かつて最強だった俺がゼロからやり直した世界は、魔法が存在しない世界だった件。

水無月悪い人

文字の大きさ
4 / 14
第一章 Dead or Alive

3.サポーター

しおりを挟む
 不思議な感覚だ。銀髪巨乳美人の先生に殺されたなんてそうあることじゃない。誰に自慢しようか。でも今の俺じゃあ自慢をする体も相手も居ない。
 宙に浮いているような浮遊感。そうか、美人に殺されて俺は浮かれているのか。でもなんだろう。浮かれていると言うより、浮かされているような……。

「ん……あれ…………なんだ」

 天国か? 天国にしては妙に発展してんなぁ。なんか高層ビルとか見覚えのある看板まで……ん? 看板? ビル?

「ってこの天国俺の生まれ故郷リスペクトし過ぎだろっ!」
「……あら、お目覚めですか。おはようございます」

 聞き覚えのある声。つい最近……というより、ついさっきまで聞いていた声……!

「せん――……あれ? 人違いか」

 てっきり無理心中であの美人先生も同じ死後の世界にやってきたのかと思った。でも、違った。声は似ていても、容姿が違う。服装も。強いて言うなら銀髪という点しか共通点がない。まるで姫様のような豪華な純白のドレスを身に纏っている。

「リク」
「……あ、はい」

 つい反射神経で返事してしまった。そういえばこんな事もあったような……。

「私です、セルス・ヒルテです」

 セルス……ヒルテ……?

「え? いやでも、俺は死んで……」
「それよりも大丈夫ですか?」
「何がですか?」
「この高さです」

 高さ? そういえば謎の浮遊感、まるで浮いているかのような――

「――ってほんとに浮いてるんですけどーー!? ちょっと先生ぇっ!?」
「ヒルテで大丈夫です」
「いや、今はそんなことより……うっやばいです。吐きそうです」

 俺はセルス・ヒルテと名乗るこの人を無意識に先生と呼んでいた。

「目的地はあと少しです、我慢して下さい」

 我慢って。俺は船酔いもするし車酔いもする超激弱三半規管の持ち主なんだぞ。加えて高所恐怖症だ。まだ何かに乗っているのならまだしも、宙に浮いている。……あ、やばい吐く。

「先生すみません、先に謝っときます」
「え?」

 それから俺は空の上から汚いレインボーを撒き散らした。

 ***

「……全く、我慢して下さいと言ったのに」
「すんません。……あの、それよりここは?」

 日本だと思っていたが、ゲロを撒き散らしながら見るその光景は日本に似て非なる世界だった。異世界というより、外国に近い。
 しかし、俺の知らない人種がそこら中を歩いている。人間じゃない獣、獣人というのだろうか。
 他にも、トカゲのような尻尾を生やした奴や、狐耳のお姉さん……とにかく、俺のような人間以外の人種がうじゃうじゃいやがる。

「見たこともない、って顔ですね」
「当たり前ですよ、こんな世界俺は知りません。知っていたらゲロなんて吐きません」
「それは関係ないでしょう」

 ゲロを吐いたお陰なのか、俺は今凄く冷静だ。死んだかと思えば見知らぬ世界に、なんて展開は普通なら動揺するのが当たり前なのだろう。でも、自分でも不思議なくらいに冷静だ。冷静過ぎてもはや懐かしさすら感じる。初めて見る光景の筈なのに。

「ここは『アルフォア』。日本人が収める国です」
「『アルフォア』……?」

 日本人、居るのか。いや、まぁ俺も日本人だし居ても不思議ではないか。にしても日本人が王様ねぇ。
 どうりで日本に似ている訳だ。つまりここは日本でもましてや外国でもない、日本に似た異世界ってことか。

「……どうかしましたか?」
「いやぁ俺、なんでこんな所に連れて来られたのかなぁって。正直、俺はもう自分の世界で十分満足していましたよ」

 DTTという不名誉なチーム所属であること以外は。

「……自分の世界、ですか……実は、助けてほしいのです」
「先生人の話聞いてます? よく他人から話を聞けって言われません?」
「いえ、全く」
「あっそうですか……」

 甘やかされて生きてきたんだろうな。気品が違うし。

「えっと、助けて欲しい、ですか?」

 それはこっちのセリフなんだが。良くも知らない世界に勝手に連れてこられて……しかも殺された相手に。
 助けてほしかったよ。もう遅いけど。

「リク、あなたが考えている通りここは日本ではありません。『アルフォア』なんて国、地球には存在しませんから」
「じゃあ本当に異世界なんですねここ」
「……異世界、そうですね。言ってしまえば異世界なのでしょう」

 なんだよ、その回りくどい言い方。この先生なんか隠してやがるな?

「まぁ助けるのは良いですよ? 何かは知りませんが。でも条件があります」
「……聞きましょう」
「俺をDTTのメンバーから卒業させて下さい! お願いします!」

 俺は渾身の土下座を披露した。周囲の亜人達からは注目を浴びている。

「ちょっと待って下さい! こんな所で何を――」
「いいえ、待ちません! 俺はこの不名誉なDTTを早く抜けたいんです! だからそのお手伝いをしていただけるなら先生の話を受けましょう!」

 こんなところでもまだ俺の中では、DTTの一員だった。……親友の影響か。

「……分かりました」
「ホントですか!?」
「はい、そのDTTというのが何かは分かりませんが事態は一刻を争うのでその条件、受けましょう」

 お、おお! やったぞ! これでついに俺も卒業出来る! ……悪いな親友、俺はお前より先にDTTをいち早く抜けさせてもらうぜ。

「では、条件成立ということでいいでしょうか?」
「是非もなし!」
「そうですか、では付いてきて下さい」
「はい!」

 もうするのか!? しちゃうのか!? どこに向かうんですかなんて野暮な事は聞かないでおこう。
 男女が二人っきりで向かう場所なんて決まってる。そう、それこそラブホテ――

「着きました」
「ル…………にしては大きいですね。ここは一体?」
「私のホームです」

 あ、ホームね。家でするタイプね。にしても大きすぎじゃね? 家ってか城に近いんだが。

「……あの、先生ってもしかしてどこかのお嬢様ですか?」
「そうですね。一応お金はある方だと思います」

 いやいや、お金はある方じゃねぇよ。ありすぎるよ。この異世界の金の価値なんて知らないが、これだけは言える。
 絶対にこの先生金持ちだ。しかもそれを自覚していない天然タイプ。

(天然先生か……アリだな)

「ではどうぞ中へ」
「あの……中に誰か居ますか?」
「はい、父が」
「ですよねぇ……」

 まぁこんなデカい城にお嬢様一人で住んでいるわけ無いか。大方、メイドとか執事の使用人なんかも居るんだろう。
 メイドは大歓迎だが執事、お前はダメだ。先生の貞操を守るためなら例えそれが執事であろうと俺は戦って見せるぞ。

 なんて考えていると目の前に門番らしき人物が立っていた。

「これはセルス様、またお早い帰還でありますな」
「はい、すぐに見つけましたので」
「……我にはセルス様の目的が何なのかは存じ上げませんが、満足そうでなによりですな」

(門番のやつ、やけに先生と馴れ馴れしいな)

 試しにメンチを切ったらその倍の鋭い視線で返され、つい萎縮してしまった。

 (こわっ! なんなのこの人!)

 ギロッ! なんて効果音が聞こえてくるくらい凄まじく鋭い目線だ……。

「……ところでその狼のような目をしている少年は?」
「彼が私のサポーターです」

 狼だと? よし、こいつの顔は覚えた。鉄のように固そうなモノで頭を覆い隠し銀の鎧を着た……って顔見えねぇじゃん。セコイなコイツ! 俺だけ覚えられて不公平だろ! よし、ここは出来る男だとアピっとくか。

「どうもご紹介に預かりました、セルス様のサポーターです。以後お見知り置きを……チラ」
「う、うむ」

 へっ! どうだ! 俺のこの丁寧なお辞儀と肩書きを! 流石の門番様もビビったか! この門番風情が! サポーター舐めてんじゃねぇぞ!

 …………ところでサポーターってなんだ?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

処理中です...