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稽古再開 10
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また難しい話を聞いたと颯玄は思った。だが、内容は分からないことも多かったものの、きちんと立ち、姿勢を崩さないようにしたら良いんだな、という解釈をしていた。
「次の動作だが、左足を横に開きなさい。肩幅を意識すること。それよりも短くても長くても駄目だ。いろいろな動作は自分の体格を基準に動くことになる。具体的に数字を何尺何寸といったことで意識してはだめだ。自分の技は自分にとって最も使いやすいようにすることが大切になる。そこで颯玄、今、お前の歩幅は自分の肩幅か? わしには少し広いように思うが、自分で確認しなさい」
颯玄は祖父の言葉通り、少し歩幅を変化させた。この時に意識すべき立ち方は基本で行なう内八字立ちではなく、外八字立ちになる。内八字立ちの場合、一膝一拳という原則があるが、外八字立ちの場合もこの歩幅が最もしっくりくる。こういった具合に指摘されたことについて自分の身体で確認するということはとても効果的ということを、颯玄は改めて知ることになった。
「ではそこからの動きだが、両腕を大きく円を描くような感じで動かしなさい。そして、両手が自分の額の少し上になったところで重ねる。その時、立ち方を内八字立ちに変化させる。足裏の変化だけで立ち方を変えるが、基本の時のようにしっかり締める意識が無くても良い。立ち方としてしっかりできるくらいの軽い状態にする。その時、右手が内側で、正拳を作る。左手の方はそれを優しく包むようにする。その後、両手を重ねたまま身体の正中線に沿うような感じで静かに下ろしていく。呼吸は両手を頭上に挙げる時に息を吸い、下げる時に吐くようにする。動作としてこういうことになるが、見た目は簡単だろう」
祖父は軽い感じで言ったが、これまでの流れからすれば簡単にできるわけではないことが颯玄にも分かっていた。立つだけでいろいろな要素が入っていたことを実感した颯玄にとっては、このことだけでも自分には難度が高いことだと感じていたのだ。
具体的な動きについて説明を受けた以上、実際にやらなければならない。そこで何を感じながら行えば良いのか分からないまま、まずは言われた通りやってみた。
だが、祖父は何も言わない。だから、これで良いのかどうかの判断ができない。ならば祖父が口を開くまで何度もやろうと決めた。
時間がどれくらい経ったのは分からない。同じ動作、それも短いところを何度もやらされたことになるが、そうなると、回数的に相当なものになる。特別な力がいるわけではないが、同じ動作の繰り返しとなれば、それなりに疲労が重なってくる。腕もだんだん重くなっていく。そうなると、単に数をこなすだけになり、この動作で何がどうなるか、といったことも分からない分、だんだん惰性になっていく。自分の感覚としても最初の頃と比べて気持ちが入っていかない。
しかし、何も考えずに行なっていることが当たり前の感覚になっていき、余計なことを考えなくなっていった。肉体的な疲れも何となく忘れてしまった。
颯玄がそういう意識になってからしばらく経ったところで、祖父が止めをかけた。
それまでの颯玄だったら、ここで何か祖父が言うのを期待したかもしれないが、この時、不思議とそういう気持ちは湧かなかった。
「今日はここまでにしよう」
祖父は短く稽古の終了を告げた。
颯玄はその言葉を素直に受け入れ、そのまま祖父の下から自宅へ戻った。帰途の途中、この日の稽古のことを何度も思い出し、祖父の考えを推理してみたが、何も聞いていないのでその真意は分からなかった。
「まあ、良い。明日、尋ねてみよう」
結局そういう思いのまま家に戻り、簡単に夕食を済ませ、布団に入った。
「次の動作だが、左足を横に開きなさい。肩幅を意識すること。それよりも短くても長くても駄目だ。いろいろな動作は自分の体格を基準に動くことになる。具体的に数字を何尺何寸といったことで意識してはだめだ。自分の技は自分にとって最も使いやすいようにすることが大切になる。そこで颯玄、今、お前の歩幅は自分の肩幅か? わしには少し広いように思うが、自分で確認しなさい」
颯玄は祖父の言葉通り、少し歩幅を変化させた。この時に意識すべき立ち方は基本で行なう内八字立ちではなく、外八字立ちになる。内八字立ちの場合、一膝一拳という原則があるが、外八字立ちの場合もこの歩幅が最もしっくりくる。こういった具合に指摘されたことについて自分の身体で確認するということはとても効果的ということを、颯玄は改めて知ることになった。
「ではそこからの動きだが、両腕を大きく円を描くような感じで動かしなさい。そして、両手が自分の額の少し上になったところで重ねる。その時、立ち方を内八字立ちに変化させる。足裏の変化だけで立ち方を変えるが、基本の時のようにしっかり締める意識が無くても良い。立ち方としてしっかりできるくらいの軽い状態にする。その時、右手が内側で、正拳を作る。左手の方はそれを優しく包むようにする。その後、両手を重ねたまま身体の正中線に沿うような感じで静かに下ろしていく。呼吸は両手を頭上に挙げる時に息を吸い、下げる時に吐くようにする。動作としてこういうことになるが、見た目は簡単だろう」
祖父は軽い感じで言ったが、これまでの流れからすれば簡単にできるわけではないことが颯玄にも分かっていた。立つだけでいろいろな要素が入っていたことを実感した颯玄にとっては、このことだけでも自分には難度が高いことだと感じていたのだ。
具体的な動きについて説明を受けた以上、実際にやらなければならない。そこで何を感じながら行えば良いのか分からないまま、まずは言われた通りやってみた。
だが、祖父は何も言わない。だから、これで良いのかどうかの判断ができない。ならば祖父が口を開くまで何度もやろうと決めた。
時間がどれくらい経ったのは分からない。同じ動作、それも短いところを何度もやらされたことになるが、そうなると、回数的に相当なものになる。特別な力がいるわけではないが、同じ動作の繰り返しとなれば、それなりに疲労が重なってくる。腕もだんだん重くなっていく。そうなると、単に数をこなすだけになり、この動作で何がどうなるか、といったことも分からない分、だんだん惰性になっていく。自分の感覚としても最初の頃と比べて気持ちが入っていかない。
しかし、何も考えずに行なっていることが当たり前の感覚になっていき、余計なことを考えなくなっていった。肉体的な疲れも何となく忘れてしまった。
颯玄がそういう意識になってからしばらく経ったところで、祖父が止めをかけた。
それまでの颯玄だったら、ここで何か祖父が言うのを期待したかもしれないが、この時、不思議とそういう気持ちは湧かなかった。
「今日はここまでにしよう」
祖父は短く稽古の終了を告げた。
颯玄はその言葉を素直に受け入れ、そのまま祖父の下から自宅へ戻った。帰途の途中、この日の稽古のことを何度も思い出し、祖父の考えを推理してみたが、何も聞いていないのでその真意は分からなかった。
「まあ、良い。明日、尋ねてみよう」
結局そういう思いのまま家に戻り、簡単に夕食を済ませ、布団に入った。
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