大御所作家に「あとがきは面白かった」と言われた俺の末路

カイシャイン36

文字の大きさ
1 / 1

大御所作家に「あとがきは面白かった」と言われた俺の末路

しおりを挟む
 これはデビューする少し前のことである。

 当時の私は新人賞を獲ったものの改稿に次ぐ改稿で本当に本が出せるのかと半信半疑の状態だった。

 長い月日を経て、ようやく努力が実を結び「作家未満」のふわふわした状態から脱却できると大変喜んだ記憶がある。


「じゃあ、あとがきや著者プロフをお願いします」
「了解しました!」


 改稿の重圧から解放された身としては「自由に書ける千文字」は全く苦では無い、「ボケ倒してしまえ」とネタに走りまくったあとがきを一気に書き上げ提出した。

 そのあとがきだが、偶然にも大御所作家さんが目にする機会があったらしい。

 担当編集さん曰く、大御所作家さんは私の作品に少し興味があったらしく「どんな作品なんですか?」と聞いてきたらしい。

 その時、担当さんは私のあとがきを手にしていたらしく「こんな作風です」と浮かれてボケ倒したあとがきを渡したとのこと。

 そして、私が世に作品を出し初めての受賞パーティーで大御所作家さんは会うや否や開口一番こう言った。


「いやぁ、個人的に本文よりあとがきの方が面白かったです!」


 多分大御所作家さんもネタで言ったのだろう。本当なら「ちょっと先生! ヒドいっす!」みたいな若手芸人張りのリアクションを期待していたに違いない。

 だが、この一言に私は――


「マジすか!? うれしー!」


 シンプルにめちゃくちゃ喜んだ。

 単純に大好きな作家さんから「面白い」と一言もらえたのが嬉しすぎて嬉しすぎてたまらなかったのだ。

 「本文より」の部分はコンマ数秒ですでに忘却の彼方。

 思っていたリアクションと違い大御所作家さんはちょっと驚いていた……ような気がする。
 細かい苦言は吹っ飛び、憧れの作家さんに褒められたという事実だけが記憶に残る「ポジティブなキングクリムゾン」が発動したというわけだ。

 改稿ばかりで自信を無くしていた私が、大御所作家さんの「面白い」の一言に救われたのは事実。その後の作家生活における自信と原動力になったことはいうまでもない。

 だが冷静に考えれば、もっとその時真摯に受け止めていたら今の体たらくは無かったんじゃないかと。当時の浮かれた自分を小一時間問い詰めたくなる。

 そう……私はその日から本文よりあとがきに注力するようになったのは否めない。

 大御所に褒められたという自信はガソリンとなり体中を巡りだす。正直、本文より筆が乗っていた。

 あとがきだけで十万字……文庫一冊分いくんじゃないかというくらいの勢い。おかげで何冊分かはあとがきに困らずにいた……小説本文は稚拙ゆえ困りに困ったが。

 そんなわけで本文よりあとがきに自信を持ち、楽しくなった私は明後日の方向に努力するようになる。

 具体的にはラノベ作家なのにラノベそっちのけでエッセイなどを読み漁ったり、そっち方面ばかり研究し始めた。

 そしてあとがきだけに留まらず著者プロフの方も「ボケしろ(ボケる機会、または余地のこと)」と認識し、四、五行のスペースでどうボケるか一昼夜考える始末であった。

 そんな私の成果(末路とも言う)は旧ツイッターや読メ、アマゾンレビューなどで如実に現れることになる。

  以下、その一例をちょっとぼかして紹介しよう。




「著者プロフが面白かったので購入。絶対面白いと思ったけど本文はいまいちだった」


「あとがきが面白かったので購入しました。本文は普通だったけれども――」


「あとがき面白かったけど本文つまらなかった、サヨナラ」


 ありがたい事にあとがきや著者プロフを読んで手に取ってくれた方が想像以上に居たらしく、まぁまぁ売上に貢献しているようだ。

 ただ、本文はいまいちという口にする方が多いこと多いこと……私の努力は文字通り「本末転倒」なのは否めない事実である。

 最後に一言、言わせて欲しい「さすが大御所様、見る目ある」……と。

 あらすじの方が面白い作家……その慧眼に大御所作家たる所以を垣間見て、ただただ敬服する次第です。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

投稿インセンティブで月額23万円を稼いだ方法。

克全
エッセイ・ノンフィクション
「カクヨム」にも投稿しています。

カクヨムでアカウント抹消されました。

たかつき
エッセイ・ノンフィクション
カクヨムでアカウント抹消された話。

アルファポリスの禁止事項追加の件

黒いテレキャス
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスガイドライン禁止事項が追加されるんでガクブル

アルファポリスとカクヨムってどっちが稼げるの?

無責任
エッセイ・ノンフィクション
基本的にはアルファポリスとカクヨムで執筆活動をしています。 どっちが稼げるのだろう? いろんな方の想いがあるのかと・・・。 2021年4月からカクヨムで、2021年5月からアルファポリスで執筆を開始しました。 あくまで、僕の場合ですが、実データを元に・・・。

100000累計pt突破!アルファポリスの収益 確定スコア 見込みスコアについて

ちゃぼ茶
エッセイ・ノンフィクション
皆様が気になる(ちゃぼ茶も)収益や確定スコア、見込みスコアについてわかる範囲、推測や経験談も含めて記してみました。参考になれればと思います。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

真面目な女性教師が眼鏡を掛けて誘惑してきた

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
仲良くしていた女性達が俺にだけ見せてくれた最も可愛い瞬間のほっこり実話です

幼馴染に告白したら、交際契約書にサインを求められた件。クーリングオフは可能らしいけど、そんなつもりはない。

久野真一
青春
 羽多野幸久(はたのゆきひさ)は成績そこそこだけど、運動などそれ以外全般が優秀な高校二年生。  そんな彼が最近考えるのは想い人の、湯川雅(ゆかわみやび)。異常な頭の良さで「博士」のあだ名で呼ばれる才媛。  彼はある日、勇気を出して雅に告白したのだが―  「交際してくれるなら、この契約書にサインして欲しいの」とずれた返事がかえってきたのだった。  幸久は呆れつつも契約書を読むのだが、そこに書かれていたのは予想と少し違った、想いの籠もった、  ある意味ラブレターのような代物で―  彼女を想い続けた男の子と頭がいいけどどこかずれた思考を持つ彼女の、ちょっと変な、でもほっとする恋模様をお届けします。  全三話構成です。

処理中です...