?」
祖父は颯玄の目を見ながら語り掛けるような感じで言った。
「そうだけど、何で分かるの? 昨日、何も話していないし、今言われたことは自分の中のことだ。外から見ているだけでは分からないんじゃないの」
不思議そうな表情で颯玄は言った。
祖父はわずかに笑みを浮かべながら、また静かな口調で颯玄に言った。
「そうだな、わしはお前からは何も聞かなった。尋ねもしなかった。だが、やっている様子や表情からどういうことを考えているか、感じているかはある程度分かる」
「えっ、そうなの?」
颯玄は不思議そうな顔で返事した。
「うむ、もし、お前が最初と同じような感じのままだったら、途中で止めて、何か言ったかもしれない。わしがそろそろ止めようかと思った頃、お前の様子が違ってきた。だから、それが本物なのかどうかを判断するためそのままにして、最後までやってもらった。そして、帰る時も何も言わなかったな。本気で教えるとなると、どこから始めれば良いかをどうしても考えてしまう。お前は大事な久米家の武術を継ぐものだ。わしはそう理解している。だからどうしてもいろいろなことを意識してしまう。昨日はお前の心の様子を見るためのことだった。前にも言ったように、武術の段階には守破離という段階があり、守では教えをただひたすら守って同じことを繰り返さなければならない。カタチだけになってはいけないのだ。また、いろいろなことを聞くだけで強くなった錯覚に陥ることも良くない。とは言いながらも、この前は四方拝についての背景を話した。中にはそういうことを知るだけですべてを理解したつもりになる者がいるが、お前の心が純粋であれば同じことを言ってもその吸収度が違う。安易に知識を求め、分かったつもりの上でやる性格なのかどうかを判断すると共に、自分がやったことに対してどう感じたかをわしのほうから尋ねるための機会にした。ということで尋ねるが、昨日の稽古で何を感じた?」
そう尋ねられでも、はっきりこうだった、というほどのことは無いと思っている颯玄に明確な返事はできなかった。それでも自分の言葉でできる限り説明を試みた。
10
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる