迷宮の星

リーア

文字の大きさ
上 下
31 / 39

31話

しおりを挟む
 双方が地面を蹴ってお互いに斬りかかった。

 重力を利用し、真上から斬りかかるのは、氷の刃を振る海王星。

 対して、月は体をねじることで生み出される力を利用し、後ろに引いた刀を横なぎに振る。

 こうなれば、後は一瞬だ。一瞬の差で勝敗が決まる。

 わずかに発光する刃は、振り下ろされた刃を握る腕に切りつけた。

 月にしては珍しい技の使い方だった。
 攻撃するとき、技を繰り出すときに出来るリズムを一瞬ずらし、相手の隙を誘い出す。表れた隙をうまく突くことができれば、簡単に相手を倒せるのだが、リズムをずらすテンポを間違えれば、自分が取り返しの付かない隙をさらすことになる。

 月がこのような欠けに似た行為に出たのは、海王星と、強さが対等だからだろう。あのまま切り結んでいたら、先に疲労するのは月だった。

 それでも月の方も完全に無事というわけではないようだ。片膝をついて、荒い息を整えている。

 そんな月の様子を尻目に地球は地面、壁、天井、至る所にある亀裂に蔓を伸ばしていた。亀裂は多く、よく崩れなかった物だと心の底から思う。

 土星と戦った時ほど暴れたわけではないのだが、それでも強度の心配は抜けない。と言うわけで通路を地球は補強している最中だ。

 金星達は、と見てみると、金星は水星に頭を小突かれながら、地面に何かを刻んでいた。刻んでいるのは術を妨害する式区だろう。

 火星は海王星を天王星のいるところへ運んでいた。少し引きずっているのは2人の身長差のためだろう。

 式区が完成し、土星をさらったツタが双子をとらえることのない事を確認すると、通路の先に目を向けた。同時に月も立ち上がり、刀をおさめる。

 天王星の持つ、光の力のためか、地球達が今いる所は明るいのだが、その先を見ても、すぐに闇が視界を阻む。

 月が光をつけようと左手を掲げたが、ふと、その手首とその先まで覆っているカースに気付き、手を下ろした。変わりに月の次に光の術の扱いが上手な水星が右手に光をともらせる。

 先を見、地球達は迷わず進んだ。他にもあった道のうち、この道に双子が現れたということは、冥王星に危害を加え、土星をツタでさらった相手はこの道の先にいるのだろう。
しおりを挟む

処理中です...