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7月7日、星祭りの日。
祭りのため、ガヤガヤと騒がしい通りを、少年が一人の少女を連れて歩いていた。
金髪に青い目の少年、地球は、様々な露店を前にワクワクしているようだが、その後をついて歩く、銀髪に銀目の少女、月は、地球が他人とぶつからないように気を遣っているのか、道端に出ている露店に目を向ける余裕はなさそうだ。
たまに月が地球を止め、お小言を言っているようだが、浮かれた祭りの雰囲気に流されているためか、いつもなら素直な地球は月の言うことをあまり聞いていないようだ。すぐに近くの露店に気を取られている。
何を見つけたのか、地球が駆け出した。月も慌てて後を追ったが、地球はすぐ人混みに紛れてしまい、月は地球を見失った。
案の定地球はすぐに出て来たが、勝手に消えるな!と、憤る月に怒られてしまった。
「月、ちょっと後ろ向いて」
先程のお小言が再開される前にどうにかして黙らせようと思った地球は、話を変えようとしたが、その意図は月にすぐ見抜かれた。
「話を変えようという魂胆ですか?」
体感温度が3度近く下がったかのように感じられたが、もう一度頼むと、「はぁ……」と、ため息交じりに言いながら言われたとおり後ろを向いた。
地球は、月の白い髪ひもによって一つにまとめられた髪に、買ったばかりの簪を挿す。金箔の貼られた柄に、真珠が一粒という、地味なものだが、髪などは仕方ないとして、服まで白い物を着、全身白づくめになっている月に、金色の簪は華やかな印象を持たせている。
ただ。
惑星と衛星という関係上、いつも一緒にいるとはいえ、女の子である月にアクセサリーである簪を渡したことが急に恥ずかしくなった地球は、照れ隠しのために前も見ず先先と進み、人にぶつかった。
「あっすみません!」
「あ?何だよガキィ!」
慌てて平謝りするが、ぶつかられた相手は大層ご立腹な様子で、地球に突っかかってきた。
「ごっごめんなさいっ」
衿を捕まれ、持ち上げられるような形で睨まれるが、地球は謝ることしか出来ない。
すると、
周りの温度が一気に零下まで下がった。
「離して頂けませんか?」
ぴんと張っていながら、かなりの毒を含んだ声があたりに響いた。地球の衿をつかむ腕を、ミシミシと音がしそうな程に強く握っているのは、冷気をまとった月だった。
「す…、すいませんでした」
月のまとう冷たい空気におされ、憤っていた小惑星は冷や汗を掻きながら地球をつかんでいた手を離した。
「まったく。前をよく見ないからです」
取り巻き達と逃げてゆく小惑星を見送りながら、先程のお小言が立証されたとでも言いたげに、月が言った。
「地球さん!月さん!」
元気の良い声があたりに響いた。先程の月の冷たい空気をゆっくりと溶かすようなほんわかとした声の聞こえてくる方を見ると、2人より少し年下の、淡い金髪の少年、冥王星が手を振りながら2人のほうへ駆け寄ってきていた。
「さっきはどうしたんですか?小惑星が4人ほど雷の白猫がどうのこうの言ってましたけど。また絡まれたんですか?」
それを聞いて月の方を見ると、どこか決まり悪さのようなものを感じているかのような表情作っていた。『雷の白猫』は、本人の意思とは無関係に通っている、月の2つ名だ。雷を連想させる速さで動き、猫のように身軽なことから付けられた名前らしい。
「あなたが一人で居ることは珍しいですね」
「そうだよ天と海はどうしたの?」
決まり悪さをどうにかしようとするかのように月が冥王星に聞いた。天と海というのは、冥王星の兄である双子、天王星と海王星の通称だ。
「あっそうだった!ルナさんが呼んでこいって。他の皆はもう集合してるよ」
言うなり振り返り、丘の上にある神殿を目指して駆け出す冥王星の後を、地球も追って駆け出そうとしたが、すぐに月に止められ、焦る気持ちを抑えながら、神殿を目指して歩き始めた。
祭りのため、ガヤガヤと騒がしい通りを、少年が一人の少女を連れて歩いていた。
金髪に青い目の少年、地球は、様々な露店を前にワクワクしているようだが、その後をついて歩く、銀髪に銀目の少女、月は、地球が他人とぶつからないように気を遣っているのか、道端に出ている露店に目を向ける余裕はなさそうだ。
たまに月が地球を止め、お小言を言っているようだが、浮かれた祭りの雰囲気に流されているためか、いつもなら素直な地球は月の言うことをあまり聞いていないようだ。すぐに近くの露店に気を取られている。
何を見つけたのか、地球が駆け出した。月も慌てて後を追ったが、地球はすぐ人混みに紛れてしまい、月は地球を見失った。
案の定地球はすぐに出て来たが、勝手に消えるな!と、憤る月に怒られてしまった。
「月、ちょっと後ろ向いて」
先程のお小言が再開される前にどうにかして黙らせようと思った地球は、話を変えようとしたが、その意図は月にすぐ見抜かれた。
「話を変えようという魂胆ですか?」
体感温度が3度近く下がったかのように感じられたが、もう一度頼むと、「はぁ……」と、ため息交じりに言いながら言われたとおり後ろを向いた。
地球は、月の白い髪ひもによって一つにまとめられた髪に、買ったばかりの簪を挿す。金箔の貼られた柄に、真珠が一粒という、地味なものだが、髪などは仕方ないとして、服まで白い物を着、全身白づくめになっている月に、金色の簪は華やかな印象を持たせている。
ただ。
惑星と衛星という関係上、いつも一緒にいるとはいえ、女の子である月にアクセサリーである簪を渡したことが急に恥ずかしくなった地球は、照れ隠しのために前も見ず先先と進み、人にぶつかった。
「あっすみません!」
「あ?何だよガキィ!」
慌てて平謝りするが、ぶつかられた相手は大層ご立腹な様子で、地球に突っかかってきた。
「ごっごめんなさいっ」
衿を捕まれ、持ち上げられるような形で睨まれるが、地球は謝ることしか出来ない。
すると、
周りの温度が一気に零下まで下がった。
「離して頂けませんか?」
ぴんと張っていながら、かなりの毒を含んだ声があたりに響いた。地球の衿をつかむ腕を、ミシミシと音がしそうな程に強く握っているのは、冷気をまとった月だった。
「す…、すいませんでした」
月のまとう冷たい空気におされ、憤っていた小惑星は冷や汗を掻きながら地球をつかんでいた手を離した。
「まったく。前をよく見ないからです」
取り巻き達と逃げてゆく小惑星を見送りながら、先程のお小言が立証されたとでも言いたげに、月が言った。
「地球さん!月さん!」
元気の良い声があたりに響いた。先程の月の冷たい空気をゆっくりと溶かすようなほんわかとした声の聞こえてくる方を見ると、2人より少し年下の、淡い金髪の少年、冥王星が手を振りながら2人のほうへ駆け寄ってきていた。
「さっきはどうしたんですか?小惑星が4人ほど雷の白猫がどうのこうの言ってましたけど。また絡まれたんですか?」
それを聞いて月の方を見ると、どこか決まり悪さのようなものを感じているかのような表情作っていた。『雷の白猫』は、本人の意思とは無関係に通っている、月の2つ名だ。雷を連想させる速さで動き、猫のように身軽なことから付けられた名前らしい。
「あなたが一人で居ることは珍しいですね」
「そうだよ天と海はどうしたの?」
決まり悪さをどうにかしようとするかのように月が冥王星に聞いた。天と海というのは、冥王星の兄である双子、天王星と海王星の通称だ。
「あっそうだった!ルナさんが呼んでこいって。他の皆はもう集合してるよ」
言うなり振り返り、丘の上にある神殿を目指して駆け出す冥王星の後を、地球も追って駆け出そうとしたが、すぐに月に止められ、焦る気持ちを抑えながら、神殿を目指して歩き始めた。
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