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第一章
5.学園への扉
「ノア様、今日はレオン様とアシェル様の学園見学ですね」
エディが僕の服を整えながら言った。
「うん!楽しみ!」
実際、本当に楽しみだった。ゲームの舞台となる学園を、この目で見ることができるのだから。
今日はアシェルが通う学園の見学に、特別に同行させてもらえることになったのだ。長期休暇も終わりに近づいて、新学期の準備として学園を案内してもらえる。レオン兄様は初等部から通っているけれど、それぞれ校舎が分かれていて、中等部に行くのは初めてらしい。
「ノア、準備はできた?」
レオン兄様が部屋に入ってきた。いつものカジュアルな服ではなく、きちんとした学園の制服を着ている。
「はい、できました」
「よし。じゃあアシェルを迎えに行こう」
隣の部屋では、アシェルも準備を終えていた。
「おはよう、ノア。今日はよろしくね」
「おはようございます!アシェル兄様。こちらこそ、よろしくお願いします」
三人で大広間に向かうと、父様と母様が待っていた。
「みんな準備はいいかな?」
「はい、父様」
「それでは出発しよう」
****
馬車に揺られながら、王立魔法学園に向かう。
「新しい校舎か……」
レオン兄様がぽつりと呟く。
「僕も…少し緊張するな」
アシェルも少し青い顔をしている。レオン兄様は既に初等部に通っているけれど、新しい環境に緊張しているのだろう。
「大丈夫ですよ。レオン兄様がいれば、アシェル兄様もすぐに慣れます!」
僕が励ましの言葉をかけると、二人とも苦笑いした。
「ノアに励まされるなんて、情けないな」
「そうだね。弟に心配かけちゃだめだね」
実際は、僕の方がゲーム知識で学園のことを知っているんだけど、それは言えない。
それよりも最近、アシェルがレオン兄様に対して、敬語が抜けてきたことに喜びが隠せない。
「でも、やっぱり不安なのは確かだよ」
アシェルが正直な気持ちを口にする。
「学園で平民出身の僕が受け入れてもらえるか心配で」
「そんなこと気にする必要ないよ」
レオン兄様がアシェルの肩を叩く。
「僕が初等部でいろいろ見てきた限り、みんないい奴らだ。君は光魔法の才能があるし、何より人柄がいいんだから」
「レオン…ありがとう」
はわぁ……!兄2人のいちゃラブな様子も案外悪くない。レオン兄様だけ抜け駆けするのはダメだけど、多少のアドバンテージはあってもいいかもしれない。そう思って、今日だけ見逃すことにした。
****
学園に到着すると、その大きさに圧倒された。
白い石造りの美しい建物が立ち並び、広大な敷地には緑豊かな庭園も見える。まさにゲームで見た通りの光景だった。
「うわぁ…すごいですね」
アシェルが感嘆の声を上げている。
「ようこそ、王立魔法学園へ」
案内してくれるのは、中等部の副主任教師らしい中年の男性だった。
「教授をしているハワードです。レオン君は既にお馴染みですが、アシェル君とノアール君は初めてですね」
「よろしくお願いします」
父様が代表して挨拶する。
「アシェル君、春からはこちらの中等部でお世話になります。そして、ノアール君は再来年から初等部ですね」
「はい」
アシェルと僕が揃って返事をする。
「それでは、校内をご案内いたします。まずは初等部から見ていきましょうか。ノアール君のために」
****
まず案内されたのは、初等部の教室棟だった。
「こちらが初等部の一般教室です。基礎的な魔法理論や、一般教養を学びます」
窓の大きい明るい教室に、小さな机と椅子が並んでいる。僕が再来年使うことになる教室だ。
「レオン兄様はここで勉強してるんですね」
「そうだよ。春には中等部に上がるから、もうお別れだけどね」
レオン兄様が少し寂しそうに言った。
「魔法の実技はどこで行うんですか?」
レオン兄様が質問する。
「実技は専用の練習場で行います。後ほどご案内いたします」
続いて案内されたのは中等部の校舎だった。初等部よりも一回り大きく、より本格的な雰囲気がある。
「中等部では、より専門的な魔法を学びます。属性別のクラス分けもこの段階から始まります」
アシェルが興味深そうに質問した。
「属性別というのは?」
「火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、光魔法、闇魔法…それぞれに特化した授業があります。もちろん、基礎的な他属性の魔法も学びますが」
光魔法。アシェルの得意分野だ。きっと光魔法のクラスでは、彼の才能が開花することだろう。
「図書館もご案内しましょう」
図書館は想像以上に大きくて、本の数も膨大だった。天井まで続く本棚に、魔法に関する様々な書籍が並んでいる。
「うわあ…こんなにたくさんの本が」
僕が思わず声を上げると、ハワード教授が微笑んだ。
「読書がお好きですか?」
「はい!」
「それは素晴らしい。入学が楽しみですね」
そう言われて、改めて再来年から僕もここで学ぶんだと実感した。
****
最後に案内されたのは、高等部の校舎だった。
「高等部では、より実践的な魔法を学びます。将来の進路に合わせた専門教育も行います」
ここがゲームの主な舞台となる場所だ。アシェルが数年後に通うことになる校舎。
そして、様々な攻略キャラたちと出会う場所でもある。
立派な建物を見上げながら、複雑な気持ちになった。今はまだ平穏な日常が続いているけれど、いずれアシェルはここで様々な出来事に巻き込まれることになる。
「ノア?どうした?」
アシェル兄様が心配そうに声をかけてくる。
「あ、いえ…ただ、すごいなあと思って」
「確かにすごいね。僕たちもいずれはここで学ぶんだ」
アシェルの言葉に、胸が締め付けられる思いがした。
そうだ。いずれ彼はここで、ゲームの物語を体験することになる。恋愛だけでなく、時には危険な目にも遭うだろう。
その時、僕はどうすればいいんだろう。
「ノアール君?」
ハワード教授が僕に声をかけた。
「入学まで、まだ時間がありますが、なにか要望などはありませんか?」
「えーっと…」
突然質問されて、少し戸惑う。
「特に問題ないようですね。ノアール君は本が好きとのことなので、基礎的な魔法理論の本に目を通しておくとよいでしょう」
「はい、ありがとうございます」
「それと」
教授が少し声を潜めた。
「魔法の才能も大切ですが、何より大切なのは他者を思いやる心です。それがあれば、きっと素晴らしい魔法使いになれるでしょう」
「…はい」
教授の言葉が胸に響いた。思いやりの心。それは確かに大切なものだ。
そして、僕が今一番強く感じているのも、アシェルを思いやる気持ちだった。
****
帰りの馬車の中で、今日の感想を話し合った。
「すごい学園でしたね」
「本当に。あんなところで学べるなんて、光栄だよ」
アシェルが感激している。
「図書館の本、全部読みたいな」
レオン兄様が笑う。
「全部は無理だろう。卒業するまでの間に、できるだけたくさん読めばいいさ」
「そうですね」
僕も会話に加わる。
「僕も再来年からあそこに通うんですね。なんだか不思議な感じです」
「ノアなら大丈夫だよ」
アシェルが僕の頭を撫でる。
「優しくて頭もいいから、きっとみんなに愛される生徒になるよ」
アシェルにそう言われると、嬉しい反面、複雑な気持ちにもなる。
愛されるべきなのは、むしろ彼の方だ。そして実際、ゲーム内では多くの人に愛される存在になる。
でも、その愛が時として重荷になることもあった。
だから、僕はアシェルが望むことなら、なんだってしたい。魔法が上手に使えることを祈っておこう。剣術は…レオン兄様みたいにできるといいな、ははは……。もし、どっちもダメだったらめちゃくちゃ勉強しよう。アシェルを養っていけるくらいは稼ぎたい。たとえ小さな弟でも、できることはあるはずだから。
「ノア、また考え事?」
レオン兄様に指摘されて、現実に戻る。
「すみません。ちょっと…」
「学園のことを考えてたの?」
「はい、そんなところです」
「楽しみだね、再来年が」
アシェルの言葉に頷く。
「はい、楽しみです」
今はまだ答えが見つからないけれど、いつかきっと自分なりの道を見つけよう。
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