迷宮の星

リーア

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32話

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――いやな予感がする――

 月は辺りに漂う闇の気配に気を張っていた。いや、闇の気配であったなら良かった。今感じているのは闇よりも深く、まとわりつくような、そんな力の気配だった。

 突然、感じた気配に、月は身を固くした。
 重苦しい闇に包まれた――よく知った子の気配だった。

 ◇◇◇――――◇◇◇

「月、どうしたの?」

 突然後ろを見た月に、地球は聴いたが、答えはなかった。

 黙りこくっている月の様子に、地球はしばらく怪訝な顔をしていたが、少ししてから感じられた気配にハッと、身が強張る。

 水星、金星、火星もその気配に気付いたようだった。

「この気配は王星兄弟のもの?ですがあの双子とはさっき戦ったから……、それにこの闇の気配……、天でしょうか?彼は「違う」はい?」

 不思議そうに自分を見る火星に、地球は何の反応も返せなかった。

 「気付きましたか」とつぶやく月が地球を見た。

 この気配は天王星のものではなかった。そしてもちろん海王星のものでもない。

「この気配は……あの子の……」

 地球がそう声を絞り出すのと、暗がりから人影が現れるのは同時だった。

「アハァ、覚えてくれてたんだ♪」

 目は隠され、足にもおもりが付けられた少年は、動けなくなっている地球に言った。

「そリャァソウだよね~。ボクを殺そうとした、張本人なんだから♪」

 歌うような口調で言ったのは、漆黒の衣に身を包んだ少年、行方不明になっていた冥王星だった。
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