龍皇伝説  壱の章 龍の目覚め

藤堂慎人

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稽古停止、しかし・・・ 24

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 その様子を見たサキは構えを解き、スタスタと颯玄のほうに近づいた。構えていない相手が近づいている状態なら間合いに入ってきても手出しできない。そこには闘気が感じられないのだ。何をするのだろうくらいの気持ちでいると、颯玄の目の前で立ち止まった。

 そして、いきなり颯玄の頬に平手打ちをした。もちろん、攻撃といった感じではなく、よくある男女の喧嘩のような場面だったが、空手をたしなむサキの平手打ちは結構効いた。それで颯玄の口の中が少し切れた。

 そのことは颯玄はもちろんだが、周囲も驚き、全員、呼吸が止まった。一瞬の静寂がその場を覆った。まさか、掛け試しの場で平手打ちなど誰も考えていなかったからだ。

「颯玄、これで本気になったか? 女に頬を叩かれても何もしないのか」

 再びサキの声が響いた。

 サキの言葉に周りも勢いが付き、颯玄に対して戦いを促すような言葉が飛び交った。さすがにここまでやられると颯玄も黙っていられない。怒りまでは感じていないが、ここで戦わないようであれば2度とこの場で掛け試しはできないと感じた。

「分かった。立ち合おう。だが、戦うといった以上、変な手加減はしない。良いのか?」

「もちろんだ。オレが望んだことだ。そして、もしオレが負けたら、言いたいことがある」

 颯玄は何を言っているのか分からない、といった顔をしている。勝ったら相手を従わせるようなことを言うことはあるが、負けたらという意味が理解できなかった。颯玄はその言葉を深く考えることなく、多分言い間違いであろうと軽く考えていた。

 戦いを見ている者の中にはその意味が分かっている者もいたので、思わず顔がほころんでいる様子も見える。颯玄にはそういう様子は目に入っていないが、周りには意味深な笑みを浮かべている者たちがいた。

 颯玄とサキに再び所定の場所に立ち、構えた。その様子は先ほどと変わりない。だが、今度はさっきと異なり、両者の間には見えない火花が散っていた。

 サキは誘いのような感じで軽く突きを出しているが間合いも遠いし、第一、本気で攻撃しようという雰囲気が無い。その様子を見た颯玄は、これくらいの実力かと思い、さっさと極めて終わらせようと考えた。

 颯玄は間合いを詰めた。サキが出している中途半端な攻撃が当たるくらいのところまで近づいた。

 本来ならそういうことはしないだろうが、遊びごとのような感じを受けた颯玄は、わざとサキの攻撃が当てさせ、効かないことを思い知らせ、適当に肘や手首の関節を極め、負けを認めさせようと考えた。サキが当たらないところで突きの真似事のようなことをやっているなら、自分から近づき、捕ろうとしたのだ。

 だが、これはサキの作戦だった。

 わざと実力を見せず、油断させようとしたのだ。颯玄はまんまとそれに謀られた感じになったが、誰が考えても当たるという間合いになった時、サキは気合一閃、鋭い上段突きを放った。

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