5 / 26
初めてのデート
しおりを挟む
再会は次の週で、私たちは神代植物公園に行った。深大寺の隣にある都立の公園で、時期によりいろいろな企画が催される。この時期、バラフェスタの期間中で、噴水の周りにいろいろな種類のバラが咲き誇る。その様子は初めて訪れた私にとって圧巻だ。
だが、私には康子のほうが眩しく見える。持参したカメラではもちろんバラの花も撮るのだが、そういうふりをして康子も撮っている。ばれないように注意しながらなので、なかなか良いショットは撮れない。でも、バラの花を介して写る康子の表情や仕草は私の心を十分満たした。
「何か、私のほうばかり見ている。私、変?」
その言葉に返事を詰まらせた私だが、その様子にまた康子は笑っていた。
「私ね、バラの華やかさより初めてあなたと会った時に見ていたナンジャモンジャが好きなの。一つ一つの花は小さいけれど、それが集まって一生懸命咲いている感じがして…。ちなみに花言葉は『清廉』と言うそうよ」
その話は私が康子に感じていたことと一致した。
私の頭の中ではいろいろなことが回り始め、何だか全身が熱くなっていく自分を感じていた。
「ねえ、ソフトクリーム食べない? 近くに売店があるの。この時期、バラソフトというメニューがあって、ほんのりバラの香りがするの。あまり見かけないと思うから食べましょうか」
康子はそう言って売店のほうに私を引っ張っていった。2つ注文し、一つを康子に渡した。私もソフトクリームを口にしたが、聞いていた通り、ほんのりバラの香りがする。これまでソフトクリームというバニラだけしか知らない私にとって、それは初めての体験だった。
「美味しいね」
「そうでしょう。私、ここに来るといつもいただいているの」
そういう会話をしている時、康子がハンカチを出し、私の口元をそっと拭いた。
「口の周りにソフトクリームが付いていた。子供みたい」
笑いながら康子が言った。出会ってから今日で2回目なのに、私は昔から知っている恋人のような不思議な感覚に陥った。
「ごめんなさい。私、また余計なことを・・・」
康子は謝ったが、私は不思議と嫌な気持ちは全くなかった。それよりもその優しさと素直に行動する性格に心をすっかり奪われた。
私にも学生時代、付き合っていた人がいる。卒業とともに別れたが、その時の彼女に対する意識と全く異なる。一緒にいて心が和むわけだが、仕事に疲れているからというわけではないことを感じていた。
「お腹、空かない?」
「ちょっと・・・。売店に軽食は売っているようだけど、ちゃんとした食事が良いよね?」
「私、そんなこと気にしない。せっかく屋外にいるんだし、明るいところで食べましょう。その方がきっと美味しいわよ」
私たちはそう言って別の売店に行き、それぞれ食べたいものを買った。近くにはベンチやテーブルがあり、そこに食べ物を置いていただいた。多分冷凍食品、レトルト食品だと思われるが、康子と2人で食べる屋外での食事はこれまでのどんな料理にも増して美味しく感じていた。
だが、私には康子のほうが眩しく見える。持参したカメラではもちろんバラの花も撮るのだが、そういうふりをして康子も撮っている。ばれないように注意しながらなので、なかなか良いショットは撮れない。でも、バラの花を介して写る康子の表情や仕草は私の心を十分満たした。
「何か、私のほうばかり見ている。私、変?」
その言葉に返事を詰まらせた私だが、その様子にまた康子は笑っていた。
「私ね、バラの華やかさより初めてあなたと会った時に見ていたナンジャモンジャが好きなの。一つ一つの花は小さいけれど、それが集まって一生懸命咲いている感じがして…。ちなみに花言葉は『清廉』と言うそうよ」
その話は私が康子に感じていたことと一致した。
私の頭の中ではいろいろなことが回り始め、何だか全身が熱くなっていく自分を感じていた。
「ねえ、ソフトクリーム食べない? 近くに売店があるの。この時期、バラソフトというメニューがあって、ほんのりバラの香りがするの。あまり見かけないと思うから食べましょうか」
康子はそう言って売店のほうに私を引っ張っていった。2つ注文し、一つを康子に渡した。私もソフトクリームを口にしたが、聞いていた通り、ほんのりバラの香りがする。これまでソフトクリームというバニラだけしか知らない私にとって、それは初めての体験だった。
「美味しいね」
「そうでしょう。私、ここに来るといつもいただいているの」
そういう会話をしている時、康子がハンカチを出し、私の口元をそっと拭いた。
「口の周りにソフトクリームが付いていた。子供みたい」
笑いながら康子が言った。出会ってから今日で2回目なのに、私は昔から知っている恋人のような不思議な感覚に陥った。
「ごめんなさい。私、また余計なことを・・・」
康子は謝ったが、私は不思議と嫌な気持ちは全くなかった。それよりもその優しさと素直に行動する性格に心をすっかり奪われた。
私にも学生時代、付き合っていた人がいる。卒業とともに別れたが、その時の彼女に対する意識と全く異なる。一緒にいて心が和むわけだが、仕事に疲れているからというわけではないことを感じていた。
「お腹、空かない?」
「ちょっと・・・。売店に軽食は売っているようだけど、ちゃんとした食事が良いよね?」
「私、そんなこと気にしない。せっかく屋外にいるんだし、明るいところで食べましょう。その方がきっと美味しいわよ」
私たちはそう言って別の売店に行き、それぞれ食べたいものを買った。近くにはベンチやテーブルがあり、そこに食べ物を置いていただいた。多分冷凍食品、レトルト食品だと思われるが、康子と2人で食べる屋外での食事はこれまでのどんな料理にも増して美味しく感じていた。
20
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
Husband's secret (夫の秘密)
設楽理沙
ライト文芸
果たして・・
秘密などあったのだろうか!
むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ
10秒~30秒?
何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。
❦ イラストはAI生成画像 自作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる