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小説を音声入力で楽しようとした俺の末路
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この職業に着くと人との会話が極端に減ってしまう――読者の皆様は想像に難くはないだろう。
とにかく喋る機会が少ない。
「コーヒー一つ」「コーヒーのおかわりを」「レシート要ります」が一日で発した言葉が全てだった日もあった。それも複数回。
人としての「何か」が少しずつ欠落していっているような気がしてならない……そんな日々を過ごしていた。
「このままじゃ、いけないな」
たまに作家仲間と食事に行くが、昔と比べ明らかに喉の消耗具合が尋常じゃない。
元はお喋りなのに喉が着いて来れず、食事の後半には声枯れしてしまうこともしばしば。
「何か喋る趣味を見つけるか……」
とはいえ執筆の傍ら、人間との関わる趣味を始めるのは意外と億劫である。
フットワークの軽さと頭の軽さに定評がある私だが、これにはなかなか重い腰を上げることができなかった。
そもそも趣味がないから小説書き始めたくらい無趣味だというのに簡単に見つかったら世話は無い。
さらには何事にもハマりやすい性格、楽し「過ぎる」趣味を見つけてしまったら仕事に支障を来し、本末転倒になってしまう。自分でもワガママな男だと思うホントに。
「どうにか執筆の妨げにならず適度にお喋りができる何かはないか……あっ」
そこで私はパソコンの「ある機能」を思い出した。
「音声入力……これで執筆すればいいじゃん」
そう、この時代には音声入力というのが存在している。
つまり声を出しながら小説が書けるのだ。
「発声と執筆……一石二鳥じゃね」
そう思った私は早速実行に移すことにした。
――これは私の音声入力で楽しようとした末路、そして音声入力で小説を書く際に気をつける「あれやこれや」をまとめたものである。
創作論(笑)と思って笑って頂けたら幸いです。
早速音声入力に取り組もうとしたのだが、基本やることは変わらない。
プロットを作成しノートに下書きし、それを声に発して音声入力するだけ。
だが、声を発するというのは、かなりいい気分転換になる。
キーボードに指を向けるより机に足を上げ、ノートを片手に画面に向かってしゃべるだけでも随分と違う。これだけでもやる価値はあると思う。
メリットはそれだけではない。
思いついたことをその場で口にするだけで文章ができる、これがデカい。
脳に浮かんだ言葉を脊髄反射で発するだけで文章が生み出されていく様は爽快である。
もちろん執筆スピードは向上。
一日一万字、平気で打ち込むことができるので、すごい仕事をした気になれる。精神衛生面でとても良いし充実した一日を終えぐっすり眠れるのだ。
……ただ、良い事ばかりではない。
もちろんあります、デメリット。
まず動画や音楽を聞きながら執筆する際は意識しないといけない。勝手に文章に割り込まれ前後の繋がりがチンプンカンプンになるのだ。
特にゆっくりボイスといった「合成音声」やアナウンサーさんがハッキリ喋るニュースなど聞く際はヘッドホンなどは必須。
私の場合、奇しくも松本○志騒動があった頃にニュースを聞きながら音声入力をしていた、結果ファンタジーの世界で急に松本○志が文章に割り込んでくる異常事態が発生。
空を見上げ木々の梢に松本○志の音が――
モンスターの松本○志の性加害問題大群に取り囲まれ――
こんな感じで隙あらば松本○志が現れ雰囲気がぶち壊しになってしまった。以来ヘッドホンは常に付けて音声入力に勤しんでいる。
余談だが「こちら葛飾区亀有公園前派出」で音声入力の回があったが、外で工事があって騒音が入力されるという話があった。あの時代からそういう弊害をネタにしていたのだから流石の一言である。
また音声入力自体にもコツが必要で難しい。
自分の作品ゆえ、つい感情をこめて声に出してしまう事もあるが、そうすると上手に読み込んでくれない。
少し感情を抑えかつハッキリと喋る事が大事である。
参考までに聞き流してほしいが、色々試した結果、私の場合ガンダムの登場人物「シャア」のモノマネをするとかなり正確に読み取ってくれた。
そんなわけで私は音声入力をすればするほどシャアのモノマネが上手くなっていった。
これは、ある意味メリットかも知れない……話を戻そうデメリットだ。
一番苦痛なのは「入力後の手直しが段違いで多い」これに尽きるだろう。
まず「カギ括弧」がないので地の文と会話の区別に苦労する。
さらに勝手に句読点打たれるし……何より溢れる誤字脱字。特に固有名詞なんて誤字のオンパレードだ。
ケイトという名前が「毛糸」。
カミラという名前は「カメラ」「神」など。
アルフレッドにいたっては三回に一回は「パンフレット」に変わっており、急にパンフレットが無双する様子は一周回って斬新だった。
さらに嫌がらせレベルの誤字もある。
例えば「宝箱」と音声入力したら、ローマ字で「TAKARABAKO」と記された時は「なんだ? 何の気を遣ったんだ? 宝箱ってEXILEのメンバーにいるの?」と思わずツッコんでしまった。あとエグザイルと発したらしっかり「EXILE」と読み取るのも憎らしい。
そして急に伏せ字になることが多発。
初めて遭遇した時は「なんだこりゃ」と思ったら、どうやら下品な言葉に反応してわざわざ伏字にしてくれるらしい。
よく遭遇するのは二文字の「クソ」だ。
例えば、
「全く、そんなこと――」
とか、
「彼は驚く、そして――」
といった感じで、自然に地の文やセリフに紛れている「クソ」に反応し、わざわざ過剰反応してしてくれるのだ。
たまに四文字で
「彼女はその言葉「で、カチン」ときた――」
なんて一文にも反応し伏字にする様は「なんだコイツ耳年増か」と思わずツッコんでしまった。
そのくせ何故か「ポコ○ン」は普通にスルーする。
「愛すべきポンコツです」と言ったのを私の発音が悪かったのか「愛すべきポ○チンです」を間違って読み取られた際は「お前! クソより真っ先に伏せ字にする案件だろ!」と声を大にしてツッコんでしまったくらいだ。
とまぁ、こんな感じで手直しの量が半端じゃない。
ぶっちゃけ完成稿に至る時間は普通に書くよりややマイナスだろう。
無料の音声入力ソフトを使っているので、精度が低いからかも知れないが……使えないワケでは無いし(ネタを提供してくれるし)。
それに気分転換にはなる、コレが一番大きいのだ。それに比べたら上記のデメリットは些細な事と言い切れる。正直、精神衛生面を整えるのが作家には一番大事だと思う。
ただまぁ「か、勘違いしないでよね。アンタのことなんて好きじゃないんだから」的な台詞をシャアのモノマネをしながらパソコンに向かって呟いているオッサンの姿をご近所の方に見られていたとしたら……正直些細の一言では済ませられないかも知れない。
とにかく喋る機会が少ない。
「コーヒー一つ」「コーヒーのおかわりを」「レシート要ります」が一日で発した言葉が全てだった日もあった。それも複数回。
人としての「何か」が少しずつ欠落していっているような気がしてならない……そんな日々を過ごしていた。
「このままじゃ、いけないな」
たまに作家仲間と食事に行くが、昔と比べ明らかに喉の消耗具合が尋常じゃない。
元はお喋りなのに喉が着いて来れず、食事の後半には声枯れしてしまうこともしばしば。
「何か喋る趣味を見つけるか……」
とはいえ執筆の傍ら、人間との関わる趣味を始めるのは意外と億劫である。
フットワークの軽さと頭の軽さに定評がある私だが、これにはなかなか重い腰を上げることができなかった。
そもそも趣味がないから小説書き始めたくらい無趣味だというのに簡単に見つかったら世話は無い。
さらには何事にもハマりやすい性格、楽し「過ぎる」趣味を見つけてしまったら仕事に支障を来し、本末転倒になってしまう。自分でもワガママな男だと思うホントに。
「どうにか執筆の妨げにならず適度にお喋りができる何かはないか……あっ」
そこで私はパソコンの「ある機能」を思い出した。
「音声入力……これで執筆すればいいじゃん」
そう、この時代には音声入力というのが存在している。
つまり声を出しながら小説が書けるのだ。
「発声と執筆……一石二鳥じゃね」
そう思った私は早速実行に移すことにした。
――これは私の音声入力で楽しようとした末路、そして音声入力で小説を書く際に気をつける「あれやこれや」をまとめたものである。
創作論(笑)と思って笑って頂けたら幸いです。
早速音声入力に取り組もうとしたのだが、基本やることは変わらない。
プロットを作成しノートに下書きし、それを声に発して音声入力するだけ。
だが、声を発するというのは、かなりいい気分転換になる。
キーボードに指を向けるより机に足を上げ、ノートを片手に画面に向かってしゃべるだけでも随分と違う。これだけでもやる価値はあると思う。
メリットはそれだけではない。
思いついたことをその場で口にするだけで文章ができる、これがデカい。
脳に浮かんだ言葉を脊髄反射で発するだけで文章が生み出されていく様は爽快である。
もちろん執筆スピードは向上。
一日一万字、平気で打ち込むことができるので、すごい仕事をした気になれる。精神衛生面でとても良いし充実した一日を終えぐっすり眠れるのだ。
……ただ、良い事ばかりではない。
もちろんあります、デメリット。
まず動画や音楽を聞きながら執筆する際は意識しないといけない。勝手に文章に割り込まれ前後の繋がりがチンプンカンプンになるのだ。
特にゆっくりボイスといった「合成音声」やアナウンサーさんがハッキリ喋るニュースなど聞く際はヘッドホンなどは必須。
私の場合、奇しくも松本○志騒動があった頃にニュースを聞きながら音声入力をしていた、結果ファンタジーの世界で急に松本○志が文章に割り込んでくる異常事態が発生。
空を見上げ木々の梢に松本○志の音が――
モンスターの松本○志の性加害問題大群に取り囲まれ――
こんな感じで隙あらば松本○志が現れ雰囲気がぶち壊しになってしまった。以来ヘッドホンは常に付けて音声入力に勤しんでいる。
余談だが「こちら葛飾区亀有公園前派出」で音声入力の回があったが、外で工事があって騒音が入力されるという話があった。あの時代からそういう弊害をネタにしていたのだから流石の一言である。
また音声入力自体にもコツが必要で難しい。
自分の作品ゆえ、つい感情をこめて声に出してしまう事もあるが、そうすると上手に読み込んでくれない。
少し感情を抑えかつハッキリと喋る事が大事である。
参考までに聞き流してほしいが、色々試した結果、私の場合ガンダムの登場人物「シャア」のモノマネをするとかなり正確に読み取ってくれた。
そんなわけで私は音声入力をすればするほどシャアのモノマネが上手くなっていった。
これは、ある意味メリットかも知れない……話を戻そうデメリットだ。
一番苦痛なのは「入力後の手直しが段違いで多い」これに尽きるだろう。
まず「カギ括弧」がないので地の文と会話の区別に苦労する。
さらに勝手に句読点打たれるし……何より溢れる誤字脱字。特に固有名詞なんて誤字のオンパレードだ。
ケイトという名前が「毛糸」。
カミラという名前は「カメラ」「神」など。
アルフレッドにいたっては三回に一回は「パンフレット」に変わっており、急にパンフレットが無双する様子は一周回って斬新だった。
さらに嫌がらせレベルの誤字もある。
例えば「宝箱」と音声入力したら、ローマ字で「TAKARABAKO」と記された時は「なんだ? 何の気を遣ったんだ? 宝箱ってEXILEのメンバーにいるの?」と思わずツッコんでしまった。あとエグザイルと発したらしっかり「EXILE」と読み取るのも憎らしい。
そして急に伏せ字になることが多発。
初めて遭遇した時は「なんだこりゃ」と思ったら、どうやら下品な言葉に反応してわざわざ伏字にしてくれるらしい。
よく遭遇するのは二文字の「クソ」だ。
例えば、
「全く、そんなこと――」
とか、
「彼は驚く、そして――」
といった感じで、自然に地の文やセリフに紛れている「クソ」に反応し、わざわざ過剰反応してしてくれるのだ。
たまに四文字で
「彼女はその言葉「で、カチン」ときた――」
なんて一文にも反応し伏字にする様は「なんだコイツ耳年増か」と思わずツッコんでしまった。
そのくせ何故か「ポコ○ン」は普通にスルーする。
「愛すべきポンコツです」と言ったのを私の発音が悪かったのか「愛すべきポ○チンです」を間違って読み取られた際は「お前! クソより真っ先に伏せ字にする案件だろ!」と声を大にしてツッコんでしまったくらいだ。
とまぁ、こんな感じで手直しの量が半端じゃない。
ぶっちゃけ完成稿に至る時間は普通に書くよりややマイナスだろう。
無料の音声入力ソフトを使っているので、精度が低いからかも知れないが……使えないワケでは無いし(ネタを提供してくれるし)。
それに気分転換にはなる、コレが一番大きいのだ。それに比べたら上記のデメリットは些細な事と言い切れる。正直、精神衛生面を整えるのが作家には一番大事だと思う。
ただまぁ「か、勘違いしないでよね。アンタのことなんて好きじゃないんだから」的な台詞をシャアのモノマネをしながらパソコンに向かって呟いているオッサンの姿をご近所の方に見られていたとしたら……正直些細の一言では済ませられないかも知れない。
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