BLゲームのヒロイン兄様を守りたい!

七瀬

文字の大きさ
6 / 22
第一章

5.学園への扉



「ノア様、今日はレオン様とアシェル様の学園見学ですね」

エディが僕の服を整えながら言った。

「うん!楽しみ!」

実際、本当に楽しみだった。ゲームの舞台となる学園を、この目で見ることができるのだから。

今日はアシェルが通う学園の見学に、特別に同行させてもらえることになったのだ。長期休暇も終わりに近づいて、新学期の準備として学園を案内してもらえる。レオン兄様は初等部から通っているけれど、それぞれ校舎が分かれていて、中等部に行くのは初めてらしい。

「ノア、準備はできた?」

レオン兄様が部屋に入ってきた。いつものカジュアルな服ではなく、きちんとした学園の制服を着ている。

「はい、できました」

「よし。じゃあアシェルを迎えに行こう」

隣の部屋では、アシェルも準備を終えていた。

「おはよう、ノア。今日はよろしくね」

「おはようございます!アシェル兄様。こちらこそ、よろしくお願いします」

三人で大広間に向かうと、父様と母様が待っていた。

「みんな準備はいいかな?」

「はい、父様」

「それでは出発しよう」


****


馬車に揺られながら、王立魔法学園に向かう。

「新しい校舎か……」

レオン兄様がぽつりと呟く。

「僕も…少し緊張するな」

アシェルも少し青い顔をしている。レオン兄様は既に初等部に通っているけれど、新しい環境に緊張しているのだろう。

「大丈夫ですよ。レオン兄様がいれば、アシェル兄様もすぐに慣れます!」

僕が励ましの言葉をかけると、二人とも苦笑いした。

「ノアに励まされるなんて、情けないな」

「そうだね。弟に心配かけちゃだめだね」

実際は、僕の方がゲーム知識で学園のことを知っているんだけど、それは言えない。
それよりも最近、アシェルがレオン兄様に対して、敬語が抜けてきたことに喜びが隠せない。

「でも、やっぱり不安なのは確かだよ」

アシェルが正直な気持ちを口にする。

「学園で平民出身の僕が受け入れてもらえるか心配で」

「そんなこと気にする必要ないよ」

レオン兄様がアシェルの肩を叩く。

「僕が初等部でいろいろ見てきた限り、みんないい奴らだ。君は光魔法の才能があるし、何より人柄がいいんだから」

「レオン…ありがとう」

はわぁ……!兄2人のいちゃラブな様子も案外悪くない。レオン兄様だけ抜け駆けするのはダメだけど、多少のアドバンテージはあってもいいかもしれない。そう思って、今日だけ見逃すことにした。


****


学園に到着すると、その大きさに圧倒された。

白い石造りの美しい建物が立ち並び、広大な敷地には緑豊かな庭園も見える。まさにゲームで見た通りの光景だった。

「うわぁ…すごいですね」

アシェルが感嘆の声を上げている。

「ようこそ、王立魔法学園へ」

案内してくれるのは、中等部の副主任教師らしい中年の男性だった。

「教授をしているハワードです。レオン君は既にお馴染みですが、アシェル君とノアール君は初めてですね」

「よろしくお願いします」

父様が代表して挨拶する。

「アシェル君、春からはこちらの中等部でお世話になります。そして、ノアール君は再来年から初等部ですね」

「はい」

アシェルと僕が揃って返事をする。

「それでは、校内をご案内いたします。まずは初等部から見ていきましょうか。ノアール君のために」


****


まず案内されたのは、初等部の教室棟だった。

「こちらが初等部の一般教室です。基礎的な魔法理論や、一般教養を学びます」

窓の大きい明るい教室に、小さな机と椅子が並んでいる。僕が再来年使うことになる教室だ。

「レオン兄様はここで勉強してるんですね」

「そうだよ。春には中等部に上がるから、もうお別れだけどね」

レオン兄様が少し寂しそうに言った。

「魔法の実技はどこで行うんですか?」

レオン兄様が質問する。

「実技は専用の練習場で行います。後ほどご案内いたします」

続いて案内されたのは中等部の校舎だった。初等部よりも一回り大きく、より本格的な雰囲気がある。

「中等部では、より専門的な魔法を学びます。属性別のクラス分けもこの段階から始まります」

アシェルが興味深そうに質問した。

「属性別というのは?」

「火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、光魔法、闇魔法…それぞれに特化した授業があります。もちろん、基礎的な他属性の魔法も学びますが」

光魔法。アシェルの得意分野だ。きっと光魔法のクラスでは、彼の才能が開花することだろう。

「図書館もご案内しましょう」

図書館は想像以上に大きくて、本の数も膨大だった。天井まで続く本棚に、魔法に関する様々な書籍が並んでいる。

「うわあ…こんなにたくさんの本が」

僕が思わず声を上げると、ハワード教授が微笑んだ。

「読書がお好きですか?」

「はい!」

「それは素晴らしい。入学が楽しみですね」

そう言われて、改めて再来年から僕もここで学ぶんだと実感した。


****


最後に案内されたのは、高等部の校舎だった。

「高等部では、より実践的な魔法を学びます。将来の進路に合わせた専門教育も行います」

ここがゲームの主な舞台となる場所だ。アシェルが数年後に通うことになる校舎。

そして、様々な攻略キャラたちと出会う場所でもある。

立派な建物を見上げながら、複雑な気持ちになった。今はまだ平穏な日常が続いているけれど、いずれアシェルはここで様々な出来事に巻き込まれることになる。

「ノア?どうした?」

アシェル兄様が心配そうに声をかけてくる。

「あ、いえ…ただ、すごいなあと思って」

「確かにすごいね。僕たちもいずれはここで学ぶんだ」

アシェルの言葉に、胸が締め付けられる思いがした。

そうだ。いずれ彼はここで、ゲームの物語を体験することになる。恋愛だけでなく、時には危険な目にも遭うだろう。

その時、僕はどうすればいいんだろう。

「ノアール君?」

ハワード教授が僕に声をかけた。

「入学まで、まだ時間がありますが、なにか要望などはありませんか?」

「えーっと…」

突然質問されて、少し戸惑う。

「特に問題ないようですね。ノアール君は本が好きとのことなので、基礎的な魔法理論の本に目を通しておくとよいでしょう」

「はい、ありがとうございます」

「それと」

教授が少し声を潜めた。

「魔法の才能も大切ですが、何より大切なのは他者を思いやる心です。それがあれば、きっと素晴らしい魔法使いになれるでしょう」

「…はい」

教授の言葉が胸に響いた。思いやりの心。それは確かに大切なものだ。

そして、僕が今一番強く感じているのも、アシェルを思いやる気持ちだった。


****


帰りの馬車の中で、今日の感想を話し合った。

「すごい学園でしたね」

「本当に。あんなところで学べるなんて、光栄だよ」

アシェルが感激している。

「図書館の本、全部読みたいな」

レオン兄様が笑う。

「全部は無理だろう。卒業するまでの間に、できるだけたくさん読めばいいさ」

「そうですね」

僕も会話に加わる。

「僕も再来年からあそこに通うんですね。なんだか不思議な感じです」

「ノアなら大丈夫だよ」

アシェルが僕の頭を撫でる。

「優しくて頭もいいから、きっとみんなに愛される生徒になるよ」

アシェルにそう言われると、嬉しい反面、複雑な気持ちにもなる。

愛されるべきなのは、むしろ彼の方だ。そして実際、ゲーム内では多くの人に愛される存在になる。

でも、その愛が時として重荷になることもあった。

だから、僕はアシェルが望むことなら、なんだってしたい。魔法が上手に使えることを祈っておこう。剣術は…レオン兄様みたいにできるといいな、ははは……。もし、どっちもダメだったらめちゃくちゃ勉強しよう。アシェルを養っていけるくらいは稼ぎたい。たとえ小さな弟でも、できることはあるはずだから。

「ノア、また考え事?」

レオン兄様に指摘されて、現実に戻る。

「すみません。ちょっと…」

「学園のことを考えてたの?」

「はい、そんなところです」

「楽しみだね、再来年が」

アシェルの言葉に頷く。

「はい、楽しみです」

今はまだ答えが見つからないけれど、いつかきっと自分なりの道を見つけよう。


感想 0

あなたにおすすめの小説

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

学園ものに転生した悪役の男について

ひいきにみゐる
BL
タイトルの通りにございます。文才を褒められたことはないので、そういうつもりで見ていただけたらなと思います。

平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています

七瀬
BL
あらすじ 春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。 政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。 **** 初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️

BLゲームの主人公に憑依した弟×悪役令息兄

笹井凩
BL
「BLゲーの主人公に憑依したら、悪役令息の兄が不器用すぎてメロかった」……になる予定の第一話のようなものです。 復讐不向きな主人公×ツンツンクーデレな兄ちゃん 彼氏に遊ばれまくってきた主人公が彼氏の遊び相手に殺され、転生後、今度こそ性格が終わっている男共を粛清してやろうとするのに、情が湧いてなかなか上手くいかない。 そんな中、ゲームキャラで一番嫌いであったはずのゲスい悪役令息、今生では兄に当たる男ファルトの本性を知って愛情が芽生えてしまい——。 となるアレです。性癖。 何より、対人関係に恵まれなかったせいで歪んだ愛情を求め、与えてしまう二人が非常に好きなんですよね。 本当は義理の兄弟とかにしたほうが倫理観からすると良いのでしょうが、本能には抗えませんでした。 今日までの短編公募に間に合わなかったため供養。 プロットはあるので、ご好評でしたら続きも載せたいなと思っております。 性癖の近しい方に刺されば、非常に嬉しいです。 いいね、ご感想大変励みになります。ありがとうございます。

悪役令息シャルル様はドSな家から脱出したい

椿
BL
ドSな両親から生まれ、使用人がほぼ全員ドMなせいで、本人に特殊な嗜好はないにも関わらずSの振る舞いが発作のように出てしまう(不本意)シャルル。 その悪癖を正しく自覚し、学園でも息を潜めるように過ごしていた彼だが、ひょんなことからみんなのアイドルことミシェル(ドM)に懐かれてしまい、ついつい出てしまう暴言に周囲からの勘違いは加速。婚約者である王子の二コラにも「甘えるな」と冷たく突き放され、「このままなら婚約を破棄する」と言われてしまって……。 婚約破棄は…それだけは困る!!王子との、ニコラとの結婚だけが、俺があのドSな実家から安全に抜け出すことができる唯一の希望なのに!! 婚約破棄、もとい安全な家出計画の破綻を回避するために、SとかMとかに囲まれてる悪役令息(勘違い)受けが頑張る話。 攻めズ ノーマルなクール王子 ドMぶりっ子 ドS従者 × Sムーブに悩むツッコミぼっち受け 作者はSMについて無知です。温かい目で見てください。

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

春野くんち―僕の日常は、過保護な兄弟たちに囲まれている―

猫に恋するワサビ菜
BL
春野家の朝は、いつも賑やかで少しだけ過保護。 穏やかで包容力のある長男・千隼。 明るくチャラめだが独占欲を隠さない次男・蓮。 家事万能でツンデレ気味な三男・凪。 素直になれないクールな末っ子・琉生。 そして、四人の兄弟から猫のように可愛がられている四男の乃空。 自由奔放な乃空の振る舞いに、兄たちは呆れながらも、とろけるような笑顔で彼を甘やかす。