龍皇伝説  壱の章 龍の目覚め

藤堂慎人

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滝修行 2

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 しかし、ここまで来て止めるという選択肢はない。ましてやこれまでの空手家たちの逸話も知っているのでできないことは無い、という思いもある。

 颯玄は準備を終えると滝つぼに入っていった。

 まだ水に打たれるまではいかないけれど、そこから流れている水の圧力だけでも強烈だ。それだけでも足元を掬われるような感じがする。見た目だけでなく、足元の感覚もこれまでとは大きく異なり、人を寄せ付けないような水の勢いだった。

だが、そういう中を進むのもまた修行、という思いを胸に足元を探りながらゆっくり歩いた。

もし足腰が弱ければ、落ちている水のところにも行けない。それに耐えている自分を感じ、颯玄は改めてこれまでの基礎鍛錬に感謝した。土台の強さと同時に身体の中心軸をある程度鍛えている颯玄は、あまり姿勢を崩すことなく、最も水量が多いと思われるところに辿り着いた。

「痛い」

 最初に颯玄が感じたことだ。少しでも気を抜くと首への負担が強くなるということも身体で感じていた。

 また、水温も低い。時間を考慮しないと体温が奪われ、それも身体に悪影響となる。修行だからということでギリギリまで頑張るつもりではいるが、もしもの時には誰も助けてくれるわけではない。孤独の中で自分の心と会話をしながら、颯玄はそこに立っていた。

 だが、滝行というのはいかに雑念を払うかということも修行の要素として必要で、できるだけ心を無にすると自身に言い聞かせ、目を閉じた状態でただひたすら滝に打たれた。

 そしてしばらくすると、不思議と自身に対する心配が無くなっていき、滝の水の音すら聞こえなくなっていた。周りは風の音や鳥のさえずりもあるのだが、そもそもそういう音は滝にかき消されている。

 滝に打たれる時、左右の手の指を1本ずつ絡ませ、印を組んでいる。颯玄も滝行は初めてではない。他で経験している分、自身の内側に入り込む要領は現在の段階なりに掴んでいる。左右の手をしっかり合わせ、陰陽の一体感も何となく感じていた。武術の稽古を通じ、颯玄なりに得てきた感覚を今、滝の水との戦いに置き換え、身体の外側と内側がせめぎ合っているような状態になっていた。

 しかし、だからと言って何か悟れたような感覚は無い。

 どれくらい時間が経ったかは定かではないが、颯玄は目をカッと見開き、呼吸法に合わせて両足を開き、基本の内八字立ちになった。幸い、そうできる足場があったからできたのだが、そこで突きを始めた。

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