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稽古停止、解除 3
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「ところで、お前にもう一つ言っておくことがある」
祖父は何か含みがあるような顔で言った。颯玄には何のことかは分からない。
「お前、掛け試しに関して何か言っていないことがあるな」
「えっ?」
何のことか理解できない颯玄はキョトンとした顔になった。
「・・・分からないか? サキというお嬢さんのことだ」
名前を聞いて思い出した颯玄だが、確かに女性にしては強かった印象は残っている。しかし、それだけの記憶だ。ここで改めて言われてもピンと来なかった。
「実は何日か前、サキさんが尋ねてきた。いろいろと知り合いに聞き回り、ここを探したそうだ。それでお前の強さの理由を知ったとも言っていたが、同時に入門も相談された。土地柄として複数の師から学ぶことはよくあるので問題はないが、そのお嬢さんとは何か因縁があるようだな」
再び祖父は何か含んだような表情で言った。たしか掛け試しの時、自分を負かした相手と結婚すると言っていた。颯玄は多分そのことだと直感した。颯玄はこの時点で自分が掛け試しに出ていたことを知られていたんだということを察した。
「その人、何か言っていた?」
颯玄が尋ねた。
「あぁ。入門願いの時、これまで聞いたことが無いようなことを言っていたが、多分、他の道場でも無いだろうな。とてもきれいなお嬢さんだが、お前と結婚したいということを言っている。恋愛指南はやっていないが、こういうことはわしにとっても初めてのことだったので、入門については保留にしてある。お前からも話を聞かないとと思ってな」
祖父は孫の恋愛話に空手家らしからぬ喜びを感じていたのだ。颯玄も年頃だし、そういう話の一つや二つあっても不思議ではない。祖父はこれまで空手のことだけで接していたが、孫の恋愛話という明るい話題に別の意味で心を躍らせているようだった。こういう点は空手を抜きに、純粋に祖父として嬉しいのだろう。
颯玄にしても普通の若者だし、こういう話自体、本心は嬉しくないはずはない。だが、今の自分は空手と打ち込もうと心に誓っている。他に時間を使いたくない、という思いが強い。
「今、俺は空手のことで頭が一杯だ。恋愛には興味がない。サキという人が入門するしないは当人の問題だし、その許可・不許可は俺が決めることではない。だから、もし入ることになっても俺は俺という感じでやらせてもらう」
「そうか、分かった。実は先日、ここにその娘が来た時、お前は稽古停止中で、それが解ける日が今日だと伝えてある。そして、お前の意見も聞いて入門については返事すると答えている」
「俺はどちらでも良いよ。ただし、さっきも言ったけれど稽古は稽古としてするだけで、それ以上のことは無いと伝えてほしい」
颯玄はそう言ったが、祖父は「そうか、そうか」といった感じで聞いていた。
そういう話をしている時、サキがやってきた。そのことを他の道場生が知らせに来たが、祖父が出ていき、入門を認める旨を話した。颯玄は奥の部屋でそのやり取りを聞いていたが、ばつが悪そうな表情になっていた。一緒に稽古するとなると、どうしても共に過ごす時間が長くなる。自分の稽古に支障を来さないように気を付けようと改めて心に誓っていた。
サキは自分の希望が叶い、喜んでいる様子が奥の部屋にも伝わってきたが、その声や祖父との会話は若い女性そのもので、とても先日颯玄と戦った強い空手家、という感じではなかった。
祖父は何か含みがあるような顔で言った。颯玄には何のことかは分からない。
「お前、掛け試しに関して何か言っていないことがあるな」
「えっ?」
何のことか理解できない颯玄はキョトンとした顔になった。
「・・・分からないか? サキというお嬢さんのことだ」
名前を聞いて思い出した颯玄だが、確かに女性にしては強かった印象は残っている。しかし、それだけの記憶だ。ここで改めて言われてもピンと来なかった。
「実は何日か前、サキさんが尋ねてきた。いろいろと知り合いに聞き回り、ここを探したそうだ。それでお前の強さの理由を知ったとも言っていたが、同時に入門も相談された。土地柄として複数の師から学ぶことはよくあるので問題はないが、そのお嬢さんとは何か因縁があるようだな」
再び祖父は何か含んだような表情で言った。たしか掛け試しの時、自分を負かした相手と結婚すると言っていた。颯玄は多分そのことだと直感した。颯玄はこの時点で自分が掛け試しに出ていたことを知られていたんだということを察した。
「その人、何か言っていた?」
颯玄が尋ねた。
「あぁ。入門願いの時、これまで聞いたことが無いようなことを言っていたが、多分、他の道場でも無いだろうな。とてもきれいなお嬢さんだが、お前と結婚したいということを言っている。恋愛指南はやっていないが、こういうことはわしにとっても初めてのことだったので、入門については保留にしてある。お前からも話を聞かないとと思ってな」
祖父は孫の恋愛話に空手家らしからぬ喜びを感じていたのだ。颯玄も年頃だし、そういう話の一つや二つあっても不思議ではない。祖父はこれまで空手のことだけで接していたが、孫の恋愛話という明るい話題に別の意味で心を躍らせているようだった。こういう点は空手を抜きに、純粋に祖父として嬉しいのだろう。
颯玄にしても普通の若者だし、こういう話自体、本心は嬉しくないはずはない。だが、今の自分は空手と打ち込もうと心に誓っている。他に時間を使いたくない、という思いが強い。
「今、俺は空手のことで頭が一杯だ。恋愛には興味がない。サキという人が入門するしないは当人の問題だし、その許可・不許可は俺が決めることではない。だから、もし入ることになっても俺は俺という感じでやらせてもらう」
「そうか、分かった。実は先日、ここにその娘が来た時、お前は稽古停止中で、それが解ける日が今日だと伝えてある。そして、お前の意見も聞いて入門については返事すると答えている」
「俺はどちらでも良いよ。ただし、さっきも言ったけれど稽古は稽古としてするだけで、それ以上のことは無いと伝えてほしい」
颯玄はそう言ったが、祖父は「そうか、そうか」といった感じで聞いていた。
そういう話をしている時、サキがやってきた。そのことを他の道場生が知らせに来たが、祖父が出ていき、入門を認める旨を話した。颯玄は奥の部屋でそのやり取りを聞いていたが、ばつが悪そうな表情になっていた。一緒に稽古するとなると、どうしても共に過ごす時間が長くなる。自分の稽古に支障を来さないように気を付けようと改めて心に誓っていた。
サキは自分の希望が叶い、喜んでいる様子が奥の部屋にも伝わってきたが、その声や祖父との会話は若い女性そのもので、とても先日颯玄と戦った強い空手家、という感じではなかった。
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